これまでの話題(2000年6月後半)

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2000年6月29日(木)〜30日(金)

「アジアの星〜50人の変革のリーダー」

Business Week誌の最新号に「アジアの星〜変革の中心にいる50人のリーダー」と題する特集が掲載されています。50人を国別でみると、日本が14人でトップ、2位は香港の7人、3位は台湾で6人です。以下、韓国とインドは5人、中国、タイ、フィリピンは3人、インドネシアは2人、シンガポールとバングラディッシュはそれぞれ1人となっています。

分野別にみると、経営者は14人(うち日本は4人)、起業家が10人(同4人)、金融関係者は10人(同6人)、政策立案者は9人(同0人)、オピニオンリーダーは7人(同0人)となっています。情けないのは、後の二つは日本はゼロなんですね。政策とオピニオンに関しては、アジアでも見劣りするということです。海外の記者の目は結構鋭いですね。

<経営者>
1.土井利忠(ソニー)
2.榎啓一(NTTドコモ)
3.カルロス・ゴーン(日産)
4.鈴木敏文(セブンイレブン)

<起業家>
5.伊藤穣一(ネオテニー)
6.三木谷浩史(楽天)
7.佐藤玖美 (womenjapan.com)
8.孫正義(ソフトバンク)

<金融関係者>
9.速水優(日銀総裁)
10.Kojima, Toshiharu(日興ソロモン・スミス・バーニー)
11.松本大(マネックス)
12.宮内義弘(オリックス)
13.大前研一(アタッカーズ・ビジネススクール)
14.大竹美喜(アメリカンファミリー)

上記の14人の中で、日銀の速水総裁が変革のリーダーなのかどうかは疑問が残るところです。どうも内外の批判に耐えてゼロ金利政策を維持している点が評価されているようです。それと大前氏が金融に入っているのはご愛嬌ですが、起業家育成の観点から評価されたものです。あとゴーン氏が“日本”に入っているのを見て、なぜかほっとしました。

その他の方々は各分野では有名人のようですから、皆さんはご存知かと思います。asktakaはwomenjapan.comの佐藤氏のサイトは活字で見ただけでしたが、先ほど覗いてみました。自立する女性をターゲットに、“セルフインプルーブメントを目指すあなたのためのサイト”をキャッチフレーズにしています。こうした女性にターゲットを絞った点は面白い試みだと思いますが、今後どこまで伸びるのか成り行きを注目したいと思います。

こうしてみると、アジアの中では日本はことビジネス界に関しては圧倒的な存在感があります。では、世界で見るとどうなのか。変革のリーダーという視点では、何人が世界の50人に入るのか。asktakaはせいぜい3、4人かなと思いますが、皆さんはどうおもわれますか。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(17):『第三の波』より」 でした。



2000年6月28日(水)

「今日の言葉(17):『第三の波』より」

asktakaは学生時代、アルヴィン・トフラーやハーマン・カーンなどの未来学者の書物に凝った時期がありました。この手の未来学の話をしすぎたせいか、恩師からやんわりとたしなめられた記憶があります。要は、もっと理論経済学を勉強しなさい、ということでしたが。

ところで、トフラーが1980年に出版した『第三の波(The Third Wave)』は、今読み返してみてもかなり正確に今日を予測していた点に驚きを禁じ得ません。第三の波は、第一の波である農業革命、第二の産業化の波 に続く超産業社会であり、「産業主義の終焉と新しい文明の台頭」を意味しています。トフラーはこの書物の中でプロシューマ―(「生産=消費者」)の出現を予言し、次のように述べています。

「顧客は製造工程に深く参画することになり、いったいだれがほんとうの“消費者”で、だれが“生産者”なのか、ますます見分けがつかなくなるであろう」

つまり、第三の波の中では、消費者は自分の好みや選択をはっきり意思表示する形で生産プロセスに関わるようになり、両者の区別がつかなくなると予言したのです。

確かに、トフラーの言うとおり、マスカスタマイゼーションという手法はこの線に沿っているし、デルコンピュータなどをみても消費者が自由にスペックを組み合わせて発注できるようになっています。

私たちにとって重要なのは、結果として予測が当たったといって喜んでいることではなく、こうした予測を実際のビジネスにどう生かすかという点です。未来の予測から鉱脈を掘り当てるには、単なる分析力だけではなく独自の洞察力と動物的勘が不可欠です。さあ、四半世紀後はどうなるか。未来を語る情報の中から、皆さんも明日のビジネスモデルを創造してみませんか?



お知らせ:昨日の話題は「経営の常識を疑え!(その2)」 でした。



2000年6月27日(火)

「経営の常識を疑え!(その2)」

先週の金曜日の話題は「経営の常識を疑え!」でした。その際は「組織のフラット化」を取り上げましたが、実はドラッカー先生は“経営の常識”が通用しないもう一点の例をあげていたそうです。それは「顧客に聞け」という顧客至上マーケティングに対する問題提起でもあります。前回同様日経ビジネスの記事をもとに、簡単にこの話を紹介します。

米国市場で30%のシェアを持つオフィス家具最大手のメーカーは、これまでオフィス家具市場を熟知していると自負していました。だが、米国内の雇用形態が変化してSOHO(Small Office, Home Office)が増加し、現在ではSOHO族が4,000万人に達しました。

こうした環境変化によって、オフィス家具市場で成長性の高いSOHO族向けマーケットの販路は、従来のオフィス家具店から家庭用家具店へと移行していたのです。問題はある時期まで、オフィス家具メーカーは、こうした市場の変化を見逃していた点です。

この原因は、ドラッカー先生によると、オフィス家具メーカーが顧客至上主義にこだわって、全市場の30%に過ぎない既存顧客の情報に依存し過ぎていたからです。つまり、未知な70%の成長性の高い潜在顧客の情報を看過していたわけです。幸いこのメーカーは、途中でこの点に気付いたからよかったのですが、そうでなければ倒産の可能性もあったとのことです。

このような例は日本企業にも、他の欧米企業にも見受けられます。市場の変化を見据えて、機敏に戦略を転換するには、従来の「経営の常識」を一度否定してみることが必要です。そして現在は小さいうねりでも将来は大きなうねりとなる波を見つけ出すことが不可欠です。

実は、こうした波の真贋を見つけるのは意外と難しいのです。過去のデータをいくら分析しても、過去からの延長でしか物が見えないことが多いからです。どのような波が大きくなりそうなのか、イメージなり仮説がなければ、データに埋没することにもなりかねません。

この意味では「経営の常識」を疑うには、将来のあるべき姿のイメージをもってデータで裏をとることが大事です。asktakaは、最初にデータで変化の萌芽を見出した後は、将来の仮説をたてて検証していく姿勢が求められていると思うのです。



お知らせ:昨日の話題は「クリントン大統領のネット演説」 でした。



2000年6月26日(月)

「クリントン大統領のネット演説 」

日本は総選挙に関心を奪われている間に、米国ではクリントン大統領が6月24日の土曜日にインターネットによる演説を開始しました。CNNの報道によると、ルーズベルト大統領以来続いているサータデイ・モーニングのラジオ演説に加えて、はじめてネットによる演説を国民向けに行ったとのことです (こちら→http://www.firstgov.com/)から演説を聞けます)。

クリントン大統領は週末にふさわしく、濃いエンジ色のカジュアルなシャツを着て、5分弱のウェブ演説を行い、今秋(90日後)を目処にデジタル・ガバメント“FirstGov”(“Your First Click to Digital Government”の略)を立ち上げると宣言しました。歴史に残る初のネット演説を、現代を象徴したカジュアルないでたちで行ったのも印象的でした。その概要は演説の中の次の言葉で明確に示されています(演説開始後2分30秒過ぎから次の言葉がはじまります)。

"When it's complete, FirstGov will serve as a single point of entry to one of the largest, perhaps the most useful collection of Web pages in the entire world,"

このように高らかに、世界最大で最も役に立つウェブ・ページになるといわれると期待しちゃいますね。以下、CNN英語版からさわりの部分をご紹介しましょう。

“デジタル・ガバメント(電子政府)”とは、政府や自治体のコンピュータやネットワークを利用した電子化されたサービスが総合的に国民に提供されることをいうようです。ファースト・ゴブと呼ばれるこのサイトでは、約5000億ドル(約52兆5000万円)にのぼる中小企業や国民向け政府助成金についての情報の他、政府との契約事業の募集告知なども行うとのことです。

クリントン大統領によると、ファースト・ゴブは起業する際に必要な情報や、社会福祉の記録を知りたいときなど、24時間、週7日いつでも一つのサイトで利用できる」点が便利だと述べています。 また、電子政府について新しいアイディアを募集する計画で、優れたアイデアには合計5万ドル(約525万円)の賞金が贈られると発表しました。 CNNでは以上のように報じています。

日本の政府、中央官庁あるいは自治体のホームページをみると、ウェブ上での情報公開に対する取り組みは千差万別です。それから、ちゃんと分析するにはデジタルな官庁情報ではデータが荒すぎて使い物にならないのです。結局、役所に行ってデータを入手するか、紙に印刷された文字媒体を購入するしかないという有様です。日本の場合、政府が率先して紙と電子情報のダブル・スタンダードを廃していけば、デジタル化あるいはネット化の推進は随分早まると思います。

こう考えると、日本政府もITあるいはネット関連で、世界に先駆けたユニークな試みを行うべきではないでしょうか。この件に関しては、お得意の“小出しで後手”だけは止めてほしいと思うのです。asktakaが以前提案した全世帯パソコン配布でもいいですし、民主党が今回の選挙で提案したIT関連の具体策の丸呑みでもいいですから、皆さんもすぐに実行してほしいと思いませんか(注)。


(注)Yahoo!ジオシティーズより6月22日に配信された民主党提供のメールには、下記の民主党のIT革命推進「7つの具体策」が示されています。

1.市内通話及び通信料金を定額/低廉化し、『常時接続のインターネット の普及』を促進支援します。

2.『インターネット確定申告』を実現します。

3.すべての人が情報社会の主人公となれるよう、情報リテラシー100% (=誰もが基礎的な情報機器操作力を持てる状態)の実現をめざします。

4.“中学生に一人一台パソコン”を配置します。

5.『行政情報を100%電子化』し、国民に開かれた「電子政府」を確立します。

6.『電子投票/インターネット投票の実施』を検討します。

7.「情報通信関連予算10倍化」政策を実行します。



お知らせ:昨日の話題は「総選挙の争点」 でした。



2000年6月24日(土)〜25日(日)

「総選挙の争点」

今日は衆議院選挙の日です。21世紀の日本の政治を担う人たちを選ぶことになるのですが、結果はどうなるのでしょうか。この欄で政治向きの話も無粋かと思ったのですが、ちょっとお付き合いください。

asktakaは今回の選挙は、大きく2つの争点があると思っていました。つまり、第一点は2大政党制が民主主義の形としてベストであるかどうか、第二点は大きな政府か小さな政府か(そのための政策の骨子を含む)、この二つです。だが、どうもこうした争点がボケてしまったようです。

先ず、最初の2大政党制に関しては、野党側がだらしがないですね。民主党はHPを見ても送られてくるメールを見ても、具体的な政策という名の陳腐な施策ばかりで、大きな政治の流れの話は前面に出ていません。自由党も「新しい国家目標を掲げて」「“戦後保守”と訣別し、自ら中核となって日本に新しい政治を創造することを宣言する」とか言っていますが、どうも迫力がありません。

一体世の中では、政治体制のあるべき姿として現在の一党プラスアルファの与党を是としているのでしょうか。競争関係と相互監視システムの働く、政権交代が可能な2大政党制が、現存する政治システムの中ではベストと思うのはasktakaだけでしょうか。米国や英国を見ても、政権交代が可能であるゆえに切磋琢磨している面も強いと思うのです。

もしこうした2大政党制が話題にならないのは、かっての新進党を中心とした政権交代以後の見苦しい動きと野党のリーダーに対する失望感に起因するとすれば、根は深いですね。まさかそれを承知で野党は2大政党制を声を大にして叫ばなかったのでしょうか。それでも野党に投票しなければ2大政党にはなりえません。選ぶ側にしてみれば、人物、政策で選べないという虚しさ、悲しさがあるのですが、大義のためには我慢するしかないですね。

二番目の「大きな政府か小さな政府」の問題は、これまでの既得権の打破が前提となる議論なので、論ずるには時間とエネルギーが必要です。ですが、具体策という名目での矮小な耳障りのいい話ばかりで、この問題を真剣にアピールしている政党がないのが残念です。

asktakaは、抜本的な行財政改革と規制緩和をベースに自己責任を原則とした社会、小さな政府が理想的だと思います。しかし、年金や健康保険、社会的弱者対策には重点的に予算配分をすべきです。先進諸国のなかでは突出している公共事業の削減と官がらみの事業を民営化することによって、税金は安くてもそうした対策は可能なはずです。問題は最大の既得権者である官僚組織をどこまで解体できるか、この腕力に関わっていると思うのです。

正午のニュースを聞くと、推定投票率は全国的に前回を2〜5ポイント下回っているようです。今からでも遅くはないので(午後8時まで投票できます)、21世紀の最初の政治体制を決める一票を投じようではありませんか。今後の社会、経済、ビジネス、暮らしを変える一票となることを信じて!



お知らせ:昨日の話題は「経営の常識を疑え!」 でした。



2000年6月23日(金)

「経営の常識を疑え!」

asktakaはクライアント企業の改革を考えるお手伝いをする際は、“社内の常識は非常識と思って見直してください”とお願いします。そういえば、 かのドラッカー先生の視点も“経営の常識を疑え”という点にありますね。

今日はその一つとして「組織のフラット化」のお話をしましょう。以前この話は日経ビジネスで取り上げられていたのですが、細部の話は確かではないので、asktakaの創作だと思っていただいて結構です。

通常の大企業の組織は、社長、上級役員(専務クラス)、下級役員(取締役クラス)、部長、課長、などのピラミッド型の組織になっています。そのため決裁を行うにも稟議書のはんこが5,6個以上必要とします。機敏さが求めれれるスピードの時代に適合しなくなってきたのです。もっと本質的には、かっては分権化した組織の標準モデルも、時代とともに官僚化して硬直的になってきた点も否めません。

こうした背景から組織階層を削減して、組織をフラット化しようという動きが出てきました。特にシリコンバレーのネット企業を中心にブームになり、大企業病を無くすための特効薬のようにいわれてきました。日本ではこうしたフラットな組織は、一人の上司の下に部下が横一列に並ぶため「文鎮型組織」とも呼ばれています。

ところで、こうしたフラットな組織の下では階層がなくなり、リーダーは不要なのでしょうか。ドラッカー先生の答えはノーですが、asktakaも同様です。そもそも何らかの目的をもつ組織は、営利であろうと非営利であろうと、命令系統と階層が必要です。この点はドラッカー先生の次のビビッドな言葉に耳を傾けましょう。

「船が大海の中で嵐に遭ってまもなく沈没しそうな時、船員たちが議論したり、各自の判断にゆだねるだろうか。このような場合は、迷わず船長が断を下すはずだ。」

間違えてはいけない点は、いくら組織の階層が少なくなっても最終判断をするリーダーは必要なのです。階層が少ない分だけリーダーの責任は重く、企業であれば戦略的な判断が不可欠です。

このようにフラットな組織がちゃんと所期の狙いを達成するには、メンバー個々人の能力とリーダーの役割がポイントなのです。まさかフラットな文鎮型の組織にすれば、問題は解決すると早合点する人はいないとは思います。 ただ、asktakaが見聞きする限り、どうもこのへんの認識が希薄なように思えるのです。フラット化すればオーケーという“常識”は、この際捨てるべきではないでしょうか。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(16):“ナンバー2の組織の会社・・・” 」 でした。



2000年6月22日(木)

「今日の言葉(16):“ナンバー2の組織の会社・・・” 」

世の中にナンバー1、トップシェアの会社だけが存在するわけではありません。今後は業界でトップ3までしか生き残れないとしても、全体の3分の2はナンバー1ではないわけです。こうしたトップ追撃を考える際に思い浮かぶのが、ペプシコの元社長兼CEOであったD・ウェイン・キャラウェイ氏の次の言葉です。

「ナンバー2の組織の会社は、結局、市場でもナンバー2にしかなれない。」

80年代のはじめにコカコーラがシェアを低下させた時期がありました。その際に、追撃の言葉として出てきたのがこの言葉です。つまり、「ペプシコが万年2位に甘んじているのは、全員がナンバー2であることに甘んじて、全員がナンバー2の組織を形成しているからだ。アリが象に勝負を挑んでいるのではない、堂々と勝負できるのにそれをしていないだけだ。」と檄を飛ばしたのです。

トップと2位の差は、実際にはそれぞれを二乗したほど差があるかもしれません。つまり、4倍の差です。しかしながら、チャンスを逃さず戦略を大転換して攻勢に出なければ、永久に2位の座に留まることになります。ペプシコはマイケル・ジャクソンやマドンナを使った巧みなCFで、85年に首位の座を奪ったのです。

もちろん広告戦略によるイメージ訴求が効果的なのは、ペプシコのような消費財メーカーや消費者向け流通サービス会社です。企業向けの生産財メーカーなどは異なる戦略が必要なのはいうまでもありません。

今日は多くのトップ追撃をお考えの皆さんに、asktakaがキャラウェイ氏の言葉を借りて檄を飛ばしました。梅雨の合間の暑気払いになれば幸いです。



お知らせ:昨日の話題は「変貌する名古屋」 でした。



2000年6月21日(水)

「変貌する名古屋」

名古屋を中心とする中部圏は、今後数年は日本全国の中で最も活気のあるエリアになると思います。2005年の愛知万博と中部国際空港開港をにらんで人の動きが活発になるだけでなく、街や産業構造も変化するからです。

東京、大阪、名古屋を中心とする三大都市圏の特性を見ると、大雑把に次のようにいえます。東京は製造業、流通、サービスのバランスがとれた都市圏です。一方、大阪はどちらかというと流通、サービスが中心です。有力な製造業も立地していますが、地域の広がりがないのが難点です。名古屋を含む中部圏は、三大都市圏の中では最も製造業立地としてのポテンシャルが高かったこともあり、製造業王国といえます。

ところが、昨年12月に名古屋駅に「JRセントラルタワーズ」のオフィィス棟が完成し、ホテル棟には今年の3月に「JR名古屋高島屋」が、5月には「マリオットアソシアホテル」がオープンして以来様相は変わっているとのことです。

高島屋は3月15日の開業日には23万人が来店し、5.5億円を売り上げ、5月末までの2ヵ月半で来店者数は1,130万人に達したという。なんと来店者数は予想の7割増、売上も計画値に比べて2割ほど多いそうです。

これまで名古屋市内の商業は栄地区が中心で三越、松坂屋、パルコなどが集積していました。他方、名古屋駅前には松坂屋と名鉄百貨店がありましたが、売上比率は7対3で駅前の部が悪かったのです。ところが高島屋の駅前進出でこの商業勢力マップは大きく変貌しそうです。

名古屋の商圏人口は約400万人といわれていますから、商業中心地が駅前と栄で2極化しても十分に成り立つものと思われます。ただ気になるのは、地元の商業関係者が名古屋の商圏拡大に幻想をいだいていると思われる点です。確かに、岐阜や三重など周辺都市からの集客は増えるかもしれませんが、東京や大阪からの集客まで期待するのは行き過ぎです。

こうした勘違いは、政令指定都市クラスの商業開発の際にはよくあるケースなのです。例えば、広島の紙屋町に大型商業施設を作る場合、福岡や四国、大阪からも集客できないかという話があります。他の都市でも同様です。しかし、商業集積だけで遠方の消費者の買回品や最寄品の購買行動まで期待することには無理があります。もっと街づくりや観光資源の個性化の視点も踏まえて地道な商圏を考えるべきだと思います。

しかしながら、名古屋がここ何年かで大きく変わることには違いありません。駅前周辺では2006年から2007年にかけて再開発による大型オフィスビルが完成します(牛島地区と毎日・豊田共同ビルなど)。また、製造業中心から流通・サービス機能の充実へと地域の顔が変わりつつあります。asktakaは、21世紀の名古屋の変貌に注目したいと思います。皆さんも一緒にいかがですか?



お知らせ:昨日の話題は「シンボリック・アナリスト」 でした。



2000年6月20日(火)

「シンボリック・アナリスト」

いわゆる情報というものが巷にあふれています。特にインターネットが盛んになって、工夫次第で無料で有益な情報が限りなく入手できます。ただネット上の情報は、その特性上専門家や素人を問わず“勝手に発信”タイプが多く、玉石混交となる点は否めません。だが、先ずは情報の海の中で目的のものを探し出すための検索エンジンが必要となります。asktakaも英語情報はGoogle、日本語の情報はYahooかLycosのお世話になります。

ところが、検索して情報を手に入れても、大概の人は膨大な情報の前にしばし我を忘れて佇むのではないでしょうか。情報は収集した後が重要で、それをどう解釈してどのようなアクションに結びつけるか、この点が肝心です。実際は、情報の海の中で溺れかかっているのですから。

今後ますますネットやメールでの情報提供が盛んになると、情報は自由財として誰もが即座に入手できるようになるでしょう。そうなると、今以上に情報の取捨選択と解釈された情報の重要性が高まることは間違いありません。かってロバート・B・ライシュが21世紀の資本主義社会で脚光を浴びるとした“シンボリック・アナリスト”が必要とされる所以です(中谷巌訳「ザ・ワークス・オブ・ネーションズ」、91年、ダイヤモンド社)。

シンボリック・アナリストとは問題発見、問題解決を行う人や戦略的ブローカー(媒介をする人)をいうのですが、研究者、大学教授からコンサルタントまで、そして法律家や会計士など幅が広いのです。asktakaはもう少し拡大解釈して、文字媒体(雑誌や本)、ウェブ上の雑誌やホームページもそのような機能を持つものと思います。

皆さんも情報の洪水の中で、自分のシンボリック・アナリストをもつべきではないでしょうか。具体的には、昨日紹介した雑誌もその一つですし、お気に入りのエコノミスト、評論家、コンサルタントなどを意味しています。asktakaは、こうした自分向けにカスタマイズしたシンボリック・アナリストの質と量が、皆さんの情報の価値を高めることになると思うのです。

それとも、いっそのこと自らシンボリック・アナリストを目指してみますか?21世紀に生きるビジネスパースンとして、皆さんはどちらの道を選ばれるのでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「技術系雑誌の人気」 でした。



2000年6月19日(月)

「技術系雑誌の人気」

米国では技術系の雑誌が人気を呼んでいるそうです。ネットバブルがはじけたとはいえ、ネット企業にとって従来型の文字媒体は広告媒体としても魅力があるようです。英エコノミスト誌(5月6日号)によると、次の6誌をニューエコノミーあるいはEビジネス向け技術系雑誌として取り上げています(同誌記載の発行部数順、括弧内発行部数)。

1.Wired(469,000)
2.Fast Company(403,000)
3.Business 2.0(210,000)
4.Upside(205,000)
5.Red Herring(163,000)
6.Industry Standard(150,000)

UpsideとRed Herringはシリコンバレー生まれのこの種の雑誌の草分けです。特にRed Herringはシリコンバレーのイノベーション・モデルの発掘と紹介では定評があるそうです。

WiredとFast Companyはニューエコノミー時代のライフスタイルを提案しており、前者は最先端技術の紹介、後者はミドル向けとして人気があります。 Industry StandardとBusiness 2.0はともに98年に後発で参入した雑誌です。インターネット戦略を考えるマネジャー向けの雑誌で、“変革者transformers” (Business 2.0) や “E戦略家e-strategists”(Industry Standard)を対象にしています。

こうした技術雑誌は、この5月にはFortune誌が上記の雑誌と同様なeCompany Nowを創刊したり、後発の2誌は今秋欧州版を発行するなど活発な動きがあります。この背景には、例えばIndustry Standard誌の広告費が1,000部当たり$139とForbes誌の$86に比べて1.6倍になる点と、広告出稿量が増加している点にあるとエコノミスト誌は見ています。

さて、活気のある技術雑誌ではありますが、先行きに関しては問題があります。先ず、既存のビジネス誌が技術分野に注力してくることが予想されます。もっと本質的なことは、Eビジネス技術が普及してくると、情報自体が陳腐化してくる恐れがある点です。これに比べると、広告量が多くなりすぎて読者が不満を持ちはじめているといわれている現状などは嬉しい悲鳴といえますね。

ところで、asktakaは上記の6誌のうちFast Companyは文字媒体として購読していますし、ホームページもチェックしています。また、WiredとUpsideは配信されたメールとウェブを閲読しています。だが、その他の雑誌までは手が回りませんでした。

最近翻訳されたインターネットやEビジネス関係の本を見ると、1年以上前に出版された本もあって目を疑います。ご承知のように、この世界はドッグイヤーといわれるほど時計が早く回るのです。半年前いや3ヶ月前の出来事は もう一昔前になっています。こんな時代に翻訳本を読んでいたのでは古本を読んでいるのと同じです。

皆さんも上記の6つの雑誌を閲読して、直に米国の動きをキャッチしてみませんか。asktakaのお薦めは、Red Herring、Fast CompanyそしてIndustry Standardの3誌です。



お知らせ:昨日の話題は「トップの世襲問題」 でした。



2000年6月17日(土)〜18日(日)

「トップの世襲問題」

最近、注目されていた世襲問題にけりがついたケースが目に付きます。例えば、松下電器やトヨタは創業者の一族がトップにつく可能性はなくなったとみられています。一方、HOYAは会長の長男が社長に就任するとのことですから、世襲ということになります。

そもそも世襲のどこが悪いのでしょうか。所有と経営の分離やコーポレート・ガバナンスの問題はあるにせよ、次の条件下では世襲に反対する理由はないと思います。つまり、

1.一族の後継者の能力が他の候補に比べて抜きん出ている

2.創業の理念、カルチャーの下に求心力が不可欠

3.環境が安定しており、トップの舵取りがなくても順調に経営できる

この3点でしょうか。

先ず、一番目は全く問題はないですね。二番目は何らかの危機的状況下にあるということでしょうから、創業家という納得性が必要かもしれません。最後は、誰がトップになっても同じことですから世襲でもいいということになります。

つまり、環境が激変しトップのリーダーシップとマネジメント力が求められる時期には、他に人材がいれば世襲がベストとはいえないということになります。この意味では、トヨタや松下電器の決断はさすがというべきです。

ところがHOYAの場合はどうでしょうか。光学ガラス最大手で連結売上高は約2,000億円、輸出比率30%、外国人持ち株比率27%、ROEは11%強という優良企業です。鈴木哲夫会長は実質的な創業者として、光学ガラスからエレクトロニクス製品にまで多角化した功労者だけではありません。ドラッカーに心酔し、欧米流の経営手法の導入に熱心で、企業統治に関しても一家言 持っている方です。何せ三和銀行の社外取締役をおやりになるくらいですから。

こうした方でも若返りと称して、41歳の長男(現専務)に社長を譲ると決断したのですから、世の中の人は不思議に思ったのも無理はありません。もっとも現社長も義弟(創業者の息子)ですからもともと同族企業でした。だが、会長は欧米流の経営者だと思われていただけに意外に受け止められたというわけです。

ただ、考えてみると、HOYAは単独売上でみて約1,200億円、従業員数約2,500人の会社です。asktakaは、やはり、この規模の企業ではまだ実態は中小企業の域を出ていないと思うのです。今後のグローバルな展開に必要なトップの器を持つ人材が社内には少なく、親の贔屓目ではなく長男が次期社長として適任だったのではないでしょうか。

もし世襲批判があったとしても、それに対する有効な手立ては後継者が立派な業績を残すこと以外にはありません。asktakaは密かに次期社長にエールを送りたいと思います。そして多くの世襲社長にも声援を送りたい気持ちです。



お知らせ:昨日の話題は世界で最も優秀な日本のミドル?」 でした。



2000年6月16日(金)

「世界で最も優秀な日本のミドル?」

日本のミドルマネジメントは世界一優秀だという話があります。asktakaには、どうもこの話はだらしがないトップに対する評価の裏返しに思えてなりません。

最近この話を耳(正確には目)にしたのは、一橋の米倉教授が書いた『ネオIT革命』という書物の中です。今後の日本にとって必要な7つのパラダイム・チェンジの一つに、こうした話が出てきます。

米倉氏のいいたい点は、優秀なミドルをリストラの対象にせずに、チームのヘッドとして力を発揮できるようにすることが肝要だということです。それにはトップが、日産のゴーんさんのように形式知で明確になすべきことを示すべきだというのです。

asktakaも最初はこの説になんとなく納得していました。だが、よく考えてみると、本当にそんなに優秀かなと思うのです。確かに諸外国に比べて平均値は高いかもしれません。しかし、組織の中で埋没し、出る杭は打たれ、“能ある鷹”も爪を隠しつづけて、才能が鈍化している可能性は高いのではないでしょうか。

右肩上がりの成長期とバブル期を通じて、現在のトップやミドルは戦略眼が不在のまま勢いで仕事をしてきた点は否定できません。バブル後の失われた10年は、政府の失政にも原因はあったと思いますが、実は“優秀なミドル”が機能しなかったことにも一因があると思われます。もちろん環境変化に対応して、リーダーシップを発揮して戦略転換ができなかったトップに問題は大ありですが。

こうした実態をみると、例え日本のミドルが潜在的な能力があり、平均的には優れていても、21世紀の最初の10年に必要な能力を持っているとは思えません。つまり、チームのリーダーとしての戦略眼と変革者としての実行力です。

もともと戦略といっても、業界横並びで仲良しグループを形成していた大半の企業にとって、競争戦略がベースとなる事業戦略はほとんど無きに等しい ものでした。この点は昨日の話題で引用した“それならわが社も同じ製品をもっと安く出そう”“もっと性能を上げたものを出そう”という言葉が的確に実情を示しています。asktakaには、日本のミドルの競合とまともに対峙して戦略を創造する力は、甘く評価して及第点すれすれではないかと思えます。

また、自分のチームを変えるには、ビジョンを示しメンバーとそれを共有することが不可欠です。今、米国ではトークショーという手法が定着していますが、こうしたスキルは“ニコポン”よりも効果的であることは確かです(99年10月16日〜17日付け今日の話題「企業の現場でのトークショー」 を参照)。どうもチームを変革し、やる気を起こすやり方も米国企業に遅れをとっていることは確かです。

日本のミドルが世界一優秀だといえるのは、トップに期待せず上記の二点を黙って実践した後だと思います。asktakaは実は未来のミドルに期待しているのですが、ミドル達は自らを変革できるのでしょうか。



お知らせ:昨日の話題は「台湾半導体産業の成長の秘密」 でした。



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