取材を除けば、いわゆる土産物店に入ったことがない。
 インドでの買い物も基本的に日本と変わらない。必要になったら衣類、石けん、歯磨きなどの日用雑貨を買う。欲しくなったら音楽テープや本など趣味の品を買う。ただの興味で、つまりおもしろそうだなぁと思って入るのは、駄菓子屋、玩具屋、雑貨屋などである。
 
 基本的に私はコレクションが目的のコレクターではない。何となく集まっちゃったモノのほとんどはマッチのラベルであり、タバコの空箱であり、お菓子などの包装紙である。要するに実際に自分が使ったモノ。集めたのではなく、捨てなかっただけにすぎない。だから、わざわざ買ったモノは数えるほどしかない。もちろん、かなり偏っている。
 たとえば土産の定番「絵はがき」にしても、風景写真よりも多いのが映画俳優の……日本で言えばプロマイドだ。
 他の品については「他人がどう思おうと、私は気に入っている」と最初に開き直る必要があるモノばかりと言っておこう。

 前置きが長くなったが、そういったお気に入りの一つが以下のシール。大きさはB5サイズ。どぎつい彩色は昔懐かしい「うつし絵」の印刷にそっくり。素材はわら半紙で、ミシン目こそ入っているが、裏に糊はついていない。
(うつし絵=昭和の絶滅種なので敢えて説明すると、水に濡らしてノートや肌に貼ってから裏紙をはがすと左右反転した絵が転写される、駄菓子屋で売られていたシール。)

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 もう少し上品な色使いのシールもあるが、こちらを選んでみた。やっぱりデザインの定番はヒンドゥーの神様だ。名前を全部言えたら通である……ってあたりはポケモンシールと変わらない。だけど、文房具に貼っている子供は見たことがない。学校が厳しいのか、恐れ多くてできないのか、それとも単に「そんなのカッコ悪い」なのか、真相は不明。

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 ヒンドゥーの次はクリスチャン。ジーザス・クライスト・シールもしっかり売られていた。多分、最大の疑問は「なぜ?」だと思う。
 な〜んでキリストやねん。

 ま、うがっちゃえば、こういった生活グッズ?からインドの息づかいが聞こえてくる。「なぜ」を掘り下げれば、インド人と神様の関係に新しい考察を加えられるかもしれない。しかし、それは文化人類学者や宗教学者にお任せしよう。

 さて、本題である3枚目のシール。テーマはズバリ、偉人。
 インド人の考える「偉人」とは誰なのか。その答えがここにある。
 不特定多数のインド人にインタビューしたり、アンケートをとるよりも、はるかに安直……もとい、効率的に情報を得られるのである。もちろん手に入れる前にそんなことは考えなかった。後出しの屁理屈にすぎないが、さほど的は外していないだろう。
 ただし、「だけど」が2つつく。一つ目は言うまでもなく、わからん人物が多すぎる。\(^^;)/
 二つ目の「だけど」は、これが駄菓子屋で売られていた品ということ。位置づけが難しいのだ。
 オリジナルは小学校の教材にあるのかもしれない。なぜか道ばたで世界地図や人体図が、それもクルクルと巻いてスルスルと広げる壁掛け式教材のソレが売られている国である。先生がスルスルと広げて、これは誰と教えている姿は容易に想像できる。一方で、日本の駄菓子屋基準で考えれば、商品的に「古い」ということは当然考えられる。メンコの図柄を思い出してみなはれ。教材だとしても、かなり古い教材のコピー品かもしれない。そのあたりは今度インド人に聞いてみよう。

 さて、何人の名前を挙げられるだろうか。前半がインドの政治家(インド国民会議派のお偉いさん)というのは「なるほど」としか言えない。中段はわからない。後半の意外な人選は疑問の前にツッコミを入れたくなる。

なんでやねん!
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[国籍いろいろなので敢えて日本式発音で]
1)マハトマ・ガンジー 2)ネルー 5)チャンドラ・ボース 9)インディラ・ガンジー 10)ナラシンハ・ラオ 15)ホイットマン 16)タゴール 17)ラーマクリシュナ 18)スワミ・ヴィベーカーナンダ 19)仏陀 21)ガガーリン 22)J.F.ケネディ 23)レーニン 24)スターリン 25)アンベードカル