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端島(軍艦島)
Hashima
32 37 39.74,129 44 17.84

 自然の力により朽ちていく建物。正面が日本で最初の鉄筋コンクリート建造物、30号棟。
その後ろに白い灯台が見えます。

 私位の年代ですと、端島が活躍していた頃の記憶があります。とはいっても小学生あたりでしたから、炭坑のための島、人口密度世界一、土が殆どない島、といった極めて断片的なものでした。そんな端島も話題にならなくなって久しくなり、気がついた時には全員退去して朽ち果てつつある。何とかしよう、軍艦島ツアーを始めよう、世界遺産登録をしよう、そんな情報が東京まで伝わってくるようになりました。そして長崎行きの今回を利用して上陸してみようとなった訳です。
 
 島は最終的に三菱から市に寄贈したため市有地となり、条例により立ち入りが制限されており、決められたルート以外には行けない。そもそも接岸が難しく、上陸出来るのは年間100日程度と見込んでいるとか。おやおや打率3割ではないですか(実態は6割〜9割程度です)。天気の状況を見て判断しなければ。ツアーの予約は前日にすることにしました。
 
 ツアーを主催している会社はやまさ海運、軍艦島コンシェルジェと名乗っているユニバーサルワーカーズ、軍艦島クルーズの3社があり、内容が微妙に違っています。出航場所もそれぞれだし、上陸が重ならないように時間をずらしているし。そんな中で軍艦島クルーズは、料金を値下げして他社に対抗していること、双胴船の安定感、高島にも寄るというのもあり、ここに決めました。乗り場も便利な所ですし。

 土曜ということもあり、そこそこの人を乗せて出航します。大浦天主堂、グラバー園を見ながら湾の外へ。神の島教会、伊王島の馬込教会を見、伊王島を回ると人工的なシルエットの島が見えてきました。端島です。
 
 上陸しての印象は、こんなにも破壊されてしまうものなのかというものでした。全島退避したのが1974年ですからざっと40年近く前。それから台風、低気圧の高波などによって正に痛めつけられた結果(人の手というのもあったそうです)、目に飛び込んでくるものは、とことん荒れ果てた島の姿です。自然の力の前に人工の構造物は何と弱いものか。一回の台風で岸壁は壊れ、建物の窓は割れ、更に建物本体もどんどん破壊される。コンクリートを支える鉄筋がむき出しになり、また鉄骨もひしゃげていく。更に台風、そして冬の低気圧・・・もう元には戻ることはない。ひたすら破壊されるだけ。
 
 要は建物というものは、人の手を離れればどんどんと自然の手によって破壊され続け、瓦礫の山となる運命だということをいやという程見せつけられたのです。この地で多くの人々の営みがあったはずなのに、そんな感傷に浸っている暇などありません。強固のはずな鉄筋コンクリートだから一層その破壊の凄まじさが伝わってきます。役割を終えた建物は消えいくだけ。それが定め。その冷酷さが自然の姿なのです。
 
 廃墟は世界中にあるけれど、やはりここは特筆すべき廃墟でしょう。高度成長を支えた超過密都市が役割を終え、放置され、今はその亡がらを晒している。ほんの40年前まで何千人という人が24時間働き、暮らしていたからこそ、現在の姿との落差に人々は魅せられるのかもしれません。
 
 世界遺産にしようという動きもあるようですが、ここの崩壊はこれからも着実に進むでしょう。野崎島の旧野首教会なら保存出来ると思いますが、この島の建物の保存は、ここまで崩壊が進んだ状態を考えると、一体どう対応するのでしょうか。場所を選んでそこだけの崩壊を食い止めるのでしょうか。多分防波堤の復旧位しか出来ないかもしれません。
 私としては崩壊の経年変化をこれからもしっかりと見届ける、というのがこの島の建物に対するリスペクトある対応だと思います。役目を終えた建物はひたすら消え行く運命。長い間ご苦労様でした。 

高島を出航し、暫くするとは島が見えてきました。左の高い建物が小中学校。見事に透けて見え、骨格だけになっていることが分かります。 島の長手方向に平行した所から見ています。山の上の幹部社員職員住宅、神社、山の下の一般社員住宅。厳密なるヒエラルキー。
上陸して小中学校を南から見ています。屋根を支えている柱がひしゃげて屋根が波うっているのが分かります。右にベルトコンベアの支柱が見えます。何処も鉄筋がむき出しだ。
炭坑施設は閉山時に破壊されたとの記述もありますが、こんなのを見るとうなずけます。
左から31、25、30号棟。住居棟が近くに見えるのはここからしかありません。下の階段あたりが生活の匂いを感じます。
30号棟のアップ。床も抜けてきたのが分かります。木も生えてきた。
小中学校のアップ。まだ残っているガラスがあるんだ。当然ですが窓は木枠です。

そして端島を後にします。夕方4時過ぎ、本日最後のツアーでした。