これまでの話題(2000年9月後半)

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2000年9月29日(金)〜30日(土)

「The Global Most Admired Companies」

今年の2月29日付「今日の話題」にて、フォーチュン誌が毎年発表する"America's Most Admired Companies(AMAC:米国で最も賞賛される企業)"を話題にしました。今日は同誌の最新号(Oct 9)で発表された"The Global Most Admired Companies"トップ25をご紹介したいと思います(括弧内はフォーチュン誌の産業区分)。

1位:General Electric(Electronics, electrical equipment)
2位:Cisco Systems(Network Commun., Internet Tech.)
3位:Microsoft(Computer hardware, software)
4位:Intel(Computer hardware, software)
5位:Wal-Mart Stores(Retail)
6位:Sony(Electronics, electrical equipment)
7位:Dell Computer(Computer hardware, software)
8位:Nokia(Network Commun., Internet Tech.)
9位:Home Depot(Retail)
10位:Toyota Motor(Motor vehicles)
11位:Southwest Airlines(Airlines)
12位:Lucent Technologies(Network Commun., Internet Tech.)
13位:Goldman Sachs(Securities, diversified financials)
14位:Berkshire Hathaway(Insuranse)
15位:Coca-Cola(Beverrages)
16位:Charles Schwab(Securities, diversified financials)
17位:Johnson & Johnson(Phamaceuticals)
18位:Citigroup(Securities, diversified financials)
19位:Ford Motor(Motor vehicles)
20位:Pfizer(Phamaceuticals)
21位:Merck(Phamaceuticals)
22位:Walt Disney(Entertainment)
23位:American Express(Securities, diversified financials)
24位:United Parcel Service(Mail, pkg., freight delivery)
25位:Enron(Energy transmission provider)

ちなみに、グローバルな賞賛企業を選んだ評価項目は次の9つです。つまり、経営の質、製品・サービスの質、革新性、長期的投資価値、財務の健全性、人材確保、資産の利用、社会的責任、グローバル・ビジネス展開、です。AMACと比べると最後の項目が増えています。これがなければ、"Global Most Admired "にはならないですからね。 この9つの評価カテゴリー別にみると、それぞれのトップは次の通りです(括弧内は(AMAC)のトップ)。

マネジメントの質:General Electric(Enron)
製品・サービスの質:New York Times(Omnicom Group)
革新性:Enron(Enron)
長期的投資価値:Home-Depot(Microsoft)
財務の健全性:Fuji Photo Film(Microsoft)
人材確保:General Electric(Goldman Sachs)
社会的責任:Target(Mcdonald's)
資産の活用:Home-Depot(Berkshire Hathaway)
グローバル・ビジネス展開:Nestle(該当なし)

Asktakaは上記の情報だけでもよく見るとなかなか面白いと思います。だが、それではかってのピラミッド型の組織のミドル・マネジメントと同じでメッセンジャー・ボーイだ、といわれそうですね。そこで、簡単にコメントしましょう。

先ず、今年のトップ25の特徴は、“ニューエコノミー・スタイルの成長戦略をとりながら財務面ではオールドエコノミーのアプローチ”を取っている点にあると同誌は述べています。GEはこの3年間連続してトップの位置を維持しているのをはじめ、シスコシステムズ、ソニー、トヨタ、シティコープなどが順位を上げています。

また、ノキア、ゴールドマン・サックス、チャールズ・シュワブ、UPS、エンロンが新たにトップ25入りしました。逆に、IBM、ヒューレット・パッカード、AT&T、P&G、ダイムラー・クライスラーなどかっての常連企業がリストからに去り、新旧交替の感がありますね。

評価項目別にみると、GEとホーム・デポが二つの項目でトップになっていますが、エンロンが革新性で、NY Timesが製品・サービスでトップになっているのが目に付きます。そして、富士写真フィルムが財務の健全性でトップに立っていますが、日本でもっと注目されていいと思いますね(でも、この会社は外見はともかく、とても泥臭い会社なんですよ・笑。関係者の方がいらっしゃったらご免なさい)。

何だか事実を述べただけになりましたね。以前にも述べましたが、こうしたランキングは自社の手本とする企業を発見するという活用法があると思います。皆さん自身で上記の中から注目する企業を決めて、その企業を定点観測することをお薦めします。新聞、雑誌はもちろん、その企業に関する書籍やホームページなどを絶えずチェックすれば、生きたマネジメントのテキストになるはずです。さて、皆さんはどの会社を選択しますか?



お知らせ:昨日の話題は「市場経済至上主義に対する風当たり」 でした。



2000年9月27日(水)〜28日(木)

「市場経済至上主義に対する風当たり」


どうも最近“市場経済至上主義”に対する風当たりが強まっています。かくいうAsktakaも、時価総額最大化などの行き過ぎた株価至上主義、株式市場偏重には疑問を投げかけてきました。ところが、この“市場”というのが曲者で、話を分かりにくくしていると思うのです。

Asktakaは、市場を大きく次の3つに分けて考えることにしています。

1.金融市場
2.製品・サービス市場
3.労働市場

市場経済至上主義とは、本来こうした3つの市場がボーダレスになって、グローバルに自由競争が行なわれることを良しとする考え方を指すと思います。ところが、最近はこの3つの中の金融市場=市場経済と捉えて議論している論調が目に付きます。つまり、市場経済至上主義に対する風当たりの強さは、主に金融市場に対するものなのです。つまり、「市場は支持しない」とか「市場は許さない」などの経済紙誌や関係者の発言は、株式市場や為替市場などの金融市場を指していることは明確です。

ところで、もともと市場に委ねるという意味は、人間あるいは政府が全体を見渡せる能力がないゆえに、市場に価格決定や富の分配を任せるということです。従って、ソロス氏も指摘しているように、金融市場を合理的に管理できると考えること自体に無理があるのです。市場至上主義の風当たりが強いのは、実はこのへんの管理不能による無法地帯化への危惧の現われではないでしょうか。

さて、昨今の市場(経済)至上主義に対する批判は、こうした金融市場を対象にするものですが、他の二つの市場と混同しないように留意すべきだと思います。Asktakaは製品市場及び労働市場は、もっと市場至上主義になるべきだと思います。何故ならば、この二つは地理的、物理的制約もあって、まだ十分に 競争のメリットを享有していないと考えるからです。日本企業の将来を考える上で、競争原理の導入という意味での市場主義を徹底させることが、体質の強化につながると思うからです。

幸い、IT革命によって情報の伝達コストと伝達に要する時間が著しく削減され、情報の不完全さや地理的な制約などが一掃される結果、限りなく完全競争に近づき一物一価(同質の財・サービスは同一価格)が実現されそうです。 従来激しい競争の波にもまれてきたものは新たな戦い方が求められ、これまで競争とはあまり縁がなかったモノやサービスの世界にも市場原理の波が押し寄せているのです。

こうした環境下で、今こそ製品・サービス市場や労働市場での競争と市場主義の意味を十分に考えるべきではないでしょうか。少しナイーブかも知れませんが、Asktakaは、市場での競争こそ飛躍の原動力であると信じている一人なのです。


<余談>
昨日の日経の「大機小機」によると、インターネットの世界では「一物百価」「一人一価」が横行し、「一物一価」が崩壊したような話がまことしやかに伝えられているそうです。だが、この話は、IT革命によって情報の伝達コストと伝達に要する時間が著しく削減されるという本質を見失っています。 つまり、それによって情報の不完全さや地理的な制約などが一掃される結果、限りなく完全競争に近づき一物一価になると考えるべきだと思います。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(34):“シュルツ・スターバックス会長兼CEO”の言葉 」 でした。



2000年9月26日(火)

「今日の言葉(34):“シュルツ・スターバックス会長兼CEO”の言葉 」

今や“スタバ”を知らない人はいないでしょう。このスターバックスを今日の形にした実質的な創業者が、ハワード・シュルツ(Howard Schultz)会長兼CEOです。ベストセラー"POUR YOUR HEART INTO IT(あなたの心を注ぎなさい)"(邦題『スターバックス成功物語』)を著しているので、ご存知の方も多いと思います。

同氏は73年にノーザンミシガン大学を卒業後、ゼロックスの販売職を3年間勤めた後、コーヒーショップにコーヒー挽き器などを販売する会社に転職しました。その後、シュルツ会長はスターバックスに入社し、現在の店舗コンセプトでの展開を提案したのですが、受け入れられず、退職して86年に自分で店を開店しました。この店の成功によって、翌87年に投資家の支援を受けてスターバックスを買収し、このブランドで店舗展開をはじめたのです。その後の快進撃は、ご承知の通りです。

スターバックスの成功の秘密は、シュルツ会長の社員(パートを含む)を大切にする経営哲学にあります。この点は、同氏の次の言葉を聞けばよく理解できると思います。

「成功はともに分かち合ってこそ最高の価値があります。顧客を大切にするには、先ずは社員を大切にすることが必要です」

「今日の世界では、経営者は顧客だけでなく社員との密接な関係が必要です。私たちは社員との交流を更に深めたいと思っています」

これを裏付ける話としては、89年にパートにもストック・オプション(基本給の14%を上限にして自社株購入件を与えられ、同年度の取引初日の終値が権利行使価格とされる)と総合健康保険制度を導入しました。こうした試みは米国では初めてのことでもあり、株主からは不評だったそうです。しかし、シュルツ会長は、“当初一株あたり利益は減少するかもしれないが、これが上手くいけば離職率が減り、業績も大きく伸び、その結果利益は必ず増加する”といって株主を説得したのです。

時価総額至上主義や株主至上主義が目に付く米国企業ですが、こうした社員重視を貫いている企業も成長を続けているということは、日本企業のトップにとっても勇気付けられると思います。もっとも、企業が変身する上で社員重視の姿勢もさることながら、従来の社員をどう活性化するかの方が重要かもしれません。頭が痛いですね。


(注)
上記はエグゼクティブ・サーチ会社のトップThomas NeffとJames Citrinが書いた、Lessons from the Top: The Search for America's Best Business Leadersを参考にしました。



お知らせ:昨日の話題は「財政赤字問題の背景」 でした。



2000年9月25日(月)

「財政赤字問題の背景」

話は96年に遡りますが、悪名高き97年4月の消費税の増税に先立ち、財政構造改革の大合唱が起こりました。その背景には、“財政赤字が膨らんで将来的に日本は破産の危機にある”という認識があったことは間違いないと思います。そのへんの危機感を煽ったのは大蔵省で、それに乗ったのは当時の橋本総理だったわけです。

ところが、実は当時は日本は諸外国に比べて、それほど財政赤字が問題ではなかったことが明らかになっています。つまり、GDPに占める政府の債務残高をみると、90年代半ばまで先進諸国の中では優等生だったのです。大蔵省は姑息な手段を使って、財政赤字を演出したのですが、その仕掛けは次の通りです(山家悠紀夫氏の『偽りの危機 本物の危機』(東洋経済新報社 1997/10)を参照)。

ヨーロッパの先進国は社会保障費を税金で賄っているのですが、日米は社会保障費を別途積み立てているのです。そのため比較する場合は、積立金を加える必要があるわけですが、大蔵省は意識的にこうした調整を行わず財政危機を強調したわけです。

このように実態を隠して消費税を増税した結果、回復しかけた景気を再び低迷させ、財政優等国から真の財政劣等国へと転落しようとしています。すなわち、日本の純債務残高はGDP比でみて、97年以降急増し、ドイツ、フランス、米国、英国と同水準の40%前後に近づきつつあります。そして、トレンドをみると、この1、2年で米国と英国を上回る可能性があります。

こうした背景から、最近財政赤字に対する取り組みについて、政治的にも話題になっています。小泉純一郎氏が財政赤字を無くすために、民営化などの抜本的な手段を講じるよう求めているし、加藤紘一氏も財政改革派です。まさか、97年の政策不況の二の舞はないと思いますが、ここは財政赤字の実態といくつかの財政再建のシナリオが必要ではないでしょうか。

Asktakaは、大蔵省のパワーが失墜したのは、単にバブル時の過剰接待問題ではなく、97年の失政の影響も大であると思っています。ここは信用回復と罪滅ぼしを兼ねて、大蔵省は財政再建のシナリオと最適な政策オプションを世に問うべきだと思います。そして、今度こそ小さな政府か、大きな政府かといった真摯な議論を国民の分かる形でやってほしいものです。

政治家に任せていても、決していい結果にならないと思うのです。Asktakaは別に政治家に恨みがあるわけではないですが、官僚の力を有効に使わなければ、それこそ税金の無駄遣いですからね。(笑)



お知らせ:昨日の話題は「MBOを考える」 でした。



2000年9月22日(金)〜24(日)

「MBOを考える」


最近、M&Aの話題の中でMBO(Management Buy Out)がクローズアップされています。しかし、企業側の経営手法としてよりも、ファイナンスの観点から述べられていることが多いと思います。そこで、今日は日本で経営手法としてMBOをどう定着させるか、といった視点から述べてみたいと思います。

先ず、MBOとは、一般的には経営陣が株主から株を買い取り、オーナーになることを意味します。具体的には、企業の事業部長や子会社の経営者が、ベンチャー・キャピタルや投資銀行などの資金援助を受けて、企業の一部門や子会社を買い取ることをいっています。こうした企業内部の人、インサイダーが買収するという意味で、MBOは通常のM&Aとは異なり、アウトサイダーによる買収よりも成功確率が高くなると予想されます。

三菱総研の調べによると、日本でのMBOは98年以前には皆無でしたが、98年には9件、99年には15件と急増しました。そして、99年の取引総額は前年の5倍以上、297億円となりました。MBOを行った理由は、「企業による事業売却」が全体の6割を占め、MBOの提案者は経営陣が53.6%、売り手企業が25.0%、ベンチャー・キャピタルが21.4%となっています。 調査を担当した三菱総研では、「市場はまだ未成熟で、成功、失敗の判断はつかない」と述べています(8月18日付け「日経朝刊・13面」より)。

具体的な主な事例は次の通りです(日経四紙の記事検索より)。

1.ICS国際文化教育センター(留学斡旋会社、98年12月)
2.日本高純度化学(半導体プリント基板の貴金属メッキ液、99年9月)
3.東燃・診断薬事業→先端生命科学研究所(99年9月)
4.住商アリス(事務用品宅配、99年10月)
5.高杉三重住宅販売(住宅会社、99年12月)
6.日本建設コンサルタント(建設コンサル、99年12月)
7.プラウドフット・ジャパン(業務改善コンサル、00年6月)

こうした日本におけるMBOの現状をみると、事業承継や事業の集中と選択に伴うものが大半です。ただ、プラウドフット・ジャパンのケースは、英国本社の方針との違いによるものです。そして、最初の本格的なMBOの事例として注目されたICS国際文化教育センターのように、MBOを行った社長とジェフコ(投資会社)との意見の違いから、早々に社長が退任したケースもあります。前述した三菱総研のコメントのように、軽々にMBOの成否を語るべき時期ではないかもしれませんね。

しかしながら、AsktakaはMBOというM&Aの手法が日本企業の規模を問わず、定着してほしいと思っています。その理由は、大企業についてはこの手法やMBI(Management Buy In、投資目的で資本参加と経営指導を行うやり方)によって、事業の取捨選択を促進し、事業ポートフォリオの改革に役立つからです。それから、同族会社あるいはオーナー会社にとっては、事業承継の手法として使えると思うからです。

現状では、MBOが定着するためには次の課題があると思います。

1.M&A一般に対する抵抗感
2.経営トップのMBO、MBIを含むM&A手法に対する理解不足
3.幹部等インサイダーのMBO、MBIを含むM&A手法に対する理解不足
4.ベンチャーキャピタル等投資会社の力不足、人材不足
5.独立希望の経営者と支援する投資会社の役割分担、利害調整などのルールづくり

上記について、一々解説しませんが、欧米ではMBOファンドの利益率の高さに注目して、投資会社が投資先を躍起になって探しているという構図が目に浮かびます。経営再建中の企業や不採算部門にMBOやMBIを行い、投資先の株式公開、上場によって多額の売却益を得ようとするものです。Asktakaの独断と偏見でいえば、こうしたファイナンスの側面が強いことが、MBOなどの一層の普及のネックなるのではと危惧しています。というのは、多くの企業のトップにとって、まだ金融機関に対する不信感は一掃されていないと思うからです。

MBOやMBIは、あくまでも企業を再生する経営手法として考えるべきではないでしょうか。当該事業にとってどのような方法が改革や再成長にとって適切か、この点が先にありきでなければ成功するわけがありません。ICS国際文化教育センターの社長解任は、投資銀行の論理が前面に出たもので、この一件がMBOを考えていた人たちを尻込みさせたことは間違いなさそうです。

企業側は投資銀行に踊らされることなく、本体及び売却を考える部門の事業戦略の再構築を優先すべきではないでしょうか。皆さんは、どうお考えですか。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(33):“スミスFDX会長”の言葉 」 でした。



2000年9月21日(木)

「今日の言葉(33):“スミスFDX会長”の言葉 」

今日はFedEx(フェデラル・エクスプレス)の創業者で、現会長兼社長兼CEOである、フレッド・スミス(Frederick W. Smith)の言葉を紹介しましょう。経営トップを目指す方々の参考になると思います。

「どんな組織のCEOでも、第一に戦略家でなければならない。ドラッカーの言葉を借りれば、ビジネスについて理論を持つ必要があるということです。どんなビジネスでも変化します。また、ビジネスは人々が望む以上に頻繁に変化すべきものだ。従って、どんな組織にも明確なビジョンをもつ、戦略的能力や分析力に優れた人物が必要なのです」

「第二に、CEOは優れた人材を自分の周りに集めて、出来るだけ権限を委譲すべきです。巨大な組織は一人の経営能力だけでは築けません。経営チームの力の結集が必要なのです」

「第三に、CEOはタフでなければいけません。経営という大きな緊張を強いられる仕事だからです」

「第四に、人とのコミュニケーションを図ることです。内部の人間だけではなく、外部のキーとなる人々と上手にコミュニケーションをとることが大切です。今日、大企業が直面する危険は内部的なものではなく、競合他社や政府など外部との関係に由来するものが多いからです」

「最後に、ITの可能性について基本的に理解しておくことが肝要です。今日、それを知らなかったり、遅れを取ったりすれば、致命的な失敗を招くことになります。ITの専門家である必要はないですが、ITがビジネスやプロセス を根本的に変えてしまうこと、更にそれが自社のビジネスにどう影響するかを理解すべきです」

スミス会長は、エール大学在学中に現在のビジネスのアイデアを論文にまとめ、その後現在のFDXを作り上げた人物です。それだけに、同氏の言葉は、ベンチャーから大企業まで、トップのあるべき姿を明確に示していると思います。

Asktakaは、トップを目指す方々が、“ビジョンを持つ戦略家”“優れた経営チーム”“タフネス”“コミュニケーション”“IT理解者”という5つのキーワードの意味するところを自分なりに咀嚼して、独自の経営理念を構築することを願っています。


(注)
上記はエグゼクティブ・サーチ会社のトップThomas NeffとJames Citrinが書いた、Lessons from the Top: The Search for America's Best Business Leadersを参考にしました。



お知らせ:昨日の話題は「今日の言葉(32):“ウェルチGE会長”の言葉 」 でした。



2000年9月19日(火)〜20日(水)

「今日の言葉(32):“ウェルチGE会長”の言葉 」

ジャック・ウェルチ(John F. Welch, Jr.)GE会長&CEOの名前を知らない人はいないでしょう。1935年生まれの同氏は、57年にMITを卒業し、60年にはイリノイ大学で化学工学のPh.Dを取得しました。つまり、わずか3年でドクターを取った後60年にGEに入社し、81年に会長&CEOに就任、20年間GEのトップの座にあったわけです。

ウェルチ会長が注目されるのは、もちろんGEの業績が素晴らしいからです。この20年間で、GEは売上、利益、市場占有率を順調に伸ばし、この3年間はFortuneの"The Global Most Admired Companies"のトップにランクされています。そこで、今日は同氏の言葉を紹介しましょう。

「この職務について20年になるが、私たちは3つの基本的なことをやっただけです。まずハードウエアを変え、次に職場環境を変え、そして仕事のやり方を変えたのです」

ハードウエアの改革とは、事業領域を決め、一番か二番でなければその事業から撤退するという方針を貫いたことを意味します。職場環境の改革は、組織の垣根を取っ払いアイデアを共有することです。最後の仕事のやり方を変えるという意味は、品質を重視するやり方を徹底することで、シックスシグマによってこれを実現させました。

ウェルチ会長は、この3つの基本方針を社内に徹底させるために、自分の時間の6割以上を社員との会話に使い、繰り返しメッセージを伝えているのです。 具体的には、“去年、わが社の業績は国内では6%、世界全体で17%伸びた。この結果を見れば、何故グローバル化が必要かは分かるだろう”とか、“シックスシグマに熟練しないものは昇進できない”など、やや誇張した言い方を含めて、繰り返しメッセージを伝えているのです。

Asktakaは、この意味でウェルチ会長は、ビジョン、理念、方針の伝道者であり、変革のリーダーだと思います。

今、日本企業には20年といわず、10年で変革を推進するリーダーが求められています。リーダーを目指す人達は、ウェルチ会長の言葉を肝に銘じるべきではないでしょうか。


(注)
上記はエグゼクティブ・サーチ会社のトップThomas NeffとJames Citrinが書いた、Lessons from the Top: The Search for America's Best Business Leadersを参考にしました。



お知らせ:昨日の話題は「首都機能移転問題に思う」 でした。



2000年9月18日(月)

「首都機能移転問題に思う」


扇国土庁長官の首都機能移転問題に対する発言で、多くの方々がこの問題に注目し始めたことは幸いに思います。かくいうAsktakaも、この発言と本HPのお客様がご自分のサイトのコラム「建築落ち穂拾い」(こちら)の中の9月13日付の記事によって、改めてこの問題の進展を知りました。

Asktakaは、最初に結論を言うと、現状では首都機能移転に反対です。その理由は、東京の一極集中の弊害を是正するという狙いがあるにせよ、その手段は何も首都機能移転だけではないと思うからです。それから、この問題は日本列島改造論の流れをくみ、四全総以来の“国土の均斉な発展”という文脈の中で、ハード志向の公共事業のばら撒きと利権の臭いがするからです。

先ず、日本列島改造論にせよ四全総にせよ、それ自体は全国民にビジョンを示すもので、これにどうこういうつもりはありません。しかし、少しうがった見方かもしれませんが、こうした発想は、実は自民党の集票システムと密接に関わっていることは、少し政治的センスのある方にはお分かりだと思います。首都機能移転についても、一極集中を是正するという大義名分のもとに、こうした従来型の政治的発想の延長線上にあることは間違いないと思います。先の衆議院選挙の結果を見ても、このような利益誘導型の政治手法は、今後は通用しないことは明らかではないでしょうか。

次に、東京の一極集中の弊害を是正する手段についても、何も司法、立法、行政の三権の首都機能を移転するだけではないのです。真の意味で地方分権を実現して、予算規模、人員ともに現在の半分程度にしたり、地方に権限を与えて地方での企業誘致をしやすくするなど、やるべきことはたくさんあります。にもかかわらず、最初に首都機能移転ありきでというのはどういうことでしょうか。

ところで、Asktakaは何も闇雲に首都機能の移転に反対しているわけではないのです。国土庁の海外の首都移転の事例を見ても、ワシントン(USA、1800年遷都)、キャンベラ(豪、1927年)、ブラジリア(ブラジル、1960年)、ベルリン(独、1999年)、プトゥラジャヤ(マレーシア、1999年首相府完成)の5つがHPに掲載されています。これを見てもドイツは東西統一という特殊事情があるので除外すると、先進国で最近遷都した例はありません。先進国日本が、21世紀おける新生日本を目指して遷都するのであれば、先ず新たな政治経済システムのビジョン、グラン・デザインを示すべきではないでしょうか。

つまり、東京の一極集中は、日本の戦後の政治経済システムの歴史の縮図だと思います。換言すれば、政官主導あるいは行政指導という名のもとの官主導のシステムが東京への集中を促した点は否めません。首都機能移転という前に、こうした従来のシステムを一新するビジョンが先にあるべきだといいたいのです。

そして、首都機能移転の経済効果をもっと検討すべきです。建設から国会移転までの10年間で、約4兆円の移転費用がかかるそうですから、若干GDPを押し上げる効果はあります。しかし、その他のメリットとともに、企業活動の効率が悪くなる可能性も検討すべきではないでしょうか。

最後に、この問題に関して国民はどの程度関心があるのでしょうか。盛り上がっているのは国会議員と一部の業界というのでは話になりません。国民の知らない間に首都機能移転及び移転先が決定しないように、今後はもっとこの問題に注目しようではありませんか。そして、政府も国民の関心を高め、国民投票にゆだねるくらいの気持ちで首都移転を検討すべきではないでしょうか。 さて、皆さんはどうお考えですか?


(注)

<首都機能移転の意義>
首都機能(三権の中枢機能)の移転は、東京の一極集中の是正、国土の災害対応能力の強化、東京の潤いある空間の回復等に寄与し、国政全般の改革と深く関わる、重要な課題である。(国土庁のホームページより)



お知らせ:昨日の話題は「中古本の革命児“ブックオフ”」 でした。



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