これまでの話題(2000年9月前半)

[Index8月後半8月前半7月後半7月前半2000年前半] [1999年]


2000年9月15日(金)〜17日(日)

「中古本の革命児“ブックオフ”」

皆さんは、ブックオフコーポレーションという会社をご存知でしょうか。 同社はいわゆる古本屋のフランチャイズ・チェーン(FC)を展開しており、従来の古本屋を生業から事業へと変身させた革命児です。

ところが、ブックオフは出版業界における評判がすこぶる悪いのです。例えば、6月に出た『ブックオフと出版業界』という本の中では、ブックオフは出版業界の“寄生虫”とまでいわれています。何故このように嫌われているかというと、長引く出版不況の中で新興古本チェーンだけが元気がいいからです。

90年代の出版不況も97年からマイナス成長が続き一層深刻になっているのです。出版社の倒産も相次ぎ、書店の閉店・廃業も90年代後半だけで6千店に達するそうです。こうした環境の中で、ブックオフをはじめフォーユー(店名:ブックマーケット)、テイツー(店名:古本市場)などの新興古本屋チェーンは急成長しているので、目の敵にされるのは当たり前かもしれません。

ちなみに、ブックオフを例にとると、は90年に1号店を出店して、95年には100店を超え、更に99年には400店を突破し、今年に入って500店に達していますからね。更に、新興古本チェーンの売場面積は、すでに古書組合加盟店のそれを上回っているようです。

95年に600億円といわれていた古本市場規模も、2001年には1,600億円に達する見込みで、上記の3社のうちブックオフを除く2社はすでに株式公開するまでになりました。そしてブックオフも年内にも公開する予定だそうです。

このように既存古本店が低迷する中で、新興チェーンが急成長したのは、消費者が望む事業の仕組みを構築したからに他なりません。そして更に重要なのは、この事業が利益率の高いビジネスだからです。

つまり、アルバイト店員でも“きれいな古本”を定価の1割で消費者から引き取り、定価の5割で販売する仕組みを作ったのです。これまで目利きが値踏みしながら買い取っていた古本を、誰でも対応できるようにして、かつ8割の粗利益率をえるのですから、いい商売です。

Asktakaが中古本の話をしたのは、単に既存勢力の新興チェーンいじめの実態を述べたかったからではありません。こうした伝統的な業界であっても、事業の仕組みを変えれば成長ビジネスに転換できる点に注目してほしいからです。それから、古本を含む中古品ビジネスの高収益性に注目してほしいと考えているからなのです。

さて、上述した点を参考にして、皆さんの周りに面白いビジネスのタネがありませんか?もしあれば、1ヵ月間ビジネスプランをよく考えて、人に説明できるようにA4で1枚にまとめてみてはいかがでしょうか。明日の起業家は、ここから生まれるとは思いませんか?



お知らせ:昨日の話題は「Big 5系コンサル会社のM&A問題」 でした。



2000年9月13日(水)〜14日(木)

「Big 5系コンサル会社のM&A問題 」

先日ヒューレット・パッカード(HP)が、世界の大手監査法人いわゆるBig 5の一つプライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)のコンサル部門を買収するとの報道がありました。当ホームページのBBSでも話題になっていたので、 皆さんもご存知だと思います。だが、HPの視点はともかく、コンサルティングの立場から見ると、このM&A問題には少しばかり疑問があります。

かってのBig 6、現在Big 5と呼ばれる大手監査法人は、以前からMAS(Management Advisary Service)を提供していました。80年代前半頃 までは、会計を中心にしたシステム・コンサルティングが中心でした。 Asktakaは、これは監査法人が経営の根幹に関わることには問題があるとの暗黙の了解があったからだと思っていました。

というのは、会計を監査する立場の法人が、企業の戦略やポリシーづくりにコミットすることは、客観的な監査の妨げになると考えられるからです。ところが、最近、米規制当局や投資家から「監査が甘くなる」との懸念が出て、一連のコンサル部門の分離・独立の動きが活発化したのです。

主な動きを整理すると、アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)がコンサルティング部門を仏情報サービス・コンサルティング大手のカップ・ジェミニに売却。KPMGはKPMGコンサルティングを本体から分離・独立させ、株式を米店頭株式市場(ナスダック)で新規公開する予定。なお、分離後は米ネットワーク機器最大手のシスコシステムズが全株式の約2割を出資するという。また、アーサー・アンダーセンもコンサルティング部門を正式に独立させ、そしてPwCの今回のHPによる買収の動きです。

上述した通り、Big 5系コンサル会社(部門)は、E&Yのようにコンサルティング会社と一緒になるケースと情報通信関連メーカー系に売却するケースがあります。前者の動きには、Asktakaは全面的に賛成ですが、後者には反対です。

というのは、Big 5系のコンサル会社の場合、システムコ・ンサルティングのウェートが高いのが現状です。そして、その訴求ポイントは、メーカーから中立的だという点にあるのです。日本のみならず、最初からメーカーありきでシステム構築が進めば、それが費用や効果の点で最適とはなりにくいことは自明です。この点は、建築の世界で設計と施工を分離した方が、特命でゼネコンに設計から施工までやらせるよりは費用対効果がいいという話に似ています。

Asktakaは、情報関連メーカーがIBMをはじめとして、戦略的にコンサルティング機能を強化する動きはよく理解できます。しかし、Big 5系のコンサル会社の戦略を考えた場合、メーカーとの合従連衡は、かえって首をしめる結果となると思うのです。

かっては、コンサル会社が株式を公開するとは考えられませんでした。守秘義務を大事にすれば、クライアントの競合企業が株主になることは避けるべきですからね。まさか時価総額至上主義の時代の中で、PwCの幹部が170億ドルのオファーに目がくらんだということでしょうか。

いずれにしても、Wall Street JournalやHerald Tribuneなどを見ても、HPがPWCを買収する話はあくまでも可能性があるというトーンで報道されています。これもHPがリークしたようで、“営業の達人”といわれるフィオリナさんの術中にはまるのかどうか、今後の展開が見ものですね。

Asktakaは、もしかするとBig 5系コンサル会社と外資戦略系コンサル会社の合従連衡の時代が来るような気がします。コンサル業界からも当分目が離せなくなりましたね。Asktakaも皆さんと一緒に高みの見物といきたいものですが・・・。(笑)



お知らせ:昨日の話題は「仏カルフールの10年スパンの戦略」 でした。



2000年9月12日(火)

「仏カルフールの10年スパンの戦略」


今世界第2位のリーテーラー、フランスのカルフールが話題になっています。実は、昨年の3月にAsktakaが台湾で講演した際に、カルフールの幹部が参加していました。台湾の人ではなくて、多分欧州国籍の方だと思いますが、熱心に日本の流通事情を質問してきました。それからまもなくして、日本進出の動きが日本で報道されて、なるほどと納得したものでした。

カルフールは日本でいえば量販店、つまり総合スーパーです。だが、業界用語でいうと、“ハイパーマート(食品スーパーと総合ディスカウントを合体)”と食品スーパーを世界で展開しているということになります。最近同社が話題になっているのは、今年の12月に幕張に日本1号店を出店するからです。そして、今後3年間で30店舗を出店する計画だそうで、ダイエーとの提携も噂されています。

Asktakaがカルフールの日本進出について思うことは、さすが欧州企業の長期的戦略の成果だなということです。カルフールは80年代後半から日本進出に照準を合わせ、アジアに進出しました。89年に台湾に進出したのに続き、95年には韓国に上陸しました。そしてアジア市場制覇の仕上げとして、日本上陸を果たすことになります。何と10年以上かけた世界戦略の結果だといえます。

ところで、Asktakaの知る限り、欧州には10年スパンで戦略を練って、市場の流れを見定めながら、検証に検証を重ね実行する企業が多いようです。例えば、ルイ・ヴィトンやシャネルなどがそうです。

ルイ・ヴィトンは現在の直営店志向、内外価格差是正、品揃えの多様性などは80年代の半ばには日本での戦略を固めました。そして徐々に10年スパンで実現を図ったものです。この何年かで売り出された商品やデザインはの中には、すでに10数年前から試作品が作られていたことは驚きです。同様に、シャネルも男性化粧品の日本進出にあたって、80年代前半から事業化可能性の検討に入り、ほぼ10年の歳月をかけて参入したのです。

もっとも日本企業でも、NECのC&C(Computer & Communication)に見られるように長期的なビジョンに基づく事業展開を行なっている企業も皆無ではありません。しかし、化学や薬品を含むメーカーの技術開発は短期間で結果が出るものばかりではないですから、長期的視点は不可欠です。

Asktakaは、むしろ流通業などの欧州企業が、10年のスパンで着実に戦略を実行していく姿こそ見習うべきだと思います。日本企業の戦略下手は、日本人が“有言実行”よりも“無言実行”を尊ぶ美学があるせいだ、こう説明しても 海外では分かりにくいですね。

ここはビジョンに基づき戦略を高らかに明示(有言)して、10年かけて実行する企業の出現に期待したいですね。企業が“失われた10年”といわれるとしたら、それは経営トップの責任です。この点を世の中のトップは肝に銘じてほしいと思いますね。さて、皆さんの会社の向こう10年の戦略はいかがですか?えっ、一寸先が闇ですって!(絶句するAsktakaでした)



お知らせ:昨日の話題は「ホーム・デポの14のマネジメントの基本」 でした。



2000年9月11日(月)

「ホーム・デポの14のマネジメントの基本」

ホーム・デポは、今や米国を代表する優良企業であることは皆さんもご存知だと思います。すでにこの欄でも何回か紹介しています。今日は『ホーム・デポ:驚異の成長物語』(ダイヤモンド社)より、成功の秘密をみてみましょう。

先ず、急成長の基盤を作ったのは、“世界一のホーム・インプルーブメントのチェーンになる”というビジョンをメーカー、ベンダーに売り込んだことです。今でもホーム・デポは、メーカーとの間に深い信頼に基づく協力関係が築かれています。それは、“たった一つのビジョンを、繰り返し繰り返し、訴え続けた”結果に他なりません。もちろん有言実行で、口出したことを成し遂げる継続的な努力が不可欠です。

こうしたビジョンが実現したのは、ホーム・デポ独自の競合他社を超える長所があったからです。それが次の“14のマネジメントの基本”といわれるものです。

1.見えない壁を意識して、地域・店に権限を委譲せよ
2.権限委譲は“3つの束”から(注)
3.未来の成長を考えて、必要以上の能力のある人材を採用
4.財務上の意思統一をする
5.マンマン・ショウはお断りで、先生になって人にやらせよ
6.トップと自由に話せる「朝食会」
7.アイコンタクトによるバーニー(創業者の一人)のテスト
8.円をぐるぐる回る(360度評価)
9.幹部のつながりを深めよ
10.口で言うのではなく実行して見せよ
11.官僚制を打破せよ
12.最高の人材を採用して、責任と権限を与えよ
13.ひっくり返った組織図(顧客と接する店で働く人々を重視)
14.個人を尊重せよ

いかがですか。この14の基本には、権限委譲と組織運営のコツ、顧客志向の姿勢が見えてきませんか?

Asktakaは、上記の基本は業種を超えて参考になると思います。特に、創業間もないベンチャー企業や成長途上の企業には、多くのヒントが隠されているのではないでしょうか。もし興味がある方は、是非上述した書籍を買って熟読してくださいね。きっと得るところがあると思いますよ。


(注)“3つの束”とは、全社を通じて同じことをやる解釈の余地の無い束(第一の束)、チャレンジを求める事業家根性の束(第二の束)、完全な自由裁量の束(第三の束)のことをいう。これはGEのジャック・ウェルチ会長に教えられたものだそうです。



お知らせ:昨日の話題は「前通産省IT政策責任者のIT礼賛への警告」 でした。



2000年9月9日(土)〜10日(日)

「前通産省IT政策責任者のIT礼賛への警告 」

先日この欄で前通産省電子政策課長、安延申氏の転身の話を取り上げましたが(9月4日付「リボルビング・ドア」)、昨日発売されたばかりの文芸春秋の目次を見ると、同氏の投稿が目に入りました。題して、「“ITのエース”通産省を去るの弁」ということですが、この中で“IT礼賛に躍らされるな”と述べている点が興味深いですね。そこで、この部分をかいつまんで紹介すると次の通りです。

先ず、早い時期にIT革命のメリットを享有できるのは、商社や銀行のように、情報によって付加価値をあげて利益の源泉としている産業だといっています。ITの最大の効果は、迅速にかつ大量に情報を伝達、蓄積、処理できる点にありますから、こうした情報処理と利益が直接結びつかない産業、企業は当面あまりメリットがないと述べています。

そして、“猫も杓子もIT万歳”になったのは、シンクタンクやコンサルティング企業の罪が大だと指摘しています。安延氏によると、こうしたコンサル 会社自体が巨大なIT産業であり、企業のIT化を手伝うシステム・インテグレーション部門の売上が伸びており企業にIT化を勧めているからだといっています。

なるほど、さすがに電子政策課長を勤められた方だけあって、一面の本質をついていることは認めます。しかし、Asktakaは安延氏の主張に全面的に賛成しているわけではありません。

最初のITのメリットの話は、一見常識的な議論に思えます。しかし、この話は、伝統産業がやたらにEビジネスに関わっても、それほどのビジネスチャンスはないという意味では正しいと思います。しかし、ITを活用して企業の構造改革を行うことのメリットを無視していると思います。例えば、サプライチェーンをIT化して、購買・調達、生産、配送などのリードタイムやコストを一層低減することによるメリットは大です。更に、これより在庫が削減されキャッシュフローも改善されます。

もちろん製造業を中心にした伝統産業の中でも、業種や製品構成、企業規模によってIT化の効果の差があることは事実です。だが、高コスト構造にある日本の製造業を変えて競争力を強化していくには、ITの活用、アウトソーシング・機能の外部化の徹底、人事諸制度の改革を組み合わせるしかないと思います。先ずは、効果が実証されているIT化を検討するのは当然のことではないでしょうか。

次に、IT礼賛病はコンサル会社の責任だとする話は、これもある意味では真実だと思います。しかし、Asktakaは、この点に関しては、マスコミや一部の評論家、学者の方がもっと罪は重いと思います。彼・彼女達はコンサル会社やシンクタンクからネタを探してきて、それを鵜呑みにして大げさに書きたてるからです。もしコンサル会社が効果のない手法やシステムを提案したとすれば、自分の首を締めるようなものですから、自ずから自制が働きます。その点マスコミや評論家などは、責任を取る必要がないので気楽に書けるわけです。

ここでIT礼賛病の犯人探しをしても意味がありません。ことの本質は、危機感をもつ日本の伝統企業が、IT革命の恩恵をうけようと躍起になっている点にあるのですから。もっとも、日本企業も米国企業と同様に、新経営手法や新システムに飛びつきやすいという習性も無視できません。特に、日本企業の場合、まだ横並び発想が強いので、競合のA社も導入を検討していると聞けば、早速導入を検討し始めますからね。

確かに、安延氏の言う“IT礼賛に躍らされるな”という言葉は、伝統企業がやみくもにEビジネスに参入しようとする場合は、ぴったり当てはまると思います。しかしながら、ITを活用してビジネスシステムを含む構造的な改革を行おうとする企業には無縁の言葉ではないでしょうか。Asktakaは、むしろ更にITを礼賛して改革のスピードを上げるべきだと思います。そして、ITを礼賛できるほどITを理解できる経営トップの出現を望んでいます。

さて、皆さんの会社のトップのIT理解度はいかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「製造業の弱体化」 でした。



2000年9月8日(金)

「製造業の弱体化」


最近日本の物づくりが弱くなっているという声をよく聞きます。しかし、その論調を見ているとどうも皮相的に思えます。昨日の日経の大機小機 もこの問題に触れていました。その概要は次の通りです。

IT革命と呼ばれる今日、ソフトに比べてハードに従事する人の地位が低下している。ネット関連でわずか数年で大金を手にする若者の姿を見ると、10年単位でしか成果が出ない物づくりに興味を持つ人材が減少している点が懸念される。物づくりに価値を見出せない、物づくりをする企業を起こそうとしない若者がいなくなれば日本の将来は暗い。まぁ、こんな調子でした。

Asktakaは、製造業の弱体化を嘆く前に、先ず何故にそうなったかを考えるべきだと思います。大機小機氏が嘆いている通り、確かに物づくり企業の株価は“極めて低く放置”されています。でもそれは、煎じ詰めれば物づくりでは付加価値を生みにくくなっているからです。この点は工業統計をみれば、一目瞭然で、80年代に比べれば製造業の付加価値は低下しています。この傾向は世界的なので、欧米の製造業は躍起になって、ビジネスシステムを改革しているのです。

一方で、年功的な人事制度に代表されるメーカーの保守的な体質が、若者を引き付ける魅力に欠ける点も否めません。元来物づくりの好きな人間は大勢います。そうした若者がメーカーに行かないで、金融やITコンサルを志望するのは、何もお金のためだけではないはずです。三洋電機の年俸制新入社員の試みのように、ちゃんと若い人にチャンスを与える採用方法を考えれば、志願者は殺到しますからね。

Asktakaが何をいいたいかというと、製造業の弱体化を嘆く前に各企業がやるべきことがあるだろうということです。

先ず、付加価値を高めるために徹底的な業務改革をやるべきです。生産現場での働き手がいないのであれば、思い切った手を打つ好機と考えるべきではないでしょうか。次に、今の世の中で年功序列型人事制度にしがみついている企業は少ないでしょうが、もっと若者のやる気を引き出す仕組みを考えるべきです。最後に、やはり風通しのいい社風を持ち、躍動感のある企業は人気があります。ソニーをイメージすれば分かりやすいでしょう。大部分のメーカーは、こうした社員に新しい息吹を与える社風づくりを心がけるべきだと思います。

もちろん製造業にも業種によって輸出依存度や海外進出度の差がありますから、改革に対する温度差があるのは当然です。しかし、日本の物づくりこそ 最高だといった幻想から離れて、更に物づくり面での優位を築くには、各企業がそれぞれの優位性を生かして変身するしかないのです。

Asktakaは日本の製造業や物づくり企業の将来に期待しています。期待しているだけに、遅々として進まない変革の動きに苛立ちを感じているのです。皆さんの会社では、徐々に変化の兆しはみられますか?



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(31):トム・ピーターズの言葉より」 でした。



2000年9月7日(木)

「今日の言葉(31):トム・ピーターズの言葉より」

今日はエクセレント・カンパニーの著者として、一躍マネジメントGuruとしてスターダムにのし上がったトム・ピーターズの言葉を紹介しましょう(Tom Peters, The Brand Called You, Fast Company, Oct. 00より)

"It's over. No more vertical. No more ladder. Today, a career is a portfolio of projects that teach you new skills, gain you new expertise, develop new capabilities, grow your colleague set, and constantly reinvent you as a brand."

あえて日本語にすることもないと思いますが、トムの言うように、垂直的なピラミッド型の組織も階層もなくなりつつある現在、自分のキャリアをどう作るかを真剣に考えるべきですね。

Asktakaはこうしたキャリアを“ブランド”として捉えたところが、トムの真骨頂だと思います。キャリアとは自分のブランドを確立するための道なんですね。

そうなると、目からうろこで、ブランド・マーケティングの手法がそのままつかえそうですね。つまり、キャリアとは、自分の名前を他者と明確に識別できるほど差別化するプロセスなのです。さぁ、皆さんは何で差別化しますか?



お知らせ:昨日の話題は「“井狩春男のこれは売れる!”を考える」 でした。



2000年9月6日(水)

「“井狩春男のこれは売れる!”を考える 」

エッセイストの井狩春男氏は、書籍の売れ筋を見極める達人としても名高い。知り合いの編集者に聞くと、井狩氏でもやはりハズレはあるようで、絶対に売れると太鼓判を押した本が実際は在庫の山になることもあるようです。

それはともかくとして、Asktakaは週刊ダイヤモンドの“井狩春男のこれは売れる!”を毎週読んでいます。このコラムは、“本らしい本”は売れず、限りなく“商品”に近い本がベストセラーなるといわれる現代を象徴していると思いますね。

出版不況といわれる中で、スキャンダル性、スクープ性、たくましい商魂、この“3つのS”がこれまでは読書とは無縁の人を引き付けて、ベストセラーになるといわれています。従来の読書愛好家向きの“本らしい本”は、財布の紐の締め具合に影響されて、売れ行きが芳しくないのが現状のようです。

井狩氏のこうしたコラムが人気があるのも、“商品”しかベストセラーになりにくい世相を反映していると思います。小難しい書評を読んで本を購入する層は限られていますからね。そこは、“これは売れる、皆が読むよ、さぁどうぞ!”式でいくことに意味があるのです。

この点は、どうも最近の消費者は自分で選択しないで、人や雑誌が薦めるものを受け入れる傾向にあることと無縁ではなさそうです。例えば、一頃話題になったカリスマ店員を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。店員自体が広告塔で、お客は店員の薦める商品を購入するわけです。

最近の日経流通新聞(9月2日付)に出ていましたが、JJやCanCanなどの女性誌が取り上げる鞄や洋服などにお客が殺到するそうです。もちろん日頃から商品情報に目を配った上でのことだとは思いますが、マーケティングの観点から考えるとなかなか面白いですね。

さて、こうした話は経済学では昔から“デモンストレーション効果”とか“依存効果”として知られています。前者は他人の消費行動に影響されて模倣によって需要を増加させるというものです。後者は、消費者が広告宣伝によって欲望を刺激されて、余計なものまで買わされる現象をいっています。

どうも上述した一連の動きは、このような“デモンストレーション効果”や“依存効果”という眼鏡をかけて見ると、また違った発想が浮かびそうです。井狩氏の売れ筋書籍のお話やカリスマ店員、雑誌の効果など、このような視点から見直すとネットビジネスでも応用できそうですね。

さて、皆さんはカリスマ活用型マーケティングかブランド訴求型マーケティングか、どちらがお好みですか?Asktakaは、B2Cビジネスのマーケティングは、案外このへんにポイントがあるように思いますが、いかがでしょうか。



お知らせ:昨日の話題は「バブル期のハズレ本」 でした。



2000年9月5日(火)

「バブル期のハズレ本」


少しくせがあるというか、偏りがありますが、東谷暁(ひがしたに・さとし)という物書きがいます。過度の米国礼賛を戒める論調には定評があり、Asktakaも米国かぶれ病を予防するために同氏の著作には目を通しています。

東谷氏が以前に書いた「バブル期にみるハズレ本の系譜」(『本の話』、99年12月号)が新著『経済再生は日本流でいこう』(洋泉社、00年8月)に収録されています。Asktakaもあまり同業に近い人を文書で批判する趣味は持ち合わせていません。ただ、たまに講演ネタで名前を伏せて、例えば、国際エコノミストの有名なH氏、という形で話をすることがあります。落ちは、だからAsktakaは煽る話はしませんよ、冷静に話を聞いていただき、もし煽る部分があったとしたらその部分は聞き流してください、ということです。

こうしたAsktakaのハズレ本のネタを上手くまとめているのが、東谷氏の上記のペーパーです。酒の席での話のネタに使えますので、主なものをご紹介しましょう(以下敬称は略)。

先ず、長谷川慶太郎はバブル期に煽りすぎて、一時なりを潜めていました。 典型的な煽り方は以下の通りです(以下、引用部分は『日本の時代90年代を読む』(東洋経済、88年)より)。

「これからの世界はいかなる地域紛争についても“武力介入”はありえない」
「日本は“軍事小国路線”をとり続けることによって、また同時に“アジア離れ”を続けるなかで急速に経済力を成長させ、・・・・ついに世界一の“金融大国”に変身を終わった」
「これから5年を想定すれば、・・・おそらくGNPの規模も日本が米国と並ぶ、あるいは若干上回る水準に到達する」

どうですか。今読み返して見ると、とても正気の沙汰とは思えませんね。でも ある会社のトップにこの手の話をしたら、いやな顔をされました。何でもその社長は長谷川慶太郎の大フアンとのことでした。こういう例もあるので、この話の使い方には気をつけてくださいね。

次に、鈴木淑夫は『日本経済・日本はまだ日が高い』(東洋経済、90年)の中で、次のように述べています。

「(89年年末に株価がピークを迎えた後)この下落は一過性である。・・・長い目で見れば、90年代を通じ、80年代に明らかとなった日本経済の国際的な存在が、さらにいっそうはっきりしたものになってくるだろう。・・・日本経済を太陽にたとえるならば、“日はまだ高い”のである」

ご本人は現在政治家に転身していますが、一度この文に対するコメントを聞いてみたいものです。

この他、日高義樹、渡辺昇一、水谷研治、中谷巌などハズレ本の著者は数多いのです。だが、日高、渡辺の両氏は経済が専門ではないので、まあ読む方も話半分と思っているでしょうが、後者の二人は専門家だけに罪は重いと思います。

ところで、経営コンサルタントも煽ってみたり、危機感を訴えることはよくあります。例えば、以前にもこのHPのどこかで述べたことがありますが、有名なO氏なども、80年代前半の頃、1ドル200円を割った場合日本企業は全滅する、なんて威勢のいいことをいっていました。だが、円高自体が原因で倒産した企業は皆無に等しかったことは、皆さんご承知のことでしょう。

Asktakaは、ハズレ本を集めて喜ぶほど悪趣味ではないと思っています。だが、新聞、雑誌の論調や有名著作家にしても、間違えることはあるといいたいのです。要は人の言ったことを鵜呑みにしないで、自分の頭で考え、自分のロジックを組み立てるべきだと思います(この点はAsktakaも両面から自戒しているのですが・・・)。皆さん、そうすれば秋の夜長も一層楽しくなりますよ!



お知らせ:昨日の話題は「リボルビング・ドア」 でした。



2000年9月4日(月)

「リボルビング・ドア」

米国では、官と民の間を行き来する人事慣行を“リボルビング(回転)・ドア”と呼んでいるそうです。そして、よく知られているように、大統領が交代すると民間から3000人程度の民間人が官僚の要職につくとのことです(9月3日読売新聞朝刊「けいざいつうしん・eメール」より)。

このような慣行は、十分なジョブ・マーケットの流動性が確保されていなければ成立しえません。だが、幅広い人材を登用できる上に官僚の世界に刺激を与えることは事実だと思います。

もちろん日本でも官民の人事交流が出向という形で行われています。かって癒着の温床として問題になった、いわゆるMOF担は、大蔵省の銀行局や証券局の事務方の実務面での交流を図るものでしょう。また、通産省や経企庁をはじめ他の官庁も、本省と外郭団体への民間からの若手の出向は結構活発に行われているようです。

経企庁の各種の白書など執筆陣も、民間の出向者も加わっているようですが、 エコノミストとしての素養がない人もいて、白書の執筆責任者が苦労するようですね。こうなると、民間のノウハウを吸収するというよりも、官庁が一種の教育機関の役割を果たしているようで、米国とは大分様相が違います。

やはり各官庁のトップクラスの幹部を民間から起用するのでなければ、官僚の世界は変わらないだろうし、真の官民の人事交流が行われたことにはならないと思いますね。

ところが、この7月に政府のIT革命推進のキーパースンが起業のために通産省を退職したそうです。電子政策課長を務めた安延申氏がその人です。そういえば最近、まだ天下り年齢に達していない有能な官僚の民間への転出が目に付きますね。

私の知っている官僚の方々を思い浮かべると、民間企業で十分にやっていけると思う人は、どうも官界では異色のようで、出世の道からは遠いようです。安延氏とは全く面識はないのですが、まさか“異色”であるゆえに居心地が悪くなって退職したのではないでしょうね。

いずれにせよ、官界からの人材流出は、米国とは逆方向ではありますが、リボルビング・ドアを促進させることは間違いないですね。ちなみに、安延氏はIT関係の調査研究会社を起こす予定だそうで、京都にあるスタンフォード日本センターの研究所長に就任しました。こうした流出が続けば、将来官界の人材不足が表面化する日がくるのではないでしょうか。そうすれば、幹部クラスを民間から登用せざるをえなくなると思うのですが、少し甘いかな。



お知らせ:昨日の話題は「経営責任の筋違い」 でした。



2000年9月1日(金)〜3日(日)

「経営責任の筋違い 」

最近マスコミの報道と政治家の言動には腹が立つことが多いですね。そこで、今日は週末ということもあって、「独り言」で取り上げてもいいような話題について独断と偏見で述べてみたいと思います。

今、そごう問題をはじめ経営が破綻した企業のかっての経営者に対して、私的財産を提供して責任を取れという声が高まっています。この話は心情的には分かるのですが、Asktakaにはどうも筋違いなように思えます。

論点を整理すると次のようになるでしょう。つまり、

1.税金を投入した旧長銀や旧日債銀が債権を放棄すれば、結局破綻企業に税金が使われることになる。

2.20%以上目減りした債権については、瑕疵条項によって旧長銀や旧日債銀が金融再生委に補填を要求できるので、これまた税金を投入することになる。

この2点が政治家を巻き込んだ一連の報道になっていると思います。

こうした経営者の経営判断の間違いによって破綻した企業に、税金を使うのは けしからん。経営者が先ず私財を提供して損失を穴埋めすべきだ。もしくは倒産、解散した企業の経営者は私財を投げ打って、債権者の債務を返済すべきだ。こういう話になるのです。

先ず、前提となる税金を投入する話は、当該の破綻企業には無関係な話です。 これは大蔵省と政治家が一体となって失政を糊塗するために、金融ビッグバン と外圧を利用して“不良資産”を処理したというが本音ではないでしょうか。 うがった見方をすれば、大蔵省が検査をして見積もった不良債権額はどうも目の子なので臭いものには蓋をして、後でほとぼりが覚めてから(税金で)処理しようという魂胆ではなかったでしょうか。

それと、破綻企業のトップの多くは、“銀行が無理に貸したために融資が増えたので銀行の貸し手責任がある、と述べています。この点はもっと背景が語られるべきだと思います。Asktakaが想像するに、バブル期を通じて大体次のような銀行の行動があったのです。

銀行は基本的には、一般消費者から安い金利でお金を集めて、それよりも高い金利で融資することで利ざやを稼ぐビジネスです。従って、ふんだんにお金が集まったバブル期など、融資対象となる不動産物件を銀行が企業に持ち込んで 、企業にその物件を購入させたのです。そして購入費を融資して成績を上げていたのが実態です。これは別に大企業だけでなく、町の商店主に対しても銀行は同様な活動をしていたのです。

今問題になっているゼネコンや流通業が海外のショッピングセンターやホテル などを購入したのは、ほとんどはこうした銀行からの紹介だと思います、まさか、M地所が高いお金でNYCのロックフェラービルを購入したのは(そして何年か前に売却する羽目になりましたが)、銀行の紹介ではないでしょうが。

こうした経緯から、企業のトップは、このような不動産に関連する借入金に関しては、借りたというよりも、押し付けられて金利を稼がせててやったという思いが強いのだと思います。従って、銀行が債権放棄をするのは当たり前と思っているのでしょう。これはバンカーのいない席での、トップの本音です。

しかしながら、Asktakaは破綻企業のトップに全く責任がないといっているのではありません。オーナー企業であれば、トップが個人で債務保証しているので、経営が破綻すれば当然個人資産は提供せざるをえないでしょう。問題は、サラリーマン社長の場合です。この場合は、取締役の代表である社長に責任があるのですが、商法上は株主に対する責任です。つまり、トップは企業の株主に対して責任を取るのが筋なのです。

ところが、どのトップも心から株主に対する責任を感じているとは思いにくいし、株主もまだ代表訴訟などで訴えるケースは稀です。こうした経営責任の 問題は、まさに企業統治(コーポレート・ガバナンス)に関わってくるのですが、破綻企業を見る限り、こうした言葉とは名実ともに無縁であったことが分かります。

マスコミも政治家もヒステリックに私財提供などと叫ばずに、モラル・ハザードなどといったカタカタ語で誤魔かさず、もっと本質的に企業統治の問題を問うべきではないでしょうか。Asktakaは、深く静かに進行している経済界のコーポレート・ガバナンス革新の動きに注目したいと思います。それが真の経営責任を取る仕組みを生む近道だと思うからです。皆さんはいかがお考えですか?



お知らせ:昨日の話題は「ネットバブルの宴の後」 でした。



トップ・ページへ