これまでの話題(99年12月後半)

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1999年12月30日(木)〜31日(金)

「2000年度の1%成長は実現可能?」

政府経済見通しによると、来年度のGDPの実質成長率は1.0%とのことです。これは当初見通しとしては、99年度の0.5%に次いで過去2番目に低い数字です。堺屋経企庁長官は2000年の1%成長に自信を持っているようですが、この実現性を見てみたいと思います。

週刊東洋経済のエコノミスト25人に対する「2000年景気アンケート」によると、来年度のGDPの実質成長率は単純平均で0.9%となっています。最高はドイチェ証券の水野温氏氏の2.2%で、最低は三和総研・嶋中雄二氏のマイナス0.6%でした。

水野氏が強気の予測をした背景は、設備投資の底入れ、外需の活発化にょる効果、家計の所得環境の好転、この三点でした。一方、嶋中氏の弱気見通しは、円高・原油高のマイナス効果を勘案した結果です。

昨年の同じアンケートで実質GDP成長率の伸びを0.5%(最近の政府見通しは0.6%)と読み、ほほ的中すると思われるのはさくら証券の宅森昭吉氏です。同氏の来年度の予測は、1%成長で期せずして政府見通しと同じ結果となりました。宅森氏予測の背景として、個人消費や民間設備投資の穏やかな回復をあげています。

ところで、政府の1%成長見通しの背景は、控え目ですが民間設備投資がマイナスから前年比1.4%とプラスに転じること、公共投資が前年よりややプラスに見ている点が注目されます。

一方、日経のNEEDSの日本経済モデルによる試算結果は、実質で1.2%と政府見通しの達成を裏付ける形となりました。三年ぶりに民間設備投資がプラスに転じ前年比4.4%増と予測しています。

しかし、公共事業予算は前年並みだとしても、地方の財政難のため消化できず実質的には公共投資(公的固定資本形成)は前年比マイナス7.4%と、こちらは三年ぶりのマイナスになるそうです。ただ、GDPに占める民間設備投資は17%ですが、公共投資は8.3%と約半分なのが救われます。ちょうど相殺されて、ややおつりが来るという感じですかね。

こうして来年度のGDPの成長率見通しを概観すると、民間設備投資をどう見るかがポイントとなっていることにお気づきでしょう。政府の経済見通しでも、“官需から民需へバトンタッチ”、つまり自律的な景気回復を想定しています。

私は来年度の実質GDP成長率は、よくて1%、最悪の場合0.5%前後もありえると見ています。1%成長が達成できる条件は次の通りです。

つまり、2000年1−3月期の実質GDP成長率がプラスとなり(いわゆるゲタがはける状態)、かつ円高によるマイナス効果が軽微な場合です。更に、半導体関連など一部に力強さが見られる設備投資が、どこまで他に波及するかがポイントです。

もちろん民間設備投資のうち情報化投資は活発でしょうが、さまざまな改革が穏やかに進行していますから、短期的な景気にはマイナス効果が生じます。この結果、全体の設備投資は迫力に欠ける結果となる点が気になりますね。

上記の条件をクリアできない場合は、0.5%前後の成長率となると思われ、自律的な景気回復にはほど遠い状況だといえます。ただ、NRIの植草氏が指摘しているように、株価上昇・下落を追いかけるようにGDP成長率は増減しています。この春からの株価上昇が真の景気回復の前触れであるとすれば、1%前後の成長率は期待できそうですが・・・・。

いずれにしても、日本経済がゼロ成長台を超えて、潜在成長率2%に達するには、政府も民間もまだやるべきことが山積みです。何をすべきかについては、新年になってからおいおい述べてみたいと思います。


<ご挨拶>

10月からスタートした本ページも、やっと更新のペースがつかめてきました。何かと行き届かない点もあったかと存じますが、ご愛読いただき有難うございました。来年もよろしくお願い申し上げます。皆さん、どうぞよいお年をお迎えください!


1999年12月29日(水)

「99年のビジネス・キーワードは“FOCUS”」

昨日はasktakaの会社で提案した98年のビジネス・キーワードについて述べました。今日は、1999年のキーワードを振り返ってみたいと思います。

今年のビジネス・キーワードは“FOCUS”でした。つまり、それは次の5つの言葉の頭文字をとったものです。

Focus Dominant(フォーカスした事業、セグメントでドミナント)

Operation Control(戦略推進マネジメントの強化)

Customers Binding(顧客囲い込みの推進)

Upper Middle Revitalization(部長クラスの活性化)

System Remodeling(ビジネス・システム再構築)

先ず、F、C、Sについて説明しましょう。総合商社、総合電機メーカーなど、いわゆる総花的事業展開の時代は終わりました。グローバルな競争環境の中で自社のポジショニングを将来にわたって確立するには、中長期的には総合2位、3位などのフルライン型よりも、強い分野をいくつ持つかが重要です。その方が収益力や資産効率がよいからです。

上述した点は、製品・事業、市場あるいは顧客、ビジネス・システムの3次元で示される事業領域、ドメインの設定に帰着します。具体的には、

1.どのような製品や事業を
2.どのような市場や顧客に対して
3.どのようなビジネス・システムで提供するか

この3つの再構築を意味します。この際、単に製品や事業を絞込むのみならず、顧客や市場の絞込み及びビジネス・システムの革新を実現することが重要です。これより情報技術を用いた一層の顧客囲い込みと企画・開発、生産、物流、販売チャネルを含むマーケティング、サービスなど最強のビジネス・システムの構築を目指すべきなのです。

なお、フォーカス・ドミナントは短期的には、製品、エリア、顧客などの重点セグメントを絞って、マーケット・シェア向上を狙うことを意味する点に留意して欲しい。つまり、中期的には全社システムの革新を目指すとともに、短期的には局所戦で業績拡大を図るという遠近法マネジメントの視点が重要です。

次に、上記を着実に推進するためには、O、Uが必要です。つまり、

1.戦略推進をモニターし、市場や環境変化に機敏に対応する   マネジメント・システム(オペレーション・コントロール)の確立
2.事業部長並びにマネジャークラスの戦略思考、戦略マインド   の育成強化

この2点が不可欠なのです。これらの直感的な意味は明快だと思いますので説明は省略します。

以上、今年のキーワード“FOCUS”の意味を概観しました。2000年3月期は増益企業が増加しそうです。しかしながら、多くの企業は近視眼的で画一的な日本的リストラで増益になるのが気になります。

ただ一部にしろフォーカス・ドミナントと抜本的なビジネス・システムの見直しによって、次のステップが見えてきた企業群が存在する点が救われます。

皆さんの会社はどちらのタイプでしょうか?もちろん後者ですって?それは素晴らしい!asktakaは素直にエールを贈りたい気分です。


1999年12月28日(火)

「“GOOD”カンパニーとは?」

asktakaの会社では、毎年、“今年のビジネス・キーワード”を年賀状などでご案内しています。もうすでに2000年のキーワードは決めましたが、過去2年のそれを振り返ってみましょう。先ず、今日は98年のキーワードについて述べたいと思います(明日は99年です)。

98年は97年春の消費税増税をきっかけとする景気後退の年でした。その前兆が97年夏以降に現れ、11月には山一証券が破綻し年末には東食が会社更生法の適用申請するなどの暗い話題が多く、翌98年を暗示していました。

こうした環境の中で、98年は“GOOD”を日本企業のビジネス・キーワードとして設定しました。つまり、

Global Standard(経営のグローバル・スタンダード化)

Open(組織、技術、情報のオープン化)

One to One (ワン・トゥ・ワン対応のマーケティング)

Domain Management(事業ポートフォリオのバランス)

の頭文字をとったものでした。

先ず、経営のグローバル・スタンダード化については、以前から時々このページでも触れているので、あえて説明の必要はないと思います。

次の、組織、技術、情報のオープン化は、

1.タスク志向のオープンな組織並びにネットワーク型組織
2.技術や規格のオープン化
3.タイムリーな情報の開示

この3つを意味していますが、オープンという切り口で取り組むべき課題 を述べたものです。

三番目のワン・トゥ・ワン対応のマーケティングは、インターネットを活用した顧客囲い込みの試みです。インターネットにより顧客1 人1人の好みに合った情報を提供することにより、一層優良顧客への 拡販を目指すものです。

最後の事業ポートフォリオのバランスとは、成熟市場向け製品・サービス群と成長市場向けとの組み合わせが適切かどうかを見るものです。具体的には、本業あるいは中核事業と成長余力のある新しい事業(製品)群との売上、利益、キャッシュ フロー等の構成比を指標にして判断します。

つまり、過去3年から5年以内に参入した新事業の売上等に占める比率が一定以上で(例えば 30%)、かつ中核事業の利益、あるいはキャッシュフローが適正な水準にあれば、バランスがよいと考えます。

こうした事業ポートフォリオをバランスよく保つには、ドメイン・マネ ジメントが不可欠です。それは新事業開発あるいは新製品開発と既存事業との間の資源配分並びに投資評価(と意思決定)問題に帰着します。事業ビジョン あるいは事業イメージの明確化と投資評価システムの定着化、この2点がドメイン・マネジメントには不可欠なのです。

以上が98年のビジネスキーワード“GOOD”の意味するところです。自社の置かれた環境に照らして、どこから手を付けるべきかを考えて着実に実行してほしいと願っていたのですが、まあ日本企業の達成度は50点というところでしょうか?

皆さんの会社の“GOOD”カンパニー度はいかがですか?


1999年12月27日(月)

「取締役会の改革」

執行役員制度を導入する企業が増加しています。コーポレート・ガバナンス制度改革の一環として、取締役会改革の一手法として認知されてきたことの表れといえます。しかし、執行役員制度の導入が、一部では形式的に行われているように思われます。

商法上定められている取締役会の機能は、意思決定と執行の分離による取締役会の意思決定機能の強化並びに監督と業務機能の分離による取締役会の監督機能の強化、この2点です。執行役員制度の導入は、この2つの改革を狙っているものです。

確かに、取締役と執行役員とを分けることにより取締役の数は減少し、取締役会での議論が活発化する環境は整います。しかし、問題の本質は、いうまでもなく取締役及び取締役会の中身にあります。

日本の企業は、常務会や経営会議といった名称で役付役員による実質的な意思決定機関を置いているケースが多いのです。執行役員制度は、これまで常務会などに参加せず意思決定に関与してこなかった平取締役を、業務執行に専念させることになります。その際執行役員という名目で、取締役を離れた人々を処遇するという制度といえます。つまり、これまでの常務会メンバーのみが取締役として残り、従来通りのやり方で取締役会を行っていたのでは、何も変わらないことになります。

幸い執行役員制度の導入に伴い、多くの企業は様々な改革に取り組んでいます。だが、更に取締役会を改革してマネジメント力を強化するには、次の5点を実施することが望まれます。

1.全社的な、戦略的視点から意思決定できる人材を取締役に選任
2.社長あるいは代表取締役をチェックできる人材を選任
3.取締役会におけるデータあるいは事実に基づく活発な議論
4.取締役会の意思決定をサポートする参謀の強化
5.指名委員会、報酬委員会の設置による取締役人事・報酬の透明性の確保

1、2に関しては、社内から取締役を選任するには、全社的な観点から戦略的意思決定が出来る人材を育成することが前提となります。社内に人がいなければ、社外に人を求めるべきでしょう。

3、4は会議体のあり方の問題です。日本企業は一部を除いて、会議の数は多いが会議下手です。この原因は、議論の叩き台となる資料づくりと建設的な討議のやり方にあると思います。これらの点を克服するための更なるトレーニングが不可欠です。

5については、トップの人事権に関わる問題だけに、ことは簡単ではありません。しかしながら、指名委員会にせよ報酬委員会にせよ、設置することによるメリットは多いと思います。つまり、人事の公正さと、業績連動報酬の場合の評価の客観性が確保されるからです。

いずれにせよ、日本企業の取締役会改革は道半ばです。ソニー型、東芝型、米国型など、どのタイプを参考にするにせよ、成功するかどうかは人次第だと思います。変革の時代に求められるのは、これまでのカルチャーを変化させる腕力と戦略眼をもつリーダーです。このような人を得るかどうかが、真の改革を具現化する分かれ目となるのです。

このような観点から、スタンフォード大の青木昌彦教授が引用している、次の米国の経済学者フランク・ナイトの言葉をかみ締めるべきだと思います(「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス」(12月−1月/2000)の巻頭言より)。

つまり、“高次のコントロールの依拠する知識とは、問題そのものの具体的な知識ではなく、その問題を取り扱う人の能力に関する知識である”。 けだし名言であるとasktakaは思うのですが、いかがでしょうか?


1999年12月25日(土)〜26日(日)

「eコマースとデリバリー」

eコマース(電子商取引)によってビジネス構造が大きく変化しようとしています。特に重要なのは、デリバリーが中核能力としてクローズアップされる点です。ピーター・ドラッカーは、最近の論文の中でこのように指摘しています。

ご承知のように、eコマースの世界ではベンダーがどこに位置していようが関係無いのです。そして、ソフトウエアや株取引などはデリバリーの問題は生じません。パソコンのメモリーの中に保存しておけば済むからです。しかし、物的な財の場合は、商品が届かなければ購買行動は完結しないので、デリバリーが重要です。

例えば、本の場合をみてみましょう。Amazon.comは世界最大のブックセラーを標榜していますが、それは売上レベルではなく取り扱い書籍量(在庫量)と全世界をカバーしている点をいっています。

ちなみに、売上からみればAmazon.comは1,000億円強(約10億ドル)です。紀伊国屋書店の売上が1,130億円、丸善の売上は99年3月期で約1,300億円でそのうちの57%、740億円が書籍売上ですからね。

eコマースでAmazon.comが世界最大のブックセラーたる所以はデリバリー・システムにあります。米国内では注文した翌日には配達されますし、日本から発注しても金曜日に注文して早くて翌週の火曜日に届いたこともあります。また、私のようなせっかち向きに発送のプロセスをWeb 上で確認できるのも便利です(ただコスト削減ゆえか、以前に比べてデリバリー情報が粗くなりました)。

一方、今米国で急成長中のeメール・セラーとして新車販売が注目されています。その中でも99年1月に創業したCarsDirect.comの躍進には目覚しいものがあります。すでに99年7月には全米でトップ20に入るディーラーに成長しました。全米50州のうち40州をカバーし、 毎月1,000台ベースで販売するまでになりました。

この分野はオート・バイ・テルやカー・ポイント・コムなど有力な先発企業が存在しています。こうした環境下でCarsDirect.comが頭角を現したのは、デリバリー・システムが優れているからです。

配達日を保証し品質管理されたサービスがCarsDirect.comの差別化ポイントなのですが、それは既存の1,100のディーラーと契約したことにより実現したものです。

ところで、日本国内を考えてもeコマースで成功するには、デリバリー・ネットワークの構築が欠かせません。それには、

1.自前でデリバリー網を構築
2.宅配便業者のネットワークと提携
3.CVSを商品ピックアップ拠点として活用

この3つ方法があります。しかし、どこで他社を圧倒するかは工夫次第で、独自のコンセプトが必要です。

いずれにしても、“製造したものを売る”時代から“デリバリーできるものを売る”時代へと変化していきます。デリバリーを制した企業がeコマース時代の勝者となる日が到来することは間違いありません。まだ皆さんの会社も、eコマースで勝ち組になる可能性はありますよ!



お知らせ:昨日の話題は「成長率と景気の実感」でした。このページの先頭にある「昨日の話題」をクリックすればご覧いただけます。


1999年12月24日(金)

「成長率と景気の実感」

来年度の経済成長率、つまり年度平均成長率(以下成長率)が話題になる季節となりました。近々、各機関の来年度の成長率見通しについて述べる予定ですが、その前に成長率の“ゲタ”と景気の実感の話をしたいと思います。

よく知られているように、成長率は前年度の1−3月期の成長率によって増減します。今年度の成長率は昨年度の最終四半期、99年1−3月期のそれが高かったので、今年度の四半期毎の成長率がゼロでも0.6%成長を達成します。

昨年度の1−3月期の成長率が高かったのは、昨年秋の史上最大の補正予算が寄与しているからです。これによって、今年度のプラス成長は保証されたわけで、真空総理や経企庁長官が大いばりでプラス成長を公約するのも当然です。

今年も相当大型の補正予算が組まれ、来年度のゲタを高めようとする魂胆がみえみえです。だが、このような見せかけの成長率だけで景気がよくなるわけではありません。

現在の景気は、公共投資と住宅減税による住宅建設効果でもっているようなものです。依然としてGDPの6割を占める消費支出や企業の設備投資は低調です。それは当然で、先行きの需要の見通しが悪ければ企業が投資するわけがありません。

ところで、私は景気の実感を街頭ウオッチングによって、肌で感じるようにしています。つまり、夜の銀座や繁華街の賑わい、繁華街でのタクシーの待ち具合、貨物車等営業車の通行量(道路の込み具合)、デパートの人出などなどです。

私の実感では夜の街はまだ元気がなく、デパートなども一時のお歳暮商戦を除いて実需は低調のように思われます。まだ消費者の財布の紐は固そうですね。

ではどうすればよいのでしょうか?簡単に言うと、所得税の大減税と企業の情報化投資の優遇措置ではないでしょうか。財源はどうするかですって?人のいないところに橋や道路を作ったりしないで、そしてバラマキ行政を止めれば何十兆円は捻出できますよね。

ちょっと暗い話を先にしましたが、工作機械や産業用ロボットの受注が増加傾向にあったり、半導体関連が動き出しています。それから、企業の増益基調が見込めますから、来年の夏以降はもっと経済全体に好循環が生まれそうな予感がします。

そうそう個人として景気回復に寄与する方法について述べることを忘れていました。お金持ちの皆さん、低金利時代にここは思い切って消費しましょう!皆さんのように能力があれば、先行きの不安もあまりないでしょうから。(笑)


1999年12月23日(木)

「世界の孫さん」

最近の欧米ビジネス誌に登場する日本人の頻度をみますと、ソフトバンクの孫氏が他を圧倒しています。昨日届いたタイム誌(12月27日・1月3日合併号)にも孫氏が登場していましたし、ビジネスウイーク誌やフォーチュン誌などにも何かというと取り上げられています。まさに世界が孫氏をソニーの盛田氏亡き後の日本を代表する経営者として認めているわけです。

思い起こせば、私が孫氏の存在を知ったのは今から20年ほど前でした。当時はソードやシステム・フォーミュレート(確かこのような社名だったと思いますが)などパソコンのハードのベンチャービジネスが注目されていました。現在はこの2社を含めてその頃のハード系の新興企業は、ほとんど姿を消したことは皆さんもご承知だと思います。

こうしたパソコンの勃興期にソフトウエアに着目したのが孫氏とアスキーの西氏でした。孫氏はソフトの流通を、西氏はBASICと出版を手がけたのです。 現在でも生き残っている企業はソフト系だけだった点は興味深いものがあります。いずれにしても、この二人が日本におけるパソコンの普及に果たした役割は多大なものがあると思います。

ところで、私は孫氏が現在の地位を築いたのは、彼のマネジメント・スタイルと戦略眼(そして運)にあると思います。そこで、欧米のビジネススクールに習って、孫氏の成功要因をコンセプチュアルにまとめると次のようになると思います(B−Schoolsに習ってということは、実態はともかくasktakaのロジックに従って概念化するということです)。

1.近未来のビジョンを描く
2.ビジョンに従って事業領域をデザインする
3.ドメインを拡張、深化させるためマネジメント手法を駆使する(M&A、ヘッドハンティングなど)
4.キャッシュフローベースの計数管理を徹底する

こうして見ると、孫氏はきわめてオーソドックスなマネジメントを行っていることが分かります。そういえば、今話題のユニクロで知られるカジュアルウエアのSPA(製造小売アパレルブランド)、ファーストリーテーリングの柳井社長も山口宇部の地元経済界では、変人、奇人といわれています。しかし、柳井氏も世界標準のマネジメントを行っているだけです。

つまり、トップのリーダーシップの下に世界に通用するマネジメントを 実行していることが成功の鍵なのです。タイム誌がコメントしているように、孫帝国のインターネット財閥が今後のビジネスモデルになるのか、今後の動向に注目したいと思います。


(余談)タイム誌はパースン・オブ・ザ・イアーとしてAmazon.comのJeff Bezos氏を選びました。企業間電子商取引(B to B)以外ではトップの売上をあげたのですから、選ばれて当然ですね。


1999年12月22日(水)

「99年の“サイバーテク”ベスト&ワースト」

年末ともなると、毎年来年の展望や今年の総括が行われます。私は日本の雑誌が特集するGDPを含む日本経済予測や米国ビジネス誌のさまざまな総括を楽しみにしています。今日は米タイム誌の最新号(12月20日号)から、“サイバーテクノロジー”分野の「99年ベスト&ワースト」を紹介しましょう。

先ず、ベスト10は次の通りです。

1.ebay
2.PALM ��
3.MP3
4.SIM CITY 3000
5.QUAKE ��
6.EVERQUEST
7.GOOGLE.COM
8.OMIKRON
9.LINUX
10.THE ONION

トップのebayは、毎日25万アイテムが追加され150万人の人が参加するインターネット・オークションのサイトです。e−bizの台頭を象徴する高株価でも注目を集めました。

2位は携帯情報端末PALM PILOTのインターネット版です。私もPALMを使い始めてほぼ3年になりますが、米国のエグゼクティブはほとんどが使っているという代物です(どちらかというと西海岸の方が使用率が高いと思います。私は現在WarkPad c3(OEM製品でIBMが販売)と以前のPALM PILOT Proを使っています。

3位のMP3はつい最近まで話題になっていた音声圧縮技術で、インターネットなどでデジタル音楽を一層楽しめます。

4位から6位と8位は話題のゲームですが、6位のEVERQUESTはソニーの関連会社の3Dネットワーク・ロールプレーイングゲームです。 それから7位は検索エンジンのGOOGLEです。検索のしやすさを売り物に、現在人気上昇中です。また9位はLINUXですが、これは説明不要でしょう。

10位はThe ONION(www.theonion.com)です。今アメリカでもっとも注目されている週1回更新するニュース・サイトです。マン・オブ・ミレニアムに死神(Death)をあげているなど、随分ホットな記事がありますね。

なお、ワーストは世界中に悪さをしたウイルスの“The MELISSA”です。これも説明の必要はないと思います。

こうして“サイバーテク”のベスト10を見ると、近未来のサーバー社会を予感できます。どう予感するかですって?それは、皆さんの想像力次第ですよ!


1999年12月21日(火)

「平等教育と成果重視の報酬制度」

米国の労働市場が2極化していることはよく知られています。つい何週間前のビジネスウィーク誌にもこの話題が取り上げられていました。だが、日本で能力主義や成果重視の報酬体系に移行するとなると、なかなか奥の深い問題があります。

米国では、一部の有能な社員を厚遇して他の社員の賃金を抑制しています。その結果が賃金統計にも現れていて、失業率は4%前半でほとんど完全雇用状態なのですが、賃金の上昇率は低下しています。

これは日本の(一昔前の)ように全社員の賃金をほぼ一律に引き上げるやり方とは対極にあります。しかし、米国の方が利益を確保するには好都合なシステムのようです。

もともと米国では、子供の頃から選別されることに慣れています。IQが130以上で何か固有の能力を持つ子供たちに英才教育を行うシステムが定着しています。日本のように日教組が偏った平等教育を行っている国とは大違いです。

一番大事なことは、米国では日本のように能力に嫉妬したり足をひっぱることが少ない点です。子供の頃から、才能を天から与えられたものとして素直に認める風土ができていますからね。

確かに、かの福沢諭吉先生も“天は人の上に人をつくらず”とおっしゃっています。しかしながら、平等に生きる権利や教育を受ける権利があるのと、人に授かる能力は別物です。この点を無視して画一的な平等主義、平均主義による教育は間違っていると思います(今になって軌道修正する兆しがあるようですが)。

ところで、皆さんもご承知のように、企業社会でもこれまで同期横並びであまり評価に差をつけてきませんでした。その結果、ほとんどシニアになるまで成果にかかわらず年俸に差がない世界でした。この背景には、戦後の進駐軍の方針による民主教育、平等教育があった点は否めません。戦前は能力に応じた報酬体系だったですからね。

こうした戦後の50数年の歴史を経て、今日本は資本主義の原点に戻り、労働市場においても競争原理を取り入れる動きが活発です。そして成果主義あるいは真の能力主義報酬体系が導入されようとしています。

私はこのような動きが、単に企業側の最適化行動の結果のみに終わることに危惧を感じています。なぜならば、消費者側、労働者側も最適な行動を選択する必要がありますが、まだその環境が整っていないからです。

つまり、サービス業や起業家に対する社会的評価を高め若者や中途退社組の就業機会を増やしたり、率直に能力を認める社会風土を作り上げるといった、時間のかかる環境整備が残されています。また、社内で有能社員とその他の社員が進路を自由に選択できる人事諸制度も十分とはいえまぜん。

戦後の教育をリセットして、新たな価値観を定着させるには時間がかかるのは当然です。だが、日本国民全員が上述した戦後教育の問題点を認識して、日本発の新時代の価値観、システムを創出するぐらいの気持ちをもって環境整備に取り組んでほしいと思うのです。


1999年12月20日(月)

「経営のプロを育成するには」

かっての日本のビジネス社会では、理論や議論を書生臭いといって敬遠してきました。今でもこのような風土が残っています。経営のプロが育たないのはこうした背景が一因ではないかと思います。

事実、マネジメントの勉強をしても実務には役に立たない、と思っている向きが意外に多いのです。何故こうなったのか。大学教師の現実感覚欠如に基づく理論偏重、ビジネスの場での現場偏重など、幾多の原因が考えられます。

米国ではビジネススクールがマネジメントを学ぶ機関として機能しているし、そこでの勉強の成果が直接年収に影響します。ビジネススクールで習得したマネジメント知識や戦略発想がビジネスに役立つものと認識されているのです。言い換えれば、ビジネス書で学ぶことが実益を伴います。

だが、グローバリゼーションとメガコンペティションの中で、21世紀型企業として生存していくには、これまでの現場重視・戦略不在型経営、効率重視・非創造型経営、階層的集権組織・非水平的分権組織から脱却しなければいけません。つまり、(1)戦略重視(2)創造重視(3)分権的ネットワーク重視へと移行することが求められます。

ところが、トップのリーダーシップによって改革を実現しようとしても、一部の企業を除いて人がいないのが現状です。事業のプロは存在しますが、経営のプロがいないのです。そこで、経営のプロを育成するために、次の4つのトレーニング方法を提案したいと思います。

1.ビジネススクール活用法

欧米のビジネススクールのエグゼクティブ・プログラムなどに参加させる(ボード入りあるいは執行役員になる以前に)

2.社内コンペ法

モデル企業を徹底的にケーススタディさせ、自社の改革案を提案させる(いわば、マネジメント革新の社内コンペ)

3.コンサルタント活用法

戦略コンサルティング会社による問題解決型戦略研修あるいはコンサルティング・プロジェクトに参加させる(私は戦略コンサルティングの導入が、結果的にトップや幹部育成に効果があると思います)

4.社長体験法

子会社、関連会社の社長を経験させる(1〜3を経て仕上げとして実施することが望ましい)

上記のトレーニングを成功させるポイントは、経営トップ候補の早期選抜体制を確立し、30代の間に敗者復活を含む複数のチャンスを与えることだと思います。

そして、早期に結果を出すには、社内のみの競争原理から脱皮して、思い切ってヘッドハンティングなどにより経営陣に新しい人材を導入することが肝要です。経営のプロは業種を超えて通用することを実感させるには、この手が一番かもしれませんね。


1999年12月18日(土)〜19日(日)

「税制改革について」

2000年の税制改正の大綱がまとまりました。やるべきことが先送りされ、まさに日経社説が指摘していたように「理念なき改正」です。いまだに戦後を引きずっていていいのか、というのが率直な感想です。

そもそも日本の税制は、シャウプ税制といわれるように、憲法と同様に戦後アメリカ主導で制定されたものです。憲法には第9条を盛り込んで、日本が再び軍備を拡張して戦争に走ることがないように、世界に類を見ない平和憲法に仕上げました。

少し乱暴な言い方かもしれませんが、これを経済面から裏付けたものがシャウプ税制です。軍拡の経済的背景となる財閥や金持ちをつくらないことが目的であった点はよく知られています。

所得税は最高50%で地方税15%を加えると65%の超累進課税、相続税は3代で財産を無くすといわれる酷税システムは、このように生まれたのです。なお、法人税・法人事業税・住民税は今年度から合算して実効では40%強まで低下しましたが、97度までは約50%と世界でトップクラスの高率でした。

こうした税制によって、企業はせっせと損金処理できる支出を行い利益を圧縮する行動パターンが定着しました。また、役員報酬にしても上乗せすれば所得税でもっていかれるだけなので、何でも会社経費で処理しフリッジ・ベネフィットを与える仕組みができたのです。

もっとも日本が世界でも有数の貧富の差がない平等国家になったのは、シャウプ税制のおかげだといえます。だが、“負担能力に応じた公平な税負担”も行き過ぎると、成果に基づく報酬とは相容れないのです。能力に応じて報われない不平等が存在する結果となった点は否めません。

こうして考えてみると、税制は日本経済がダイナミズムを損なうことがないように新たな理念に基づき改革されるべきです。高齢化社会に備えると共に、資本主義社会の中で起業家精神を育みジャパニーズ・ドリームが実現しやすい税制を整えることが不可欠です。

理念なき政治家に理念ある政策を求めるのは無理かもしれません。まして官僚に省益を超えて国家百年の計を期待する時代ではないと思います。ではどうすればよいのでしょうか?

国民として考えれば、やはり利益誘導型の政治家を廃し、政権政党の某政調会長のような露骨な小手先のご機嫌取りを見抜き、見識を持って落選させるべきだと思います。

企業としては、大企業の本社をケイマン諸島などタックス・ヘブンといわれる国々や米国の法人地方税のない都市に移転するなどの動きをすれば、少しは政治家も考えるかもしれませんよ。そうした企業を決して白い目で見ないでくださいね。

税制のように政治がらみの話になると、いつも気が重いのですが、政治家の馬鹿さ加減を嘆いていても始まりません。政治家は国民を写す鏡だといいますから、私たち一人一人が変わらなければいけませんね。そして駄目な政治家を一日も早く淘汰する日を祈るばかりです(どうも沖縄タイムで書いているせいか、気の長い話になりました(笑))。


1999年12月17日(金)

「アウトソーシング再考」

最近はアウトソーシングが定着してきて、話題になることも少なくなってきたように思われます。だが、まだ問題は残されています。そこで、今日はこの件を考えてみたいと思います。

アウトソーシングは広義にとらえると、人材派遣を含む業務の外部化を意味します。情報処理や給与計算、採用業務など最近では業務の外部化の範囲も広がっています。ところが、最近アウトソーシングの効果が期待通りでない、という声をよく聞きます。私はその原因は、次の3点に要約されると思います。

1.アウトソーシングの目的、期待効果が不明確
2.業務の流れを改革せず、現状を前提に業務の一部を外部化
3.各機能や各部門毎の判断で業務を外部化
4.コア業務と非コア業務とが不明確なため外部化が不徹底

1に関して、アウトソーシングの目的は、コスト削減あるいは専門度の高い業務の外部化による業務の質の向上、この2点であることを銘記すべきです。専門度の高い業務をアウトソーシングした場合、コスト削減効果は低くなります。例えば「戦略・計画立案機能のアウトソーシング」は、コスト削減効果よりも業務の成果の方が重要です。アウトソーシングの目的と期待効果を事前に明らかにしておけば効果測定の混乱は減少するはずです。

2は現状業務のまま人を社員から外部に代えただけです。従って、社員人件費と外部化費用との差額が削減されるのみなので、業務の全体を見なおさなければ、コスト削減効果は少ないのです。

3の場合、個々の部門では効果が出ても、全体システムからみると、更に高度な情報システムを導入した方が効果的な場合もあります。これを経済学では「合成の誤謬」と呼ぶし、システム工学の世界では「部分最適と全体最適」といっています。

4はコア業務の絞り込みが十分でないため、外部化が徹底されないケースです。コア業務を全体業務の3〜4割に絞り込んで、非コア業務の5割以上の外部化を目標とすることが肝要です。

日本企業の場合、現状では社員数削減には限界がある。そのため、受け皿会社として分社化するか、あるいはアウトソーシング会社への転籍によって本社の社員数を削減することになります。特に、グループ会社を受け皿とする場合、グループ全体では何ら生産性の向上に寄与していない点に注意しよう。

アウトソーシング効果を高めるには、全社の業務システムを分析し、コア業務と非コア業務とを区分した上で、業務全体の流れを改革した新業務システムの構築が不可欠です。その際、自社の競争優位の維持や顧客サービスの向上の観点から、経営資源をコア業務に集中し、業務の流れをいかに改革するかといった視点が重要だと思います。

このような業務改革と新事業創出とが両輪となって、全体での生産性は向上します。真のアウトソーシングとは、この両輪を円滑に動かすための潤滑油であるべきだと思いますが、いかがでしょうか。


1999年12月16日(木)

「事業創造のすすめ」

このところ何年か上場企業の主要な経営課題は、事業の“選択と集中”あるいはリストラ(という名の人減らし)でした。その成果が現れ、2000年3月期は増益企業が増加しそうです。だが、携帯電話やパソコン向け電子部品・材料製造業や元気のよい専門店などを除き、必ずしも増収増益ではなく減収増益基調であるところが気になります。

 そもそも自社の中核能力をベースに事業を絞り込む場合、次の前提がなければ当該事業の拡大は望めません。

1.集中した事業が対象とする市場の成長力がある
2.成長が見込めない場合でも、シェア向上の余地がある

つまり、成熟市場にあり業界の構造変化が進んでいない場合、M&Aを含む合従連衡を行わない限り“選択と集中”は必然的に縮小均衡となるのです。減収増益は、このような個々の企業のミクロ的な最適化行動の結果です。

グループ連結経営を睨んで“選択と集中”を進める際、忘れてはいけないのは、中核事業のシフトです。収益構造パラダイムの変化を踏まえ、事業創造による事業ポートフォリオの再構築が伴わなければ、企業の明日はないのです。

こうした事業創造にあたって、私は次の7つの視点が重要だと思います。

1.成長市場の波に乗る
2.トップを狙えるビジネスを選択
3.ビフォー・アフターサービスのビジネス化
4.サプライビジネスによる周辺分野への進出
5.インストール・ビジネス化
6.流通、決済システムの見直しによる新事業
7.提携・アウトソーシングによるノウハウ活用

1〜6の視点からビジネスの種を探索し、21世紀に向けた事業を創造して欲しいと思うのです。また、これまで新分野進出で失敗した例を見ると、自前主義が災いしたケースが多いようです。ノウハウが希薄な新分野への進出で成功するには、自前主義を廃し、JVや提携などにより外部資源を積極的に活用すべきです。

最近日本でも、渋谷のビットバレーのようにインターネット関連のベンチャービジネスが盛んです。大企業や歴史のある企業に、こうした若手のベンチャー起業家のような動きを期待してはいません。最適な事業ポートフォリオ、つまり新事業を含み中核事業がシフトした事業ミックス、これを踏まえて持てる資源を将来事業に思い切って重点配分するマネジメントが求められています。


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