これまでの話題(2000年3月後半)

[Index3月前半2月後半2月前半1月後半1月前半] [1999年]


2000年3月31日(金)

「荏原のダイオキシン汚染事故」

環境保全メーカーを標榜する荏原製作所がダイオキシン汚染の発生源とは驚きました。この原因は、同社藤沢工場の場内廃棄物処理用焼却炉に付属する配水管の接続ミスによるとのことです。

こうした事故は事後対策が重要です。だが、往々にして日本企業は対応を誤ることが多いですね。その原因は、

1.情報開示意識の低さ

2.組織防衛意識の強さ

3.広報・PRが未熟

4.人本主義の行き過ぎで外部に対する関係の取り方が苦手

5.クレーム、事故などの問題こそ次の飛躍につながるという意識の欠如

等々が考えられます。

例えば、東芝のクレーム対応問題や東海村の放射能被爆事故など、後処理のまずさをみれば上記の点は理解できると思います。また、どうも事件をポジティブに捉えなおして、逆に企業イメージを高める努力が足りないと思うのです。ただ、東芝の件は、この点に関してネット社会がからんでいるだけに、ことは複雑ですね。

ところで、今回の荏原の件は、環境保全をテーマに事業を展開している会社が汚染事故を引き起こした点で今後の対応が注目されます。asktakaは、これを契機に荏原が環境関連メーカーとして一回り大きくなることを願ってやみません。それではどうすればよいのでしょうか?asktakaであれば、次のようなアクションをとると思います。

1.想定される被害者あるいは地域に対する素早くかつ手厚い補償
2.今回の問題が発生した原因と今後の対策を顧客や周辺住民に徹底公開
3.藤沢工場を世界でトップの環境対策モデル工場として変身させる
4.上記の点などを企業広告や広報などで積極的に世間に知らしめる

荏原は社長をヘッドにする対策委員会を組織したようですから、当然上記のような手は打つものと思われます。ただ、どこかの政府や企業などのように、“小出しで、後手”に回る愚だけは避けてほしいと切に願います。

asktakaは、荏原が世界有数の環境メーカーとして飛躍できるかどうかは、この環境汚染問題をいかにポジティブに変えるかにかかっていると思います。皆さんも今後の経過に注目してくださいね。



お知らせ:昨日の話題は「日本の金融機関に世界の道はない?」でした。


2000年3月30日(木)

「日本の金融機関に世界の道はない?」

日経ビジネスの最新号に、この4月にシティグループのCEOを退任するリード会長のインタビュー記事が載っていました。皆さんもご覧になったと思いますが、asktakaは“日本の金融機関に世界への道はない”という言葉が印象的でした。

リード会長がこのように断言するのは次の3つ理由によります。つまり、

1.ソニーやトヨタのように国際市場で生き抜くことができる優秀な経営陣がいない

2.総資産が多くても利益水準が低い(せいぜい200位ぐらい)

3.M&Aなどの顧客ニーズに十分に応えるノウハウ・技術がない

この3点です。

asktakaはこの3点の中で、特に一番目の“優秀な経営陣がいない”という点は不思議に思いました。銀行といえば、かっては経済系の学部であれば 花形で優秀な人材を集めていたし、興銀や三菱銀行に何人入るかでゼミが評価される時代がありました。銀行はゼミの評価に使われるほど優秀な人材を採用していたわけです。それがリード会長にこうまで言われるとは、何か釈然としませんね。

どうしてこうなったかを考えてみると、いくつか思い当たる節があります。

1.規制や横並びでまともに競争していない

2.その結果、経済学でいうイニシャル・エンドウメント(初期保有量)で序列が決まるので、まともに意思決定をしてこなかった

3.担保第一主義でリスクを考えてこなかった

4.これまで高給に支えられ転職は考えられず、市場価値を考えなくてもよかった

5.(銀行だけではないですが)いわゆるお神輿経営なのでトップは自ら意思決定しないで、判を押すだけ、等々

こうした習慣が長く続くと、どんなに優秀な人物でも思考停止に陥りますよね。そのせいで、リード会長にあんなにこきおろされたのでしょうか?

asktakaは、現実問題としてはそうかもしれませんが、こうもはっきり“日本の金融機関に世界への道はない”といわれると、何とか日本勢を応援したくなります。

世界で活躍するのは、今後5つから10のメガ金融グループに集約されるそうですから、まだまだ金融再編は続きます。その中で、日本勢は海外のグループに呑み込まれるか、低位グループとして生き残るのか、それともトップグループの一角を占めるのか、このいずれでしょうか?

最後にあげた世界のトップクラスになる道は、海外から優秀なCEOをヘッドハンティングして、現役員や幹部クラスを総退陣させ、MBA保有者等の若手を登用するしかないのだと思います。自らの首を差し出して、こうした荒治療ができるトップがいるとは考えにくいですから、やはりこの線は無理ですかね。何とも残念ですね、と今日は少し湿っぽい話になってごめんなさい。どなたか反論があれば是非ゲストブックに投稿をお願いします。



お知らせ:昨日の話題は「“Will”プロジェクト」でした。


2000年3月29日(水)

「“Will”プロジェクト」

“Will(ウィル)”プロジェクトなるものをご存知でしょうか?このプロジェクトは、アサヒビール、近畿日本ツーリスト、花王、トヨタ自動車、松下電器産業の5社により99年8月にスタートしました。これは20代から30代のニュージェネレーション(以下NG)層をターゲットにした、異業種同一ブランド商品開発プロジェクトです。今年の3月からは新たにコクヨも参加したそうです。

99年10月よりWillブランド商品が続々と誕生しました。花王の“Willクリアミスト”、近畿日本ツーリストの“Will Tour”、アサヒビールの“Will スムースビア”、松下電器の“Will PC”そしてトヨタの“Will Vi”です。今後コクヨからはWillブランドの事務用品が発売される予定です。いずれもオレンジを基調にした“Will”のロゴを使用している点がポイントです。

そうそう最近電車内などのアサヒビールの広告で、淡いアレンジ色のトーンを使った“ほんのり甘い”スイートブラウンビールというのが目に付きますが、これもWillブランド商品です。甘いビールという訴求はasktakaには今一つピンと来ないのですが、皆さんはどうお考えですか?

ところで、このプロジェクトが注目されるのは、次の3つの理由からです。

1.世界初の異業種同一ブランド商品開発
2.ターゲットがNG層
3.トヨタの社内ベンチャー型組織によるプロジェクト推進

最初の点は説明の必要はないと思います。初の“異業種同一ブランド”の試みですからね。次の、ターゲットについては、皆さんご承知のように、なかなかつかみ所のない難しい世代なんですね。20代、30代を相手にヒット商品を考えようというのですから注目されるわけです。

このNG層をターゲットにして、asktakaも何回か商品開発のお手伝いをしたことがあります。キャリアウーマン向けとかこの世代のファッミリ−向けとかですが、あまり従来のマスを対象にしたマーケティングが通用しないのです。つまり、NG層には全国規模の広告で全国に販売する手法ではなく、こだわり商品や口コミなどで反応するため、何が売れるかよく分からないのです。しかもこの世代は800万人といわれる71〜74年生まれの団塊ジュニアを中心にしており、ボリュームとして無視できません。この層への試みが関心を呼ぶゆえんです。

最後の社内ベンチャー型組織は、奥田会長の“私に分かることをやってはだめ”という言葉が端的に表しています。トヨタが弱い20代、30代をターゲットにするには、従来の考え方を捨てて新しい組織で取り組むことを考えたわけです。そんため、Willプロジェクトは大企業を活性化する事例として注目されているのです。

現在、各社は週1回集まってWill委員会を開催して、“Willブランド”で市場に出す商品を検討しています。WillがNG層の心を捉えて、どこまで浸透するか、asktakaは興味深く見守りたいと思います。皆さんもご一緒にいかが?



お知らせ:昨日の話題は「5年後の元気印企業」でした。


2000年3月28日(火)

「5年後の元気印企業」

月刊誌「The 21」に“2005年に生き残る企業・成長する企業”のランキングが出ていました。評価の仕方は、株式の時価総額上位200社を選び、更にROI、増収率、株価の指数でランキングしたそうです。

総合ランキングのトップ10は次の通りです。

1位:NTTドコモ
2位:光通信
3位:セブン・イレブン・ジャパン
4位:DDI
4位:ローム
6位:NTTデータ
7位:ベルシステム24
7位:松下通信工業
9位:キヤノン
10位:セコム

以下、イトーヨーカ堂、ソフトバンク、NTT、富士通、データ通信システムと続いています。このように上位15位までは、情報通信関連企業とセブン・イレブンやセコムなどのネットワーク関連が占めています。

その他医療事務委託業務から在宅介護へシフトしているニチイ学館が、トヨタやソニーの上位になっています。また、害虫駆除の サニックスや時間貸し駐車場のパーク24を始め、ニッチ市場のリーダーや業界のリーダーが上位に顔を出している点が注目されます。

こうして見ると“5年後の元気印企業”は、asktakaがかって増収増益企業を分析した際に、成長を支える戦略オプションとしてまとめた次の5点の特徴を持つことが分かります(以前のペーパーに関心のある方はasktaka宛にメールをください)。

1.技術優位による集中

2.市場優位による集中(業界パイオニアとして)

3.地域優位による集中

4.多角化、新規事業展開

5.販売網・拠点拡大

上位の5つの要因に、IT、環境、健康・医療・バイオ、流通などの テーマを重ね合わせると、次代の元気印企業が見えてくるとは思いませんか?



お知らせ:昨日の話題は「ソニーと久多良木氏との関係から学ぶ」でした。


2000年3月27日(月)

「ソニーと久多良木氏との関係から学ぶ」

SCE社長の久多良木氏が何かと話題になっています。ソニーを飛び出て、ベンチャー起業家の心意気を持った“異端性”がマスコミ受けするのでしょう。もちろん、ソニーグループの稼ぎ頭としての実績があってこそ、注目を集めているのですが。

久多良木氏の言動については新聞や雑誌で様々に紹介されているので、皆さんもよくご承知だと思います。asktakaは、同氏の体験に基づくベンチャーの成功要因に関する言及に目が止まりました(プレジデント誌4・3号より)。つまり、

1.仲間づくり
2.資金準備
3.チャンスを逃さない事前準備

この3点が重要で、“周到に準備して一気呵成に立ち上げる”のがポイントだそうです。

仲間づくりは、実際に事業を起こすはるか前からはじめて、めぼしい人物を物色しておく。具体的には、経営者、技術者、財務担当、営業担当など です。

資金準備はついては、ある意味では当り前の話ではあります。全てをエンジェル(投資家)に頼っていたのでは、事業計画を理解させなければならず時間がかかる。そのため、資金は自分で作っておく。そうすると事業を始めてからの伸びが違うというのです。

最後の“チャンスを逃さない”というのは、久多良木氏の直面した任天堂の契約破棄事件をいっています。こうした幸運(?)はめったにないので、“参入のタイミングを逃さずに事前準備”をと言い換えた方がいいと思います。

こうしてみると、とてもオーソドックスなお話に思えるのです。asktakaには、久多良木氏を外に出し自由に仕事をさせて、現在の伊庭副社長を含めた優秀なお目付け役をつけて見守ったトップ(当時社長の大賀氏)のやり方に興味がありますね。

というのは、SCEのケースは大企業の社内あるいは社外ベンチャー育成にとって参考になると思うからです。つまり、一般化すると

1.起業家魂のある人物を探す(いなければ育てる、集める)
2.事業計画を書かせる(1の人物のアイデアを具体化)
3.チームを組む
4.自由にやらせる
5.アドバイザーが見守る

ということになります。この中で最も重要なのは、1の中心人物の存在であることはお分かりでしょう。

今、日本でも遅れ馳せながらネットビジネスを中心に起業ブームが起きています。しかし、久多良木氏の3つの成功要因に照らして、随分危なっかしい起業家が多いのも事実です。asktakaは、起業環境がまだまだ未成熟な日本においては、ここ数年は大企業にいる起業家としての潜在能力の高い人々を上手く起業に結びつけることが重要だと思っています。こう考えると、ソニーと久多良木氏との関係から学ぶところは多いと思いませんか?



お知らせ:昨日の話題は「漫画・アニメが日本を変える?」でした。


2000年3月25日(土)〜26日(日)

「漫画・アニメが日本を変える?」

3月17日の漫画週刊誌の日にちなんだ、ゲストブックでの私のちょっとした書き込みから漫画についてのお話が盛り上がりました。ちょうど今日の日経朝刊の「SATURDAY NIKKEI "X"」のテーマが“サブカルチャー、日本発世界へ・・・”ということで漫画・アニメ、ゲームを話題にしています。そこで、今日はこれまでの議論を整理して、asktakaなりに漫画・アニメについて考えてみたいと思います。

先ず、現状の日本における漫画・アニメについて基本的な事実を確認しましょう。

1.漫画は子供・若者向けのサブカルチャーから出発
2.だが現在は、日本では子供から大人まで幅広い読者層を持つ
3.日本の漫画は欧米に比べて物語性が強い
4.日本の漫画・アニメは海外でも人気
5.国内では漫画単行本の市場は縮小傾向
6.漫画・アニメ界の人材の海外流出が始まっている

こうした事実から、漫画・アニメがサブカルチャーとしての位置付けから、グローバルに見るとちゃんとしたカルチャーへと移行していることが想像できると思います。そしてビジネスのタネとして、日本の漫画・アニメ界の強みは、ストーリー性と人材の蓄積です。

つまり、日本の漫画は子供のみならず大人までカバーしています。その背景には、小説に勝るとも劣らないストーリーの達者さがあります。この豊富な蓄積が、デジタル時代のコンテンツの宝庫となる可能性が大です。

次に、日本では文学や映画が衰退して、優秀な人材が漫画・アニメやゲームの世界に集まっているそうです。このような人材の蓄積が、日本で唯一の創造性を生む業界として世界に認められているのです。こうした知的財産の蓄積を使わない手はないですね。

ところで、米国ではテレビでポケモンなど和製アニメが放映されています。またテレビ番組の中で、日本語のポケモンカード10枚が約999ドル(約10万円)で販売されているそうです。しかし、こうした話題は日本のメディアよりも、TIME、Newsweek、FORTUNEなどの海外のメディアがいち早く取り上げ和製アニメなどの若者文化を評価しているのです。asktakaも見過ごしていたように、相変わらず、先ず海外で評価されて逆輸入されるというパターンなんですね。

だが、漫画・アニメが必ずしも国内で高く評価されないことから、人材がハリウッドなどに流出しているそうです。虎の子の創造性のある分野を失う恐れがあるのです。そこで、この分野をソフトと技術をもつ日本のネットビジネスの戦略分野として位置付けた場合、どうすべきなのか?

asktakaは、経営のプロとプロの組織としてコンサルティング会社の運営方式を導入することが重要だと思います。なぜならば、これまでの漫画・アニメ業界は家内工業的な職人か制作会社の世界だと思うからです。ネットビジネスとしてのビジネスプランを持つ経営のプロが参入して、競争原理に基づき能力に応じた報酬を提供できるプロの組織に変容すれば、自ずと優秀な人材が集まるものと思います(米国では、ネットバブルの影響でコンサル会社からの人材流出が続いていることは承知の上ですが、プロの組織として見習う点はあります)。

asktakaには、漫画・アニメ分野こそトップの役割が重要だと思います。プロを活用する才覚とネット時代の中でビジネスを創造する才能を併せ持つ必要があるからです。誰か次代を担う野望を持った異端の人、例えばSCE社長久多良木健氏に続く人はいないのでしょうか?


[謝意]:本稿は、ゲストブックの多くのお客様のご意見を参考にしております。ここに厚く御礼申し上げます。



お知らせ:昨日の話題は「自律的景気回復の異質性」でした。


2000年3月24日(金)

「自律的景気回復の異質性」

3月の月例経済報告によると、“景気の自律的回復が徐々に始動”し ているそうです。この点の公式な解説はすでに新聞や経済誌で述べられているので繰り返しません。ただ、どうも堺屋経企庁長官の回復宣言は政治的な匂いがするし、従来型の景気回復とは一線を画するという意味で、注意が必要です。

確かに、日経の大機小機で指摘しているように、従来の景気回復は、高成長、雇用増、格差縮小の3点セットでした。それが、今回の景気回復パターンでは、低成長、ジョブレス、二極化の新3点セットになる述べています。

この理由は、今回の景気自律的な回復の初期条件が、極度に上昇した労働分配率の是正という分配構造の改革を伴うものであり、その結果としての収益の改善がなければ投資の力強い拡大もないと考えているからです。

98年の日本の労働分配率は70%(米国は60%)で、ROAは2%にまで低下しました。欧米の主要企業のROAに伍するには最低でも10%は必要です。仮に当面の目標を2001年度で4,5%とすれば、来年度中に人件費を5%前後はカットする必要があるそうです。

そして、大機小機氏は、構造調整には2、3年はかかるし、更に、自律的回復の過程はまさに“自力”がものいうわけで、その力の有無によって業績、投資、株価の格差は更に拡大すると述べています。今回の景気回復が従来とは異質な新3点セットとなる背景は大体以上のようです。

ところで、asktakaはもう少し違った視点からこの景気回復を見ています。つまり、私達はこれまで経験したことのない次の3つの波の中にいるものと考えています。

1.情報通信(IT)革命の波
2.グローバル革命の波
3.戦略革命の波

IT革命については説明するまでもないでしょう。グローバル革命は、これまでのグローバル化とは異質という意味です。というのは、従来はモノの流れを中心にしていたグローバル化でしたが、今回はIT革命と米国の10年景気の影響で金と情報の流れが一挙にグローバルしているからです。戦略革命とは、こうした2つの革命から、かってとは戦い方が異なることをいっています。

今回の景気回復期には、上述した3つの革命の波という歴史的な流れの中で、企業はどう対処するかが問われているのです。この意味では、回復期を大機小機氏がいうように単なる分配構造の改革と見るのは、あまりにも歴史的な大きな波を矮小化していると思います。

20世紀最後の景気回復は、こうした3つの大波の中で巧みに泳ぎきらなければならず、そのため自律回復も勢いに欠ける点は否めません。確かにいえることは、異質性を認識し3つの革命の波を乗り切った企業のみ次代の勝ち組となりうるということです。では、いかにこの波に対処して戦略を“変質”させるか?皆さんの会社ではすでにこの問題は解決されていますか?



お知らせ:昨日の話題は「歪められたビジネスの価値?」でした。


2000年3月23日(木)

「歪められたビジネスの価値?」

米国NECが運営する「サイバープラザUSA」というサイトがあります。asktakaは、この中のKen McCarthy氏が執筆している“シリコンバレーナウ!”というコラムに注目しています。今日は、今年の初めに、同氏が“歪められたビジネスの価値”というテーマで書いていた記事を紹介したいと思います。

同氏の主張を要約すると次の通りです。

1.本来、製品やサービスを顧客に販売することによって利益を得るというのがビジネスだったが、最近は話が違う。

2.ウォールストリートの住民から見たビジネスの価値とは、ネット関連のビジネスプランを立て、株式発行を引き受けてくれる投資銀行に話を持ち込み、株式を公開し売却益を得ることにある。実際にこのやり方で過去3年間で合計1億ドル超の利益をなるそうだ。

3.こうした虚像のビジネスの影響は実際の生活にも現れている。例えばシリコンバレーなどでは、家賃や生活費が高騰し、普通の仕事では生活していけない。

4.ビジネスの実態とマーケットの評価との乖離については、Intuit社とAmazon社を比較するとよくわかる。

5.Intuit社は、会計ソフト市場の分野で優位性を保ち、実際に利益を上げているが株価は低い。一方、Amazon社は事業規模はIntuit社とほぼ同等だが、経営陣はまだ経験が浅く、利益も出ていないし、ビジネスの将来も不透明だが株価は高い。

6. 高い収益をあげ、確実な経営を行っている会社の評価が低く、全く利益を生み出していない会社がインターネットというキーワードだけで高く評価されるのは、株式市場が歪んでいる証左だ。現在の株式市場の熱狂は巨大な暴風のようなもので、過ぎ去った後に大きなダメージを残すに違いない。

McCarthy氏はネット関連のコンサル会社の代表だけに、ネットビジネス・フィーバーに対する警鐘は重みがあると思います。実は、同氏は冒頭に、“株取引に熱中している人たちが、メディアが伝えるニュースにあまりにも過敏に反応するため、インターネットと直接関係のない既存の経済にも多大な影響を与えるようになっている”と書いています。

どうも真面目にネットビジネスの将来を考えているMcCarthy氏は、ネットブームに乗じて金儲けを考えている人達を苦々しく思っているようです。 ただ健全な精神をもつ起業家にもインセンティブは必要なことは確かですが、ここは冷静に真のビジネスとは何かを考え直すときだと思います。 asktakaには、金余り現象で借り手探しに躍起になっている日本のVCが、いかに真贋を見分けるか、この点に興味がありますね。



お知らせ:昨日の話題は「ビジネス・ファンダメンタルズとは」でした。


2000年3月22日(水)

「ビジネス・ファンダメンタルズとは」

卒業式も終わり、入社式が間近に迫っています。今年の入社式には、各社のトップはどのようなお話をするのか楽しみです。そこで今日は新しく社会に出る人達向けの話題にしたいと思います。

昨年の3月中旬に3年ぶりに台湾へ出張しました。台湾政府の経済部(日本の通産省にあたる)と中国生産力中心(政府との関わりが強い生産性本部といったところ)が主催するセミナーの講師として招かれたからです。アジアの中でも元気が良い台湾のビジネスパースンと接して、改めてビジネス・ファンダメンタルズとは何かを考えさせられました。

数年前と比べて、台湾ビジネス界における英語の共通言語化とEメールの利用度の高さには目を見張るものがあります。英語に関しては、台湾の学生(中国、韓国も同様)たちの英語学習意欲は高く、TOEFLの平均点も日本人に較べて格段に高いことは周知の事実です。ビジネスの世界でも、台湾の40代以上の経営幹部の英語でのコミュニケーション力は日本人のそれをはるかに上回ることを実感しました。

一方、台湾の経営幹部のEメールの使い方をみても、欧米のビジネスパースンに近いものがあります。台湾におけるパソコンの世帯普及率は40%を超え、日本の30%強をはるかに超えてアメリカ並です。ことパソコン利用、つまり情報リテラシーに関しては、台湾は日本よりも進んでいることは確かなようです。

また、台湾では日本のコミックの人気が高まっているようですが、さすがに日本のビジネスマン(ここはマンのみであると思う)のように、人前で平気で漫画を読む社会人はいないようです。そして、若い人達のマナーも日本人の同世代に比べて優れているように思います。

このような事実を見ると、高邁なグローバル・スタンダード論議以前に、先ずは日本人のビジネスのファンダメンタルズを強化することが重要であると痛感します。英語とパソコン、この2つは、かっての「読み、書き、そろばん」と同様に、ビジネスの世界ではますます基本動作として不可欠です。

人前で漫画を読むことがビジネスマナーに反する、と言っては言い過ぎかもしれませんが、少なくてもインテリジェンスや好感を感じることはないと思います。マナーの基本は人に不快感を与えないことだとしたら、やはり社会人一年生の時から(もしくはそれ以前から)マナー全般を身に付けるべきだと思います。

経営トップや幹部の方々は新入社員に対して様々な期待を抱かれていると思います。しかし、彼や彼女達が20代で身に付けるべきなのは、

1.英語力
2.情報リテラシー(パソコン活用力)
3.ビジネスマナー

この3つのファンダメンタルズではないでしょうか?

日本企業が21世紀のグローバルなビジネス社会で一層活躍するには、日本人のビジネス・ファンダメンタルを向上させることが不可欠だと思います。このファンダメンタルズが、アジアの中でも相対的に劣位にある点を十分に認識し、今こそ新入社員向けの画一的な教育システムを革新すべきではないでしょうか?

えっ、もうファンダメンタルズは十分身に付けている? それでは、横並びを抜けて更に突出するために、ビジネス・エリートの道を歩んでみますか?海外のビジネススクールでMBAをとれば、皆さんの可能性は一層広がりますよ!



お知らせ:昨日の話題は「“スケルトン”ブームに思う」でした。


2000年3月21日(火)

「“スケルトン”ブームに思う」

半透明の中が透けてみえる商品の人気が高まっています。こうしたスケルトン商品ブームに火を付けたのが、99年1月に発売されたiMacです。 それまではasktakaもあまり気にしていなかったのですが、米国でPalmのスケルトン版が商品としてではなく、ノベルティ用に提供されていたのは知っています。どうも米国ではこうしたデザインは以前からあったようです。

iMacの成功の後、日本ではカメラ、レジスター、掃除機、ヘルスメーター、ガム、事務機などスケルトン仕様とカラー化の波が襲っています。現在は製造を中止しましたが、パソコンまでスケルトンのそっくりさんが出てきましたからね。

先日の日経夕刊によると、こうしたスケルトンブームの背景には、バブル後のデザイン面での行き詰まりがあったとのことです。つまり、バブル期にCADが導入され、どんな形でも簡単にデザインできるようになったのですが、その反面独創的なデザインが出にくくなったそうです。ところがスケルトンという内部構造を少しだけ見せるタイプの新しい発想が出現し、デザイナーは多いに助かったのです。

もう一つスケルトンにはメリットがあったと同紙は指摘しています。スケルトンにすれば金型や生産ラインを変更しなくても新製品のように見えるからです。新製品開発投資を抑制しながら、新製品を開発できるのですからこれに越したことはありません。

消費者にとってスケルトンは中身が見えるため不安を和らげる、つまり“安心”感があるそうです。そういえばバブル以前から、店舗内装などで上部の空調などの設備が丸見えの打ちっぱなしのコンクリートを強調したデザインがありました。asktakaは、これは安心感とは無縁のような気がしますが、どうもこのへんになると後知恵の匂いがします。

ところで、こうした一連のスケルトン・デザイン追従の動きをみて、苦々しく思っている人達がいます。asktakaもその一人です。やはり、新製品というにはニーズを先取りしたり、新技術や新機能が付加されていなければいけないと思うのです。iMacのそっくりさんは論外として、スケルトン・デザインを真似するだけなら開発部隊はいりません。

このところめぼしい新製品が現れていないのは、利益重視で開発投資を絞っているせいでしょうか?でなければ、開発技術者が不況風に吹かれてアイデアまで無くしてしまったのでしょうか?景気の先行きに光明が見えたとしも、いつまでも物まねのモノづくりでは将来はありません。ここは人、物、金、インセンティブを集中させて、新製品開発に注力する時ではないかと思うのです。皆さんはどのようにお考えですか?



お知らせ:昨日の「外資コンサルのVB支援と本音」でした。


2000年3月18日(土)〜20日(月)


「外資コンサルのVB支援と本音」

これまで戦略系コンサルティング会社は大企業相手で、時間チャージをベースにする報酬体系でした。しかし、最近ではベンチャービジネス(VB)向けに成功報酬方式でコンサルティングを行ったり、ベンチャー企業に投資する動きが出ています。外資系大手コンサルティング会社も随分様変わりしてきたものです。

ただ、米国と違って日本市場ではまだベンチャー企業の量と質に大分格差があるのは事実です。今日はVB支援に乗り出すコンサル会社の本音に迫ってみたい。

先ず、コンサル会社にとって大企業を対象にした時間チャージによる確定報酬の方がいいに決まっています。そうすれば、1プロジェクトで何億単位の報酬になるわけですからね。例えば、プロジェクトの責任者で1ヶ月500万円、メンバーが一人300万円で5人、計6名体制で月2,000万円とします。すると、10ヶ月のコンサルティング業務で2億円になります。

ところが、こうしたシステムが機能しない恐れが出てきました。その原因は、米国ではコンサル会社が優秀なビジネススクール出身者を採用できなくなってきたからです。以前この欄で述べたことがありますが、MBAの成績優秀者は投資銀行やベンチャーキャピタル、スタートアップに行くか、自ら起業する道を選ぶようになっているからです。その背景には、米国の空前のネット景気によって、そうした業界が潤い、高報酬を提供しているか、それが期待できるからです。

これまで外資の大手コンサルが高額な報酬をチャージできていたのは、そのブランド力と優秀な人材を確保できていたからです。優秀なMBAが採用できなくなることは、コンサル会社の地盤沈下が進むことを意味します。 そこで、米国を中心にコンサル報酬を株式で受け取るなどの成功報酬方式を導入したり、ベンチャー・キャピタル化して、MBAを引きとめようとしているのです。

ところで、日本には米国とは違った事情もあります。つまり、日本のマネジメント系あるいは戦略系コンサルティングの市場規模は、米国に比べてけた違い違いに小さいのです。例えば、GEやAT&Tなどの米国の大企業は、年間数十億のコンサル予算をもっていますが、日本ではトヨタにしてもせいぜい数億程度ですからね。その上戦略系では金融業向けコンサルティング以外は低調ですし(その他人事系は好調なようですが)、IT関連はBig 5系などが強いですから、米国の成長分野に目を向けざるをえなかったのだと思います。

こうした背景があるのですが、外資コンサルのベンチャー支援向け成功報酬のようなやり方が日本でも通用するのでしょうか?asktakaにはやや疑問があります。

一つは、日本における開業率の低さがあります。VCに余裕資金が集まっていることは確かなようですが、まだまだVBの量が少ないですからね。 二つ目に、起業家自体の質の問題があります。今、日本でもMBA取得者や外資コンサル出身者の間でITあるいはネット関連の起業の動きが活発なようです。しかし、このようなマネジメントのファンダメンタルズを身に付けた起業家(及び志望者)はまだ少数派で、大多数は我流で癖が強いのが現状です。

これまで大企業のエリートを相手に格調高く振舞っていた連中が、日本のベンチャー向けコンサルが出きるとは思えません。そして、有望なVBには限りがあるわけで、その上失敗のリスクを負ったコンサル関連ビジネスがどこまで魅力的なのでしょうか?単に人集めのための演出とすれば、随分高い授業料を払うことになる、とasktakaは思うのです。この懸念が杞憂に終ることを祈るばかりのasktakaでした。



お知らせ:昨日の話題は「消費不況の実相」でした。


2000年3月17日(金)

「消費不況の実相」

企業の設備投資意欲や景況感が回復基調にある中で、GDPの6割を占める消費の低迷が景気の足を引っ張っています。消費の低調さは小売業のデータを見るとよく分かります。百貨店やスーパーの売上は連続して対前年を下回っていますからね(但し、百貨店の売上はうるう年効果もあってか1月、2月と対前年同期比プラスです)。

確かに、家計調査によると、二人以上の世帯当たり消費支出は96年下期から99年下期まで7期連続で前年割れが続いており、99年は実質1.2%減です。ところが、別途調査している単身世帯の消費支出をみると、98年下期から前年同期比でプラスに転じ、99年は通年で前年水準を3%上回りました。

単身世帯とは、農林漁業従事者と学生を除く一人暮しの世帯のことですが、特に消費が好調なのは35歳未満の若者層で前年比9.0%増でした。同じ単身世帯でも60歳以上では前年比0.5%減、35歳から59歳では横ばいです。

若年層の消費支出の内訳を見ると、通信費は対前年同期比で28.7%増、教養娯楽費は13.1%増と、ネット関連や教養娯楽への支出が消費を牽引していることが分かります。一方で、食料や衣料などの必需型消費はいずれも対前年に比べて減少しています。この他、単身世帯全体では国内・海外旅行も好調です。

こうしてみると、消費不況の実態は次のように要約できます。

1.97年から消費は全体で前年割れが続いている
2.しかし、99年の単身世帯の消費支出は前年比3%増
3.特にパソコンなどの教養娯楽用耐久財や通信費、国内・海外旅行が好調
4.一方、単身世帯でも食料や衣料などの必需型消費はマイナス
5.若者層単身世帯の消費は98年下期から回復基調にあり好調

やはり、今後の消費動向は、かなり重苦しく感じますね。企業の景況感が回復しても、消費者の懐具合に影響するほど賃上げが進む気配は感じられません。むしろ、企業は今後の競争力を強化するために、一層の雇用調整を含むコスト削減を行うことになると思います。こう考えると、一般のサラリーマン世帯の財布の紐は当面緩みにくく、若者を中心にした単身世帯の消費に期待するしかないということでしょうか?

ところで、企業が他力本願ではなく、自力で消費を喚起する方法はないものでしょうか?実は個々の商品・サービスをみると、あまり目立たないところで伸びているものがあるのです。例えば、今話題のネット関連以外でも、健康・美容、環境、省エネ、低価格商品などです。つまり、時代の流れに合ったテーマと徹底したリーズナブル感を持つ商品は、消費不況の中でも売れているのです。

景気低迷期には企業は利益重視でなかなか逆張りの発想はしにくいものです。しかしながら、勝者をみるとちゃんと大胆に手を打っています。かっては不況期にはトップ企業が強いといわれましたが、現在は戦略の差が現れる時代になりました。さて、皆さんの会社はどう対処されていますか?



お知らせ:昨日の話題は「ECインフラとしてのコンビニ活用は万能か?」でした。


2000年3月16日(木)

「ECインフラとしてのコンビニ活用」

この欄でも何回か話題にしていますが、Eコマース(以下EC)のインフラとしてコンビニが注目されています。その注目度は過剰といえるくらいで、総合商社やハイテク業界はこぞってコンビニと連携する動きに出ています。皆が同じ方向に向くのは日本人、日本企業の悪いくせかなと思っていたら、住友商事は独自路線を歩むようです。

商社はすでに、三菱商事、丸紅、ローソングループ、三井物産、セブン・イレブングループ、伊藤忠、ファミリーマートグループに分かれていて、住友商事だけが出遅れていた格好でした。しかし、住商が昨秋のローソン株の買取を断った理由は、リスクとリターンの評価だけではなく、ネット購入商品のコンビニでの受け渡し業務の限界を察知したからのようです。

つまり、住商はコンビニをECのデリバリー拠点として使う場合、次の3つの問題があると考えているそうです。

1.コンビニは商品保管スペースが少ない
2.アルバイトによるオペレーションが限界
3.コンビニまで受け取りに行く不便さ

同社はECを早期に立ち上げるためは、コンビニ頼みには難があるとして、傘下の食品スーパーやドラッグストアの活用や自宅配送方式で対処するとの考えです。

ところで、かってこの欄で次のように述べました(99年12月25日〜26日付け「Eコマースとデリバリー」)。

「日本国内を考えてもEコマースで成功するには、デリバリー・ネットワークの構築が欠かせません。それには、

1.自前でデリバリー網を構築
2.宅配便業者のネットワークと提携
3.CVSを商品ピックアップ拠点として活用

この3つ方法があります。しかし、どこで他社を圧倒するかは工夫次第で、独自のコンセプトが必要です。」

この意味では、住商は1と2を中心に、他の商社は3を主体にデリバリー・ネットワークを考えているわけです。ここでどちらの方向が正しいかを議論しても意味がないと思います。商品特性や消費者の属性によってさまざまなパターンが考えられるからです。

米国でECが受け入れられたのは、通販と同様に自宅まで配達される便利さによるところが大きいのです。日本でもいくらコンビニが至るところに存在しても、商品の大きさや年齢によっては宅配希望者が多いと思われます。

今後のECのデリバリー問題は、取り扱い商品と販売量が増加するに従って、消費者が決着をつけることになるでしょう。ECサイドは、3、4年後には年間3兆円とも4兆円ともいわれるB2C市場に向けて、消費者に選択されやすいビジネスモデルを構築すべきですね。とすれば、残された時間は意外に少ないな、というのがasktakaの実感です。



お知らせ:昨日の話題は「製造業が国を救う?」でした。



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