小倉百人一首/その他 32人


*主に、四位以下の男性官人。百人一首では、四位以上に叙された歌人には名の後に「朝臣」を付けて区別しているようである。


柿本人丸
003 あし引の山鳥のおのしたり尾の なかゝゝし夜を独かもねん

山辺赤人
004 田子のうらにうち出てみれはしろ妙の 不二の高根にゆきは降つゝ

猿丸大夫
005 おく山に紅葉ふみわけ鳴しかの 聲きくときそ秋はかなしき

安倍仲麿
007 天の原ふりさけみれは春日なる 三笠のやまに出し月かも

蝉丸
010 是や此行もかへるも別ては しるもしらぬも相坂のせき

在原業平朝臣
017 千早振神代もきかす立田川 からくれなゐに水くゝるとは

藤原敏行朝臣
018 住の江のきしによる波よるさへや 夢のかよひち人めよくらん

文屋康秀
022 吹からに秋の草木のしほるれは むへ山風をあらしといふらん

大江千里
023 月みれは千々にものこそかなしけれ 我身ひとつの秋にはあらねと

源宗于朝臣
028 山里は冬そさひしさ増りける 人めも草もかれぬとおもへは

凡河内躬恒
029 心あてに折はやおらむ初しもの をきまとはせるしら菊の花

壬生忠岑
030 有明のつれなく見えし別れより 暁計うきものはなし

坂上是則
031 朝ほらけ在明の月とみるまてに よし野ゝさとにふれるしら雪

春道列樹
032 山川に風の懸たるしからみは なかれもあへぬ紅葉なりけり

紀友則
033 久方の光のとけき春の日に しつ心なくはなの散らん

藤原興風
034 誰をかも知人にせん高砂の 松も昔の友ならなくに

紀貫之
035 人はいさ心もしらす古郷は 花そむかしの香ににほひける

清原深養父
036 夏のよはまたよひなから明ぬるを 雲のいつこに月やとるらん

文屋朝康
037 しら露に風のふきしく秋のゝは つらぬきとめぬたまそ散ける

平兼盛
040 忍ふれと色に出にけり我こひは ものやおもふとひとのとふまて

壬生忠見
041 恋すてふ我名はまたき立にけり 人しれすこそおもひそめしか

清原元輔
042 契きなかたみにそてをしほりつゝ すゑのまつ山波こさしとは

曽禰好忠
046 ゆらのとを渡る舟人かちを絶 行ゑもしらぬこひのみち哉

源重之
048 風を痛み岩うつ波のをのれのみ 碎て物をおもふころかな

大中臣能宣朝臣
049 みかき守ゑしのたく火の夜はもえて ひるは消つゝものをこそおもへ

藤原義孝
050 君かためおしからさりしいのちさへ 永くもかなとおもひけるかな

藤原実方朝臣
051 かくとたにえやはいふきのさしも草 さしもしらしな燃るおもひを

藤原道信朝臣
052 明ぬれはくるゝものとは知なから 猶うらめしき朝朗かな

源俊頼朝臣
074 うかりける人を初瀬の山おろし はけしかれとはいのらぬものを

藤原基俊
075 契りをきしさせもかつゆをいのちにて 哀ことしの秋もいぬめり

源兼昌
078 あはち嶋かよふ千鳥の鳴こゑに 幾夜ねさめぬすまのせきもり

藤原清輔朝臣
084 なからへはまたこの比や忍はれん うしと見しよそいまはこひしき




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