ソフィア・ローレンがイタリアを代表するスケールの大きな国際女優であることに異議を唱える人はほとんどいないはずです。というよりも、女優では、活躍期間までを考慮すると国際スターとして空前絶後の存在かもしれません。カトリーヌ・ドヌーブですら国際女優というよりは、やはりフランス女優というイメージがあり、また、基本的に駆け出しの頃や晩年以外にはアメリカ映画への出演が中心となるマレーネ・ディートリッヒやグレタ・ガルボなどの女優さんは、どちらかと言えばハリウッドの輸入スターであり(この点は、同じ英語圏でも、イギリス出身のデボラ・カーやジーン・シモンズについても同様に当て嵌まります)、そのように考えてみると、ソフィア・ローレンは、確かに代表作の多くはビットリオ・デ・シーカが監督したイタリア映画であるとはいえ、名声においても出演作の数と質においても、国際女優としてイングリッド・バーグマンと双璧をなしたと言えるように思われます。とはいえ、箱庭的な美を愛でる日本人にとっては、彼女は余りにもスケールが違いすぎることもあり、日本で心底から彼女のファンであると公言できる人は意外に少ないかもしれません。そもそも、彼女の大きな口に対して、今にも食べられそうな恐怖感を抱く人も多いかもしれません、とはさすがに言い過ぎでしょうか?
かく言う小生にしても、映画界におけるその実績を認めるのにやぶさかではないとしても、親しみのある存在であるとはとても言えないように思っています。アンナ・マニャーニなどもそうですが、イタリアには、結構このタイプの女優さんがいます。子供の頃はナポリで育ったようであり、クラーク・ゲーブルと共演した「ナポリ湾」(1960)は、彼女の地元が舞台であったことになります。彼女は、もともと出演作が極めて多いこともあってか、イタリアの女優さんとしては、英語圏の映画への出演も数多く、しかも、「エル・シド」(1961)、「ローマ帝国の滅亡」(1964)などのスペクタクル歴史劇、「誇りと情熱」(1957)、「楡の木陰の欲望」(1958)、「黒い蘭」(1959)などのシリアスドラマ、「月夜の出来事」(1958)、「ナポリ湾」、「レディL」(1965)、「チャップリンの伯爵夫人」(1967)、「ラブリー・オールドメン」(1995)などのコメディ、「ラ・マンチャの男」(1972)などのミュージカル、「クロスボー作戦」(1965)などのアクション、「アラベスク」(1966)、「カサンドラ・クロス」(1977)などのサスペンススリラーというように、多岐に渡るジャンルで活躍し、共演した主な男優は、英語作品のみに限っても、ケーリー・グラント、クラーク・ゲーブル、ジョンウエイン、チャールトン・ヘストン、マーロン・ブランド、ポール・ニューマン、グレゴリー・ペック、ウィリアム・ホールデン、アンソニー・クイン、フランク・シナトラ、アラン・ラッド、ジャック・レモン、ウォルター・マッソー、ジョージ・ペパード、ピーター・オトゥール、ピーター・フィンチ、アンソニー・パーキンスと信じられないような豪華なメンツが揃っています。恐らく、キャサリン・ヘップバーンやドリス・デイなどの少数を除けば、純粋に英米出身のスターであっても、これほどの共演暦は持っていないはずです。イタリア映画「ふたりの女」(1960)でアカデミー主演女優賞に輝いている他にも、1991年にアカデミー特別賞を受賞しています。一般的に活躍期間が限られるのが普通である女優としては、極めて寿命が長く、50年代から90年代に至るまで国際スターとしての地位が一度も揺らいだことがないのは、さすがと言わざるを得ないでしょう。余談ですが、彼女はいつも厚化粧をしているので、実際の年齢がよく分からないところがあります。 |
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(斜体は非英語作品)
1951
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クォ・ヴァディス |
1963
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昨日・今日・明日 (伊)
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1955
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河の女 (伊)
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1964
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あ々結婚 (伊)
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1957
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島の女
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1965
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クロスボー作戦
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1957
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誇りと情熱
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1966
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アラベスク
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1957
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失われたものの伝説
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1967
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チャップリンの伯爵夫人
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1958
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楡の木陰の欲望
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1969
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ひまわり (伊)
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1958
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鍵
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1970
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結婚宣言 (伊)
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1958
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月夜の出来事
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1972
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ラ・マンチャの男
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1959
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黒い欄
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1974
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旅路 (伊)
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1959
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私はそんな女
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1975
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ガンモール (伊)
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1960
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ナポリ湾
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1977
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カサンドラ・クロス
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1960
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ふたりの女 (伊)
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1978
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ブラス・ターゲット
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1961
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エル・シド
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1994
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プレタ・ポルテ
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1962
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ボッカチオ'70 (伊)
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1995
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ラブリー・オールドメン
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