クロスボー作戦 ★★☆
(Operation Crossbow)

1965 UK
監督:マイケル・アンダーソン
出演:ジョージ・ペパード、リチャード・ジョンソン、リリ・パルマーソフィア・ローレン

上:ジョージ・ペパード

ナチスのVロケットを破壊する為にドイツ軍占領地域に送り込まれた破壊工作員を主人公とするアクション映画ですが、「クロスボー作戦」には、通常のアクション映画とは少し毛色の変わったところがあります。というのも、最初の30分くらいは、なぜかドイツ軍がVロケットを開発する過程がかなり詳細に描かれているからです。しかも、欠陥を突き止める為のVロケットの有人飛行に失敗して死んだ同僚の墓に花束を捧げるシーンまであります。このシーンで花束を捧げるのは、実はドイツの勇ましそうなおねーちゃんで、このおねーちゃんが再度発射実験にチャレンジします。このような箇所でおねーちゃんを登場させると、そこで感情移入して下さいとオーディエンスに合図する1つの指標になるのです。なぜならば、戦争は野郎の専売特許であると通常は考えられているので、このような戦争アクション映画の中で女性が銃後の家庭人や被害者以上の役で登場すると、いやが上にも特殊なコノテーションが生まれるからです※。対する英国作戦本部の中では、他人にロケットが開発できて自分にそれができないとなると自分の能力に疑問符がつくので、必死になってVロケットの存在を否定しようとする自己防衛本能満点の科学者(トレバー・ハワード)すら現れ、ひょっとするとこの作品はドイツ軍の視点から見た作品なのかと思わせます。けれども、30分を過ぎたあたりから話は本筋に入り、主人公の破壊工作員(ジョージ・ペパード)が敵のVロケット製造工場に潜入し、最後は自らの命を犠牲にして工場を破壊するというオーソドックスなアクションストーリーが展開されます。一言で云えば、「クロスボー作戦」は、ヒーロー活劇映画なのです。そのように考えると、冒頭の30分のドイツ軍側に主眼が置かれた部分の存在意義も理解できます。すなわち、そこでもドイツ軍のエンジニア達とくだんのおねーちゃんが命をかけてVロケットを開発する様子が描かれ、ヒロイズムが主題として扱われているのです。連合軍側の破壊工作に主眼が置かれたメイン部分でも主人公や同僚の破壊工作員(ジェレミー・ケンプ)、或いはゲシュタポ(アンソニー・クエイル)に捕えられても自らの身分を明かさないで銃殺刑に処される兵士(トム・コートネイ)など、ヒロイックな人物が次々に登場します。そのようなキャラクタースタディを強化する為か、それにしてもアクション映画によくぞこれだけ役者を集めたと思わせるほど、名だたる個性派の役者が名を連ねています。主演のジョージ・ペパードを除くとほとんどがイギリスを中心としたヨーロッパの役者さんであり、ジョージ・ペパード、リチャード・ジョンソン、リリ・パルマー、ソフィア・ローレン、ジョン・ミルズ、トレバー・ハワード、トム・コートネイ、ジェレミー・ケンプ、アンソニー・クエイル、ポール・ヘンリード、シルビア・シムズ、リチャード・トッド、モーリス・デンハム、パトリック・ワイマーク、ジョン・フレイザー、アラン・カスバートソンと出てくる出てくる。個人的なお気に入りは、リリ・パルマーで、ドイツ出身とはいえ、たとえばマレーネ・ディートリッヒのようなゲルマン民族特有のきつさがない女優さんで親しみやすい雰囲気を持っています。対するディートリッヒなど、小生のような輩が下手に近寄ったら銀河の果てまでぶっ飛ばされそうな雰囲気を持っています。しかし、「クロスボー作戦」では、そのような優し気な外面の装いにもかかわらず、リリ・パルマー演ずる宿屋のおかみは、主人公達が連合軍の破壊工作員であるという秘密を知った未亡人(ソフィア・ローレン)を、主人公自身は鼻の下を伸ばしつつ逃がそうとするにもかかわらず、涼しい目をして射殺してしまうのです。あーー、コワ。それに対してやはり野郎は甘っちょろいのです。ということで、当時としては最新の特殊撮影技術が駆使されているようであり、アクション映画としても最後の爆撃シーンなどなかなかの迫力があります。ビデオのパッケージには「an explosive finale that makes The Guns of Navarone look like pea-shooters(この作品の爆発的なラストシーンに比べれば「ナバロンの要塞」(1961)などまるでキジ撃ちのようだ)」と記されていますが、さすがにこれは手前味噌にすぎるでしょう。

※後で知りましたが、かなり演出が加わっているのは間違いのないところであるとはいえ、ある程度歴史的事実も含まれているようです。


2001/12/09 by 雷小僧
(2008/10/28 revised by Hiroshi Iruma)
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