これまでの話題(2000年10月前半)

[Index9月後半9月前半8月後半8月前半7月後半7月前半2000年前半] [1999年]


2000年10月14(土)〜15日(日)

「『iモード事件』の松永さん」

10月12日付の当BBS(ゲストブック)にて、Fortune誌の最新号(10月23日号)で発表された“世界で最もパワフルなビジネス・ウーマン”について簡単に書き込みました。そこでは、次のようにカキコしました。

「今年は、米国のみならず欧州やアジアのビジネス・ウーマンも取り上げ ていますが、あの『iモード事件』の松永真理女史がアジアのトップに ランクされていました。本の中にも出てくるマッキンゼーをやり込めた エピソードも記事になっており、今度は世界のMs.松永として注目を 集めそうです。ただ新しくはじめた女性専門サイトについては、前途多 難なようですが」

ということで、昨年の「今日の話題」(10月10日〜11日付け)で“米国で最もパワフルなビジネスウーマン”を取り上げましたが、このテーマは後にして、松永さんの話をしたいと思います。

松永真理さんは『iモード事件』(角川書店)の著者としても有名人ですが、もちろんNTTドコモのiモード事業の成功の立役者として業界では著名です。実態は、iモード推進の広告塔であったという噂はあるにせよ、それはそれで価値があると思います。

ところで、asktakaは、Fortune誌の記事と『iモード事件』の中に出てくるマッキンゼー社(以下M社)との対決の話が興味深いですね。何でもNTTドコモにiモード事業を提案したのはM社だそうで、松永さんがリクルートから引き抜かれた時には、すでに同社のコンサルタントがプロジェクト会議を仕切っていたそうです。しかし、具体的に事業の中身を詰めていくうちに、松永さんはM社の提案の実現性やアドバイザーとしての立場を逸脱した言動に疑問を感じ、M社の議事進行権を取り上げたそうです。そして、会議中は、M社のアドバイスは松永さんにメモを手渡す形で行うようにさせたとのことです。

この結果、プロジェクト会議では、松永さんが引っ張ってきたスタッフや若手のドコモ社員の活発な意見が出やすくなって、かつスタッフの自主性が生まれたそうです。iモードの成功は、松永女史とM社との対決を超えたところにあったといえましょう。

さて、asktakaはこのエピソードを読んで、コンサルタントとして身につまされました。というのは、勘違いがこうじると、よくこのようなことが起こりうるからです。コンサルタントとして自戒すべきは、あくまで黒子だということ です。実際に事業を推進するのはコンサルタントではないのです。コンサルタントの立場としては、クライアントの人材のレベルを考えながら、能力が足らざるは補い、潜在能力が高ければそれを引き出していくことが望まれます。

特に、新規事業の立ち上げの場合は、クライアントはノウハウが不足しているので、それをコンサルタントに求めてきます。この際、コンサルは単なる仮説的事業モデルを押し付けるのではなく、事業推進スタッフの能力を引き出すべくコーチしていくことが肝要だと思います。

その後、松永さんはドコモを退社して、今年の9月に女性専門サイトeWomanを開設しました。先日NHKに出演したそうですが、二週間ほど前にasktakaが毎日ROMしているMLにて話題になっていました。松永さんのかっての同僚(部下)の暴露話もあって面白いのですが、皆さんeWomanの先行きについては辛口です。必ずしも女性限定サイトではないようですから、皆さんもゲストとして覗いてみてはいかがでしょうか?さてさて、これもiモードのように大化けすると思われますか?



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(36):ゴーン日産CEOの言葉」 でした。



2000年10月13日(金)

「今日の言葉(36):ゴーン日産CEOの言葉 」

今更ゴーン氏の言葉でもないだろうと思う向きもあるかもしれません。それほど、同氏はいろいろな新聞、雑誌に取り上げられています。現在日産を改革中のゴーン氏ですが、かってルノーを再建した際の次の言葉が、彼の真髄を表していると思います。

「長所短所を知り尽くし、どこに可能性があるかを指摘できるのは当事者だ。素材はすべてそこにある」

ゴーン氏は96年に膨大な赤字に悩むルノーの再建に着手する際に、再建するのは会社のことを一番よく知っている社員で、自分ではない。自分は社員達の知識や経験をもとに再建プランを作るのが仕事だ、と述べたといわれています。

1年かけて社員とよく話し合いながら、ゴーン氏は再建プランを練り上げて、ルノーの劇的な再生を果たしました。この時の同氏のニックネームは“コストカッター”でしたが、それだけ大なたをふるわなければ復活は困難だったと思われます。

ご承知の通り、ゴーン氏は99年3月にCOOとして日産に乗り込み、約6ヶ月かけた「リバイバルプラン」を10月に発表し、現在実行中です。この際の手法もルノー再建のときと同様ですが、着実に改革の道を歩んでいることは確かです。そして、最近やや強引なIRの手法も披露してくれました。

考えてみれば、私達コンサルタントも上述のゴーン氏の言葉とスタンスは同じです。新事業の探索など外部環境のチェックに重点があるプロジェクトを除けば、基本的には改革のための社内の事情は当事者から聞くしかないですからね。

変革実現のためのトップの役割は、コンサルタントのそれと同様だということを認識することは重要だと思います。そういえば、世の中にはコンサルみたい社長がいますが、貴方の会社のトップはどんなタイプでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「独裁者の悲劇」 でした。



2000年10月12日(木)

「独裁者の悲劇」

今話題になっているダイエー問題は、オーナー経営者と雇われ経営者との微妙な関係を考えさせられます。断片的にせよ、情報を集めてみると、どうも泥試合の様相を呈しています。

先ず、OMCの株の売買に関しては、昨年の6月に鳥羽前社長は中内氏に報告して文書で了解した旨の回答を得たとのことです(川前副社長も同様だと思います)。それを今頃になって、インサイダー取引疑惑として取りざたされるとは、中内氏周辺から鳥羽氏を追い落とすためにリークされたという噂も、あながち嘘とは思えませんね。

鳥羽前社長は、OMCの株を売却する際に、法律上の問題の有無を確認して処理したといわれています。ただ、報道されているように、OMCの株価が上昇する以前に、同氏がリストラ情報を全て把握していたとしたら、インサイダー取引と断定される可能性もありますね。財務のプロにして、どうしたのでしょうか。

さて、asktakaは、ここだけの内緒の話をするつもりはありませんが、公開された情報、事実だけをみても、中内氏の問題が見えてきます。ダイエーの危機に際して、外部から経営のプロを三顧の礼を尽くして迎えたとしても、所詮は使い捨てだということです。それゆえに、過去も現在も、ダイエー及び関連会社に、真の骨のある人材が育ちにくいのです。極論すれば、中内氏の顔色ばかリ見ている人が残ることになるのです。

この原因は、中内氏がダイエーグループにとってあまりにも偉大だという点にあると思います。もっともグループのみならず、日本の流通業界にとっても そうではありますが。

この偉大だという言葉は、カリスマ性を持つ流通業界の立役者を意味するとともに、グループ内では“独裁者”を意味しています。今回の一件も、中内氏の思い入れの強い、リクルートやハワイのショッピングセンターの売却と無縁ではなさそうです。この件と中内氏の代表権問題が同氏の逆鱗に触れて、独裁者として蘇ったといえそうですね。

asktakaは、ダイエー問題はオーナー企業にとってよい教材だと思います。所有と経営の分離の問題、企業統治の問題、後継者育成の問題などの硬い話もさることながら、創業者としての生き様についての教材です。日本のスーパー業界を築いた中内氏の功績は、asktakaも心から高く評価しています。それだけに、中内氏が反面教師といわれることは忍びがたい思いがするのです。

鳥羽前社長が10日の夜につぶやいた、所詮“一人で決めるんだなぁ”という言葉がやけに印象に残りました。後味の悪さと醜さだけが残ったと思うのですが、今後のダイエーの再生に悪影響が出ないことを祈るばかりです。経営は結果で評価されますからね。



お知らせ:昨日の話題は「続・基本に忠実」 でした。



2000年10月11日(水)

「続・基本に忠実」

昨日は“基本に忠実”ということで、知識、管理、実行という3つのレベルで抽象化したマネジメントの基本について述べました。それらは、どちらかといえば行動面での基本といえます。今日は、続編として、戦略や計画立案面での基本について述べたいと思います。

先ず、戦略や計画を策定する際の切り口として、asktakaは次の3つが基本だと考えています。つまり、

1.先取り(時代・マーケットの先を見る)

2.差別化(他社との違い、差異を明確にする)

3.重点化・集中化(バラマキ資源配分を廃し、戦略分野に集中)

この3点です。

もちろん戦略・計画策定にあたって、もっとテクニカルな話が必要だという方もいらっしゃるかもしれません。だが、実務的には、エッセンスはこの3つに 集約されると思います。asktakaは、上場企業といえどもこの基本が守られていないことをよく知っています。

先ず、全社の事業ポートフォリオ、製品・事業の組み合わせを例にとってみましょう。先行き見込みのない事業から撤退し、戦略分野に集中するように提言しても、なかなか実行されず傷口を広げたケースは枚挙に暇がありません。この場合、asktakaとしても、闇雲に手を引けといっているのではなく、人やその他の経営資源の活用も考えた上での提案なのです。どうも当該事業の提案者や推進者の立場や会社の面子などが撤退の妨げになっていることが多かったと思います。このご時世で、さすがにこうしたケースは減っていますが、きっと皆無ではないでしょうね。

次に、上場しているメーカーなど全国ネットの営業拠点を持っている企業をみていると、何かおかしいと思うことがあります。つまり、よく全国一律にシェア向上、拠点別利益向上を目標としている企業があります。だが、こうした企業では、案の定たいした効果があがっていません。そこで、シェア・利益を向上させるエリア、拠点、ターゲット顧客などを絞り込み、販促費や人を重点的に投入すると、大概は半年、1年で確かな効果が出てきます。このように重点化、集中化という基本を忘れているケースは意外に多いのです。asktakaは、全国に目を配り過ぎた行き過ぎたバランス感覚が災いしていると思います。

更に、研究開発、製品開発部門のケースをみてみましょう。通常、特許申請件数と新製品開発件数には正の相関が見られます。特許申請件数が落ち込んでいる企業を見ると、競合の製品の物真似、キャッチアップに追われて、本来の新製品のベースとなる開発が疎かになっているのです。この場合、先取り、差別化という視点が欠落しているわけです。こうした観点から、開発テーマを設定して、優秀な人材を“重点的”に投入すれば問題の半分は解決します。後は昨日述べた、管理とインセンティブが必要ですね。

もう一つ、大企業の子会社の例をみてみましょう。この場合、一般に“マネジメントの基本”が親会社に比べて劣りますから、行動レベルを少し改善すれば効果は出てきます。問題はこの点に満足せずに、時代や市場の動きを“先取り”した経営が出来るかどうかです。往々にして、企業環境からみて攻めるべき時に、親会社と同様なコスト削減に走り、せっかくのチャンスを逃す例は多いのです。

この場合、親会社のグループ経営に問題が大ありなわけです。特に、人とコントロールの問題です。だが、asktakaがこうした子会社の経営を見るようなって、子会社のマーケットに合った施策を講じると、業績はとたんによくなるから不思議です。asktakaはちょっと先取りした手を打つように提言し、昨日の“管理ベースの基本”を徹底するように仕向けるだけなんですがね。

以上は、いろいろなクライアントの事例をミックスさせたフィクションです。 しかし、“事実は小説より奇なり”という言葉もあるわけですから、れっきとした上場企業でも、実際はもっと驚くべきことも行われています。皆さんの会社の“驚くべき事柄”“珍なる出来事”などのネタを提供していただければ、ちゃんと小説に仕上げますよ。(笑)



お知らせ:昨日の話題は「基本に忠実」 でした。



2000年10月10日(火)

「基本に忠実」

業績の良い会社と悪い会社を比べてみると、“基本に忠実”かどうかの差であることが多いですね。そして、昨今の食品メーカーをはじめ企業の不祥事は、もちろん基本を忘れたものです。基本が重要だということは、『エクセレント・カンパニー』を持ち出すまでもなく、実務家からコンサルタントまでビジネスに携わる人達の共通認識だと思います。それでは、何故この基本が守られないのか?ここが問題ですね。

その前にマネジメントの基本とは何でしょう。asktakaが思うには、次の3段階の基本があると思います。

1.知識ベースの基本
2.管理ベースの基本
3.実行ベースの基本

先ず、知識ベースの基本とは、何をやるにしても基本的な知識が必要であることを意味しています。生産管理をやるにしても、マーケティングを実行するにせよ、理論的な背景を無視することはできません。知識を生かして初めて効果的な手が打てるのです。

次に、管理ベースの基本とは、品質管理の世界では御馴染のマネジメント・サイクルをまわすことを意味します。つまり、プラン・ドゥー・チェック・アクション(PDCA)です。組織の管理者がこれを徹底しているかどうかが問われているのです

最後の実行ベースの基本は、個々の社員の行動規範として、日常業務において復命やホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が徹底されていることを意味しています。

ところで、こうした基本がどうして守られていないのでしょうか。よく組織のタガが緩んでいるとかいわれますけどね。asktakaは、“タガが緩む”とは、組織の理念やビジョンが形骸化されているか、明確化されておらず、組織の進むべき方向が見えていない点に起因すると思うのです。更に、組織のインセンティブ・システムが効いていない点にも問題はあると思います。

いずれにせよ、先ず“基本”の前提となる価値観や戦略的方向性を明らかにすることが不可欠です。これらがなければ、上記の基本は単なる無味乾燥なルーティーン業務に過ぎず、手が抜かれるのも当たり前なのです。最近の日本企業は、極論すれば、こうした理念や価値観が不在で、行き当たりばったりのその場の行動だけで動いているように思うことがあります。さて、皆さんの会社はいかがですか?



お知らせ:昨日の話題は「カリスマ店員の転身から景気を占う」 でした。



2000年10月7日(土)〜9日(月)

「カリスマ店員の転身から景気を占う」

皆さんは、森本容子さんという名前を聞いて、ピンときますか?もしそうであれば、貴方はなかなかのファッション通です。森本さんは、ユニクロと並んで人気のある(あった)「エゴイスト」の元カリスマ店員です。この森本さんが、「マウジー」(渋谷109・5階)という新ブランドをプロヂュースして注目されています。

“カリスマ店員”ブームもピークは昨年までで、いわゆるガングロ、厚底靴のかってのコギャル・ルックは時代遅れだそうです。これに代わって、今年の5月、ゴールデンウイークぐらいから“お姉さん系”と呼ばれるファッションが渋谷を中心に増えているようです。

つまり、化粧も髪も以前よりも大人しくお姉さんらしくなって、スカートはマイクロミニからスリット(切れ目)の入った膝丈まであるものへ、足元は厚底靴からややヒールの高いサンダルや靴に変わり、グッチやフェンディ、ヴィトンなどの高級ブランドのバッグが復活しているとのことです。 こうした“お姉さん系”が流行ってきたことで、女子高生のコギャル世代から大学生や専門学校生のギャル世代まで同傾向のスタイルが広がっています。

しかしながら、カリスマ店員ブーム時代とは違って、若者は単なる真似っ子の世界ではなく“人との違いを意識した自分に合ったファッション”を求めるようになっているようです。森山さんは、こうした変化に合わせて、各人に似合った素敵な着こなしを提案していくそうです。

この話を聞いて、asktakaは何故かほっとしています。先ず、あのガングロと厚底靴の危なっかしい出で立ちを見なくてすむという点です。やはり、自然な化粧が若い女性にはよく似合うと思うし、厚底靴は人間工学的にも問題がありそうだし、見るからに階段で転びそうですからね。(笑)

次に、こうしたファッションの変化によって、消費支出増や景気によい影響が現れると思うからです。60年代後半から70年代にかけてのアイビールックからヒッピールック、70年代後半のニュートラルといわれるファッションなどの推移をみても、明らかに消費の転換に寄与してきました。特に、ラフなスタイルから少しファーマルへと変化するのは景気回復の兆しとみられます。 ちなみに、今回の“お姉さん系”ファッションは業界では、“ニュートラル”を思わせるといわれています。

具体的な景気循環との関連でみると、アイビールック・ブームは第6循環といわれる景気拡大期である「いざなぎ景気」(65年11月〜70年7月)に対応しています。その後の景気後退期は、ラフな出で立ちのヒッピールック・ブームに対応し、71年8月のニクソンショックや73年10月の第1次オイルショックなどのショック続きの時期です。ニュートラル・ブームは第9循環の景気拡大期(77年11月〜80年2月)に対応するものです(景気循環とファッション・ブームとの関連については、asktakaが20代の頃に書いた論文に基づいています)。

このように見ると、asktakaには今回の“お姉さん系”ファッションへの変化は、景気拡大の確かな証左に思えるのですが、さてどうなりますか。皆さんも秋晴れの街を歩きながら、若者のファッションの変化をウオッチングしてはいかがでしょうか。そうすれば、巷の景気の動きが実感できるかもしれませんよ。



お知らせ:昨日の話題は「トップの立場とミドルの立場」 でした。



2000年10月6日(金)

「トップの立場とミドルの立場」

この欄や会社のサイトでの「提言」の中で、asktakaはしばしば“トップに〜〜を期待したい”とか“トップはすぐに〜〜を実行してほしい”といった言い方をします。読者の皆さんはきっとasktakaの言わんとするところを理解されているとは思います。だが、蛇足ながら説明を加えた方がいいのかな、とも思います。そこで、今日はasktakaの意図するところを述べてみたいと思います。

asktakaは経営コンサルタントになりたての頃、20年ちょっと前から、当時の上司に、“トップの立場に立って考えろ”と言われてきました。この言葉は、現場改善を主とするコンサルタントは別として、経営の上流、つまり、戦略や計画立案やトップ・マネジメントの問題解決をメーンにするコンサルタントにとって、まさに金科玉条です。冒頭の話は、先ずこの点に起因します。それと、クライアントの方々に、はっきり“ノー”というべきだということもよく言われました。この二つが、コンサルタントとしてのasktakaの基本的スタンスになっています。

asktakaの場合、実際には、トップに対して直接相談に乗るケースと、経営企画担当役員やある事業部門の部門長をヘッドとするプロジェクト・チームと一緒に仕事をするケースがあります。前者は、社長の個人的なアドバイザーのような形で、大概は差しで話をします。上場企業のトップでも中堅企業でもこのスタイルはかわりません。それから、後者の場合はトップダウンでコンサルする場合と、そうでない場合があります。後のケースは、上場企業であれば大体担当役員レベルとのお付き合いが中心で、コンサルティングの実務は部長か課長クラスが主な相手です。

トップを相手にアドバイザー的にお話をする場合、比較的テクニカルなアドバイスを求めているのであれば答えは一意的なのでことは簡単です。だが、組織をどうするといった問題など、最適解は企業文化や企業の歴史、業界によって異なる場合は面倒です。社長の考え方を十分に理解した上で、もし少し方向がずれていたり、大事な選択肢が抜けていれば、いくら差しで話をすると言っても頭から否定はしません。他所の会社では、この場合はかくかくしかじかです、という調子で自然に気付いていただくようにします。このへんは、きっと皆さんが上司に意見を具申する際と同じですね。

それと、トップの立場で考えるということは、いわゆる目線を同じにする必要があります。全社的な観点から、強いところは一層伸ばし、問題点は潰そうとお考えなのです。すなわち、関心事は、業界環境と競合の動き、企業イメージ、現業の売上、利益の見通し、全社的問題点や問題部門への対処、役員を含めた幹部人事、最近では株価やグループ会社の業績等々です。しかしながら、トップと言えども万能ではないので、考え方の癖などを考慮しながら足らざるを補うということになります。

一方、経営企画担当役員や事業部門長の下でコンサルティングを行う場合、大抵はテーマが決まっていますから、問題発見と問題解決に動くわけです。この際留意しているのは、絶えずトップ、社長ならどう考えるかという点です。これは何も社長に迎合するという意味ではなく、担当役員や部長クラスでは往々にして不足している“全社的な視点”“トップの視点”を補うためです。また、社長が判断しやすいようにストーリーやロジックを展開するという意味もあります。

トップとミドルでは判断基準が違う場合が多いのです。これもトップの良質で幅広い情報量に起因する場合が多いと思います。asktakaは、トップが更に選別された質の高い情報を入手するためのお手伝いをするとともに、担当役員や部長クラスが、トップにどういう視点から具申するかを気付いていただきたいと思っています。大上段に、asktakaが“トップは〜〜”と注文をつけるのはこうした観点が根底にあるのです。皆さんも、トップの立場、視点からご自分の業務を考えてみませんか。そうすると、新たな展開が見えてくるかもしれませんよ。



お知らせ:昨日の話題は「FCビジネスの魅力の背景」 でした。



2000年10月5日(木)

「FCビジネスの魅力の背景」

フランチャイズ・チェーン(以下FC )が注目されています。しかしながら、それもよい面と悪い面の両面があるのは事実です。今日は、FCビジネスをポジティンブに考えて、その魅力の背景について述べてみたいと思います。

FCビジネスは19世紀の半ばに「シ ンガーミシン」が最初に展開したといわれています。その後FCの基盤は、20世紀に入 って、コカ・コーラやペプシ・コーラによって築かれました。1950年代 になって「マクドナルド」、「ケンタッ キー・フライド・チキン」(いずれも1955年に第1号店をオープン)がフードサービス分野でのFCの産業基盤を構築しました。

ところで、FCが産業として成立する背景に経済的な合理性が存在するはずです。つまり、FCはフランチャイザー(本部、以下「ザー」)とフランチャイジーといわれる加盟店(以下「ジー」) との契約をベースにして成り立っています。契約に基づき、ザーは経営ノウハウを含む経営システム、商品・商標、組織などをジーに提供するのです。この両者間の契約が成立するには、双方に経営上のメリットがなければいけません。

ザーにとって、FCビジネスを展開するメリットは次の3点に要約されます。つまり、

1.店舗投資をしなくて事業拡大が可能
2.人材をあまり投入しなくても成長力を維持できる
3.分社、暖簾分けなどに利用すればスリムな本社が実現できる

この3点です。  

一方、ジー側にとっては、次の3点がFCに加盟する主なメリットです。

1.ノウハウがなくても事業化可能
2.比較的小資本で開業可能
3.ブランドや事業システムを活用でき、採用、資金調達、商品調達が効率的

要するに、Asktakaは、FCビジネスは双方にとって最小の投資で最大のリターンを得ることが可能で、双方のROI(投資収益率)が高くなる点が魅力だと思います。

従って、起業を考える方々にとっては、物販、飲食やサービスなど、信頼できるザーを選んで、複数の店舗を展開するようになれば株式公開も狙えます。また、企業にとっては自らザーになって企業内起業家をジーとすることもできるし、暖簾分けの形でも利用できるシステムです。更に、コ・ブランディングといって複数のFCを展開すれば、ザーとしてはもちろんのことジーとしても、一つの事業部として成り立ちます。経営資源はもつものの成熟産業に属する企業にとって検討の余地はあると思います。

一頃は、リストラの受け皿としてFCビジネスの利用を考えるケースもありました。だが、Asktakaは、やはり事業展開の手法として前向きにFCを活用する方が好きですね。皆さんの身近なビジネスの中で、FCとして展開できそうな分野があれば、ザーになるつもりで考えてみてはいかがでしょうか。


(注)
本稿は、以前Asktakaが某雑誌に書いた論文の一部を基に、大幅に加筆したものです。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(35):“チェンバース・シスコシステムズCEO”の言葉」 でした。



2000年10月4日(水)

「今日の言葉(35):“チェンバース・シスコシステムズCEO”の言葉 」

今やシスコシステムズ(Cisco Systems)は超有名企業です。フォーチュン誌が最近発表した"The Global Most Admired Companies"ではGEに次いで2位、今年の2月の"America's Most Admired Companies(AMAC)"でも4位にランクされています。インターネット全盛期に、同社はネットワーク機器の最大手なので、むしろこうした評価は当然かもしれません。

今日は同社のCEO、ジョン・チェンバース(John Chambers)の言葉を紹介したいと思います。同氏は、IBMを経て、ワング・ラボラトリーズの上級副社長を務めた後、91年にシスコシステムズの会長兼CEOに就任しました。

チェンバースの就任時には、同社の年間売上高は12億ドルでしたが、8年後には100億ドルを超えるまでに成長しました。これも同氏が、あらゆるネットワーキング機器の分野でNo.1もしくはNo.2を目指し、組織拡大と企業買収を行ったからです。

そこで、チェンバースによる成功する企業買収の秘訣は、次の5つにまとめることが出来ます。

1.二つの会社はビジョンを共有する

2.短期的な勝利を獲得する(そうでなければ両者の社員がやる気を失う)

3.提携の背景に、長期的な戦略をもつ

4.両社の社員間の協力関係を築く

5.両社が地理的に接近していれば、有能な人材を失わずに済む

さて、上記の5点を皆さんはどうお考えですか。Asktakaは、日本企業のM&A が失敗する原因は、主に1〜3にあるのではないかと思います。合従連衡の時代とはいいながら、日本企業の海外子会社経営や内外での買収が今一つ冴えないのは、マネジメント層の戦略的経営の基本が不足しているのではないかと危惧しているのです。何せ単体でもビジョンや戦略づくりが苦手なわけですから、いくら一緒になっても急変するわけはないですね。

まぁ過去のことはともかく、今後のM&Aにあたっては、上記のチェンバースの言葉を参考に、是非とも成功させてほしいと思うわけです。ここは日本企業のトップを激励するしかないですね。


(注)
上記はエグゼクティブ・サーチ会社のトップThomas NeffとJames Citrinが書いた、Lessons from the Top: The Search for America's Best Business Leadersを参考にしました。



お知らせ:昨日の話題は「下期への期待」 でした。



2000年10月3日(火)

「下期への期待」

今後の景気の成り行きがどうなるかは、皆さんも関心があると思います。 もちろんAsktakaも関心は大ありですが、何せそれが自分のビジネスとの関係が強いだけに、複雑な心境なのです。つまり、景気がよくても悪くて、コンサルティング・ニーズがあるのですが、やはり好況下の方が企業も発想が前向きになりますからね。もっとも、今回の景気低迷期には、さすがに後ろ向きの話だけではなく、21世紀をにらんだ大きな改革をしようという企業も多かったのが救いでした。

ということですが、Asktakaがいくら“遠近法経営”といっても、つまり、現在から将来までの期待価値を最大化する経営、これが大事だといっても、不況で企業収益が悪化していれば、貧すれば鈍するということか、一般にはなかなか前向きな話にはならないものです。やはり、景気がよくないと思い切った手を打ちにくいというのが普通の企業なのです。不況期に抜本的な手を打っている会社は稀ですが、強くなるのは当たり前ですね。スタートが違いますからね。

ところで、今年の下期以降の景気はどうなるのでしょうか。まぁ、数字で見ると、GDPの伸びは1%以上はいくと思います。Asktakaはエコノミストではないので、細かい数字の話をするつもりはありませんが、直感的に先行きを見てみたいと思います。GDPは大きく消費と民間設備投資そして政府支出に分かれます。そこで、先ず、消費の動向をみると次のように思います。

90年代の後半の消費の低迷に関して、次の点を確認しておきましょう。第一に、消費低迷は、消費量の問題ではなく、低価格志向による価格低下の影響で消費支出額が伸びていないことに起因するという点です。第二は、消費の中身が変わっている点です。つまり、この点は家計調査の結果を見ると明らかです。通信費や情報機器(教養娯楽用耐久財)に対する支出が伸びて、食品や衣料などの支出が減少していますからね。

一般に、企業収益がよくなれば所得も増加して、消費支出も増加するという好循環が生まれます。今年の暮れのボーナスは少しは期待できそうだし、今期末の企業収益も増益基調で来期の賃上げも前年に比べて好転する見通しなので、消費支出にとってはプラス材料です。もっとも必需的な消費に関しては低価格化が常態となっていますから、選択的な消費の中身と価格がキーポイントになるはずです。いうまでもなくIT関連消費が牽引力の一つになるでしょう。

次に、民間設備投資ですが、これもIT投資を含め活発化していることを実感します。今後は中小零細企業にまでこうしたIT投資の動きが期待されます。更に、機械受注総額(季節調整値)は昨年の10-12月期以降対前年プラスに転じ、このうち、民間設備投資の先行指標といえる「船舶・電力を除く民需」は 、4-6月期のマイナス見通しからプラス3.1%となった点が注目されます。 つまり、データで見ても民間設備投資が堅調な動きを示しそうです。

最後の政府支出は、補正予算など前年に比べ何兆円かは減額されそうですが、これ自体効果のほどが疑わしくなっていますから、一応ここでは景気に対して中立的だと考えておくことにしましょう。

上記から、下期以降の景気が上昇基調となることは間違いないと思います。問題は、米国の景気が予想以上に悪化した場合、そうならないことを祈りますが、日本経済への影響は必至です。それから、景気回復といっても、かってのように全業種一様な好況感があるというよりも、前述した消費の中身が変化していることもあり、業種による差があることは確かです。

要は、Asktakaは、今回の景気回復期あるいは好況期は、好況を追い風としていかに時代に合わせて変身するかが問われている、と思うのです。皆さんの会社では、変身の準備はできていますか?



お知らせ:昨日の話題は「アマゾンのDynamic pricingの実験」 でした。



2000年10月1日(日)〜2日(月)

「アマゾンのDynamic pricingの実験」

先日の「今日の話題」で一物多価の問題に触れました。asktakaの思うところはその際に述べましたが、最近アマゾン・ドット・コムが面白い実験をやって 話題になっています。このポイントは次の通りです。

アマゾンはDVD映画ソフトの販売で顧客ごとに異なる価格、20%〜40%の割引率を提示して、売上に対する影響をみる実験(Dynamic Pricing) を行いました。ところが、新規顧客を装ってトライしたところ安い価格が提示されたことで、得意客に高い価格を示したのではないかという抗議にが相次いだそうです。その結果、アマゾン側は謝罪し、高い買い物をした顧客には差額を返金するといういうのが事の真相のようです。こうした実験は、ウェブの世界では初の大掛かりな試みでしたが、見事に失敗に終わったということですね。

また、Washington Postの記事をみると、アマゾンが顧客情報を使って異なる価格を提示したことに顧客が反発したというニュアンスが強いですね。アマゾン側は、顧客情報を使わずランダムだったと否定してはいますが、asktakaにはこの主張はどうも疑わしく思いますね。こうした反発の背景には、アマゾンが緻密な顧客データベースを使っているというイメージがあるからだと思います。この話は本題とはやや離れた問題だと思いますが、ウェブ上での顧客情報の使い方に一石を投じるものではないでしょうか。

更に、米国のネット・ショッピングの世界では、過当競争により「最低価格保証」が常態になっていることも考慮すべきです。つまり、“14日以内に他のサイトで安く販売されていた証拠を提示することで、差額を返金する”というやり方です。日本でもリアルな世界ではありますが、家電専門店のコジマがこの方式を取っていることで有名です。

ところで、このアマゾンの実験は、今後の“競争と価格”を考えるにあたって重要な問題を提起しています。

1.情報が排除原理なしに瞬時に行き渡るウェブの世界で、一物多価が成立するのか?

2.一般に公開されるウェブ上での価格政策が「最低価格保証」だけであれば、ネット・ショッピングでは価格政策は不毛か?

先ず、最初の問題に関しては、asktakaは一物多価は存在しないと思います。つまり、ウェブの世界では情報のサーチコストが安くなる結果、情報の完全性が確保され、一物一価に収斂するものと思われます。上述した「最低価格保証」などは、現にこうした一物一価が実現しているといえるでしょう。

では、「最低価格保証」以外にウェブの世界では価格政策は考えられないのでしょうか。この答えは、ある意味ではイエス、ある意味ではノーです。つまり、同一、同質の財・サービスを提供する限り、「最低価格保証」が一物一価を導くのでイエスです。しかし、もう少し広義に、個別顧客対応、いわゆるワン・ツー・ワン対応の場合には、“価格もカスタマイズ”という考え方もあるわけです。つまり、顧客によって価格が異なるわけです。ただ、この場合は、価格政策というよりも、顧客の要求する個々のスペックに応じて価格付けをする結果、価格が多様になるということで、本来の一物一価ではない点に注意すべきです。

いずれにせよ、アマゾンの実験は、米国におけるネット・ショッピングの世界の苦悩を現していると思います。つまり、情報の完全化により、一物一価に収斂する価格競争からいかに逃れて利益を確保するかです。そして、最近流行りのCRM(Customer Relationship Management)とも絡んできます。これらの問題に対する実験はまだ始まったばかりですが、ネットの情報伝達の力は侮れないことだけは確認できましたね。アマゾンさん、ご苦労様でした。



お知らせ:昨日の話題は「The Global Most Admired Companies」 でした。



トップ・ページへ