これまでの話題(2000年1月前半)

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2000年1月14日(金)

「デジタル時代の教育改革」

かってケネディ大統領は「わが国の将来は教育の質にかかっている」と語ったそうです。こうした言葉に加えて、21世紀は知識やアイデアが経済の原動力になると認識している米国では、初等、中等教育改革が動き出しています(高等教育は世界一ですから問題ないのです)。私は、米国の国家戦略が原点の教育に戻って再構築されると考えると、なんだか背筋が寒くなります(ニューズウィーク誌、99年12月6日号より)。

米国では、グローバル化とデジタル化が進む現代社会にマッチした教育を提供するための変革はすでに始まっています。優れた教師と校長、質の高い授業、教師の責任感、これらを実現するための十分な資金があれば教育改革は成功する、とクリントン大統領は考えています。

更に、大統領が提案している教育改革案では、連邦政府は自治体に助成金を支給する条件として次の5つの条件を満たすことを求めることができます。

1.教育水準を一定に保つこと
2.教師の能力を向上させること
3.基準に満たない生徒を安易に進級させないこと
4.学校の規律を維持すること
5.学校に対する評価を公表し、親が十分な情報をえたうえで公立学校を選べるようにすること

もちろんこの前段には、全米の学校が達成すべき目標が設定されているのです。そして、お金の見返りとしてアクションを求めているのです。どこかの国と違って、なんとも鮮やかなやり方ではないでしょうか?

それに比べて、日本の教育はどうなっているのでしょうか?問題は山積みですが、これを官界一の無能集団、文部官僚のせいにすることは簡単です。だが、その前に政治家の教育理念とリーダーシップが不可欠です。教育問題に熱心な政治家は右寄りばかりでは話になりません。

日本が教育の現場で真剣にデジタル時代を見据えていないことは、学校のコンピュータ設置状況やインターネット接続状況を見れば分かります(「学校における情報教育の実態等に関する調査結果 (平成10年度)」、文部省)。

コンピュータ設置状況をみると、小学校では長野県、岐阜県が1校当り19台でトップクラス、一方北海道は5台程度と4倍の差があります。また中学校では愛知県、岐阜県が1校当り40台以上設置しているのに対して、北海道や沖縄では20台強しか設置していません。

それから、インターネット接続状況では、小学校、中学校ともに岐阜県は全校で接続しています。だが、他の都道府県をみると、小学校では福島、長崎、広島などが10%未満で、中学校でも東京、長崎は10%台と自治体による差は大です。

この現状をみて皆さんはどう思われますか?asktakaは難しい教育改革を論じるよりも、日本の場合は先ずコンピュータ設置やインターネット接続で遅れている自治体をターゲットにしてキャッチアップさせるべきだ、と思います。それにしても教育の現場に目標管理とは、アメリカもなかなかやるもんだ。日本も見習ってはどうでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「B2B急成長の背景」でした。


2000年1月13日(木)

「B2B急成長の背景」

米国で企業間電子商取引(B2B)が注目されているというお話は、本ページでも何回か取り上げました。今日はビジネスウィーク誌の記事から、B2Bがもてはやされている背景について紹介しましょう(1月17日号、pp.42-43、Webはこちら)。

先ず、デロイテ・コンサルティングは、来年中に米国企業の91%はネットを通じて購買を行うと推定しています(現在は31%)。また2003年までに、B2BはB2C(消費者向け)の6倍の規模になると予測しています。

このように米国企業がB2Bに熱心なのは、コスト削減効果が明らかだからです。 ニューヨーク連銀の研究結果によると、B2Bブームにより一層の低価格化、生産性の向上、労働コスト削減が実現することを示しています。

具体的には、ゴールドマン・サックスによると、エレクトロニクスや航空業界ではB2Bにより20%以上コストが削減されます。そして全体では12.5%のコスト削減が実現すると結論付けています。BW誌の表に基づき、産業別にコスト削減効果をランキングすると次の通りになります(下記の括弧内はコスト削減幅(%)を示す)。

1位:電子部品(29-39%)
2位:機械(22%)
3位:木製品(15-25%)
4位:空輸(15-20%)
5位:生命科学(12-19%)
6位:コンピューティング(11-20%)
7位:メディア・広告(10-15%)
8位:航空宇宙機械(11%)
8位:鉄鋼(11%)
11位:化学(10%)
11位:メンテ・リペア他(10%)
11位:製紙(10%)
14位:通信(5-15%)
14位:石油・ガス(5-15%)

その他、ヘルスケア、食材、石炭は5%以下です。

上記のコスト削減は、従来の紙や電話、ファックスによる取引をインターネットによる電子商取引に置き換えた結果実現したものです。もちろん、このプロセスに移行するには、これまでの業務フローを見直し人手を削減してきたのです。

問題はこうしたコスト削減によって、米国企業が一層コスト競争力を持つということです。B2Bでは大幅に遅れ、かつまだ真の意味でのリストラが進んでいない日本企業の近未来はどうなるのでしょうか?

まだまだ日本企業は危機感欠如シンドロームを患っていると思います。asktakaはY2K問題を煽った人達と同様な行動に出ようというのではないですよ。日本企業の工場勤務者の賃金は米国の2倍で、更にB2Bでコストに差がつくとすれば、簡単な算数で結果はみえているではありませんか?日本企業はB2Bの推進を含めて改革の実行あるのみだと思うのですが、いかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「老人パワーを活かす法」でした。


2000年1月12日(水)

「老人パワーを活かす法」

この動きの早いご時世でも、政財界では老人パワーがいまだに衰えていません。年頭の挨拶の顔ぶれや後継トップ人事の話題をみると、この感が強くなります。この際政界の話はさておき、ビジネス界における老人パワーの行方を述べてみたいと思います。

こうして大上段に構えて老人パワーを云々すると、すかさず高齢の経営トップが大好きなサムエル・ウルマンの“青春とは心の様相をいう”とかいう詩を口にする方々が多いのです。そして“わが心意気はまだまだ青春時代と変わらない”ので、老人パワーではなく“青年パワー”だなんてことになります(一番下に「青春の詩」の全文を掲載)。

だが待てよ、とasktakaは思うのです。そうしたパワーを誇示すること自体が、すでに精神が老いた証拠ではないかと。心身ともにバイタライズされているのであれば別にどうこういうことはあるまいに、と思うのです。団塊世代のasktakaとしては、この気持ちはよく分かるのです。

しかしながら、日本企業の動きの遅さは、老人パワーとは無縁でないとなれば話は別です。つまり、長老やベテラン幹部がかっての成功体験を引きずっていて、いくら中堅幹部や若手が危機感をもって変革しようとしても会社は動かないということはないでしょうか?そうだとすれば、老害が21世紀の日本経済に禍根を残すことになります。

この場合、思いきって後進に道を譲るのが名経営者としての務めだと思うのです。後継者が育っていないですって。それは経営トップの3番目の重要な役割なんですがね。でも戦後のトップの意図せざる若返りを見ても、さほど混乱はないと思いますが。ちなみに、2番目は事業の木の種をまくことで、1番目は育った枝を剪定し幹を含めて木全体を更に大きくすることです。

ところで、これから世界一の高齢化社会に突入する日本にとって、老人パワーをどう活用するかが重要な課題です。では、どうすべきでしょうか?

私は簡単化のために、経営トップとノウハウや技術をもつ専門職とに分けて考えた方がよいと思います。

経営トップには功績に応じて悠々自適に生活できるように功労金を十分に支払い、後はボランティア活動に精を出していただく。これまでの企業経営の知恵を社会に還元していただくのです。無報酬で三セクとか官がらみの赤字団体の面倒をみていただければ一石二鳥ではありませんか。

次に、専門職に関しては、プロとして社内の技術の継承に携わっていただきます。あるいは、何社かがすでに行っているように、プロの集団として分社化して本社や外部にサービスを提供するのです。もちろんプロであれば社外でも引っ張りだこですが。

ではこれ以外の方々はどうするか。65歳まで雇用延長の動きはありますが、これはやや難問かもしれません。が、介護を含めたサービス分野には活躍の場はありそうです。高齢化社会においては、気心が知れた同世代同士がサービスし合う形がありえると思います。少し元気な高齢者が他の人の面倒をみたり、中高年向けスポーツクラブのパートタイム・トレーナー、等々です。

こうしてみると60代以上の方々が活躍する場は随分ありそうですね。何せ2025年には50歳以上が約5割、65歳以上3割弱を占める世の中ですから、老人パワーを積極的に活用すべきだと思います。こうしたムードを盛り上げ、率先垂範すべきなのは現在のビジネス界のリーダーではないでしょうか?長老経営者の皆さん、最後の仕上げにもう一働きしていただけませんか?


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サムエル・ウルマンの『青春』は、「老年讃歌というより、むしろ若い人たちに人生いかに収穫すべきかを問うているのではないか」(角川文庫「青春とは心の若さである」巻末解説より)という指摘もある。そこで、ご存知でない方のために以下に全文を示します。

サムエル・ウルマン「青春」の詩


青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。

優れた創造力、逞しき意志、燃ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、

安易を振り捨てる冒険心、

こういう様相を青春というのだ。

年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる。

歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失うときに精神はしぼむ。

苦悶や、孤疑や、不安、恐怖、失望、

こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ

精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。

曰く 驚異への愛慕心、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる

事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、

小児の如く求めて止まぬ探究心、人生への歓喜と興味。


  人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる。

  人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる。

  希望ある限り若く  失望と共に老い朽ちる。


大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、

そして偉力の霊感を受ける限り、人の若さは失われない。

これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、

皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、

この時にこそ人は全くに老いて、神の憐れみを乞うる他はなくなる。

(岡田義夫訳;宮沢次郎著「感動の詩賦・青春」、致知出版社刊、所収)


お知らせ:昨日の話題は「パソコン配布かNGOの草の根発信か」でした。


2000年1月11日(火)

「パソコン配布かNGOの草の根発信か」

先日の「今日の話題」にて、インターネットを定着させるためにパソコンの全世帯配布を提案しました。どうせ予算をばらまくなら思いきってやったら、といった軽い乗りでasktakaがいっているとお考えの向きもあるようです。しかし、私はこれを案外真面目に提案しています。

もちろんインターネットの波は既に全世界を飲み込んでいます。もう流れは止まりません。自然の流れに任せても、時間差はあっても日本でも普及することは間違いないでしょう。

しかし、急速に進むネット化への流れを更に早めようとすれば、ネットが一般家庭に普及するための条件を整理しておく必要があると思います。つまり、基本的には次の条件が整うことが不可欠です(企業向けの条件については別の機会に譲ります)。

1.使いやすくて安価なプラットフォームやインターネット端末が供給される

2.安い料金で接続、通信できる

3.コンテンツが充実

この3つの条件が一体となってクリアされて始めて、ネット普及の環境が整備されたといってよいでしょう。こうした視点で考えた場合、1は米国に比べてほぼ同一だとしても、2と3は大きく劣っています。

インターネット接続料は欧米と比べても遜色はありません。だが、アクセスポイントまでの通話料は、月15時間接続した場合、ニューヨークでは600円台で東京では約2000円となり約3倍です。ちなみに、ニューヨークの場合、1通話ごとの固定料金となるため1回当たりの通信時間が長くなるほど割安となりますから、実際はもっと差が開きます。

コンテンツについては、さすが新聞や雑誌系は頑張っていますが、その他の官民、個人のコンテンツは量と質からいってまだまだ見劣りします。この点は、皆さんも実感されていることでしょう。

上記の2点については、政府が直接やるべきことは余りありません。ただ、NTTをJRのように地域に分割すれば、需要の多い大都市圏はもっと低価格でサービスを受けることが出来ると思います。すでに一部のCATVでは、接続料と通話料込みで月6000円でインターネットがやり放題ですから、もうすぐ5000円を切るのではないかと期待しています。

ところで、1月10日付の日経本紙の「News反射鏡」欄にて某編集委員は、パソコンを配布したり、大容量回線を普及させるといった政府の発想はばらまき予算の発想でかつ発想が貧弱である、と批判しています。そして、NGO(非政府組織)による草の根的な発信がなければ日本は真の世界的ネットワークを築けないと論じています。

私には、この編集委員氏の説は空論だと思うのです。もちろんNGOの活動は歓迎すべきですが、どうせばらまく予算なのですから重点的に使えばいいのです。そして真のネット社会は情報リテラシーの向上抜きには考えられません。そのネックとなっているのは、キーボード・アレルギーだと思うのです。いくらデジタル家電やネット端末が普及しても、文字が無くならない限り、発信するにはキーボードを超える入力装置は無いからです。

各家庭で子供や大人達がパソコンを遊び道具にする環境こそ、真の草の的発信を生むものと思います。ネット社会での一部の高校生の質の高い活躍をみると、その感を強くするのはasktakaだけではないでしょう。

現在年間1000万台ほどのパソコン生産量ですから、全世帯にパソコンを配布すると需要は4倍強に増えます。問題もありますが、ネット社会の普及にとってはプラス効果の方が大きいと思います。皆さんは、どうお考えでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「アメリカ型市場経済への疑問」でした。


2000年1月8日(土)〜10日(月)

「アメリカ型市場経済への疑問」

米国でも自由主義型資本主義、つまりアメリカ型市場経済が、21世紀の世界標準になりうるかどうか疑問の声が出始めています。経済力を背景にした、現在の米国の“超大国”というポジションも同様です。最近のニューズウィーク誌ではこのような論調が現れました。これも世紀末のなせる技なのでしょうか?

確かに、米国は20世紀最後の十年を未曾有の持続的好景気で締めくくることになり、現時点ではアメリカ型市場経済が世界をリードしているといえます。特に、資本や金融業界では、アメリカン・スタンダードが世界標準 となっています。その結果、競争原理と株主重視といった米国型経営理念が資金調達の条件ともなっているのです。

しかしながら、ニューズウィーク誌も指摘しているように、世界の輸出総額は世界経済全体の22.7%を占め、90年の18.4%に比べ4.3ポイント増加しています。この割合が更に増加し、各国の相互依存関係、グローバル化が進んでいくと、モノづくりを中心とする実物経済の影響力が増すものと思われます。

そうすると、内需と国内雇用市場に依存している各国の経済システム、経営システムが、また脚光を浴びる日がくるかもしれません。かって80年代に日本的経営が世界を席巻したように。

やはり、どのようなシステム、理念が世界標準になるかは、経済的成功に依存している、と考えるのはasktakaだけではないでしょう。米国の景気も永遠であるはずはありません。米国のアウトソーシングを含めたスリムな経営システムや所得の二極化構造が、景気低迷期にはマイナスの方向に働く可能性は大です。そうなった場合、新たに世界標準マネジメントとして浮上するのはどこでしょうか?

恐らく金融や資本の世界は、アメリカン・スタンダードが今後も支配することになると思います。しかしながら、モノづくりから物流までビジネス・システムが一層複雑なメーカーやサービス業は、各国とも独自の歴史と文化を背景にせざるをえません。米国流世界標準をにらみながら、各国は新たな経営システムを模索する展開になるのではないでしょうか?

その際のキーワードは、ネット対応経営は当り前なので、シニアエージ対応経営と環境経営である、とasktakaは思うのです。こうした観点から、日本や欧州にも21世紀の世界標準の経営システムを生み出すチャンスは残されています。但し、英明でリーダシップのある経営トップに恵まれればの話ではありますが。(笑)



お知らせ:昨日の話題は「情報家電への期待と不安」でした。なお、情報家電、つまりデジタル家電に関して、asktakaはやや狭い視点から述べています。もう少し視点を広げて、近々「デジタル家電の将来」をテーマにして述べる予定です。


2000年1月7日(金)

「情報家電への期待と不安」

家電をインターネットのプラットフォームとする情報家電化の動きが活発です。家電技術は日本企業が競争優位を維持できる分野だけに、期待したいとは思います

ところが、またまた業界横並びの動きが出てきました。郵政省の肝いりで今月下旬から「情報家電インターネット推進協議会」を発足させようというのです。これを政府のミレニアム・プロジェクトの最重要課題、高速ネットの開発・普及の推進母体にするという狙いもあるようです。

こうした動きをみると、役人の主導権争いともからんで官民が仲良く手を取って歩む、従来と同じ手法が目に浮かびます。

そもそも情報家電の発想は、日本人のキーボード・アレルギーに由来します。周りをみても、特に50代以上の層にアレルギーが多いようです。 つまり、ネット利用を促進するにはキーボードを抜きに接続できる道を探ろうというものです。

確かに、キーボードに不慣れなお年寄りを対象に、インターネットを通じて介護サポートを行うといった、特定ターゲット向けの特定の目的には適しているかもしれません。

しかし、asktakaには、こうした方向で進んでいいのかという疑問があります。というのは、世界のネット社会はキーボード中心なので、1億人マーケットを相手に情報家電化を進めてどこまでメリットがあるのでしょうか。もちろん成長分野とされるデジタル家電の中であらゆる可能性を探ることは大切だとは思いますが・・・。

ただ、私はPalm(あるいはWorkPad)派ですが、iモードなど携帯電話などを使ったモバイルやインターネット端末は、世界を狙った展開が期待できると思います。上述した情報家電化の中には、こうした分野も入っている点が救いではあります。

ところで、私はネットを普及させる早道は、すでにパソコンが家庭に普及しつつある現在、もっと機能を絞って安いパソコンを提供し、電話代を大幅に下げることだと思うのです。

そして、どうせばら蒔くなら政府は思いきって全世帯にパソコンを配布してはいかがでしょうか?4000万世帯としてパソコンが10万円とすれば、4兆円あれば可能ですよ。“習うより慣れろ”といいますからね。

もちろんメーカー側もこのへんのことは十分承知していて、お役所の顔を立ててお付き合いしているものと思います。今更、横並びでやろうなんて企業は恐らく皆無だ、とasktakaは信じています。



お知らせ:昨日の話題は「ジャパニーズ・ドリームが花開く?」でした。


2000年1月6日(木)

「ジャパニーズ・ドリームが花開く?」

年頭のせいか日経の「大気小機」(1月5日)に景気のいい話がでていました。次の10年はジャパニーズ・ドリームが花開き、日経平均5万円時代が到来するというのです。株の世界はよく分かりませんので専門家にまかせるとして、ジャパニーズ・ドリームの実現について述べてみたいと思います。

先ず、米国の株価が過去10年でダウ工業株30種平均が5倍になったのは、米国企業のROE(株主資本利益率)が約10%から25%へ上昇し、長期金利が10年物国債利回りで8.9%から4.5%へと半分に下落したことによるとのことです。

この背景には、インターネットをベースにした多様なビジネスモデルの開発により、来るべき情報社会の産業構造や生活様式が見えてきたこと、その結果として第二のアメリカン・ドリームを先取りしたものだという。

そして次の10年は、これまで開発されたビジネスモデルに基づき改良を加え、より付加価値の高いビジネスを創造する時代になると予測しています。こうした時代は日本の得意とするところで、ジャパニーズ・ドリームが花開く時代が到来するというのです。

ちなみに、ROEが現在の2%から10%、長期金利が2%から4%になれば、現在の2.5倍の日経平均5万円時代がくると期待しています。5万円時代はともかく、ジャパニーズ・ドリームが本当に実現するのでしょうか?この点を考えてみたいと思います。

先ず、米国でいろいろなビジネスモデルが生まれたのは、IT技術の発達を背景に規制緩和と真のリストラが進展した結果といえます。そして、ベンチャーに投資するエンジェルの層の厚さも見逃せません。

日本の場合、規制緩和はまだ道半ばだし、リストラも中途半端で、官主導のベンチャー育成には期待出来ません。唯一、米国のベンチャーキャピタルやNASDAQには期待できそうですが。

いくら米国生まれのビジネスモデルを改良するといっても、こうした環境下ではモデルの応用範囲が限られてくるのではないでしょうか。

それから規制緩和が進めば、米国のビジネスモデルを創造した本家が上陸してくるだろうし、Amazom.comのようにインターネット・セーラーの場合は超国家ですからね。まさにボーダーレスで市場は一つです。

ただ、これも再販制度が問題なのですが、紀伊国屋書店などのように形だけインターネット・セーラーを真似ても値段が店頭価格と同じではインパクトはないですね。

もっと根本的な問題は、既存の企業が新たなビジネスモデルを手直しして導入するにしても、自社の戦略を明確にできるかという問題があります。 戦略的方向が見えなければ、かって競って高価な自動化機器を導入してその後廃棄したのと同様な結果となる可能性は高いと思います。この点になると、asktakaは根が深い問題だと思うのです。

では若きベンチャーの輩出に期待すればいいじゃないか、という声が聞こえてきそうです。だが、米国でさえ現在のように優秀な学生がベンチャーを目指すようになるには、20年以上かかっています。日本が米国の環境にキャッチアップするには、早くて10年は必要ではないでしょうか(この点については11月12日付今日の話題「ベンチャー振興の風土づくり」(こちら)を参照)。

こうして考えると大気小機氏がいうように、この10年でジャパニーズ・ドリームが実現、といった脳天気な話にはなりにくいと思うのです。 むしろ地道なROE“改善”の努力で日経平均5万円に到達、これがご祝儀を含めて妥当なところかな。(笑)

皆さんは、ジャパニーズ・ドリームの実現についてどう思われますか? asktakaは過小評価しているのでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「次世代の世界のリーディング産業は?」でした。


2000年1月5日(水)

「次世代のリーディング産業は?」

日本経済新聞社では内外のビジネスマンに対して、「2025年の日本と世界」をテーマにアンケートを行いました。その中に“次世代の世界におけるリーディング産業は何か”という設問がありました。複数回答で20%以上のスコアがあった分野は次の通りです。

1位:情報・通信(78.3%)
2位:医薬・バイオ(48.4%)
3位:エネルギー(29.3%)
4位:娯楽・教育(23.1%)
5位:宇宙・航空(21.7%)
6位:金融(20.1%)

まあ常識的な結果となっていますが、asktakaは改めてこの順位を眺めると背筋が寒くなってきました。というのは、この中の3つの分野は米国が戦略産業として国家戦略の中に位置付けているからです。

つまり、情報・通信、航空、金融、この3分野ですが、情報の流れ、人やモノの流れ、金の流れをすべて押さえようという魂胆ですからね。こうした先見性をもった国家戦略を実行できるところが米国の強さで、まさに“ソフトパワー”によるものです。

この6つの分野のうち、日本企業が世界のトップ企業としてのポジションをえる可能性をみてみましょう。先ず、情報・通信では、ご承知のようにインターネットを使ったEビジネスでは米国が先行しています。気が付いてみると、周りはほとんどが米国生まれということになりかねない状況です。情報家電とモバイルの分野でどこまで健闘できるかがポイントだと思います。

医薬・バイオの分野では、世界のトップ企業と日本企業との規模の格差は大です。日本の医薬メーカーの業績は、薬価制度を含む医療保険制度の影響下にあります。この意味ではぬるま湯の中で保護されているわけで、世界企業との連携なしに世界のトップに入ることは難しいと思います。もともと業界の体質は古いし、超ドメ企業としてやっていけますからね。

エネルギーに関して、日本の電力・ガス業界は市場原理が働かない規制業種の雄です。規制緩和によって新規参入を促す動きもありますが、大勢は変わらず、やはり超ドメ企業を超えることはありえないと思います。ちなみに、諸外国ではこの手の公益事業は、競争原理の下にM&Aが活発に行われており大規模化しています。

娯楽・教育分野のうち、娯楽はソニーやニンテンドーなどが活躍するでしょう。日本発のポケモンが米国で大流行するなど、先行きに期待が持てます。もっとも米国の子供達はソニーなどを日本企業とは思っていないようです。教育分野は、どう考えても日本が世界のトップになりえるとは思えません。

宇宙・航空分野は、日本企業が世界でトップグループに入ることは困難でしょうね。世界の航空会社のいい意味でのリストラと比べると、日本のエアは中途半端ですからね。ANAは国内中心で海外はスターアライアンスを利用ということになると思います。JALは国内も海外も中途半端ですが、体力があればアジアの航空会社でも買収しますかね。JASはどこかと合併でしょうか。

金融に関しては、米国が戦略産業として仕掛けた分野ですから、一筋縄ではいきません。いくら銀行が合併しても資産でっかちで、マネジメントが伴いませんからね。せっかくMBAをとらせても人は外資系に流れるし。

と、悲観的な話をしていますが、日本企業の金融技術は世界に引けをとるものではないようです。シティコープのリード会長が指摘しているように、金融業界では技術的なものよりも戦略が求められているわけで、日本の金融の戦略下手が問題です。これを認識したせいか、外資のコンサル会社は金融機関からの仕事で潤っているようです(もう峠は超えたようですが)。(笑)

こうしてみると次世代の世界のリーディング産業で、日本企業がトップグループとして活躍できるのは、情報・通信分野の一部とゲームを中心とする娯楽分野ぐらいでしょうか。それから、金融分野も可能性は残されていると思います。何せ人材は豊富ですからね。

若干お屠蘇気分で述べてきましたが、さて四半世紀後はどうなるでしょうか?皆さんのご感想はいかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「“今世紀の人”はアインシュタイン」でした。


2000年1月4日(火)

「“今世紀の人”はアインシュタイン」

タイム誌は“今世紀の人”にアインシュタインを選びました。私はちょっと意外な感じがしたのですが、皆さんはいかがでしょうか?フォーチューン誌が今世紀の人としてヘンリー・フォードを選択した際はすぐ納得できたのですが、やはり私は文科系のマインドなんですかね。 そこで、タイム誌がアインシュタインを選んだ理由を述べていますので、先ずその概略を紹介しましょう。

“今世紀の人”を選択するには、20世紀という時代の意味を考える必要があります。タイム誌は、今世紀の3大テーマを次のように設定しました。

1.民主主義の世紀:全体主義と民主主義の戦い
2.市民権の世紀:市民権を守るための権威・権力に抵抗する勇気ある個人の力
3.科学と技術の世紀:科学的・技術的知識の爆発(それは宇宙の神秘を明らかにしたり、自由な精神と自由市場の力を発揮することによる自由の勝利をもたらすもの)

先ず、20世紀は2度の世界大戦を経験しましたが、それは全体主義との戦いでした。こうした民主主義を勝ち取る上で今世紀最大の貢献者は、フランクリン・ルーズベルトだとタイム誌 は述べています。ちなみに、ルーズベルトはタイム誌が“今年の人”として3回取り上げた唯一の人物でもあります。

ルーズベルトの功績は、大不況やファシズムから資本主義、自由主義社会を守った点にあるとタイム誌は指摘しています。チャーチルを始め他のリーダー達は、このような活動の一部を担ったに過ぎないのです。そして、今世紀のステージに素晴らしい女性、つまり、妻のエリノア・ルーズベルトを登場させた功績も重要です。エリノアは今世紀で最もパワフルな社会的正義の提唱者の一人だからです。

タイム誌がルーズベルトを“今世紀の人”に選ばなかった理由は、彼が今世紀前半の人であるからです。

市民権の世紀の最大の貢献者は無抵抗主義で知られるガンジーです。彼の市民権運動は南アフリカでの若き弁護士時代に始まりました。ガンジーは黒い肌をもつインド人のため、一等車の切符をもっていても三等車に移動するようにいわれました。彼はこれを拒絶し、一晩中荒れ果てたプラットフォームで過ごしたのでした。

1931年、ガンジーが61歳の時、英国の植民地法と税制に抵抗するため、240マイル(384km)離れた海岸まで24日間の行進を行いました。彼とその信奉者が海岸に到着した際には、数千の人々が行進に加わり、他の海岸でも同様な活動が行われました。その結果ガンジーを含む6万人以上の人が逮捕されました。

ガンジーの死後、インドは英国から独立しました。そして、彼の精神と哲学は、マーチン・ルーサー・キング Jrに引き継がれました。ガンジーが“今世紀の人”に選ばれなかったのは、次の二点によると、asktakaは考えます(タイム誌には明示的に書かれていないのですが)。つまり、市民権の多様性ゆえガンジーの影響範囲が比較的狭い点、草の根的な個々人の活動が市民権獲得に果たした役割を看過できない点、この二点です。

最後は、科学と技術の世紀についてです。確かに20世紀は民主主義の世紀という側面を持っているし、市民権の世紀でもあります。だが、歴史家ポール・ジョンソンの次の言葉は傾聴すべきです。つまり、

“科学の天才は、善いにしろ悪いにしろ、政治家や将軍達よりもヒューマニティに大きな影響を及ぼした。”、そして“政治は一瞬だが、方程式は永遠なのです。”

こうした科学技術の時代を象徴する天才を一人あげるとすれば、誰しもアインシュタインの名を示すことでしょう。アインシュタインは相対性理論でよく知られていますが、量子物理学の基礎となった流動・粒子の二重性は現代社会に多大な影響を与えました。それはテレビやレーザー、半導体の理論的支柱となったからです。

今世紀を超えて、次のミレニアムを迎えても名を残す人、その人は天才であり、政治的難民、人道主義者であり、また原子と宇宙の神秘を解く錠前屋であるアインシュタインなのです。

asktakaは、冷戦が終結した今、政治の時代から経済とその背景となる科学技術の時代が到来したと考えています。この意味ではタイム誌がアインシュタインを選択したのは適切だと思いますし、Web上でも65%の人が賛成しています(ちなみに、タイム誌が選んだ今年の人は、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスでしたが、Web投票での賛成票は47%に過ぎません)。

では、21世紀はどのような100年になるのでしょうか。asktakaは、

・情報とネットワークの世紀
・超国家の世紀
・老人パワーの世紀

この3つの世紀になるような気がしています。ここで超国家の世紀とは、ラフにいうと、現在の先進諸国とそれ以外の国々との経済力格差が縮小し競争が激化してブロック化が進むか、あるいは経済のボーダーレス化の進展により国家そのものが変質する、この2点をイメージしています。

今日からビジネス界は始動しました。皆さん、20世紀最後の年と新千年紀を迎え、向こう百年の姿を想像してみてはいかがでしょうか?



お知らせ:昨日の話題は「真の改革実現の年!」でした。


2000年1月1日(土)〜3日(月)

明けましておめでとうございます。

本年もご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

「真の改革実現の年!」

新年早々にあまり触れたくない話題ですが、年末にまたまた政治屋という妖怪が現れました。折角、金融ビッグバンを控えて手を打ってきた各金融機関の努力に水をさす、ペイオフ解禁の一年延期が実質的に決まったのです。世界が注目している日本の金融改革は、あっさりと先送りされたわけです。

先送りの理由は、290の信用組合のうち改革の遅れている約三分の一を救済するための猶予期間を設ける点と貸し渋りの再発を恐れてのことのようです。

そもそも2001年4月のペイオフ解禁までに、5年間の猶予期間がありました。今更まだ猶予が必要とはどういうことなのか、asktakaには理解できません。

また、貸し渋りについては、極論すれば中小金融機関は保証付きの融資以外はリスクを避けて融資しません。それから優良企業が大手金融機関に融資を要請しても、以前の数倍の時間がかかります。それだけ融資に関する支店長決済の範囲が狭まっているのです。これも来るべきペイオフ解禁に備えて財務体質を強化してきた結果です。

私が何を言いたいかは、皆さんもお分かりでしょう?もうすでに大半の金融機関は必死で準備を整えているのです。何せ、まさに生き残るためにはやらざるをえませんからね。今更、延期するのは、票目当ての猿知恵としかいいようがありません。あの英語の達人の知性派大蔵大臣も身体を張って延期を阻止すべきだと思うのですが、すんなり了承しちゃいましたからね。嘆かわしいかぎりです。

前置きが長くなりましたが、こうした愚かな政治屋に振りまわされることなく、今年は各企業にとって“改革元年”として大変身の年にしようではありませんか。先ず、やるべきことは次の5点です。

1.若手・社外取締役の登用と取締役会の改革
2.成熟した中核事業のビジネスシステムの革新
3.今後の戦略事業の明確化と資源の集中投下
4.E−ビジネスへの積極的展開(調達から販売・サービス)
5.真の成果主義人事制度の導入(保守的な人事責任者の更迭を含む)

この程度のことはすでに実行している、とおっしゃる方々も多いかもしれません。しかし、かってのIBMが会長の指揮の下に実施した徹底的な改革を思い起こしてください(99年12月11日〜12日付け及び12月9日付け「今日の話題」を参照)。私がいう改革とは、削減するなら金額あるいは人数でこれまでの3分の1以上をカット、集中投下するならば従来の1.5倍以上、この程度を考えています。

とてもこんな改革ができないとお考えのトップをお持ちであれば、貴方は転職を考えるべきです。1、2年後にやろう、あるいはどうやってやろうか、とお考えのトップであれば脈は十分あります。貴方が会社に残り参謀になって大胆に会社を変えてください。

すでにこのような改革はすべて実施した会社にお勤めの貴方は、とても幸せな方です。貴方の会社は安泰ですよ。が、成果をあげて力を認められる機会は多いですが、その逆にならないようにするための苦労が多いでしょうね。でも、やりがいはあると思いますよ。

皆さん、どうせやるならぬるま湯の中にいないで、思い切って改革に賭けてみませんか。一度しかない人生ですから。ということで、今年もお互いに頑張りましょう!



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