これまでの話題(2000年12月前半)

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2000年12月13日(水)〜15日(金)

「2000年のベスト&ワースト」


年の瀬も迫ってくると、例年内外の雑誌は一年の総括をします。今年は20世紀最後の年とあって、12月の後半にも面白い記事が期待できそうです。昨年もタイム誌の「99年の“サイバーテク”ベスト&ワースト」を紹介しました。今日は同誌より2000年のビジネスの「ベスト&ワースト」のエッセンスを取り上げたいと思います。

今年はビジネスに関して、下記の10のジャンル別にベストを選んでいます。

1.ベスト合従連衡:Napster社と独ベルテルスマン社との提携

2.ベストWeb株価騒乱:香港トム・ドット・コム(Tom.com)

3.ベスト破産:そごう

4.ベスト新製品:エアバスA3XX

5.ベスト政策:ドイツの減税(法人税を40%から25%へ、所得税を最高税率51%から42%へ)

6.ベスト販売見込:ブラジルのProcomp(電子投票箱)

7.ベスト敵対的買収:世界最大の携帯電話会社の英ボーダフォン・エアタッチによる独通信・機械大手マンネスマンの買収

8.ベストテレコム戦略:NTTドコモ(i-mode)

9.ベスト中央銀行家:アラン・グリーンスパン

10.ベスト海外輸入:カルロス・ゴーン(日産)

asktakaは、この10のベストのうち3つが日本関連である点が面白いと思います。先ず、そごう問題は企業の自己責任に対して政府の毅然とした方針が評価されたようです。NTTドコモはiモードのネット社会での可能性とAT&Tワイアレス社への資本参加が評価されたものです。日産のゴーン社長については、今更説明の必要はないでしょう。

今のところ“舶来もの”が“お買い得”だったといえますが、やはりメーカーである以上、売れる車が開発できるまでは真にお買い得な“輸入”だとはいえませんね。短期的な成果とともに、中長期的な変身の舵を取れるかどうか、今後のゴーン社長の手腕に注目したいと思います。

NTTドコモも“ベスト敵対的買収”による欧州勢などと世界市場を相手にどう戦うのか。今後の戦略の優劣が問われています。なかなか楽しみですね。

ところで、世界に目を転じると、大手レコード会社BMGを傘下に持つドイツの出版・メディア大手、独ベルテルスマン社とナプスター社の業務・資本提携が注目されます。ナプスター社は、ネットを使って無料で音楽交換サービスを実施していますが、BGMやソニー・ミュージックなどから著作権侵害で提訴されています。大手の一角BGMがナプスター社の技術を手に入れることによって、ネットを視野に入れた新たな展開を図るものと期待されます

それから、日本の政策との関連でいうと、asktakaはドイツの減税に注目すべきだと思います。最近の自民党税調の動きを見ても、減税による成長経済経路に乗せるという視点が希薄で、またまた消費税増税の声があがっています。米国のレーガン政権の減税策が現在の米国の繁栄の背景にあり、世界で減税の効果が理論と実証の両面で明らかになっています。

asktakaは、消費低迷の原因はオーソドックスに“将来にわたって期待される所得”にあると思っています。国も地方も財政が破綻している上に、公共投資の効果が減少している今、減税を考えるべきだと思います。

幸い一月に発足する内閣府経済社会総研の初代所長にエール大学の浜田宏一教授(元東大教授)が就任することが決まりました。同氏は“公共事業より減税重視”論者なので、asktakaは期待しているのです。

更に、2000年のワーストは、ダイムラー・クライスラー社のユルゲン・シュレンプCEOです。98年にダイムラー社とクライスラー社が合併しましたが、現在の株価の時価総額は合併前のダイムラー社一社のそれにも及びません。すでに元クライスラーの会長兼CEOで、ダイムラー・ベンツとの合弁を推進したロバート・イートン氏は、今年の3月末で会長兼CEOを退任しました。残るユルゲン・シュレンプCEOも、タイム誌に“標準以下の(Subpar)CEO”との烙印を押されています。何時まで首がつながるものやら。やはり、トップは数字で評価するしかないですからね。

ということで、タイム誌恒例の年末“ベスト&ワースト”のビジネス編を駆け足でご紹介しました。実は、asktakaは、個人的には毎年“人物”や“映画”などの“ベスト&ワースト”を楽しみにしているのです。折をみて「独り言」の方でこの辺の話題を取り上げたいと思いますので、気長にお待ちくださいね。


▼お詫び
日頃当ホームページをご愛読いただき有難うございます。最近合併号が続いたり、更新が遅れたり、“ほぼ毎日更新”の看板に偽りありとお怒りことと存じます。読者の方々には深くお詫び申し上げます。この年末年始にかけて、更にご迷惑をおかけすることになると思いますが、お許しのほどお願い申し上げます。そして、相変わらぬご愛読のほどお願い申し上げます。



お知らせ:昨日の話題は「コンサルタントの“切り口”とは?」 でした。



2000年12月11日(月)〜12日(火)

「コンサルタントの“切り口”とは?」


asktakaは“切り口”という言葉を、20年前にコンサルティング業界に入りたての頃にはじめて聞きました。最初は何のことか分かりませんでしたが、すぐに大体の意味は理解できました。どうも“切り口”とは、問題点や物事を考える見方を意味しているようでした。asktakaには、これはコンサルタントのいわゆる業界用語、Jargonのように思えました。

今日、何故このような話をするかといえば、当HPのお客様からコンサルタントの論理的思考法を尋ねられたからです。普通ですと、かってマッキンゼー社が社員教育用に使っていた書物を紹介します。ハーベイ・ブライトマンの書いた『戦略思考学〜創造的問題解決の手法』 や『グループ戦略思考学〜チームによる創造的問題解決法』(いずれもプレジデント社)です。だが、最近この種のコンサルタントの問題発見や問題解決の考え方に関するメールでの質問が増えているので、この際一般論として話題で取り上げることにしました。

かって「話題」でも述べた記憶がありますが、asktakaはコンサルタントの書くレポートは、次の5つの手法をビジュアルに表現したものが多いと思います。

1.体系化(企業理念体系、製品体系、技術体系、問題点の体系、課題・対策ツリーなど)

2.関連化(製品・市場マトリックス、相関グラフ、分布図、ポジショニングマップ、問題要因関連図など)

3.フロー化(業務フロ−図、価値連鎖フロー、ヒストリカルマップなど)

4.分析グラフ化(時系列グラフ、ABCグラフ、各種重ね合わせグラフなど)

5.コンセプト化(事業コンセプトマップ、製品コンセプトマップ、ドメインマップなど)

上記は問題点を発見するためのツール、アプローチ法であり、一部は解決策のアウトプット・イメージを示しています。

問題は“切り口”は何かということです。考えてみると、asktakaはこの言葉を、

1.アプローチ法

2.機能別などのチェックポイント

この二つの意味で使っています。

例えば、問題点を発見するには、体系化して漏れをチェックしたり、関連化や分析グラフ化して弱点を浮き彫りにするのです。先ず、asktakaは、こうした問題発見のツールとしてのアプローチ法を“切り口”と呼んでいます。

次に、問題点を発見したり、整理するには、あらかじめ視点を決めておくことが、ことをスムーズに運ぶポイントです。“機能別などのチェックポイント” とは、例えば、マーケティングを例にとると次の通りです。

つまり、マーケティング・ミックスといわれる4Pをチェックします。更に、ブランドや製品コンセプトなどのポジショニング(Positioning)と、製品のライフサイクル(PLC)などを意味する2Pをチェックすれば、マーケティング の問題点は分かるでしょう。マーケティングのケースを分析するのに、さて 何からチェックしようかと考えているようでは、話になりませんね。そして、こうした“切り口”から問題点を整理するのです。

では、企業戦略を見る上でチェックポイントは?コーポレート・ガバナンスは?研究開発は?生産は?人事組織は?海外展開は?

こうしてMBA本などを参考にして自分なりにチェックポイントを予め用意しておけば、コンサル会社の面接用ケース・インタビュー程度は十分だと思います。ケースやコンサルティングの場数を踏むに従って、また新しい研究成果を踏まえることで、“切り口”は更に磨きがかかることになります。

ただ、もっと本格的にロジカルな説得力について学ぶには、上述したハーベイ・ブライトマンなどの書籍を熟読するしかないでしょうね。それと基本的な知識として、関数や多変量解析、統計などの数学的な考え方を理解しておいた方がいいと思います。

ということで、今日はasktakaの独断によるコンサルタントの“切り口”のお話でした。



お知らせ:昨日の話題は「景気は上向き?」 でした。



2000年12月9日(土)〜10日(日)

「景気は上向き?」


今日(9日(土))某駅の構内にあるJR直営の本屋を覗いてみると、すでに中央公論や文藝春秋の新年号が出ていました。まだ、12月号もよく読んでいないと思い、この二誌の目次をめくっていくと、面白い記事が目に付きました。

先ず、文藝春秋では『これでも「景気は上向き」ですか?』(嶋中雄二)、『「介護バブル」コムスンの虚飾』(中尾光明)、「IT革命」アメリカも悩んでいる』などが面白いですね。今日は嶋中論文をご紹介しましょう。

嶋中氏は、世のエコノミストの“景気低迷から脱しつつある”という認識に疑問を呈しています。というよりも、同氏はすでに景気はピークに達して、これからは“下り坂”に向かうと指摘しています。

その根拠は、株価の下落や原油の高騰(98年末の1バレル当り11ドルから約3倍の30ドルに上昇)にあります。日本の株価のピークは今年の2月から4月で、その後下落傾向にあります。株価は約6ヶ月のタイムラグをもつ企業収益の先行指標といえますから、企業収益は秋頃をピークに下落すると予測されます。

一方、原油の価格の高騰によって、99年以降交易条件(=輸出価格/輸入価格)が悪化しています。これは原油価格が2ヵ月のタイムラグをもって交易条件に影響を与えるからです。そして、交易条件の悪化は貿易による利益の消出を意味するわけですから、大体1年半のタイムラグで企業収益に影響を及ぼします。つまり、今年の秋以降の企業収益に影響してくるわけです。

嶋中氏は、このようなアゲインストの風があるうえに、IT主導型の景気回復を主張する楽観論に異議を述べています。つまり、同氏は中長期的には日本経済に与えるITの潜在的可能性は高いにしても、短期で見た場合半導体を中心としたICブームに過ぎず、すでにピークに達したと見ているからです。

更に、同氏は「円高」懸念を表明しています。確かに対ドルでは99年末の102円から最近の110円と円安傾向にありますから、円高といわれてもピンとこない向きもあるかもしれません。しかし、ユーロの落ち込みが影響して、国際通貨の総合的「実効レート」日経通貨インデックスを見ると、すでに1ドル79円を記録した95年4月の水準を上回っています。

こうした点から、嶋中氏は今後景気がなだらかに回復すると見るのは早計だと述べています。つまり、来年度はやや減速してせいぜい実質で0.7%程度の伸びにとどまり、景気回復は早くて来年下期以降と予測しています。

さて、asktakaは嶋中氏の見通しは、なかなか的確だと思っています。しかし、かって元コンサルタントのO氏が、80年代半ばに1ドル150円を 切る円高になったら日本企業が壊滅するといった言葉を想起します。結局、日本企業は壊滅するどころか、懸命に円高対応をしてこの危機を乗り切ったわけです。

何がいいたいかというと、来年の景気見通しは厳しいかもしれませんが、これを危機ばねとして、更なる企業努力を行って乗り切って欲しいということです。asktakaは、かって93年3月期の最悪の決算期のあとの折角の対策を、その後の好況によってなし崩しにした多くの企業を知っています。来年度の停滞が事実でも、例え予想以上の回復基調となったとしても、企業は手を緩めずに新世紀に向けた構造改革、企業変革を続行して欲しいと願っています。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(43):“ウェルチGE会長”の言葉 」 でした。



2000年12月8日(金)

「今日の言葉(43):“ウェルチGE会長”の言葉 」


とうとうGEのジャック・ウェルチ会長が退任することになりました。 そこで、9月にも登場していただいたウェルチ会長に再登場していただき、 次の有名な言葉を紹介したいと思います。

「“効率“という言葉はよくない。“創造性という言葉を使うべきだ。」

asktakaは、このウェルチ会長の名言を、お付き合いのあるトップや幹部の方々から何回となく聞いています。しかし、この言葉の含蓄を考えると、今こそこれを肝に銘じるべきではないでしょうか。

よく知られているように、この言葉は同会長がまだ平社員だった頃、上司から“効率をあげろ”といわれた際のものです。社員のやる気と創造性を、“効率”という大義名分で殺してモチベーションを下げては逆効果だといいたかったということです。

今、日本企業は、この何年かの努力で減収増益体質に変化しているように思われます。しかし、“効率向上”“生産性向上”“リストラ”によって、短期的な視点、近視眼的な対処に終わっていることを懸念します。

もちろん、効率重視の現場での努力は重要です。だが、忘れてはいけないのは、今こそ中長期的なビジョンとそれに立脚した新たなビジネスシステムや マネジメントシステムの創造が必要だということです。

IT革命による影響のみならず、経済システム全体が構造的に変化している中で、大きな時代の流れ、市場の流れに身を任せるのみでは、次代の発展は望めません。asktakaは、自らの意思によって流れを作る、こうした“創造性”が企業に求められていると思います。

皆さん、今日はこうした観点から、ウェルチ会長の言葉をかみ締めてみませんか?



お知らせ:昨日の話題は「MBAと日本企業」 でした。



2000年12月6日(水)〜7日(木)

「MBAと日本企業」


先日の日経にMBA留学生の比率が減少しているという記事が出ていました。韓国や中国などの東南アジアからの学生は増加しているようですが、景気低迷の余波で企業からの派遣が減ってきたのでしょうか。それとも巷間伝えられるように、日本人の学力が落ちてきたのでしょうか。

いずれにしても、MBAで学ぶビジネス、マネジメントの基本知識は、21世紀の日本企業にとって不可欠だと思います。この点は、基礎が出来ていなければ、我流に陥り、ものごとの検討に時間がかかることを想起すれば、理解しやすいと思います。一部の天才を除いて、先ずはオーソドックスに既存のパラダイムを踏まえなければ、新たなシステムを創造するにも効率が悪いのです。

さて、今日はMBAが今後の日本企業にとって必要だという前提に立って、 将来社内でどう活用していくかという観点から、所見を述べてみたいと思います。

先ず、日本企業のMBAなどの企業の留学制度は、目的や帰国後の待遇面で、学んだ内容を実務に生かす工夫が欠けていたと思います(技術系は目的が明確かもしれませんが)。例えば、折角社内の選考をパスして留学しても留学中は昇格停止、更に帰国後は小生意気な垢を落とせとばかりにどさ回りでは、よほど人物が出来ていなければ、嫌気がさすのも無理はありません。その上MBA取得後に自社に戻っても、年俸も従来の延長線上ですからね。asktakaには、日本企業はこれまでの留学を単に英語の勉強ぐらいにしか 考えていなかったような気がします。

次に、これまでの日本企業の大半は、国内派が社内政治を牛耳ってきた点は否めません。こうしたこともあり、かってはメーカー、銀行を問わず、海外赴任は二線級という言葉をよく耳にしました。留学に関しても、ジェネラリストという名の調整屋が全盛だった日本企業では、このような社内の雰囲気を反映して、本流にいた人が留学試験を受けてMBAを取りに行くインセンティブに欠けていたように思えます。

更に、もっと根が深いのは、日本企業には、理論的な話や議論を“青臭い”といって避ける傾向あったからです。この背景には、日本において、特に経済学や経営学系では、学会が象牙の塔にこもって実学でなかった点に起因すると思います。もっと遡れば、かっての日本社会のインテリ=左翼という不幸な構図が、暗黙のうちに企業から“学問”する心を奪っていたのかもしれません。

それから、稟議制や根回しを前提とする日本の意思決定システムは、そもそも 会議における議論を避ける仕組みであったといえます。面子にこだわり、お神輿に乗って自分の意見を自分の言葉として表現できない人達が、議論をしない会議、議論が出来ない会議を作り上げてきたのです。

このような背景から、日本企業においてはMBAの活躍の場が比較的少なかったことは確かで、MBAホルダーが必ずしも日本企業内で成功していないという話も一部では聞こえてきます。また、通称MBA村と呼ばれる投資銀行やコンサルなどの特殊な業界だけでしか、MBAが活躍できないというのも一面の真理です。

しかし、asktakaの知る範囲では、今日本企業のトップや役員、幹部の中にはMBAや留学経験をもつ人は大勢います。考えてみれば、こうした成功した方々は、会議の場で議論しても、差しでお話をしても少しも違和感はないし、極めてバランス感覚をお持ちです。つまり、逆説的に言えば、こうした方々は、留学経験、MBAをひた隠しにして同化したからこそ社内の階段を登ってこれたのだといえましょう。

それでは、今後いかにMBAを活用していくか。asktakaは、次の5点を提案したいと思います。

1.特命担当としてミッション(使命)を与えて留学させる

2.帰国後、子会社立ち上げなどに参加させて報酬面も配慮(子会社役員から本社役員への道も残す)

3.MBAをジョブマーケットから定期採用して社内MBAと競わせる

4.MBAを昇進の条件として位置付ける

5.(MBAへの理解を深めるために)役員・幹部をエグゼクティブ・プログラムに参加させる

上記の内容はご理解いただけると思うので、説明は割愛します。そうそう、もう一つ付け加えるとすれば、企業派遣でなく自己資金で退社もしくは休職してMBAを狙う方々向けの低利融資制度も考えたいですね。asktakaは民間の資金のみならず、例えば保証協会から中小企業に融資される原資の一部を、MBAの自己資金留学者への融資に回せば、将来の日本の発展に寄与すると思いますがね。もっとも現状のままでは、外資系の人材育成に貢献するのみになりますが。

思いつくままにMBAについて述べてきましたが、MBAが日本企業に定着しないのは企業側の問題と本人の問題が半々だと思います。和魂和才のみならず真の和魂洋才が求められる今、企業側はMBAの活躍の場を与えるべきです。 そして、MBAホルダー達は、洋の東西を問わずいかなる社会といえども最後は“人間の魅力”が勝負だということを忘れずに活躍されることを期待します。

企業もMBAホルダーも、MBAの不良資産化を避けるために何をすべきか。この点を自問自答して、後は実行あるのみですね。



お知らせ:昨日の話題は「インターネットの利用率」 でした。



2000年12月4日(月)〜5日(火)

「インターネットの利用率」


先日の本HPのBBSに、インターネットの利用率に関する調査結果を書き込みました。11月の上旬に首都圏に本社がある某クライアントの顧客を対象に実施した、アンケートの結果の一部を記したものです。

その結果を再掲すると、次の通りです。

1.インターネットを利用している世帯:45%

2.利用者(複数回答):
夫:40%強
子供:40%弱
妻:30%
祖父母:0%

3.回答者について:
東京近郊の持家世帯という顧客特性のゆえか世帯主の年齢は30代と 50代が多い。そして大半が、いわゆる勤め人。

上記のインターネット世帯利用率45%は、幾分高めに出ているような気がしました。そこで、あるMLで他の類似の調査結果を尋ねたところ、それがあったのですね(株式会社R&Dが実施した「インターネット利用実際調査」。この調査は住民基本台帳からランダムサンプリングで対象者を抽出し、訪問留置法で調査。調査時期は8月末〜9月上旬)。

調査は首都圏在住の18-69歳の男女を対象に行われ、「お宅でインターネットをお使いですか」という質問に次のような回答されています。

自分だけが使用:9.5%
自分と家族が使用:21.0%
自分以外の家族が使用:16.8%

つまり、自宅で誰かがインターネット使用している、世帯利用率は47.3%に達します。この調査は6月にも実施しましたが、その際は利用率は45%だったそうです。この「自宅でインターネット」の中には、“iモード”も含まれていますが、パソコンとの併用者も多いので大幅に利用率が減少することはなさそうだ、とMLで回答していただいた方はコメントされていました。

最後にもう一つだけご紹介します。東京都がこの7月に実施した「都民生活に関する世論調査」(対象は満20歳以上の男女で、サンプル数は2,115)によると、インターネットを利用している人は35%となっています。但し、この場合は、世帯を対象にした調査ではなく、個人を対象にしたものです。

ちなみに、利用目的をみると、仕事上では「情報の検索・情報収集活動」が50%、「電子メール」が46%、「ホームページによる情報発信」16%の順です。一方、仕事以外では、「電子メール」が68%、「情報の検索・情報収集活動」が61%、「買物やチケット予約、金融サービスなど」が25%の順となっています。

このような調査結果から、首都圏では大体4割以上の世帯で、パソコンや携帯電話を使ってインターネットが利用されているといえます。そして、利用目的は、今のところメールが主体ですが、すでに仕事以外では25%がいわゆるEコマースを利用していることになります。

パソコンの世帯普及率も今年の3月時点で40%弱に達し、来年には5割に達する勢いです。asktakaは予想以上にネットが根付いていると思っています。 来年5月にはいよいよ次世代の携帯電話が登場して通信速度も格段に早くなれば、パソコン以外でのネット利用も更に加速するものと思われます。

さて、asktakaがこのような調査結果を述べたのは、T企業といわれる伝統的な既存企業もネット企業も、まだまだやりようがあると言いたかったからです。決して煽るつもりはないですが、ネットの波が消費者市場に押し寄せていることは確かです。皆さんも、消費者の視点からビジネスのアイデアを考えてみませんか?


(謝意)
インターネットに関する調査結果については、インターネットサーベイML に参加されている方々から貴重なご意見をいただきました。厚く御礼申し上げます。

(注)
なお、厳密には世帯普及率(一般にはネット可能なパソコンの普及率を言う)と個人の利用率、世帯の利用率は異なりますので、ご注意願います。



お知らせ:昨日の話題は「松下の事業部制の終焉」 でした。



2000年12月1日(金)〜3日(日)

「松下の事業部制の終焉」


20世紀最後の月の初日、12月1日の日経朝刊の一面を見てみると、「松下、事業部制を解体」という見出しが目に付きました。asktakaにとってこのニュースは、世紀末を象徴するとともに新たな時代のはじまりを予感するものでした。

昔話をお許しいただければ、asktakaが“松下の事業部制”を研究したのは、もう20年ほど前になりますが、通称KBS(慶應のビジネスクール)のケースを通じてでした。当時からKBSではHBSのケースの翻訳ものだけでなく、自前のケースを作成していましたが、松下のケースはその中でも出色の出来栄えでした。asktakaがコンサルタントの教育用に使ったものですが、当時のケースの中で一番印象に残っています。

その後、松下及びグループ会社とのお付き合いの中で、“松下の事業部制”の良さとともに、事業部間、グループ間の横のつながりの悪さを感じたものでした。asktakaにとって“松下の事業部制”は、このような若き日の思い出と不可分ですが、それゆえに事業部制の終焉が一層感慨深いのだと思います。

さて、松下の事業部制は、1933年に創業者である松下幸之助氏が導入して以来、松下の伝統として根付いてきました。製販一体の製品別事業部が独立採算制で利益責任をもつマネジメント・スタイルは、優れたスタイルとして日本企業のみならず、世界の企業から注目されていました。

こうした事業部制の流れが大きく変化したのは、90年代に入って米国でリエンジニアリングと呼ばれた業務プロセスの改革と価値連鎖の見直しが行われるようになってからです。この背景には、付加価値の源泉がモノからサービスに移行した点を見逃せません。多数の製販一体型事業部をもつ企業は、モノづくりで利益をあげることの限界を理解して、製造部門や販売部門のアウトソーシング化や独立採算の別会社化を図り、更にサービス部門の収益化に乗り出したのです。

松下の事業部制の解体は、こうした環境を踏まえて、これまでのモノづくりをベースにした旧モデルを捨てて、新たなビジネスモデルの創造へと歩みだしたわけです。

新聞報道によると、松下は3ヵ年で従来の製販一体事業部から製造部門を分離して「ファクトリーセンター」とするようです。内外の247の製造拠点のうち30拠点以上を統廃合して、欧米やアジア諸国とのコスト競争に備えようというわけです。また、自社のみならず他メーカーからも生産を受注し、モノづくりの競争力の強化を狙っています。

一方、営業も従来の製品別から“パナソニック”、“ナショナル”などのブランド別に改組して、ソリューション営業を強化するなど一層の販売効率を図る予定です

asktakaは、松下の“破壊と創造”の試みに最大限の賛辞を贈りますが、この成果については経過を見守りたいと思います。というのは、最近メーカーや大手問屋筋から、日本人のモノづくり能力の低下を嘆く声が多いからです。例えば、日本企業の国内工場と中国工場のロス率を比べると、現在では中国の方がロスが少ないケースが増えているとのことです。

もし、松下の製造部門の解体が、実は工場の現場の崩壊が影響しているとすれば、“創造”の道は険しいといわざるをえません。asktakaには、今、日本のメーカーがやるべきことは、大きな変革とともに現場の改革ではないかと思うのです。メーカーにお勤めの皆さんの会社の工場はいかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「ネット市場崩壊後のメリット」 でした。



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