これまでの話題(2000年11月前半)

[Index10月後半10月前半9月後半9月前半8月後半8月前半7月後半7月前半2000年前半] [1999年]


2000年11月14日(火)〜15日(水)

「日本語ドメインとインターネット鎖国 」

皆さんもご存知のように、日本語ドメインなるものの登録受付が始まりました。日本語ドメインの是非について、ネット関係者の間で話題になっています。そこで今日はこの点について所見を述べてみたいと思います。

そもそもインターニック(InterNIC)が日本語ドメインを始めるに至ったのは、InterNICが管理するcom、net、orgなどのドメインの新規申請者の78%が、日本、中国、韓国などのアジア諸国の居住者だからだそうです。そこで英語圏以外の申請者が多いのであれば、その国の言語でアクセスできるようにとのことで、日本語ドメイン・サービスが試験的に始まったのです。

さて、このような日本語ドメインの誕生で誰が喜ぶのでしょうか。一番喜ぶのは、登録代行業者とネット広告代理店かもしれませんが。これは冗談として、 業界では、40代以上と小学生のユーザーの利便性が高まりネットの裾野が広がるものと期待しているようです。例えば「http://www.japan.com」よりも「http://www.日本.com」の方が分かりやすいといえばそれまでなんでしょうが。

一方、日本語ドメインによるデメリットもあります。英語が主流の世界のネット情報から、“インターネット鎖国”状態になるのではないかということです。それから、現在のネット利用者のうちどの程度の人が、いちいちURLを入力してアクセスしているのでしょうか。この点はasktakaは大いに疑問なのです。

例えば、asktakaはお気に入りか「履歴」からアクセスすることが大半です。そして、新しいHPは大抵は検索エンジン"Google"を使って、日本語や英語を入力して検索されたリンクをクリックしてアクセスします。つまり、初心者や英語の苦手な人のネット利用を考えるには、検索エンジンなどのポータルサイトを充実すればこと足りるのではないでしょうか。

下手に日本語化して「インターネット鎖国」に陥り、世界の中で取り残される日本を考えるとぞっとしますね。もっとも日本語ドメインは試験的な試みなので、実際の利用者が少なければ自然と消え去る運命にありますが、さてどうなることやら。

asktakaは、それよりも来年から登録受け付けが開始される汎用JPドメインの 方が関心がありますね。つまり、「japan.co.jp」は「japan.jp」となるわけですが、この方がすっきりしますね。この場合、現在「japan.co.jp」ドメインを登録している企業などの優先登録権があるようですから、ご安心を!

皆さんは、日本語ドメインの行く末をどのようにお考えですか?



お知らせ:昨日の話題は「グローバル・キャピタリズム」 でした。



2000年11月13日(月)

[昨日は「“ソニースタイル”とは」 でした(こちら)]

「グローバル・キャピタリズム」

米誌ビジネスウィークは最近、“グローバル・キャピタリズム”という特集記事を掲載しました(11月6日号)。過去10年間のグローバリゼーション、つまり、世界における市場資本主義の興隆、を総括する試みです。

結論として、グローバリズムは、米国のニューエコノミー・ブームに貢献し、富める国から貧しい国への富の移転は進んだかに見えるが、実は世界の国々の格差を広げたとのことです。この点の事実関係を、BWからピックアップすると次の通りです。

1.90年から96年の間に33ヶ国が3%成長を維持したが、59ヶ国は経済が収縮

2.海外直接投資は7倍になったが、その8割は10カ国に集中

3.1960年には豊かな20ヶ国は20%の貧しい国の30倍の所得を得ていたが、現在ではその差は74倍に拡大

4.天然資源を持つ国は依然として開発途上国で、そうした国の23%は最近戦争を経験

5.新興市場に対する民間資本フローの90%以上は27ヶ国で占め、そのうち10ヶ国は97年から99年にかけて金融危機に遭遇

このようにみると、世界経済全体で勝ち組と負け組が明確になっており、かっての南北問題が一部の国の豊かさの陰で、更に増幅していることが分かります。

ところで、asktakaは昨年12月の「今月の提言」『21世紀の展望』の中で、21世紀の世界経済を次のように展望しました。

1.グローバリゼーションと相互依存関係の進展
2.新南北問題の発生
3.サービス化経済の更なる進展
4.情報通信ネットワークの発展によるリアルタイム経済への移行
5.環境問題に対する取り組みの進展

このうち“新南北問題”とは、先進諸国の停滞と新興諸国の高成長によって生じる諸問題をいっています。だが、まだまだ“旧南北問題”も解決されていない点をasktakaは再認識しました。市場原理に基づく資本主義、グローバリズムが、南北問題の格差を是正するものでなければ、それを是とする一つの根拠を失うものではないでしょうか。

21世紀の世界経済をみると、南北問題と環境問題、そして特に日本においては少子高齢化の桎梏から逃れることは出来ないと思います。こうした問題こそ日本が金を出すだけではなく、知恵やコンセプトで世界のリーダーになるべきだと思いますが、なかなかそうはいかないようですね。次代を担う皆さん、このへんのところは期待していますよ!



お知らせ:昨日の話題は「“ソニースタイル”とは」 でした。



2000年11月11日(土)〜12日(日)

「“ソニースタイル”とは」

本HPの開設当初から、つまりほぼ1年前からの常連さんであるSNさんが、本を出版されました。その著書は、その名もずばり『ボクの仕事は「ソニー」スタイル』です。今日はこの本のさわりの部分をご紹介しましょう。

先ず、asktakaは同書は次の方々にお薦めだと思います。

1.伝統企業、大企業の変革者
2.ベンチャー起業家
3.転職希望者
4.これから社会に出ようとする大学生・大学院生
5.「ソニー」ネタで原稿書きや講演をしようとする人

この中で、asktakaは是非、1の方々に読んでいただきたいと思います。SN さんの本は分かりやすく明快に書かれており、これから大企業が変革のためにやるべきことが直ぐ理解できるからです。

SNさんによれば、“ソニー・スピリッツ”とは次の5つに要約されるとのことです(前掲書pp.12-13)。

1.人がやらないことをやる
2.やりたいやつにやらせる
3.言い出しっぺがやる
4.若いやつにチャンスを与える
5.可能性に挑戦する

asktakaもこれを読んでなるほどと思いました。かっての経験から、ソニーが新卒や入社2、3年の若手に、仕事を任せていたことを知っていたからです。 これが一般の大企業であれば、30代半ばから40代の人が参加するプロジェクトの話なんですよ。

SNさんはソニーの子会社に在職された方であり、それゆえ今でも“ソニー・スピリッツ”が強く残っているのかもしれません。子会社のトップは、ソニーの創業時に入社され井深さんや盛田さんに直接薫陶を受けた方だそうですからね。

それから、こうしたスピリッツに基づく次の経営スタイル、行動指針がソニーの特徴だとSNさんは述べています。

1.オープン(Open)
2.シンプル(Simple)
3.スピーディ(Speedy)

このOSSは、asktakaにはIT時代を象徴するキーワードのように思えますが、ソニーは創業時からこうしたスタイルを続けてきたのですね。

asktakaは、ソニーの躍進の秘密は、この“ソニー・スピリッツ”とOSSにあると思っています。ただ、今や大企業というか世界有数の企業となったソニーが、創業時の精神を今でも忘れずに定着させているとすれば立派というしかありません。今度はSNさんに、『ボクの仕事は「ソニー」スタイルの伝道者』なんて本を書いてほしいですね。

何だか書評にしては舌足らずな話になりましたが、皆さん、詳細は是非同書を購入して(立ち読みではなく)熟読してくださいね。(笑)



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(40):『Leading the Revolution』より」 でした。



2000年11月10日(金)

「今日の言葉(40):『Leading the Revolution』より 」

マネジメントのグル(導師)の一人、ゲーリー・ハメル(Gary Hamel)の新著『Leading the Revolution』が話題になっています。Amazon.comでもBusiness & Investing Bestsellersで堂々11位にランクされています。 これも当然で、ブラハラッド(C.K. Prahalad)との共著『コア・コンピタンス経営(Competing for the Future)』は、ベストセラーとして90年代を通じて最も影響力のある本だと評判でしたからね。

新著では、

"The age of progress is over."
"We now stand on the threshold of a new age−the age of revolution."

と高らかに謳っています。単なる“進歩”ではなく、“革命の時代”が到来する(すでに心の中では到来している)とハメルは述べているのです。

何故“革命”が必要なのかという理屈は、皆さんがご自分でお考えいただくか、あるいはこの本をお読みください。ここでは“進歩の時代”から“革命の時代”への移行にあたって、いかに考え方を変えるかそのポイントを紹介したいと思います(括弧内は過去の“進歩の時代”の考え方)。

"Everbody can help build innovative strategies."
(↑"Top management is responsible for setting strategy.")

"Rule-busting innovation is the way to win."
(↑"Getting better, faster is the way oto win.")

"Unconventional business concepts create competitive advantage."
(↑"Infomation technology creates competitive advantage.")

"Innovation equals entirely new business cencepts."
(↑"Innovation equals new products and new technology.")

"Change starts with activist."
(↑"Change starts all the top.")

"Our real problem is incrementalism."
(↑"Our real problem is execution.")

"Diversity and variety are the keys to innovation."
(↑"Alignment is always a virture.")

さて、主なものをあえて日本語にしないで紹介しましたが、皆さんは“革命の時代”のイメージをおぼろげながら掴めたものと思います。確かなことは、トップダウン型の革命、革新というよりも、皆さんの斬新な発想が決め手になるということですね。そうなると、会社の未来は貴方の手にかかっているということになります。さぁ、貴方も“革命の時代”に向けて旅立ちませんか!



お知らせ:昨日の話題は「シリコンバレーで日本流は通じない!」 でした。



2000年11月8日(水)〜9日(木)

「シリコンバレーで日本流は通じない!」

月曜日(6日)の日経産業新聞を読んでいたら、気になる記事が目に付きました。シリコンバレー支局岡本記者の署名入りコラム「eトレンド」によると、シリコンバレーにおいても日本企業は日本での経営スタイルから抜け出せないというのです。

この記事は、次のようなアンケート結果に基づいているとのことでした。

<ストックオプションに関する調査(2000年5月実施、有効回答56社)>

ストックオプション導入企業→56社中4社
ストックオプション導入計画の有無→56社中30社は導入計画なし
ストックオプションを理由にした引き抜き→→56社中36社が経験
優秀な人材の獲得策→固定給を現地企業より高めに設定が24社

<研究開発の現地化に関する調査(2000年9月実施、有効回答42社)>

シリコンバレーに研究開発拠点を設置済み→26社
拠点設置理由→新製品開発のスピードアップ、デファクトを狙える開発
現地でのM&A対応→現地法人は権限はなく日本で決定が22社

こうした結果を踏まえて、岡本記者は、多くの日系企業が日本的経営をそのまま移植しており、シリコンバレーのインサイダーになりきれていない、と述べています。ストックオプションを導入せず、少しばかり固定給を上げてもインセンティブは低いですからね。例え、株価が低落傾向にあっても、勝ち組は上昇トレンドを描くでしょうしね。

それから、日系企業は日本国内と同様に、ゴルフによる親睦を中心とした非生産的な仲良しクラブ的な横のネットワーク作りがせいぜいとのことです。これに比べ、同じアジア系でも中国、台湾、インドなどの人たちは積極的なネットワーク作りを行い、具体的な起業や提携を実現させていると指摘しています。

このような現地での日本企業のマネジメント、行動パターンでは、“シリコンバレーで埋没”してしまう、と同記者は懸念しています。それゆえ、例えば、NTTのサイバーコミュニケーション研究所や日立の中央研究所などを解体し、技術者に豊富な資金を与えてシリコンバレーの原野に解き放て、と大胆に提言しています。

以前にもこの欄で指摘しましたが、“郷に入れば郷に従え”という諺が、海外では実行されていないのです。asktakaの友人、知人を見ても、ニューヨークやロンドン、その他に赴任したことはあっても、ほとんどが日本企業や日本人同士とのお付き合いで、全く現地社会に溶け込んでいなかった人も多いですね。

日本の海外現地法人が、シリコンバレーで変革の波の中で取り残されているのは、必ずしも日本人の英語下手に原因があるだけではないですね。本社の海外現法に対するガバナンスのあり方が問題なのです。日本は植民地統治の歴史が浅いから、という言い訳は出来ません。米国の例を見れば、すぐ反例はあがりますからね。

asktakaは、ビジネスの世界において(政治の世界ではなく)、21世紀が日本の時代になるには、海外現法を含む真のグループ経営のあり方が問われていると思います。さて、皆さんの会社は、果たしてこの点で21世紀の勝ち組になれるでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「米大統領選をみて日本の政治を思う」 でした。



2000年11月7日(火)

「米大統領選をみて日本の政治を思う 」

最近政治向きの話は避けていました。何とも情けない思いをするだけですからね。だが、政治の問題は明日を考える上で避けては通れません。そこで、今日は「独り言」のようなテーマになりますが、米国の大統領選と政治の話をしたいと思います。

今回の大統領選は大方の見方では接戦が予想されています。これも候補者が小粒なのと、政策的にさほど差がない所以と思われます。しかし、国民が大統領を選ぶというシステムは、完全ではないにしてもより民意を反映することは確かです。こうしたシステムがあってはじめて、ディベートも生きてくるのではないでしょうか。

日本の場合はどうでしょう。民主主義という観点から、最も悪い点は、民意が反映せずにトップが決まるということだと思います。自民党内の都合で、永年の権力の二重構造下で、コントロールしやすい暗愚なトップが選ばれてきたといっては言い過ぎでしょうか。

むしろ、言い方を変えれば、通常では宰相の器ではない人物が、本人もそれを自覚しながら、真の権力者(例えば派閥の親分)の言いなりになることを前提に選ばれたということかもしれません。従って、中身がなく人の顔色ばかりうかがっている、いわゆる調整型ばかりになるのです(えっ、同じことかなぁ・苦笑)。

それにしても現総理のお頭の程度と時代認識の酷さは目を覆うばかりです。どこかの大学の雄弁会では、肝心な中身を勉強しないで、“調整”と無意味な“発声”ばかり練習していたのでしょうか。かっては、こんな酷い総理を降ろすだけの力を持った長老がいたものですが、今となっては中曽根大勲位ぐらいで、影響力も今一歩ですからね。

では、日本でも首相の国民投票制にすればよいのでしょうか。asktakaは、現状では、この点についても懐疑的です。何故ならば、現状ではせいぜい人気投票になるのが関の山で、かっての大阪府や最近の長野県のように、素人のわけの分からない人物が選ばれる可能性が大ですからね(長野については評価はこれからですが)。

ところで、こんな日本に誰がした、と嘆いてばかりいてもはじまりません。ではどうするのか。ここはオーソドックスに、国民一人一人が政治を変える一票を投じることから始めなければいけないと思います。当座は我慢するしかないですが、次の選挙から国民の“良識”を見せて、愚かな政治家を落とすべきです。間違っても裏口入学や事故潰しに便利だったり、誰も使わない道路を作って自慢しているような政治家を選ばないようにしたいものですね。

こうした政治の現状を考えると、まだ産業界のトップの方がまともだと思いますね。ただ、社員がトップを選べないという不幸だけは共通しています。しかし、asktakaは、今後はわけの分からない、自分の言葉でビジョンを話せない経営トップが選ばれることは少なくなると楽観しています。企業は政治の世界とは違って、自己責任の世界ですからね。

ということで、BBSに連載中の「へちま日記」に触発されたわけではないのですが、大統領選に絡んで日頃思うところを述べた次第です。明日の昼過ぎには大統領選の行方も判明するそうですが、さてどうなることやら。えっ、大勢に影響ないって?いやいや、日本と違って、影響がありますからね。うらやましい限りです。



お知らせ:昨日の話題は「小売業態の変革」 でした。



2000年11月6日(月)

「小売業態の変革 」

昨日は「経営上の負の資産」について述べました。そして、マイナスの資産をプラスに転じようとする、トップや幹部の不断のイノベーションの重要性を指摘したつもりです。今日は、その中で小売業、つまり物販、飲食業態の変革について話題にしたいと思います。

先ず、asktakaは物販、飲食の新業態を、次の3W2Hの一つ以上を見直したものと定義します。

What:何を(商品構成)
Who:誰が(ターゲット)
Where:どこで(立地、商圏)
How:どのように(販売方法)
How much:いくら(価格)

新業態をこのように考えると、具体的なイメージが浮かびやすいと思いませんか?

例えば、化石化したともいわれる百貨店は、今後はファッションに絞り込んだ30貨店(What)、あるいはショッピングセンターの核店舗(Where)として生き残りを図ることでしょう。また、特定商品、例えばクリスマス商品に絞り込んだテーマ型ショップなども、Whatに注目した新業態の事例です

ターゲットについては、中高年向けに的を絞った旅行代理店、女性だけをターゲットにした商業施設など枚挙に暇がありません。また、中高年齢層向けのビジネスは80年代半ば頃から試行錯誤されてきましたが、介護保険が導入されて最近やっと立ち上がってきました。このようにまとまった需要層に対して、独自の商品・サービスを提供する業態は、今後も期待できると思います。

次に、立地に関しては、かっての郊外型店舗が都心へ進出したり、また都心立地だった業態が郊外へ出店するなど、ビジネスシステムを新たにする以上新業態として考えてもいいと思います。また、従来の広域商圏から狭域商圏を狙ったビジネスなども新業態といえます。

販売方法や提供方法は、例えば、対面販売からセルフサービス、無人販売へ、販売員がうるさくつきまとうプレッシャー販売からノンプレッシャー販売へ、ブランド毎の売場から各種のブランドを一堂に会したセレクトショップ化へ、夜8時までの営業から終夜営業へ、等々数多くの例をあげることができます。 更に、直営・自力展開かザー(本部)あるいはジー(加盟店)としてのFC(ファランチャイズ・チェーン)展開かといったオプションもありますね。

最後の価格については、もはや説明の必要はないでしょう。100円ショップやアウトレットストア、ユニクロをはじめとするSPA(製造小売をするブランド)など価格訴求型の新業態は注目の的です。

このように、3W2Hを切り口として、いろんなアイデアが浮かぶと思います。日頃からアイデアを蓄えて、タイミングを見て、ファイナンス先と知恵袋を探して変革に向けて旅立ちませんか?


(注)
本稿の一部は、asktakaが以前書いた『マトリックス思考による業態発想』(日経ストアデザイン、94年4月号)に基づいています。



お知らせ:昨日の話題は「経営上の負の資産」 でした。



2000年11月4日(土)〜5日(日)

「経営上の負の資産」 」


ベンチャー企業や新興企業はともかく、永年企業を経営しているといろんな資産、遺産を抱え込みます。プラスの場合はいいとして、企業規模を問わず、負の資産は今後の経営の手足を縛り事業展開を難しくしていることは事実です。

しかし、老舗企業や伝統企業を注意深く観察すると、こうした負の資産をプラスに転じようとするエネルギーこそよい結果をもたらす源泉であることが分かります。そこで、今日は大多数の企業がもつ負の資産について整理してみたいと思います。

先ず、asktakaは負の資産は次の6つに大別できると思います。

1.B/S上の負債(借入金等)
2.陳腐化した業態、ビジネスシステム
3.陳腐化した有形の資産(立地、店舗、設備、etc.)
4.陳腐化した無形の資産(信用、ブランド、etc.)
5.人材
6.情報システム

このうち、1はごく当たり前の話なので割愛します。2は市場や時代の流れ、ライフサイクルを踏まえて革新することで、プラスの資産に転じることが可能です。

皆さんもご承知のように、こうした動きはすでに活発化しています。小売業であれば業態変革、製造業であれば価値連鎖のフルライン型ビジネスシステムからの脱皮、金融であれば一握りの総合型と一般消費者向けのリーテール化、投資銀行化など専門化への移行などです。

3については、ガソリンスタンド、金融機関の出先(支店)、一部の商店街などをみればよく分かります。個々の企業、店といった視点から捉えると、時代の流れに適合しなくなった立地での店をスクラップして、新たな立地へ進出するか、事業転換を行うことになります。

製造業では、バブル期に導入した過度に自動化されたマシーンが不良在庫化しているケースがありますが、この措置は比較的簡単ですね。すでに残存価格は少なくなっていますしね。

4の信用、ブランドは少し厄介です。これが一旦損なわれると、回復するには数年以上の時間が必要になることが多いですからね。忘れ去られつつあるブランドや失墜した信用を再生するよりも、ゼロから再スタートした方が早いかもしれませんね。雪印乳業あたりは連結で1兆円を超える大企業ですから、全社一丸となって取り組めばまだ回復は早いと思います。だが、大部分の企業は、低空飛行のままに破綻するケースが多いのです。この場合はトップがリーダーシップをとって“出直し的再スタート”をするのが最善の策ですね。

人材については、人間の能力は全社会をみてもその部分である個々の企業、学校などの組織をみても、ベルカーブを描く、つまり正規分布する点を認識することが大事です。言い換えると、どんな組織においてもその内部で優れた人材はごく一部で、出来ない人もごく一部です。従って、大半が普通の能力を持つ人材なのです。

しかし、今をときめくソニーなどは優秀な人材が集まりやすく、かっての名門企業といわれた例えば繊維産業に属する企業などは優秀な人材が集まりにくくなっています。そのため、組織によって正規分布の形状自体が上方あるいは下方に位置付けられ、能力レベルの差がある点は事実です。すなわち、どんな組織においても落ちこぼれはいるわけです。こうした人たちが、より一層働きやすい、能力を発揮しやすい組織に移動できる障壁を少なくすることが肝要です。労働市場のモビリティの問題は一企業では解決できませんので、社会全体の問題として政府も企業も国民も意識と行動を変えていく必要があるでしょう。

一方で、一部の優秀な人に一層インセンティブを与え、“普通の人”のやる気を引き出す仕組みは、各企業独自で作ることが可能です。結果に対して報いるという基本線以外は、まだどんな制度が最適かは答えが出ていないので工夫の余地は大ありですね。

情報システムに関しては、ほとんどの企業がレガシーと呼ばれる古いシステムをもてあましています。しかし、これをどう乗り越えるかで、業種によっては今後の盛衰を決める要因になることは議論の余地はありません。

このように考えてみると、asktakaは、資本主義のダイナミズムは“負の資産”をプラスに転じる不断のイノベーションにあると思います。この意味で、asktakaは負の資産を恐れることなく、大企業から中小零細企業まで、絶えず変革を続ける企業が次代の勝者となると確信しています。

さて、貴方もしくは貴方の会社のトップは、自信を持ってイノベーションを行っているといえますか?幸いasktakaは、リアルな世界でもバーチャルな世界でも、そうした変革者を知っています。皆さんもこの際変革者の仲間入りをしませんか?



お知らせ:昨日の話題は「amazon.co.jp誕生!」 でした。



2000年11月3日(金)

「amazon.co.jp誕生!」

もうアマゾン・ドット・コムを利用して何年になるだろうか?asktakaは30数年丸善で洋書を買い続けて、なんといまいましい思いをしたことか。70年代のまだ1ドル360円だった頃は、丸善レートは4百数十円でした。専門書を1冊買うと1万円以上はざらでした。現在でも円レートは1ドル110円弱ですが、丸善レートや八重洲レートは200円弱ぐらいで換算されています。

そんなわけですから、asktakaが97年頃から専らアマゾン・ドット・コムに注文しはじめた気持ちもお分かりでしょう。しかも、在庫切れはほとんどなく、配達も"International Priority"を使えば、注文後1週間程度で手元に届きます。丸善や八重洲に注文すると、在庫がない場合は1、2ヵ月は待たされることを思えば、雲泥の差ですね(ただ普通便だとアマゾンでも6週間はかかるそうです)。

ちなみに、前回の注文は5冊で本代は109.92ドル、送料は59.75ドル、合計169.67でした。送料はInternational Priorityなので割高ですが、一般の場合2分の1以下になると思います。日本で買えば洋書代は200ドル程度になるでしょうから、特急便を使ってもまだ安いのです。

このアマゾン・ドット・コムの日本法人が11月1日より営業を開始しました。早速、日本のサイトを覗いてみましたが、本代はそのまま円レート換算されて、年内は送料は無料だそうです。従って、上記の場合単純化のため1ドル100円とすれば、10,992円で購入できることになります。

但し、和書の場合は再販制度があるため定価販売となっていますから、当面は配達に要する時間とコストで勝負というところですね。ちなみに、現在のところアマゾンは注文後2〜4日で配達、一方、紀伊国屋のネット販売は最短で4日ですから、アマゾンにやや軍配が上がります。

紀伊国屋などの有力書店も表面的には歓迎の意を表明していますが、さて今後の競争が楽しみですね。昨日の話題との関連で言えば、こうした新規参入によって業界の生産性は上がり、企業体質は強化され、消費者は一層安価なサービスを受けることが出来るのです。今度は和書の再販制度などの規制を撤廃してほしいですね。

ただ、アマゾンの日本進出も、Eビジネスの動きとして見ると手放しでは喜べません。同社が日本をはじめ海外のウエートを高めようとしているのは、米国内での競争の激しさと先行きの収益面での不安がある点は事実です。一方、日本の雄、楽天市場もこれまでは一人勝ちとはいえ今後は分かりません。最近出店者間での競争が激化して、月間140店が退店する月もあるようですからね。

このように、アマゾンや楽天市場も現在のビジネスモデルでは十分ではなく、更なる革新が求められています。オールド・エコノミーも超ドメ企業も、こうしたEビジネスの競争の激しさを対岸の火事として見ないで、競争がもたらす変革の力、進化に注目すべきではないでしょうか。談合や情報の不完全さによってぬるま湯に浸かっていた企業も、21世紀にはそうした環境は激変すると思われます。超ドメ企業といえども、今こそ“競争による革新”に備えるべきだ、とasktakaは思うのですがいかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「マッキンゼー・レポートの衝撃」 でした。



2000年11月1日(水)〜2日(木)

「マッキンゼー・レポートの衝撃 」

この夏以降有力コンサルティング・ファーム、マッキンゼー社のレポートが話題になっていました。それは世界各国の生産性を比較して、『日本経済の成長阻害要因』(こちら)を明らかにしたものです。なお、この研究には青木昌彦氏(スタンフォード大学教授・通産産業研究所長)も協力しています。

レポートによると、日本では90年代を通して生産性が低迷していると指摘しています。つまり、付加価値をインプットである労働投入量(時間)で割った労働生産性は、米国を100とした場合日本は69だそうです。一方、資本の生産性は更に悪く、米国の61に過ぎません。こうした生産性の悪さは、成長ポテンシャルが低下している証左であり、ビジネス界に衝撃を与えています。

産業別に見ると、エレクトロニクスや機械の一部及び自動車などの輸出型産業の生産性は、米国を100とすると120と日本の方が高くなっています。しかし、雇用の90%を占める国内型産業、つまり、内需型製造業やサービス業は63にとどまり、平均すると米国に対して69の水準です。レポートは、90年代はこのような経済の「二重構造」が顕在化した時代だと指摘しています。

特に、典型的な内需型産業である4つの分野の労働生産性は米国の約半分、56に過ぎません。具体的には、食品加工業(製造業)は35、住宅建設業(サービス業)は45、小売業は50、医薬産業は93となっています。

このような生産性の悪さが目立たなかったのは、政府が湯水のごとく公共投資を行って、無理やりインプットを増やしたからだと指摘しています。しかも、効率の悪い分野に予算をつぎ込んだわけですから、効果は期待出来ないと正当な主張をしています。

上記の現状を踏まえて、レポートでは、こうした日本の生産性の低さは次の3つの要因に起因すると述べています。つまり、

1.市場メカニズムの欠如
2.非効率分野への大量の補助金投入
3.新規参入の抑制

この3点です。

asktakaはこのレポートを読んで、きわめてオーソドックスな分析だと思いました。経済学の観点から見ると、asktakaが先般も指摘した市場メカニズムを重視している点は、さすが青木氏がアドバイスしているだけのことはあるなと思うわけです。かってはこの辺の問題点を分析して鋭い指摘をした学者もいたのですが、最近はあまり見かけないですね(おっと、これは余談です)。もっとも生産性の問題に限れば、経企庁などが随分前から国際比較をしていますから、目新しいテーマではないですがね。

さて、このマッキンゼー・レポートの結果を、単なる衝撃として受け止めてはいけないですね。以前にも述べたように、生産性の悪い分野は、政府の規制さえなければ、ビジネスチャンスの多い魅力的な分野ともいえるわけです(99年11月22日付け「今日の話題」『労働生産性とビジネスチャンス』(こちら)。asktakaはこのレポートを契機にして、内需型産業に属する企業が変革と新たなビジネス・システム創出に目覚めてくれればいいなぁ、と思うのです。

超ドメスティック企業にお勤めの皆さん、貴方の創造力と実行力が求められていますよ。頑張ってくださいね。



(注)労働生産性の定義は、経企庁とマッキンゼーとでは異なる点に注意。前者は労働者一人当りの付加価値、後者は労働投入時間当りの付加価値をいう。一人当り労働時間の長い日本では、後者の方がより実態に近いように思われる。


お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(39):“和田元西武百貨店社長”の言葉」 でした。



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