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1436

公的ウソ集 (collection of public lie)
2014/08/09

動物は生きるためにウソをつく。まして前頭前野が発達した人間は容易にウソをつく。そもそも人間やサルが大きな頭脳を発 達させたのは、マキャヴェッリ的知性仮説によれば大きな集団では嘘をついて協力を得るとか別の個体の嘘を見抜き騙されないようにするという必要に迫られた ためだろうという。

民放のテレビ番組が「嘘つきな国ランキング」なる番付を発表したという。それによると39カ国の3,900人以上を対象に実施したアンケート調査の結果、日 本は世界で4番目、アジアに限れば何とトップの「嘘つき大国」になるそうだ。

公的ウソのルーツはもっと深いところにあるかもしれない。 モーゼの十戒にある「偽証してはいけないこと(嘘を言ってはならない)」は儒教にはない。儒教の影響下にある集団の秩序重視の社会では集団のためにはウソも方便 として社会が受容しているからかもしれない。ケ小平が来日した折、中国は日本に不良品を輸出して申し訳ないと言ったという。一つは儒教、二つ目は漢字との こと。

内田樹は「嘘も方便」を許容しているのは仏教 だという。方便の踏絵、ウソの踏絵を日本社会はそれを許す。芥川の「藪の中」は三人三様の言いようを描いて終わっている。少なくとも3人のうち2人は嘘を いっているわけだ。これを映画化した羅生門は西洋 の人を驚かせた。なぜなら西洋の伝統では真犯人は必ずいるわけで、正解を与えないで物語を終えることは考えられない。英語でRashomonは 真相が不明のことを意味するようになった。

クルト・ゲーデルの不完全性定理の第一定理は証明も反証も出来ない決定不能な命題ーしかし真であるー命題が必ず存在するといっている。たとえば「私はウソ つきだ」である。第二定理は「自己の無矛盾性は証明できない」である。安倍首相の国会答弁「私は総理大臣ですから、嘘をつくわけがないということを申し添 えておきます」は第二定理違反である。

哲学者ハンナ・アーレントは「全体主義の起源」で「大衆は何事もすぐに信じるが、同時に何事も信じていない」といっている。どうしてそうなるかと言えば公的ウソが多くなるからではないだろうか?

どのくらい公的ウソがあるか、拾い集めたら54項目の「公的ウソ集」ができた。



1.明治維新成立のウソ

●岩倉具視が1867年11月9日に薩摩の大久保利通らに「討幕の蜜勅」という偽の勅許を出したことが明治維新がウソからできた例としてある。孝明天皇は すでに死亡しており、 14才の幼い明治天皇はいたが、その署名もないものだ。これに慶喜が騙されてあわてて大政奉還をしてしまった。こうして明 治維新への車輪が回り始めたという。

●天皇家の血筋であると自負する毛利家が万一の政変のために使えるのではと長州の田布施にかくまっていた後醍醐の子孫大室寅之祐を水戸史観に染まった吉田松陰が見つけ出し、伊藤博文に預け たという説もある。伊藤が大室寅之祐を攘夷派の孝明天皇の子、睦仁(むつひと)親 王とすり替えたという怪しげな説がある。もしこれがウソでないなら、この明治政府の基礎の基礎の部分で「大ウソ」をついてしまったことが、今にいたるまで の現王朝の基本的な性格(何かとこそこそ内輪だけで・小手先だけでごまかそうとする性格)を形作ってしまったのではないか。

●一般的流布している日本史では坂本龍馬の「船中八策」とか、これよりはやく上田藩士赤松小三郎が慶応3年5月に越前福井藩の前藩主で幕府顧問の松平春嶽 に提出した「御改正之一二端奉申上候口上書(以下、御改正口上書)」または建白七策などがあるが、実際には当時のJohn Russell外相(バートランド・ラッセルの祖父)がHarry Smith Parkesを駐日大使に任命した時に「日本において、体制の変化がおきているとすれば、それは日本人だけから端を発しているように見えなければならな い」と訓令したと言う話もある。



2.三権分立に関するウソ

●三権分立は日本国憲法第67条1項に明記されているが、これは必ずしも正しく実行されていない。なぜなら、三権分立は西欧に発した仕掛けで、儒教的秩序に永らく浸り、骨肉と化した考え方からはなかなか抜けないからであろう。

●1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している教育勅語は天皇主権が前提で書かれている。「天壤無窮󠄁ノ皇運󠄁ヲ扶翼󠄂スヘシ」すなわち 臣民は天皇を守るために一命を捧よと美化している。日本会議に支持される安倍政権のひそやかなる野望は天皇主権の明治憲法への回帰のようだ。安倍政権は天皇主権憲法への準備 としてこの教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と言い出した。憲法を改悪し、公共のためという「おためごかし」で人権を 制約し、楽に統治しようというわけである。

●最高裁が砂川事件などで「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」の合憲性判断について、統治行為論と自由裁量論を組み合わせた変則的な理論を展 開して、司法審査の対象外として以降、日米同盟の憲法適合性が問われる問題では以後、日米安保条約が日本国憲法の上位にあることになった。ために、日米の 官僚が日米合同委員会会議で決めたことは憲法より上位にあるということになる。これは日米官僚による寡頭政治だ。つらつら考えるに日本は民主主義の体裁を 装った官僚寡頭制(オリガーキー)なのだと気がつく。明治の太政官時代から太平洋戦争を通じ、この官僚オリガーキーは不変であった。

●裁判官の人事を含む司法行政は裁判所法上は最高裁判官会議の役目だが、形骸化され、空洞化され、議論が行われず、事務総局が用意した議案そのまま承認す るため、事務総局人事局がにらみをきかしている。これにより過去におけるすべての裁判所の判決は原発に関する行政の専門的な判断に誤りや不合理な点があるかとどう かという観点から審査すべきとされたにもかかわらず、行政は正しいという前提で国と電力を勝訴させてきた。官僚無誤謬説を駆使して日本の司法を乗っ取って いるわけだ。

●司法権の独立もあやしい。最高裁の判事の定員は15名。出身分野別人数は、おおむね、裁判官出身6人、弁護士出身4人、検察官出身2人、行政官出 身2人、法学者出身1人となっている。弁護士や学者出身は5名に対し、裁判官、行政官、外交官、検察官など官僚出身は10名もいるのだ。この任命は定員制 によりほぼ枠がきまっているし、任命するのは行政だ。指名された側が指名者に対して弱いのは事実で、行政寄りの判決が多いのはこのため。行政にバイアスし 過ぎである。バランスとして採用された国民審査は情報非対称であるためと、国民に主権意識が希薄のために形式があるだけで機能しない。今まで、国民審査でNGを出された裁判官は一人もいない。

●立法権は形式上は国会にあるはずだが、立法の立案は82%は官僚が行っている。行政手続法、情報公開法、公取委の強化が「政治の失敗」を避ける方法で ある。・・・と言いながら安倍政権は官僚の言いなりの法を制定した。全く政治家として胆を抜かれた事態である。ドイツ型「官僚主義の立憲政体」が原因と考 えられる。

●明治期の政府は野党議員を抱き込むために、野党の要求で「議員が政府の作製する議案に対し疑義あるときは国務大臣に説明を求めることができる」 と言う条項を衆議院規則に入れた。戦後になってもこの意識は変わらず、国会では議員が民意を吸い上げて同士が議論しながら政策を作ることはせず、政府の政 策の説明会に堕落したままだ。一方、参議 院は事前審査制でラバー・スタンプ化して形骸化している。

●憲法7条に準拠する首相の解散権は最高裁判決で統治行為論として正当化されて、首相独裁になっているため議会が正常に機能していない。

●米国には市民から選ばれた陪審員が起訴するか否かを決める「大陪審」(grand jury)があるが日本にはない。日本の検察は権力者の起訴に及び腰である。敗戦後GHQが求 めた検察の民主化に対し、日本が激しく抵抗し強制捜査権のない検察審査会で妥協したための結果である。検察は最近死んだのではなく、戦前から死んでいたの だ。ここにこそ、ヨーロッパがはじめた民主主義が日本に定着しない原因がある。



3.民主主義国家というのはウソ

●日本は官僚に乗っ取られた国家で西洋流民主主義国家というのはウソ。西洋では社会契約説に従い、限定された独裁権(elected dictatorship)を一定期間、指導層に与える。しかし日本では明治維新で下級武士が下剋上で権力を握り、官僚となって国を牛耳り、古参官僚が政治家になっ て若手官僚を指導した。武士階級からの官僚供給が途絶えてからは東大法学部卒が自動的に高級官僚になる仕組みへと変わった。戦後も西洋流の法律外の暗黙の システムは変わらず、官僚寡頭制は継続している。この法律外のシステムを壊さない限り、今後も官僚独裁は継続する。

吉田茂首相はGHQ 民生局のチャールズ・ケーディス大佐に「あんたがたは日本を民主主義の国にできると思っているのかね。私はそうは思わんね」と言ったという。 彼には日本 人には本物の自治を行う能力はないと見えた。それは東アジアの儒教的秩序にズッポリと浸かって、上からの革命に従順に従う民衆には下からの闘いの意思が欠如しているという理由からだった。

●日本が民主主義国だというのは死刑制度をみてもウソだとわかる。ミッテランは「民主主義国家であることと死刑制度は共存できない。人命尊重は人権思想の基本であり、民主 主義は人権に立脚しているからだ」と言って死刑制度をやめたというが、いまだに死刑制度を維持している先進国はアメリカと日本だけである。しかもアメリカの半分の州は死刑制度がない。というわけで日本はイラン、サウジ、中国、北朝鮮とお仲間なのだ。日本は仇討ちの伝統が 色濃く残った後進国ということになる。

●コンドルセの陪審員定理は、一定の条件下で投票者数が増えるほど多数決の結果は正解 に近づくことを数理的に示してはいる。この定理が現実社会で成立す るには「個別の投票者が互いに独立して正解を選ぼうとする」との条件をクリアする必要がある。しかし日本を含む東アジアでは儒教の伝統か同調圧力が強く、個人が独自の見解をもつこと を忌避する傾向があり、小選挙区制で生れた二大政党の議員には討議拘束がかかり、独立に判断す るという自由が無い。最高裁が2回も選挙区の区割りは違憲との判決を出しても、選挙のやり直しを命じないことをいいことに議員たちは利権を手放さない。

●有権者が賢明な選択をするには、政治や政策についての情報が必要。古典的な合理的投票モデルでは、有権者は様々な情報を分析し、自分に一番「得」な 候補者や政党に投票すると考える。しかし大半の有権者は驚くほど貧弱な情報しか持っていない。政策争点 について意見を聞かれればイエスかノーか答えるものの、その争点について正確な知識を持っていない人が大半。この実態を、合理的投票モデルは「合理的無 知」という概念で説明している。

●一群のマニフェスト(複数の選挙綱領)を巡って行われる代議員制民主主義は機能するというのはウソ。重要な政策毎(シングル・イシュー)に国民直接投票 制を取らないと民意は反映されない。これは民主主義のジレンマ。

●少数者は弱者だというのはウソであることがある。ある産業が利益団体を組織したとする。利益団体活動から得られる利益、たとえば補助金や優遇税制や保 護規制は、その産業全体に利益をもたらす。そうなると、利益団体に参加する企業や個人には「他の企業にロビイングは任せておこう」という「ただ乗り」の誘 因が生じる。ただ乗りの誘因が強く働けば、利益団体を作ること自体が難しくなる。ロビイングなど「集合行為」でただ乗りを防ぐには、少数の集団の方が多 数の集団より適している。その結果、民主主義過程で「狭く集中した利益」を共有する少数者が「広く分散した利益」を共有する多数者に勝つという逆説的な結 果が生まれる。この極限が個人が政治家に働きかけて、便宜を受けるという東洋的手法になる。

●「民主主義では直接民主制が基本だが、物理的制約から代議制を採っている」というのはウソ。インターネット技術が発達した現在、この論理は成立しなく なっている。あらゆる争点で全有権者の意思を問い、政策に反映させることが可能な時代になっている。

●昼間の固定電話による世論調査には偏りがある。まず若者は固定電話を持たない。もっていたとしても会社に行っていて不在である。したがって暇で家にご ろごろしている時代に取り残された人の意見だけを徴取することになる。



4.行政に関するウソ

●日本の役所、検察であろうと、裁判所であろうと、会計検査院であろうと、西洋流の憲法は神棚にあげて全て1,000年来の中国から伝来の儒教ルー ルで運営されている。すなわち「役人には道徳を学ばねばなれない(科挙制)、しかし市民にその結果責任を負うまでは求めない」という権力側に都合の良い、御 都合主義なのだ。だから監査なんて機能しないし、透明性もない。1,000年の歴史はすべて茶番劇。いまだ欧米が頑張っているが、そのうち中国が経済的 に勝利すると、隣国の日本など、この儒教の尻抜けルールの雲に覆われて完全に沈没し、住みにくい国になる。現安倍政権がその始まりと歴史に記録されそうだ。明治維新はまだ 武士という官僚機構のなかの権力闘争にすぎず、市民が人権を要求して立ち上がったものではなく、天命を失しなった皇帝が退位し、新しい皇帝がその後釜に 座ったという程度の中華的革命にすぎなかった。

●行政府のすることは全て正しいは真っ赤なウソ。例えば財務省の理財局が安倍首相夫人に特別配慮して破格の値引きをして日本会議の役員が設立した小学校に土 地を払い下げたこととその事実を秘匿するために売買の決裁書改竄を行ったことを見れば明らか。これは日本の官僚が文書を改ざんする根性を持っているというだけでなく、これ までのところ処罰からも逃れられる、ということを示しているのだ。スキャンダルそのものより「悪い」のはこういった行為が処罰されていないとい

うことだ。「もしフランスで官僚が森友問題と同じ手口で公文書を改ざんしたとしたら、公務員は解雇され、刑務所に送られるだろ う。処罰は迅速かつ容赦ないものとなることは間違いない」と、フランスの外交官は話す。「理財」の用例は、中国の古典「易経」にある理財正辞(財を理(おさ)め辞を正す)の記述にさかのぼるといわれるが看板にウソがあったわけだ。

●表向きは官僚は政治家に従うことになっているが、なぜか行政府の役人と司法の役人は自国の政治家より米国の軍産複合体の意向を忖度する傾向が強い。とくに日米 地位協定は不平等条約である。米国に安保を担保してもらっているとはいえ西ドイツに比べても多い。



5.官僚に関するウソ

●任命される側が任命者に対して弱いのは人間の本能だ。民主主義とは選挙民が政治指導者を任命し、その政治家が官僚を任命する仕掛けだ。しかるに 日本では 政治家に官庁の役職の任命権はなかった。民主党政権のとき、審議官以上の役職は内閣府に人事権を移したが、内閣府の官僚が人事案を作成するのは変わらな い。政治家にあるのは拒否権だけ。結果は内閣府が最強の官庁になっただけである。これでは国家の使用人たる官僚が政治家に任命される仕掛けになってはいないことに なる。その例が2018年に発覚し た財 務省理財局の公文書改竄事件である。科挙制で選ばれ、自動的内部昇進制度に守られている官僚はアンタッチャブルだ。彼らの行動様式は「立場主義」である。与えられた立場をまもるためには自分では何も考えずに何でもする。民主的に選ばれた政治家には 実質的任命権さえない。ここに日本国家のシステムの最大の欠陥がある。官僚制は民主主義を破壊する機関なのだ。こうして熱力学の法則のように民主主義国を 標榜する官僚寡頭制(オリガーキー)に移行している。

●政治家はデータも政策を立案する手兵を持っておらず官僚に依存しているため、立場が弱い。官僚の助け失くして何もできない、無能者である。安倍 首相や麻生大臣など典型的な例だ。だから国を大きなビジョンで指導できっこない。結果、官僚が間違えれば国民ともども一緒に地獄に落ちることに相成る。唯 一、官僚の意のままにならないのが自然災害と国際関係だ。いわゆる外圧でしか日本は変わらない。経済産業省は原発政策に偏執凶的に執心し、日本産業振興の ブレーキ役になり、財務省は格差是正の税制には消極的で、富の再分配をせず、人口減少促進をしている。このように官僚は自分の権益を増すこと、自分の蓄財 に精を出すことに熱心である。かようにして日本は米国に次ぐ格差社会になり、格差の程度はピケティによれば米国についでアングロサクソンの英国より大き い。かくして「日本は公平な国である」という言質は真っ赤なウソとなる。したがって人々は口先だけで公平を維持できない政府を信用せず、増税には否定的と いう民主主義統治としては最悪の悪循環になっている。

●戦前の軍部の軍人または武官が政治家(civilian)を無視して独走したことを反省し、戦後は欧米のようにcivilian control(文民統制)が重要だと認識したまではよかった。しかし官僚たちは文民統制とは政治支配と知りながら故意に文官統制と解釈し、防衛庁では統 合参謀長 である制服組(military man)は脇に置かれ、文官優位としたことも官僚が国家を盗み取る一つの行動をしていた。まー!何の能力もない、首相のお友達を防衛大臣に任命するもの だから、しなければならない報告も大臣にはせず、勝手な指示を出す。2018年に発覚した「イラク日報」の1年以上の秘匿は制服組の 仕業かと思われたが、稲田大臣に「イラクの日報は本当にないのか?」と聞かれた統合幕僚監部参事官付(文官)が2017年に送ったメールを読むと、文書 を探せとは言っておらず「探索して無いことを確認した組織・部署名を返信せよ」というものであった。これは無いという結論に導くような誘導尋問のようなも のだ。これは政治家が軍を掌握しているというようなものではなく、当時審議中の安保法制を頓挫しかねない「戦闘」という文言がふくまれている日報を見つけ るなと言っているに等しいもので、安保法制を通したい文官のコントロールが完璧に機能していたことになる。しかし残念ながら本来の意味の政治家によるシビリアンコントロールはほんどないことを意味する。

●日本は隠れ階級制のある文系支配の国だから、言霊に拘り、公的ウソが特に多くなる。「原発は安全と言わねば住民が反対する。ゆえに安全である」などな ど。とても論理的ではない。日本のエリート官僚は腐敗防止という建前で2年でポジションが変わるため、素人集団に成り下がる。そして化石化した陳腐な政策 を踏襲する。仮に何か気がついたとしても、まちがっていたことを検証する前に異動してしまう。結果としてウソをついたことになる。

●官僚は公僕であるは大ウソ。官僚は自分の利益しか関心はない。敗戦に導いた旧軍人は自分の階級をあげることしか関心がなかった。従って割り引いて官吏(巧吏)と呼ぶのがただしい。

●官僚無誤謬説はいうまでもなく大ウソ。日本国家再建はまずこれら劣化した官僚を入れ替えることから始めねば。

●官僚的支配に対立するものは、カリスマ的支配である。優れた企画力こそ、カリスマの源泉である。西欧の民主主義政党政治は党首はカリスマがなければ勤まらない。



6、第三者委員会や有識者会議のウソ

●とある組織が権力機構の不祥事に直面した時、権力機構がしばしば採用する方法は第三者委員会を設置して調査させ報告書を出してもらうという手を使う。これは手前味噌な報告書を書かせてはぐらかしますよと宣言しているのと同じ。

●官庁はよく役所の書いた政策にお墨付きを得るために有識者会議なるものを任命して審議させる形で権威つける。有識者には何の責任をとらせないのでその審議は上っ面で儀式じみたものになる。



7.憲法9条と日米安全保障と「核の傘」に関するウソ

●憲法は欧米が近代化する課程で権力者が横暴にならないように市民が権力者の権力を抑制する目的で制定されたものである。ジョン王が貴族たちの要 求を呑む形でラニーミードで調印したマグナカルタがその原型だという。そういう意味で行政府の長の首相が改憲したいという理由にはウソが含まれている。本 音は米国の「核の傘」を期待するために米軍が要望している共闘ができる法体系を持ちたいというものだ。しかし、核兵器はその力が大きすぎ、使えば、一瞬にして核の応酬で 終わりを告げる可能性を持っているため、米国は自国の防衛目的以外には核兵器は使えない。フランスはドイツのためにその核は使わない。かくして集団的自衛権は「核の傘」のために必要というのはウソで、精々通常兵器からの攻撃にのみ有効であるにすぎない。

●日本の新憲法はローマ法に起源をもつ欧州の大陸法とは違う英米法の流れをくんでいるため、憲法の条文は短い。結果、行間に不文律が多い。従って憲法学者 らの解釈の体系を含んでいる。9条も自衛権の範 囲に関しては明文化していない。グロチウスがとなえた国際法では自衛権は国が固有にもつ権利または自然権だという解釈である。 相手方の攻撃という受難を覚悟すれば自衛という大義で反撃できるという解釈だ。加えて1945年に制定された国連憲章では個別的自衛権に加えて 集団的自衛権も加えられているため、憲法解釈を変える必要はないにも関わらず、2014年、安倍政権は内閣法制局が積み上げた、解釈を変えて安全保障関連法 を制定し集団的自衛権行使もできるようにした。こうして日米安保条約は日本のためにあるというのはウソで米国のためということになる。米国は中国に対抗するために日米安全保障条約と地位協定を日本の防衛のためではなく、米国の利益のために利用し始 めた。

●そもそも日本が初めて持った明治憲法 は天皇主権で権力者を縛るものではなかった。明治維新は結局、この程度の憲法しか作れず、太平洋戦争を内包していたといえる。太平洋戦争が敗戦で終わり、 天皇主権の明治憲 法が戦争の原因となったとし、憲法を市民主権に変えよと米国に要求され、新憲法が制定された。

●この新憲法で世界に前例のない戦争の放棄を明記させたのはマッカーサーが日本統治のために、天皇制を継続したかったためだ。市民意識が確立している英国流の立憲君主国ならばともかく、女系を排し、万世一系の神道と関係付けられた神がかりの天皇の権威 を悪用する輩が出てくるのは歴史の必定。そこで日本には軍隊は持たせず、日米安全保障条約により米国が日本を守るとした。しかし冷戦の勃発で、急遽、自衛 隊を作らざるをえなかった。日米安全保障条約には地位協定がついていて米国が日本を守る見返りに基地とそのユーティリティ−費は日本が無償提供することになっ ていて、その額は国防費の14%。



8.地方自治に関するウソ

●米国、英国、欧州では地方自治は生きているが、日本に地方自治があるというのはウソ。地方自治は中央により阻害化と形式化されていて存在しない。何より 徴税権は中央にあり、地方は配分を受ける立場だ。中央官庁から派遣される副知事なる選挙の洗礼を受けないポジションをつうじて税の配分を陳情する仕組み で中央統制を継続している。

●日本は欧米に比べ、人口当たりの公務員数は半分程度と少ない。かてて加えて広域合併で議員を含め人減らししたため、彼らは超忙しく、住民が抱える問題を 吸い上げることができない。こうして住民が自治体を見限り、住民を失い、崩壊しつつある。アリストテレスが政治単位の人口は「一目で全体を見渡せる程度」といったのは正しい。

●米国では権力は地域社会や市、州レベルで行使されるべきという地域主義(ローカリズム)という考えが行き渡っている。権力は実際に仕事をしている現場に与えられる。こうして中央政府が機能しなくなっても地方は栄える。賢い若者は中央を離れ、地方に移ってゆく。




9.国益に関するウソ

●「国益」という言葉がよく国のリーダーの口からでるが、それはウソで国を乗っ取った連中の「私益」という意味だ。たとえば特定秘密保護法という反民主的 な法律の制定を強行採決をしてアメリカの国益に協力した代償に、「首相が個人的にしたいことで、アメリカ が厭がりそうなこと、たとえば靖国参拝」をやってみせる。また集団的自衛権法成立の後に、北朝鮮への経済制裁を一部解除した。また沖縄の知事を説得し て辺野古の埋め立て申請の承認を取り付け た後はすぐに靖国神社に参拝した。

●日本が敗戦国であることは歴史的事実だ。それも降伏の決断ができず時を浪費したあげくの無条件降伏であった。というわけで国家として戦勝国史観を否定す るともう一度戦争するしかなくなる。国家の一部の指導者たちが、近隣諸国にかけた迷惑を謝罪することもなく、東京裁判、従軍慰安婦問 題、靖国に関する戦勝国史観の受け入れ拒否をしているのは、票田のためであり、国際政治的には、愚策以外 の何ものでもない。

●敗戦国であるとは言え、戦後73年間、安全保障を米国だけにゆだねているのは選択肢が一つしかなく、脆弱である。とくに米国の力が弱り、隣国中国の力が増大している時代になり、複合路線にする工夫が要請される。

●United Nationsという言葉は第二次世界大戦中、日独伊の枢軸国と対戦していた26か国がワシントンD.C.に集まり、日独伊枢軸国への対決を明らかにした 「連合国共同宣言(ワシントン宣言)」においてである。第二次大戦中は日本ではこれを「連合国」と訳していた。し かし戦後、外務省は「国際連合」と翻訳を変えた。これも一種のウソであろう。このごまかし故に日本では個人的利益のために枢軸国日本を正当化しようとして 靖国に参詣したり、儀式としての 東京裁判批判をしたがる指導者がでてきて国際的な顰蹙を買っている。政治の本質は儀式なのだから、儀式としての東京裁判はそのまま受容するのが 賢明。ドイツは賢明にもナチ・ドイツを賛美することは法的に禁じられている。



10.靖国のウソ

●日本の右翼政治家が好む、九段坂上の『靖国』は鎌倉幕府執権・北条時宗が元寇の戦没者追悼のため『怨親平等』論を唱える中国僧の無学祖元を招いて創建した鎌倉の円覚寺の理念を受け継いだ開祖の孫弟子の夢窓国師が、後醍醐天皇以下の戦没者の菩提を弔うため、国ごとに太平山安国寺と利生塔を建てた『安国(やすくに)』の理念とは真逆の敵味方峻別の薩長招魂社に過ぎない。1864年に長州藩国事奔走志士招魂社を15社464柱祭神として合祀、1865 年薩長全招魂社を一社に纏め、九段坂上に『東京招魂社』を 造った。この中には暗殺された坂本龍馬や刑死した吉田松陰は含まれるが、暗殺された佐久間象山や赤松小三郎は含まれない。その後、日清、日露、第一次大戦の軍人戦死者、第二次大戦 で戦死した日本軍軍人・軍属約230万人、東京軍事法廷戦犯と戦死などしていない吉田松陰や山縣 有朋などが合祀されているだけで会津藩、仙台藩、盛岡藩、鶴岡藩、長岡藩など戊辰戦争犠牲者、明治政府に逆らった西郷隆盛、青森歩兵第五連隊八甲田山雪 中行軍死199名、ひめゆり部隊の死亡者123名、1945年の東京大空襲犠牲者10万人以上、広島・長崎原爆犠牲者の合計21万人と沖縄県民 犠牲者10万人、犠牲となった引き揚げ者20万人は合祀されていない。死者は区別しないで追悼するのが鎌倉・室町時代以降の伝統というのは少なくとも九段の靖国神社を見 る限りウソである。

●太平山安国寺の他にも同じ敵味方両者を等しく祀った寺は平重盛の紫金山弦楽寺、藤沢の清浄光寺(遊行寺)の敵御方供養塔、その他、龍口山常立寺(じょうりゅうじ または じょうれんじ)元使塚、島津義弘が朝鮮出兵後、高野山奥の院に建立した高麗陣敵味方戦死者供養碑、北条氏時の玉縄首塚八幡原の首塚がある。明治維新後日本赤十字社が国際赤十字社に加盟申請したとき却下された。しかし島図家のこの高麗陣敵味方戦死者供養碑があることが知れて加盟を許されたという。

●中国や 韓国は東京軍事法廷戦犯者が合祀されている靖国に政治家が参拝することを問題としたが、国を代表する政治家がこのような戦争犠牲者を合祀しない私的な神社に参拝するのを日本人が容認するのはウソを容認することであるということに気がついていない。

●そもそも靖国神社は名の通り、神道という日本古来の宗教によっている。これを政府が特別扱いするのはながらくキリスト教という組織宗教と権力闘争した西洋の伝統の上にある憲法20条で保護された信教の自由と政教分離原則にも反する 行為である。



11.北朝鮮脅威論と軍備のウソ

●北朝鮮脅威論を唱える者は愚か者であり、ウソを言っている。経済的に無力な国が軍事的な脅威になるはずがない。

●アメリカは第二次大戦後、アイゼンハウアー大統領が指摘したとおり、大統領は軍産複合体の利益を追求するグループとこれを解体したい大統領とに分かれて争ってきた。脅威論はつねに軍産複合体が宣伝に使う常套手段であった。

●経済力を伴って脅威は本物になる。中国の人口は巨大である。資本主義を採用してから経済は飛躍的に成長し、GDPは2018年には米国と逆転する。その金で軍備 も近代化しつつあり、軍事行動も積極的になってきた。アメリカの「核の傘」はこの中国に関しては無力となる。人口も経済も世界一の国と軍事的に対抗するなど米国といえども不可能とな る。日本など全く手も足も出ない。

●近代化とは伝統に縛られた現在とは相反するものとして未来を選び取ることである。そういう意味で150年前の日本はアジアで一歩はやく近代化に成功し た。 しかしおなじことは東アジア諸国も出来たのである。中国が近代化できたのは、日本の「和魂洋才」とおなじく「中体西用論」という「中国の本質」と「西洋の 方法」 をめぐる議論の後である。中国共産党もイデオロギーからテクノクラートに移行した。

●日本にとって不幸なことに勃興する中国に危機感を募らせ、政権が小泉時代から、安倍時代にかけて右傾化して中国敵視政策に走ったことである。一時、野党 の 鳩山政権で揺り戻すかと思われたが、結果として国連安全保障理事会の常任理事国にはなれなかった。その後の中国の躍進で和解の望みもついえ、尖閣諸島が領 土問題としてクローズアップされたままである。ドイツが隣国と和解してEUを成立させ、ロシアの天然ガスをパイプラインで輸入しているのと好対照である。

●中国の成功は資本主義と権威主義で製造業で成功したことにある。毛沢東の迷走が終息した後、日本や米国の製造業が中国を生産拠点に採用した。製品デザイ ンと製造工程が決まっていれば、あとはだれでも工場に投資して人を雇って毎日おなじものを作らせるということでうまくゆく。そういう意味で日本と中国の成 功原因は同じだ。そこに共通しているのはトップダウンの整然たるピラミッド構造。日本はいまだにここに留まっている。米国は相手が日本であろうが中国であ ろうがアップル、グーグル、クワルコム、NVIDIAのように傑出した理系が思うように設計をして台湾/中国企業に作らせる。この構想とか設計ができるの は英国の産業革命に始まり、米国に引き継がれた、個性豊かな個人がするイノベーション。これを個人主義社会と言う。

●中国の脅威と は彼らが真の独創性を発揮して、世界が欲しがる魅力ある文化と製品を開発出来るか否かにかかっている。日本はこのビジネスと技術の構想を練り、設計する能 力を育てることに失敗したため、製造業は中国に移動したのち、日本の製造業は空洞化した。それは日本社会が中国を中心とする東アジア特有の儒教的秩序を重視した社会だか らである。中国がこの個人の創造性を阻害する儒教思想から脱皮できるかは、規模により生ずる重力と独創力が発揮できるかにかかっている。

●防衛省はアメリカは軍産複合体に敗けて北朝鮮の核の脅威に備えるためとしてイージス艦のシステムを陸に上げたイージスアショアを秋田市の新屋演習場と山口県萩市むつみ演習場に配備す る予算をつけた。2基2,000億円 +ミサイル。米国の「核の傘」は無効だからその配備の必要性は否定できない。ただ導入のもう一つの理由としてイージス艦の乗組員の負荷を減らすためとあ る。しかしこれは米軍のように乗り組み員を交代制にすればよいこと。高価な機材は稼働率をあげなければ意味がないし、無防備で港に係留させておけばそれだ け脆弱性は増す。それをしないで陸上に固定基地を持っても真っ先に攻撃されて無力化されるだろう。それよりイージス艦の乗組員の交代制が先ではないか。ミ サイル時代というのに富士山麓で砲撃訓練している陸上自衛隊員をイージス艦乗り組み員に振り向ければ人件費増も節約できる。米国の軍産複合体に貢君になっているだけ。

●過去2,000年間、東アジアは中国の絶対的規模の優位をみとめて朝貢外交をしてきた。朝貢体制とは中国と周辺の圧倒的格差に より生じた関係である。すなわち日本がかって白村江で悟った関係である。今後、巨大な人口をもつ中国に経済力がそなわれば、おのずからこの状態に戻ると予 想でき る。ヨーロッパ列強が1945-60年に植民地を開放して東アジアを去って既に70 年、米国は衰退期に入り、日本は中国の陰に覆われつつある。日本は西洋をまねて一時的に成功したが、いまだ、権力者が市民に責任を持つ(アカウンタブル)という本質的な民主主義は根付かず、無責任で権威だけを振り回す権威主義の霞がかかった ままで、世界をリードする文明が湧いてくることも期待できない。一方、中国がヨーロッパ発の個人主義原理とは別の原理の創造的社会構築に成功して繁栄するのだろうか?

●来る中国中心の朝貢体制を決して受け入れないのはウェストファリア体制の国民国家であるヨーロッパ諸国と 北米だけだろう。?彼らは内政不干渉をモットーとする。欧米をまねた付け焼刃の日本は伝統的な朝貢国家に成り下がるのだろうか?失礼ながら東ヨーロッパ、南米、南ア ジア(除インド)、アフリカはこの朝貢体制に容易に取り込まれるだろう。その他のオーストラリア、ニュージーランドは 飲みこまれるかもしれない。そうして中国は再び優越階層意識をもつようになる。



12.戦争に関するウソ

●終戦というのはウソ、実は敗戦であった。戦争は天災のように終わったのではなく、負けたのだ。敗ける戦争を始めた戦争責任にはカール・ヤスパースが指摘 したように「刑法上の罪」、「政治上の罪」、「道徳上の罪」、「形而上的な罪」があるが日本人は最下層の「刑法上の罪」すら自ら問うては居ない。米国が東 京裁判という儀式をしたのに悪乗りして日本人が国をミスリードした罪を不問にしてしまった。天皇も退位すらしなかった。あたかも天災のごとく、そのような 罪があることすら認識していない。日本はハルノートという米国のそそのかしに乗せられて戦争したとの弁解を聞くが、みっともない。そんなそそのかしにのる ほうが未熟というものだ。このように日本人が戦争指導者の民衆への責任を問わなかったのは中国伝来の儒教的精神の影響だといえる。儒教は国家(皇帝と官 僚)に道徳律に従うように説くがその責任は問わないのである。

●アメリカに負けたのは歴然としている。ヒロシマ・ナガサキがその象徴だ。だからウソではない。中国にだって15年戦争をして負けたのだ。なによりの証拠に日本兵は今中国に一人もいない。

●戦争は経済を活性化さるという理解は第二次大戦の米国では正しかった。しかし核兵器の開発以降、戦争で多数の兵士を動員することはなくなったため、戦争 で国家の GDPが増えるということはなくなった。むしろ兵器の競争力を維持するために軍需産業に常時国家予算を継続的に投入せざるをえなくなり、国家予算と人材が 不足し、次世代からの借金でまかなわれるようになった。これは米国で顕著である。

●核兵器の登場で先進国同志の戦争はありえなくなった。また貿易や資金流を通じた経済的相互依存の高まりで米国と中国の戦争すらあり得ない。したがって戦 争は発展途上国の内戦とテロ対策、大量破壊兵器拡散防止など限定的なものに変質した。テロ集団は産油国など冨の偏在が大きな国に集まる。

●国際社会で外交と英語が下手なのは、言うべき事柄がないから。独立して在るとは「言うべき言葉」をもつことに他ならない。ただし、仮に言うべきこと見つ けても、それを発するには資格が必要だ。ドイツは「ナチ・ドイツは悪かったと全ての邪悪なものをナチ政権になすりつけて免罪符を手にした。しかし日本は枢 軸日本を率いた人々のうち、戦犯以外の指導層がそのまま戦後のリーダーになり、その子孫が政権についている。このため、ご先祖の名誉回復に熱心である。靖 国に参拝して戦死者のためと称して(ウソを言って)、南京虐殺はなかったと強弁し、従軍慰安婦問題はなかったと言い募り、国益を損なっている。もし反論し たいなら(あまり薦められないが)1996年の文化大革命と同時進行で行われた中国共産党による「内モンゴル人民革命党員粛清運動」に言及するだけでよ い。

●南京で日本軍が30万人虐殺したというのは伝統的な「白髪三千丈」的表現に過ぎない。数字にウソがある。しかし虐殺などなかったというのもウソである。数に関してはあまりに多くの説があり、確定 されていない。犠牲がでた原因としては明治維新時、官軍が戊辰戦争で採用した糧食の現地調達方針を日本軍が踏襲したことにあった。昭和18年、三笠の宮殿下は若杉参謀 として支那派遣軍総司令部に勤務していた。この司令部を去るとき「若杉参謀」として「支那事変に対する日本人としての内省」という講演をした時のメモがな によりの証拠。三笠の宮はこのメモで「日本軍が南京で行った糧食の現地調達の方針は大きな間違いだった」と旧軍を批判をしている。糧食の現地調達とは飢え た日本兵がカツカツで生活している南京市民から食物を略奪することと同義。ついでに女も犯す。糧食の現地調達は金のない官軍(西軍)が戊辰戦争で使った方式で領民は官軍と賊軍(東軍)の両方から搾取された。それでも捕虜に与える食料もないので、これも銃剣の訓練を兼 ねて、また毒ガスをつかって殺すというひどいものだった。このメモは講演後すべて回収破棄された。三笠の宮も終戦後破棄したが、なぜか最近、国会図書館の 本に挟まってこの若杉参謀メモが発見されたのである。

●船乗りと軍隊には娼婦がつきものだが、韓国では、「慰安婦(위안부)comfort women」という言葉は、1980年代までは主に米軍・国連軍慰安婦の事を指しており、日本軍慰安婦はほとんど問題になっていなかった。しかし1990 年代に日本との問題が大きくなってからは、「慰安婦」という言葉は、日本軍慰安婦に対して使われるようになり、米軍・国連軍慰安婦に対しては使われなく なった。韓国では、国連軍相手の慰安婦が韓国警察や韓国公務員により「挺身隊(정신대)」とも呼ばれていた。当時の日本語での「挺身隊」は工場などでの勤 労労働に従事する女性を、慰安婦は戦地等での公娼・売春婦を意味し、それぞれ異なるものであるが、すでに戦中当時にも朝鮮では両者が混同されていた。



13.軍に関するウソ

●軍は国民を守るというのはウソ。彼らはただ国民を利用するだけだった。自衛隊もその遺伝子をもっている。

●米国の軍産複合体も同じ。彼らは選挙で選ばれた大統領を繰り、または排除して世界を食い物にしている。



14.経済に関するウソ

「日本は政治は二流以下だが、経済は一流」という定説はウソ。じつは経済も二流なのだ。

●2026年の先進国のエンゲル係数は米国15%、ドイツ18%、英国20%、フランス24%、日本26%、イタリア27%で最低。そしてなぜか日本だけ 過去3年間、毎年1%ずつ増加している。日銀の金融緩和は物価上昇2%になるまで継続としているが、生鮮食品は物価統計には含まれないため、食品が値上がりし ても統計には 反映されない仕組み。

●「富裕層への課税は金の卵を産むガチョウを殺すようなもの」という決まり言葉やトリクルダウン理論はウソである。このウソを振りかざして高額所得者にた いする累進的所得税をやめるのが世界的な傾向だが、これでは貧富の差が拡大してしまう。富の再配分のためには所得税は累進的でなければならず消費税すら累 進的であるべきだが先進国はみな失敗している。

●貿易収支だけで国際関係を論ずるのは間違い。貿易以外の投資への利子、配当金、知的所有権のロイヤルティー、コンサルティング・フィーなどの資本収支も 含めた均衡でなければ意味がない。しかし米国市民にポピュリストの大統領が登場し、中国との貿易不均衡を是正しようと長年の交渉の結果である関税に前後の 見境もなく手をつけた。中国も即、報復関税を引き上げるということで世界経済が暗礁に乗り上げそうになるというのに、日本政府は何もせず静観。これは不作 為の罪にあたる。

●経済学の始祖アダム・スミスのいう「(神の)見えざる手」すなわち欲深い個人が競争によって社会全体の利益を最大化するように 行動するという見解は事実誤認。これを「アダム・スミスの誤謬」とよぼう。アダム・スミスよりダーウィンの動植物の個体間の競争が人間の経済現象を説明する理論とするのが正しい。すなわち個の利益が全てに優先され る。ただし集団の利益は代表されないのでコモンズの悲劇や公害などの外部不経済が発生する。だからといって規制を導入すると管理コストがかかるし、個人のインセンティブを抑制するのでやはり経済は回らない。結局、ワークしない規制より累進課税やピグー税などのほうが勝る。

●フォーチュン誌が命名した「日本株式会社」の特色の一つは資本が土地の含み益を担保にした間接金融方式で調達されることにあった。間接金融方式が有効な のは右肩上がりの時代だけである。工業化のためには農民に土地を捨てさせて都会に移動させて工場労働者にする必要がある。農水省は農民が去った土地を農地 法と農業委員会を使って農地以外に転用することを規制し、結果として工場用地と 都市住民の宅地を潤沢に供給することを制限した。こうした規制で土地価格が上昇し、含み益を創出したのである。しかし間接金融方式は結局、日本の製造業を 高コストにし、国際競争に負ける遠因を作った。縦割りの農業保護政策が製造業を殺したのである。あまつさえ、金融で資金を野放図に供給したため1900年 代の土地バブルを発生させ、その後の日本経済のデフレスパイラルの原因を作った。無理をして借金し、自宅を建てたはよいが借金を返済できなくなった世代が 団塊の世代の最後尾にいた。この不良資産が人々が職を求めて自由に移動することを妨げ、日本の産業が硬直化して新しい商品を生み出す活力を削いだ。これは 官庁の縦割りの利害を除去できなかった政治家の無能のゆえである。いまだにこの悪弊は直っていない。

●日本の高度成長は生産現場のいわゆるブルカラー層の生産性が高かっただけで、ホワイトカラーすなわち企画。管理層の生産性はずっと低いままである。それ はブルカラー層の生産性は数値で計測されるが、ホワイトカラーの生産性は評価者の主観で評価されがちなためである。結果として生産性とは関係無い勤務態度 などで評価されるためである。これにより日本の総合的生産性は米国よりも低くなってしまった。

シカゴ学派のミルトン・フリードマン提唱の中央銀行がマネーサプライを増す金融政策をとれば経済成長 が見込めるというマネタリズム理論に依存するアベノミックスは「アダム・スミスの誤謬」の囚人だ。日本銀行の頭取の首を挿げ替えたが、製造業は価格競争か ら脱するための魅力ある商品を開発できず、投資を行っても資金回収もできないため、余った資金は日銀当座預金として積み上がっている。やむを得ず政府が契機振興 のた めとしてオリンピックなどの公共施設や災害復旧のインフラ投資しているが、日本の打設コンクリート量は米国のそれより大きくなっているにも関わらずGDPは増えない。したがって日銀が目標とした2%のイ ンフレは5年経過しても 未達で、国家の借金の総額の対GDP比は第二次大戦末期の200%を越えて230%に達していて銀行経営も困難になっている。2%のインフレが目的なら低所得層の所得を増さねば ならないが、非正規雇用、残業規制などという逆方向の規制を積み上げて足をひっぱているのでインフレは生じない。こうして積み上がった財政赤字はいずれ次 世代が税金で 返済しなければならないもの だ。

●日本政府はアベノミックスと称して国内株式市場に日銀の上場投資信託(ETF)や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式運用などに公的 資金を投入している。一般信託会社に丸投げの運用であり、投資家としての見識も意見も反映されていない。この時価総額は2018年3月末時点で64兆円を 超え、国内上場株式全体の 9.6%に上る。日本の一般会計の歳出は103兆円程度だから金融緩和して余った金がバブルとして、株式市場を膨らませていることになり、制御不能になる 可能性が大きい。

●よく、国の借金は国民の貯蓄の範囲内だから問題ないという言説があるがこれはウソである。1941年大政翼賛界が戦費調達のために隣組に配布した小冊 子に「国債は国家の借金、つまり国民全体の借金ですが同時に国民がその貸手で・・・」とある。結局、戦時国債は敗戦で財産税と超インフレで弁済されたのである。 現在世界景気は回復し、金利上昇モードに入った。何らかの突発的上昇があれば国は増税しなければならなくなる。

●ブキャナンとワーグナーの指摘通り、ケインズ政策は民主主義の下では財政規律の確保を保証しない。財政赤字から利益を得る者は多いが、損失を被る将来世 代はその時点の選挙には存在しないため、財政赤字は累積し、財政規律の崩壊を食い止めるメカニズムは機能しない。ブキャナンとワーグナーは憲法に「均衡財 政」の規定を明文化する必要を説いた。OECD諸国のうち、憲法に均衡財政に関する規定が明文化されている国は、ドイツとスイスのみ。ただドイツやスイス の憲法における均衡財政条項には、景気動向等に配慮した例外規定があり、有効に機能してきたとは断定できない。OECDのデータによると、2010 年のドイツの公的債務残高(対GDP)は87%、スイスは40%で、OECD諸国平均の97%よりも低い。



15. 為替レートのウソ

●米国の自動車製造業の崩壊にともない日本から米国への自動車の多量輸出により、2008-2013年に渡り、為替がドル90円以下と円高に振れた。こ れにより海外市場での価格が上昇し、家電を含む日本の製造業は海外に投資して生産拠点を中国などに移転せざるを得なかった。しかし当時の白川日銀の金融緩 和は中途半端なもので円高に推移した。安倍政権になって黒田日銀は過激な金融緩和で円安にしたが、このフェーズでは生産拠点は自動車を含め、海外に引っ越 しているため、そこで上がる利益を資本として日本に還流させると円安のために円としての評価は低なる。このように輸出するものがなくなり、輸入するだけな ら円安にする意味は無い。むしろ金融緩和により生起したバブル崩壊がリスクとなってきている。



16.グローバリゼーションのウソ

●関税をゼロにして国の国境を越えて貿易するというグローバリゼーションは米国の資本家が発明した資本主義市場経済体制(capitalist market economy system)という仕掛けである。資本家は人件費の高い国から低い国に資本を移動し、製造を人件費の安い国にシフトして利益を上げることが可能となる。 しかし人件費の高 い国の失業率が高まる。そうすると製造業に従事していた人々の収入が減少し、代替の仕事は劣悪なものだけになり、国家の税収入は減少し、社会保障システム が崩壊し、国防費も維持できなくなる。国際収支も悪化す るため、為替が暴落して国家財政が立ち行かなくなる。これが米国で生じつつあることであり、日本も直ぐ後を追っている。

●ならばとトランプのように関税を上げたり、輸入枠を設けたりすると、相手国も対抗上関税を上げるか、規制を厳しくするとかサボタージするなど非 関税障壁を設けて対抗するため、価格が上昇するというネガティブ・フィードバックがかかる。為替操作も可能である。大多数の低所得層は製品の購入も 出来なくなり、消費マーケットが縮小し、経済は崩壊する。他にも観光客規制や米国の国債売却、北朝鮮の非核化への介入、米国を相手にせず、米国以外の国と の交易に集中するという手も使うだろう。結果生じることは1930年代の関税引き上げ競争や経済ブロック化によって生じた世界恐慌である。このよう に輸入枠や関税はグローバリゼーションにおいては低所得層を救えず無意味である。今のところトランプは中国など特定の国に限定しているが、世界規模になる と危険である。

●残るは資本や人の移動制限、固定相場制へ戻ることしかなくなる。しかし世界のルールを決めている支配階級の人たちは、都合が悪いから採用しないだろう。困った人々に支持される政治家しか解決できないのだがそういう政治家は支援するロビーがおらず選ばれない。

●そもそもEUもグローバリゼーションの究極の姿だ。英国がBrexitとしてEUから離脱するとしている。イタリアもいずれ離脱してグローバリゼーションは後退するかもしれない。



17.観光立国のウソ

グローバリゼーションの帰結として日本の製造業は空洞化した。唯一残っている自動車製造業の規模は17兆円である。これに匹敵できるのが GDPの3.5%をしめる観光業だ。グローバリゼーションの結果、どの国でも観光業が基幹産業化しつつあるので自動車産業の空洞化を埋め合わせる のは観光業ということになる。

●ところが日本では旧来の旅館業は部屋当たりではなく、人当たり料金を徴収し、雑魚寝を強要し、プライバシーの無い部屋しかない。また1泊2食付という古 い商習慣から脱却できず、泊食分離の外国人は嫌う。にもかかわらず過剰おもてなしのために人手が余計かかり、高コストで廃業が続出している。結果、ホテル 不足に陥った。

●ホテル不足を補間するためにドロナワ方式で民泊法(住宅宿泊事業法)を制定したが、国土交通省の観光庁が認可を条件としたため、「民泊」の仲介世界最大 手で2018年2月までの1年間で延べ580万人の予約をあつかった米エアビーアンドビーが認可のない業者の予約キャンセルをして大混乱。こんなことで観光立国はウソになる可能性大。




18.日本の労働市場は自由というのはウソ


●非正規社員の割合が4割に達し、年金や昇給などのセーフティーネットが乏しい。思い切って仕事を辞め、新たな技術を身に着けるというような第二の挑戦が できる状況にない。

●安倍政権が推進する労働者派遣法は一生低賃金で過ごさなければならず、健康保険も年金も無縁となる可能性があり、若い女性の親は非正規社員の男性との結婚に反対するため、人間の再生産が難しくなり、さらなる人口減少の原因をつくったという失政である。

●非正規社員の社会的差別が深刻化したため、2013年4月の改正労働契約法の施行により契約期間が1年の契約社員は、5回目の更新後の1年間に 無期転換の申込権が発生するという「無期転換ルール」を制定した。しかしこれは雇い止めに対する不安は解消されるが、給与や待遇等の労働条件は、基本的に直前の有期労働契約にお ける労働条件がそのまま引き継がれるだけで社会的差別は残るため解決にはほど遠い。

●高度プロフェッショナルは雇用契約を自由に締結できないため、残業規制は不用というのは奴隷状態にするという意味しかない。



19.人口問題に関するウソ

●人口減少は戦後の産児制限で仕込まれた現象である。子供を産む女性の数が戦後の産児制限の波及 効果で減ってしまったのがその発端。こうして子供を生める女性の数は世代を重ねる間に減ってゆく。1世代20年として 戦後3世代目の激減サイクルに入るため、その減少速度は加速している。

●最近は貧富の格差拡大や女性の社会進出もあっ て。ますます子を生める女性の数は減り続けてい る。対策は保育園を整備し、児童手当を増すなどの将来を見通した投資だが、政府は人口維持のためにふるさと創生や家族の絆を強調するだけだ。そのような拘束を増せばますます子供を作ることはない。

●こうして世代間扶養を基本にした「賦課方式」により運営されている年金制度は人口崩壊ですでに破綻している。「賦課方式」を継続すれば80才まで労働市場に留ま れという過酷なことになる。こうして人々は年老いた親の看護に苦しみ、人口減少と年金制度の崩壊に脅えている。社会保障制度代替としてはベーシックインカ ム制度がありうるのか実験もしていない。

●カンフル注射として技能実習生という移民を受け入れ ても貧しい社会環境に投げ込まれるので人口はやはり増えない。

●徴兵制は取らないといいつのってもこれはウソとなる運命にある。人口減少で隊員が不足するからだ。米国のように社会 福祉費をカットして貧困層が志願してくるようにしむける経済的徴兵制に移行する可能性がある。隣国の中国も政治的に産児制限をしたため、これから100年間は人口減少に苦しむだろう。



20.教育にかんするウソ

●科学の歴史を振り返ってみると叡智というものはアイザック・ニュートン、ジョン・フォン・ノイマン、アラン・チューリング、アルバート・アインシュタイ ン、ポール・ディラック、エルヴィン・シュレーディンガーなどの「個人知能」によってもたらされた。決して「集合知能」のおかげではない。

●いくら教育費を増額しても試験で教育効果を測定しているかぎり無理。個人の好奇心をつぶさない教育をしないと米国のような新技術が生まれてこない。

●人間の本質は人間の主体的な創造的心理能力と脳の可塑性にある。日本の教育は可塑性の部分まで無用な情報を詰め込んでその可塑性を奪う教育をしている。

●命令に従う労働者が働く職場は中国に移転し日本から失われた。したがって、命令に忠実で協調性のある人間をいくら養成しても、失業者の山をつくるだけで ある。したがって自ら道を切り開くタイプの人材をそだてなければならない。といって中央教育審議会答 申のように部活の実績などの実績も加味して記述式で選別していると独創性ある人材が選ばれないリスクがある。問題は独創性など発揮したことのない、選別する側 の能力の問題となる。独創性を発揮した経験者が教える側にたち、面接で自分のコピーになりそうな人間を選別するしかないが、これは無いものねだりだ。した がって中央教育審議会答申は何回も繰り替えした失敗の繰り返しとなろう。

●仮にそのような体制となろうとも、生まれつきの適性というものがあり、全員を独創性のある人間に育てることはむりだ。結果として大格差が生ずる。弱者は 政治的革命もできず貧困のままとどまる。そして科学は大部分の弱者にとって理解できない魔法のようなものになる。新中世の到来だ。

●安倍政権下のことだ、文科省の小学校の道徳の教科書検定で「パン屋」⇒和菓子屋」、「アスレチックの公園」⇒「和楽器屋」に書き替えさせられた。その理由とし て「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持たせるため」としている。ところが日本のパンの元祖は幕末の伊豆韮山の代官にして兵学者の江川太郎左衛門が兵糧として焼いたパンであった。一方、和菓子の元祖は遣唐使が持ち帰った中国の菓子がルーツ。和菓子の発展を即した茶の湯も栄西が大陸から持ち帰った茶が起源。いずれも我が国のオリジナルとはいえない代物ないのだ。

●日本人は英語が下手だから小学校から教えれば上手くなるというのはウソだ。塩野七生は「どんなに外国語を勉強 しても、本人の日本語の能力以上に話せるようにはならない」と言っている。



21.創造性に関するウソ

●我々ホモサピエンスがアフリカを出る一歩前にヨーロッパに移住していたネアンデルタール人は3万年前に絶滅した。アフリカ以外の人類にはネアン デルタール人の遺伝子が2-3%混入しているように能力的には大差なかった。彼らが絶滅したのは一緒に生活する集団が家族単位のため、失敗することが少な く、新しい道具を生み出す確率が低かったためと考えられている。創造性は多くの失敗の上に築かれるため、大勢の構成員のいる集団に多く出現するのだ。

●「鉄は国家なり」という時代は中国の勃興とともに終わった。これからは「革新は国家なり」の時代である。革新が生じる場所はネアンデルタール人が教える ように、つねに社会の構成員が大きいところだ。人数が多いと失敗の数も大きい。そのようなところではたまたまうまくゆくということもあるのだ。とはいえ都 市の順位ではサンフランシスコ、ニューヨーク、パリの順で東京は3位なのは社会の縛りが大きいからだ。

●安倍政権は長期の戦略指針「イノベーション25」なるものを掲げているが米国やEUの経済が上向いているのに日本だけはマイナス成長である。ということ は安倍政権が掲げる戦略指針「イノベーション25」というトップダウンの方式そのものにイノベーションの足を引っ張る本質矛盾が存在しているからに他なら ない。シュンペーターが指摘した通り、創造は破壊をもたらす。政府は創造では破壊される産業を保護するのではな く、そこからはじかれる人々に救済の手を差しのべるのが役目だろう。若者にチャンスを与えないで過酷な条件で絞るだけ、 研究費・教育費を削って人材養成を行っていない、研究費配分者から目利きを排除する、など政府のマイナスな行動は数え上げたらきりがない。このような逆噴 射をしているのだから成長がマイナスになるのは当然の帰結。

●セレンディピティとは『ふとした偶然のたまものでいい目にあえる能力』という意味だから評価能力がなければ無論見えない。「セレンディピティの計画的創 出」による新価値創造などといことはデタラメである。なぜなら失敗しそうなものははじめから除外されてしまうからである。セレンディピティとは記憶と目の 前の現象の些細な不一致が気になって その理由を探したくなる内なる衝動なしにはできない。計画的にできることでもなく、統計をつかってできることでも ない。個人の脳細胞だけがそれを実現できるわけで、皆でブレーンストーミングしたってお祭りになるだけ。楽しいが宴がおわれば元の木阿弥。安倍首相の三本 の矢みたいな もの。個人に余裕がなければ不毛の努力をする余力はでてこない。

●ヨーロッパやアジアの文化は失敗すると烙印を押されて辱めを受ける。アメリカの文化は(残りの世界に代わって)小さなリスクをとる。だからこそ発明が行 われる場所はアメリカにとても偏っている。

●人は損をすると恥ずかしく思うことが多い。だからボラティリティがとても小さく、でも大きな損失がでるリスクのある戦略をとる。機関車の前で小銭を集め るようなやり方だ。日本の文化はランダム性に間違った対応をしていて、運が悪かっただけでひどい成績が出ることもあるのがなかなかわからない。だから損を すると評判にひどい傷がついたりする。日本の人たちはボラティリティをきらい、代わりに吹き飛ぶリスクをとっている。だからこそ大きな損を出した人が自殺 したりする」と指摘される。

●「私たちは起こってしまったことを心配し、起こるかもしれないが起らなかったことは心配しない。だからこそ私たちは「プラトン化」する。知っている図式 やよく整理された知識を好む。そうやって現実を見るのに不自由になる。だからこそ私たちは「帰納の問題」に陥り、「追認の誤り」を犯す。だからこそ。よく 「お勉強」して学校の成績がよかった連中ほど、「お遊びの誤り」のカモになる。

●プラトン的とは、天下りで、型にはまっていて、凝り固まっていてご都合主義で、陳腐化した考え方だ。非プラトン的とは、たたき上げで開かれていて、懐疑 的で実証的な考え方だ。 われわれが「プラトン化」しがちなのは「コルモゴロフ複雑性」の次元を抑制したいからなのだ。

●自分自身が間違いを犯すことがあることを認め、それを掲げても、権威を認めてもらえたりはしない。人はただ、知識で目をふさがれないと気がすまないの だ。私たちは、人を惹きつけるリーダーの後を追うようにできている。集団の中にいることのメリットが、一人でいることのデメリットに追い討ちをかけるから だ。みんなと一緒に間違った方向に進むほうが、たった一人で正しいほうへ向かうよりも得るものは大きい。

●商品開発するとき、世界をリードする文化の中心にいないと、出来上がるものがガラパゴス化する。そういう意味で日本はすでに世界文化の中心から外れてい るために世界をリードする可能性は低いことを悟るべきだ。例えばAIロボット開発の例としての「受付嬢ロボット」がある。世界標準から見れはこれはジェン ダーバイアスの最たるもので気味が悪いものに過ぎない。むしろ中国のほうがその膨大な人口故に文化の中心になる可能性が高い。

●タイ北部で、大雨により洞窟に閉じ込められていた少年サッカーチームの捜索活動で少年らの発見をしたのは2人の英国人ボランティアダイバーであった。普 段は消防士として働くリチャード・スタントン(Richard Stanton)さんと、ITエンジニアのジョン・ボランセン(John Volanthen)さんである。2人は、行方不明になってから9日が経過していた少年12人とコーチ1人を見つけるため、独自の判断で水位が上がった洞窟の長く曲が りくねった通路を最後まで進み続けた。誰もできないことを一番にすることは創造的な活動の必須要件なのである。




22.記憶に関するウソ

記憶はシナプスの結合で行われている。この記憶を思い出すときはそのシナプス結合を固定したときと同じメカニズムをつかうので思い出す という行為を繰り返すとそのシナプス結合が変化する可能性がある。したがって検察の尋問が長く続いたあと、この記憶の可塑性が生じる。冤罪の70%はこれが 原因だとされる。日本の犯罪裁判はかなり検察の犯罪に過ぎない。




23.学歴にかんするウソ


●情報の非対象性の存在によって品質を直接観察できないときには、その情報と関係の強い観察可能なものをシグナルとして利用することになる。例えば学歴と 生産性が相関関係にあるのなら経営者が教育水準の高い者に高給を払うのは合理的であり、働く個人にとっても能力のシグナルを示すために学校に行くのも合理 的な行動となる。しかしGEの偉大な経営者ジャック・ウェルチは学歴というシグナルは役に立たないと経験から学ぶ。管理職の能力は直接当人と話しながら感 じ取るしかないのだと。

●企業の二代目以降のトップマネジメントや政府機関の高級官僚は節目毎に再評価せず、採用時の最終学歴だけで自動昇進させることになっているのは間違い。日本の凋落の原因はここにあ る。

●「カイロ大学首席卒業」と自称して当選した某都知事はカイロ大学を卒業すらしていないと報道されている。




24.人件費が高くて製造業は日本では成立しないというのはウソ

●日本が空洞化したのは人件費が高いため工場を台湾、中国、韓国、東南アジアに移転したためというのはウソ。人件費が高いだけなら製造工程を自動化すればよい。頭が空っぽのトップマネジメ ン トが米国に勝った時点で慢心し、ソフト開発、製造技術革新への投資を怠ったからだ。米国のように魅力ある製品開発をすれば、製造拠点が空洞化してもビジネスは継続可能。要するに日本の問題点はマネジメントレベルの判断能力が低いのが真の理由。

●造船業は日本を脱出し、東南アジアにドックを建設したが、垂直統合・純潔主義できた日本人職長(ミドル)が現地人を使いこなせず、失敗して撤退した。第二次大戦とおな じ敗北を繰り返したのだ。

●も少し具体的にいうと、日本の半導体メーカーは素子の回路設計から製造まで垂直統合で製造しようとした。ところが欧米のメーカーは設計は自社で行うが製造は製造だけ行うファウンドリーに任せた。

●日 本の半導体メーカーは例えばマザーマシンたる半導体製造装置を自社開発せず、キャノンや日本光学から購入して半導体を製造していた。日本メーカーがマザー マシンを買わなくなれば、マザーマシン・メーカーは、台湾、中国、韓国、東南アジアのファウンドリーに売る。それも改造してより生産性が高くなったやつだ。日本が得意とする職人芸はそのマザーマシンを作る処だけに必要な特殊技能にすぎなかった、だから日本の半 導体メー カーは敗けるべくして負けたのだ。

●この日本のマザーマシンメーカーも全て自社開発に拘っているうちに光源に紫外線を発するエキシマレーザーを使い液浸露光技術を採用し、専門部品メーカーを束ねるオープンシステムのオランダの企業ASMLに敗退した。

●旧日本軍と同じく兵隊は強かったが、将軍は 能無しだっ た。将軍の参謀たる技術者は上司の顔だけうかがう腰抜けだった。

●モノづくりへのこだわりが日本の進歩を遅らせる。要するにものづくりは時代遅れ。アメリカで給与の高い会社は証券・商品・投資が21.9万ドル、石油ガ ス掘削15.6万ドル、パイプライン輸送10.5万 ドル、経営コンサルタント10.7万ドル、ファンド・信託9.8万ドル、コンピュータ・システム・デザイン9.6万ドル。



25.日本の技術は世界一というウソ

●日本の技術は世界一というのはウソ。もし世界一なら経済が二流であるはずがない。ノーベル賞は米国で活躍した日本人に多い。技術という一語で表 現せずSTEM (Science・Technology・Engineering・Math)という言葉に置き換えてみればわかる。

●文部省は技術振興はまず博士取得者の数を増やすことと早合点し、1990年代に大学院重点化政策を打ち出した。そしてドクターコースの生徒数に比例して 補助金を出したため、大学教授は博士論文を代筆してまで して能力のない博士を粗製乱造した。しかし彼らには研究者ポストは用意されていない。だから有能な生徒は修士資格だけて民間企業に就職する。結果として碌 な研究 はなされず、論文数も減少傾向、成果も少ない。(文部省は弁護士養成でも同じ過ちをおかした)

●技術立国しょうとして国立研究所の研究予算を増やした。しかし10年以上経過したが、何の成果もでていない。このように巨大研究所に資金と人材を投入する日本政府はブタに真 珠をくわせているようなもので全く無駄使い。階層数が多い巨大機構では研究予算配分、人事 で 無駄が出るばかりで成果がでないというのは世界の常識となっている。階層を減らすか、下層の自発性を生かす仕組みにしなければ成果はのぞめない。しかし日 本では政治家はどうして良いかわからず階層構造の官僚機構に丸投げのため、是正されることは絶望。

●世界の民間企業では中央研究所は19世紀後半に盛んに作られるようになり、大学の研究室より業績をあげたが、次第に技術の複合化が必要になると 企業の成功にはあまり寄与しなくな廃止された。あたらしい技術はビジネスの中心たる企画+設計部門+社外のオープンな環境下でのアドホックな組み合わせで行わるようになった。私の経験したLNGプラント建設などがそうだ。

●そもそも技術を生み出した経験もなくノ、ウハウもなく、外国の文献を読んで純粋培養された大学教授は同じようなクリエーティブなクローンを生み出せるわけがない。

●もし日本の技術が世界一なら、なぜ航空機産業に打って出ないのだろうか。米国に遠慮して、自粛したとしか考えられない。1966/2/4の全日空60便の 墜落事故についてボーイング727型機の事故原因が設計上の問題とわかっていながら亡くなったパイロットに責任を負わせ原因不明と発表するなどあまりに卑 屈。その後の福島第一のメルトダウン事故分析でBWRの設計に瑕疵があるのに米国に遠慮したのか、それを取り上げず、このBWRの弱点をそのまま にかくして、おまじない程度の手を加えただけで再稼働させるのも卑屈な態度である。

●製造業は職人が維持しているという学者、マスコミの賛辞は全くの見当違い。職人に頼るようではロボット化が中途半端であることを意味し、未熟ということ になる。本当に重要なのは消費者に魅力ある製品の発想能力のある境界人を奇人として排斥しない寛容な組織であるか否かが問われる。

●日本の特許制度では発明は発明者のものという原則であったが、安倍政権は企業経営者の要請をうけて成長のためといって、会社の所有物にするという法改訂を もくろんでいる。イノベーションや発明は集団ではなく、個人の頭にやどるものあり、個人の権利をないがしろにして企業のものとすれば有能な個 人は米国に逃げてしまうであろう。この法改訂は日本の成長を阻害する政策といえる。日本ではもうノーベル賞は期待できないだろう。

●LNG輸入の決断は東京瓦斯の安西氏と いう理・文二股の強い個性の経営者がいたから輸入という決断できた。文系の東電の経営者木川田氏は安西氏の政治工作に乗っただけ。そして液化プラン トに投資する決断したのはフィリップス石油、シェル、BP、モービルというセブンシスターズの経営陣だ。みな技術者出身。残念ながら日本人は居ない。決断 は決断者が自らが考えてすべてのリスクを納得していなければできない。階層のトップに君臨する耳学問の文系経営者は判断できない。例えば、米国のシェール オイル開発に一枚乗ったはいいが、何も出ず、大きな欠損をだして撤退した商社が例だ。

●日本の商社 はプロジェクト・ノン・リコースファイナンスとバイヤーさがしをしただけ。我々エンジニアリング会社はそういう時がくるだろうと技術を準備して待ち伏せし ていた。

●日本のメーカーは世界一と自画自賛したが、結局、日本のガスタービンとコンプレッサー ・メーカーは全て敗退し、いまではGEの独占。油井掘削技術もGEがすべて買い占めてしまった。エネルギー分野で日本のメーカーが出る幕はもうない。日本の重 電メーカーは原 子力に望みをつないでいるようだが、これはフェードアウトする技術。いわゆる黄昏技術だ。なぜフェードアウトする技術かというと放射線がじゃまして試行錯 誤ができず、技術進化ができない。日本はババをひいたわけ。

●「世界最高水準の新規制基準に適合した原子炉」のみを稼動するとしているがこれは真っ赤なウソ。そもそもBWR炉の封じ込め能力はPWRより大幅に低い が、これをせめてPWR程度に上げることもせず、ベント・フィルターを追加するだけというインチキでもって世界一の水準だと強弁するのは詐欺に等しい。規制庁の再稼働許可基準はPWRが備えている水準にも満たな いものだ。世界最高水準いうのは詐称だ。犯罪行為に近い。理由は「BWRの構造的欠陥」に要約した。

●日本の漫画が世界を制覇したのはインサイダーでありながら「端にいる」人間が構造を大きく変貌させた例である。漫画家自身が楽しんで いるため、作品が魅力的になる。しかも、文明の中心たる米国に存在しなかった青年向けに本格的物語を提供したため、世界の若者に素直に受け入れられた。



26.日本製品の品質は世界一というウソ

●日本の製品は勤勉な労働者が生真面目に製造にあたったので、その品質は世界最高のレベルを達成していた。結果としてISOなどの国際品質管理手法など不 用 であるという言質はやはりウソであったことが判明した。なによりの証拠に、最近の日産自動車、スバル、三菱マテリアル、川重、旭化成、東洋ゴム、東レ、宇 部興 産、神戸製鋼の不祥事である。品質保証の認証機関であるロイド・レジスター・ジャパンすら不適格者をJIS Q 9100(航空宇宙及び防衛分野に対する品質マネジメントシステム)認証業務に当てていた。品質低下は最近の現象と言うより、神代の昔から管理などしてい なかった、内部告発がなく、表面化しなかっただけということで、これはそもそもISO違反であ る。



27.数値目標のウソ

●トップダウン計画経済国家である日本ではいまだに数値目標が掲げられる。しかし数値目標は人間性を無視して恣意的に決定されるので、ほとんどウソとなり、未 達になる運命にある。数値目標を言い出す官僚や政治家は自分が無能だという看板を掲げていることも分からない始末。

●失敗した数値目標の例としては年間の司法試験合格者を3,000名として12年経過するも2,000名と低迷。法科大学修了者の合格率を7-8割と見込ん だが、2割と低迷。2020年までに女性管理職を3割にすると方針をたてたが、その根拠は不明で、合理性を欠く。女性のほとんどは非正規雇用で管理者とはもっとも遠 い存在だ。医者の数値目標も未達。人口減少の抑制と地方活性化に向けた「総合戦略」と「長期ビジョン」として1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計を示す合計特殊出生率を 2013年の1.43から「1.8程度」に引き上げた。地方自治体の政策立案を支援するための国家公務員の派遣や、ビッグデータを活用した産業育成などの 施策を列挙した。地方移住の推進や地方大学の活性化、子育て支援も盛ったが、この方針は役人のための方策であり挫折するであろう。

●数値目標で社員を酷使した東芝は結局、沈んだ。



28.中央が采配する地域間の均衡ある発展はウソである

●池田勇人政権でつくられた新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法などの法律が制定され、工業立地を分散化するために道路・港湾などの社会資本 のために多額の公的資金が投入された。そして地域間の均衡ある発展というお題目下で開発が遅れている地域に重点的に社会資本が投下された。いわゆるバラマ キの正当化に使われた。その結果として一人当たりの実質県民所得が小さい地方ほど人口一人当たりで多くの社会資本ストックを持つという皮肉な結果となって いる。こうして社会資本の生産性に大きな格差が生じてしまった。社会資本の限界生産力は東京が0.63あるに、高知県では0.13にとどまる。

●安倍内閣の地方創生というお題目はまさにこのバラマキの拡大再生産に終わるように見える。



29.気候変動に関するウソ

●現生人類がアフリカを出た10万年前は現在よりも温暖化していて海面は9mも高かった。現在の温暖 化はそれと同じ自然の現象と考えられる。南極大陸のボストーク基地やドーム・フジ・コアサンプルの分析では10万年毎に大きな気候変動が繰り返さ れ、現在は寒期に向かっているとわかっている。従って温暖化を人為的とすることは政治的には正義かもしれないが、科学的に正しいとはいえない。IPCCは 理系の故マーガレット・サッチャー女史が権力掌握のため に作った政治組織であってそこに集まる人間は単なる守銭奴。

●社会の問題が複雑化し過ぎると人間の脳は理解が追いつかなくなる「認知 閾(いき)」  cognitive threshold という状態に達し、力学的に非線形でカオス現象を示す気象現象は理解できない。そこで単純な人為的温暖化論を信奉するようになる。こ れは一種の宗教現象である。マスコミはもうかるから温暖化を盛んに報道する。特にマスコミが集積する大都市の気温がゆらぎでたまたまあがるとヒートアップする。下がる時は黙っている。実際には地 球の全ての場所が熱くなっているわけではなく、寒いところもあるので均すと温暖化しているわけではない。こうして温暖化を信じる気象学者は信じるといえば金が入るので殆どが守銭奴になる。大体欧米の学者 はほとんど守銭奴。ただロシアの学者は国が温暖化研究に金ださないからか比較的まともである。アメリカの学者は西部劇のように玉石混交。守銭奴もいる が、学会に反旗を翻す気骨のある男もいる。日本は同調化圧力の強いところだからほとんど守銭奴で反旗をあげる学者は皆無。

●2018年の関西の洪水や山崩れ被害をみて、国際政治が掲げているいわゆる人為的温暖化防止策などという思い上がった天に唾する政策ではなく、温暖化は 自然現象と割り切って洪水対策など対応策に傾注すべき。人々は温暖化は必然と覚悟し、自覚すれば人間の適応能力は高い。この大地は我が母なのだ。




30.原子力に関するウソ

●原発が安全というのは福島第一事故前は公的ウソであったが、このウソがばれてもまだ、PRA (Probabilistic Risk Assessment)という構成部品の故障確率から数学的に原発システムの信頼性を推定する方法を使い、事故確率は隕石が落ちる確率程度としている。し か し、合成されたものは確率密度であることに違いはない。これを積分した累積確率はべき分布では確率密度より5-8ケタは高くなるのだ。そもそも米国では PRAとよばれているのを日本ではPSA (Probabilistic Safety Assessment)とよみかえているのも胡散臭い。

●「原発は安い」というのはウソ。廃炉積立金、事故補償費、使用済み燃料保管費、立地確保のための電源三法の奨励金、低稼働率、安全設計のための追加 費用、専用送電線、揚水発電費など算入されていない費用を加えれば高価な電源となる。仮に福島原発事故の処理費用が10兆円増加した場合でも、発電コスト への影響は、キロワットアワー当たり0.1〜0.3円の増加という資源エネ庁の主張は真っ赤なウソ。理由はHidden Cost of Nuclear Powerにある。

●原発は地域経済にとってプラスはウソ。たまたま原発建設時と高度成長が重なってそう見えたが、原発の無い地方では原発の在る地域よりもっと成長してい る。経済が停滞し、社会が変化しているときは人は神話に逃避 しやすい。最大の要因は事態の変化を直視できない心の弱さにある。こうして電力業界は経済学でいうところのレントシーキング・ソサイエティー(たかり社会)になった。

●安倍首相が『原発の再稼働は、世界で最も厳しい(規制委員会の)基準のもとで判断する』と言っているのは真っ赤なウソ。なぜなら規制委員長の田中俊一前委 員長が「絶対安全だとは申し上げない」と繰り返しているからである。そして甘くしたBWRの基準で良しとしているのだ。規制委員会はBWRにはフィルターベ ントを義務付けたが、PWRに関しては必須とはしてい ない。しかし、フランスの全ての炉はPWRであるが全てフィルタベントをつけているし、MITの教科書にもその必要性が書いてある。フィルタベントは炉規法 (原子炉等規制法)を超える設備であるため、国としては設置を規制するものでは なく、事業者の自主保安として設置の判断は事業者に委ねられた。日本では原発にはコアキャッチャーをつけろという規則はない。

●規制委員会がBWRにフィルタベントを装備すれば問題ないとしているのは不十分である。GEは格納容器下部に4,500-6,600トンの冷却水を備蓄している。これは圧力用 容器の安全弁から出る水蒸気やガスを冷却するためだ。しかし炉心溶融の時、中性子計測管経由でガスがもれれば安全弁をバイパスするため、格納容器の備蓄水で冷 却されずに格納容器内上部にたまる。格納容器内中間点へのスプレーに失敗すれば、格納容器上蓋のフランシのゴム製のガスケットが熱で劣化して直接大気にで てくる。このときフィルタベントは全く役に立たない。なぜならBWRにつけるフィルタベントの設計をみると備蓄水をくぐらす方式だ。問題は規制官庁が承認した備蓄水の量で少なすぎる。水の温度が沸点になれば洗浄能力はゼロになる。

●原発再稼働に関しては住民が避難できるかを議論する。たしかにメルトダウン事故直後に放出されるヨード異性体は幼児の甲状腺がんを増やすが、海藻を良く 食べる大人はすぐ死ぬわけではない。だから避難出来るかどうかよりもそこに一生住めなくなるのか否かが深刻な問題なのだ。ところが議論は住民を短期間に 緊急避難させることが道路事情でほとんど不可能という理由でこのどちらかと言えばどうでもよい問題を巡って政治化するというおかしな動きとなる。

●再稼働を促進するために経産省の有識者会議は「原発再稼働へ民間新組織」という報告を作成した。これによると全国の原子力発電所の再稼働を進めるため、原発に対する社会的な信頼の獲得を目指して民間の新たな組織を作る。この民間組織は 原発の建設事業を手がけるメーカーなどが設立し、安全性の向上についての知識や技術を共有するとしている。いわば洗脳活動をするという、ウソをウソでないと強弁することを目的とした隠れ国家組織だ。

●それでも再稼働するのは万一ホルムズ海峡閉鎖のような地政学的リスクに備えるためだという。(中部電力はリニア新幹線ようだと考えているふしがある)戦争と原発事故はロングテールを持つべき分布となる。どちら の確率が高いのか、どちらの損害が大きいのかちょっと考えてみれば分かるのではないか。地政学的リスクはウソということになる。フラクチャリン技術や深海掘削技術の開発で石油資源が南北米大陸、アジ ア、オセアニアに分散すればそのような地政学的リスクは消えてなくなる。それに再生可能エネルギーにホルムズ海峡問題はない。

●政府が原発の再稼働に執心するのは核兵器に転用可能な47トンの手持ちプルトニウムを核抑止力につかうために失いたくないからという不純な動機があるためと考えられ、エネルギー資源不足国という理由はウソである。日本はエネ ルギー資源不足国という建前で非核国として特別にプルトニウム回収することを米国との原子力協定で許されている。この協定は2018年に自動延長されたが、原発 の再稼働が限定的であり、使用済み燃料が六ヶ所村で定常的に再処理し、MOX燃料として使われなくなれば、大義名分は失われ、米国からの一通の終了通知がくればプルトニウムを保管しつづけ ることは不可能となる。人質をとられたと同じ状態になる。また丸腰の原発をテロから護るのは至難の業。

●経産省が原発を重要なベース電源として20-22%の電源とするといのはウソ。この基幹電源とするためには原発は30基程度必要だが、新基準で 再稼働したのは9基のみ。17基がそれに続くと言うが地元同意はえられていない。いずれにせよこの20-22%は絵空事。原発を できるだけ一定で動かしたいばかりに揚水発電まで建設して休日でもフル運転をしていたという過去を持つ原発は負荷追従電源とし ては使いにくい。。

●プルトニウム再利用の核燃サイクルは全くのファンタジー。一種の永久機関幻想。核燃サイクルを世界で実用化した国はない。高速増殖炉は1兆円超の工費で 完成した直後の1995年にナトリウム漏れが発生し、その後、停まったままである。再処理設備は1997年に完成するはずだったが、いまだに動かない。 7,600億円の建設費は2.2兆円に膨らんだ。この再処理プラントを使用済み燃料の捨て場にしようともくろんだ電力会社の思惑は頓挫したままである。

●使用済み燃料を六ヶ所村で再処理するというのは建前で、本心はまったく処理するつもりはないのでウソだろう。精々、核兵器の原料になるという幻想がある だけである。使用済み燃料を再処理するための中間貯蔵と称して 青森県をだまし、青森県は騙されたフリをし、実質長期貯蔵に持ち込もうとの魂胆。政府が青森県を最終処分場にせず、最長50年後(2045年までに)には 搬出するとの公的約束をしたが、いまだに最終処分場が決まる気配もないのでウソとなろう。もし青森県がこの誓約書をたてに2045年までに強固にせまった ら、それぞれの原発に戻せざるを得なくなる。

●高速炉で超ウラン元素を燃焼無害化するというのもウソ。無害化する以上に核分裂物質を生成する。そして放射線はこちらの方が強い。

●それでもイスラエルの核に悩まされているイラン、UAE、エジプト、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアなどの中東諸国は覇権をねらってまず原発をもつことを国是としている。イスラエルは隣国シリアの原発(北朝鮮系の黒鉛炉)の完成直前の2007年に爆撃している。

●福島県の汚染土の仮置き場は30年を区切りにしている。30年経過したら汚染度県外に持ち出すという法律ができたが、この約束は反古となる運命にある。すなわち ウソである。他の土と混ぜて福島県中にばらまくという最悪のシナリオが動き出した。これも沖縄の基地と同じ経過をたどるだろう。

●原発は寿命が終われば廃炉にして跡地はグリーンフィールドにするというのはウソ。使用済み燃料を敷地から搬出できず、使用済み燃料と汚染された炉の永久墓場となる。

●一般消費者向けの電力自由化は世界の潮流である。このようなビジネス環境下で原発が価格で他の電源に敗けると、廃炉費、使用済み燃料処理費を捻出できな くなる。この点に気が付いた経産省は、自由化で原子力が消え去らないように基準価格を決めて原発を維持するという。ということは原発の発電コストは高いと いうことを経産省が認めた事を示しており、自民党・経産省の原発推進理由の大きな柱であった”原発は安い”と言う謳い文句はウソであったことになる。

●大規模なメルトダウン事故を起こしていないフランスは全部PWRだが、IPSN(Institut de Protection et de Sûreté NucléaireまたはInstitute for Protection and Nuclear Safety)とEDF(Électricité de France、フランス電力、1999年の電力市場開放までは配電事業を独占していた)の共同作業で格納容器に装着するフィルタベント、コアキャッチャーの要件を確立した。中国の原発も賢くもPWRを選んでいる。BWRを持っているドイツは脱原発を決めている。

●安倍首相がプッシュした伊藤忠、三菱重工、仏企業が合弁でトルコの黒海沿岸で建設しようとしているPWR4基は当初2.1兆円だったのが4兆円に膨らみ、採算性が無いことが判明した。これはPFI案件のた め、電力の売値を2倍にしないと採算に乗らない。トルコ政府は報告書の受け取りを拒否。

●日立が英国はウェールズのアングルシー島にPFI方式でABWR炉を建設し、運転して電力を英国のグリッドに卸すというプロジェクトは2017/12英 規制 当局の設計審査をパスしたという。こ れを良しとした英規制当局の判断能力を疑う。なぜならABWRと看板を付け加えただけでBWRであることには変わりがない。経済性を含む最終判断は 2019年度に下されるようだが。英国政府が出資する決断は未だない。日本政府だけが全額出資し、日本貿易保険をつけるなど、森友問題などに比 較できない日本政府官僚の機能不全の匂いがする。日立は投資を呼び込むために。英政府の投資を期待しているが、英政府の歯切れは悪い。

●核融合は放射性廃棄物を多量に生成するので安全な技術でなない。単なるおとぎ話。

●原子力行政になぜウソがおおいかというと、官僚の上級職は100%文系で原子力の本質を理解できない。そこで学者を呼んで意見を聞くが、この学者達は原子炉しか知らず理系 にもかかわらず潰しがきかないため自らの存在の理由を否定するようなことは言わない。また原子力工学科は原子力にだけ特化しているため、原子力をやめるべきなどいう考えをたとえ持っ たとしても、口にだすことは学生の職場を奪うことになると自ら慰める。こうして人為的温暖化に係わる気象学者とおなじ守銭奴になるのだ。

●日本を乗っ取った役人達は法律をいじくりまわして電力事業を保護しても、技術の進歩で太陽伝電池や二次電池のコストが下がれば、集中発電 +配電というエジソンがはじめたビジネスモデルは再生可能エネルギー+蓄電による分散発電に駆逐される運命にある。その時どうするかの対策は皆無だ。

●原爆を持てない代償として(おしゃぶりとして)アメリカから押し売りされた原発だが、福島第一の崩壊は東京電力にとって究極の恥であったはずだ。しかし東電はもちろん、一連托生でやってきた財界も自民党も恬然(てんぜん)として恥じることを知らない。恥の上乗りで原発を海外に売るのは真珠湾の作戦計画を売るようなものだ。当初は勝っているように見えても最後には放射性廃棄物の山に埋もれて敗ける。米英に対抗して原発が多いフランスと日本の共通項は官僚が強いということだ。



31.原子力の脆弱性に関するウソ

●原子力の脆弱性に関し沈黙を守るのはウソをつくと同じ行為である。原発はテロに弱い。手りゅう弾くらいの兵器でもし送電線、冷却用水ポンプの電源などを破壊されればメルトダウン事故で原子炉を破壊し、放射能漏れでその地方を使えなくさせる事ができる。

●原発は全ての電子機器や送電線を使う施設と同じく電磁パルス(EMP)に脆弱である。小型の核兵器を成層圏で爆発させると強力な電磁パルスが発生し、たった1発で日本全土がマヒする。(イージス艦だけが生き残る)原発はEMP攻撃からメルトダウンしない対策はしてない。

●2018年になって日立、東芝、三菱などの原子炉メーカーが国民の原子力への恐怖を払しょくする洗脳を専門にする組織を立ち上げるという。米国でフェイ クニュースが盛んだがますます、ウソが拡散する社会になりつつある。こういう原子炉メーカーの製品のボイコットをすればよいと思う。彼らがいくらあがいても発電自体がコンシューマーマーケット化するだろう。そして彼らはすでにコンシューマー マーケットでは敗退してしまっている。



32.放射能に関するウソ

●食品が安全かどうかの判断基準は1kg当たり10ベクレル以下かどうかで判断される。この安全基準はガンマ線を測定するだけでなのでα線やβ線に関 してはなにも計っていないに等しい。なぜならα線は紙一枚で遮蔽されるので、海底に生息するヒラメの体内にあるプルトニウムはシンチレータでは計測できな いので検査したというのはウソだ。なぜなら魚体自体が遮蔽しするからα線はシンチレータに達しない。測定はミンチにして広げスキャンするなどでないと測定 できない。検査合格のウソを信じてそれを摂 取して裸のプルトニウム粒子が体内に入れば、周囲の組織がジリジリとアルファ線に焼かれるということになる。というわけで安全だと言われても海底をはい回 るヒ ラメを食べる気はしないタイ人の気持ちは理解できる。栃木沿岸のアンコウ鍋は旨いが、リスクを覚悟で食べるべきであろう。国はわれわれの命を守ってくれな いから自衛するしかない。

●水爆実験場から帰還した漁船と船員の汚染程度を測定したのに国会ですら記録は無いというウソで押し通した。米国公文書館にあるのがみつかると外務省は米国に渡したもっと詳しいデータをもっていることを告白。



33.福島事故後の東電救済方式のウソ

●福島第一原発事故の対策費として、東電に貸しつける公的資金が13.5兆円になり、回収までに最長34年もかかるとの試算を、2018年3月23日に会 計検査院が公表した。この資金は国が国債を交付し、それを現金化して調達されている。実質的な国民負担となる利息分は最大2182億円に膨らむという。た だ、この試算は確定したものではない。3年前にも会計検査院は同じ試算を発表しているが、そのときは貸付金9兆円、回収期間27年だった。賠償や除染の費 用などで公的資金がかさみ、回収が長期化しているのだ。今後、事故の対策費用がさらに増えるのは確実で、完済までに50年以上かかるという説もある。その 意味するところは、東電は事実上、破綻しているということだ。そもそも、自分で起こした事故の賠償資金を国からの資金投入なしには調達できず、さらには、 その返済に何十年かかるかわからないなんて企業は、普通ならその場で倒産だ。




34.日本の資源に関するウソ

●日本には資源がない、その典型的なものはエネルギーが無いというのはこれからはウソとなる。太陽光というエネルギーは半導体で電力に安価で変換できる時代がついに来たのだ。

●水資源は「雨の瑞穂の国」と言われるようにふんだんにあると言えばこれもウソになる。水洗トイレの水は上流にある都市の排水を何度も再利用することに よって確保しているし、Tシャツ1枚のために2.9トン、小麦1kgのために2トン、牛肉1kgのために20トンの農業用水を使って育てたものを輸入している。これをバーチャ ル・ウォーターという。これからは世界はエネルギー争奪のための戦争はなくなり、水を争う時代になる。

●日本は森林資源がないとされて外材を輸入しているが、これはウソ。原野の所有権が細分化して林業として成立していない。大規模所有または運用に なれば金のかかる林道などを建設維持しなくとも、皆伐した木材をみずからの管理地内で動き回る大型林業機械で引きずって集荷できる。

●海産物資源は枯渇しつつが広大な経済水域のおかげで世界一だ。




 35.再生可能エネルギーに関するウソ

●再生可能エネルギーだけで日本のエネルギーを賄えないというのはウソである。太陽エネルギーを電力に変換する半導体素子や大型翼による再生可能エネル ギーのポテンシャルは日本の全消費量をまかなって余りある。福島第一事故を起こした東電の勝俣社長ががかって「原発1基分の電力を発電するために山手線内全て に太陽電池を敷き詰めなければならない」と言っていた。「もし山手線を太陽電池だけで動かしたら逆立ちして一周してやる」と豪語していたのは誰だったのか。しかし同じ太陽電池を国土の 1.8%に敷き詰めれば、国の総エネルギーを賄えるのだ。そして国土の60%は原 野である。化石燃料はホルムズ海峡閉鎖などの地政学的リスクがあるが、再生可能エネルギーは究極の国産資源だ。

●再生エネルギーが充分あることは九州電力がメガソーラーの接続申込みを電力の最少 需要を越えたといって拒否したことでも分かる。

●再生可能エネルギーは不安定だと言い募るのはウソ。風や雲の揺らぎなりに垂れ流しで発電する再生可能エネルギーには供給と需要と秒単位でマッチさせる仕 掛けを用意すればよいだけのこと。対策としては@夜間や曇天など太陽光出力に原理が異なる風力発電や、水力、地熱発電などをミックスした再エネ・クロス発電、A日本中に再 生可能エネルギー発電を分散設置すれば変動は局所的のため全体としては安定電源となる、B風力のピッチ制御、メガソーラーの直交 変換器の出力制御をすれば制御可能、C安価な化石燃料が使える場合は化石燃料発電所を負荷調整電源として使うという方法がある。この場合、再生可能エネルギーのバックアップのために 火力発電装置に余計な投資をしなければならないというのはウソ。人口は減少しているので再生可能エネルギーが なかった頃使った発電設備で再生可能エネルギーのバックアップ電源は十分間に合う。逆に言うと再生可能エネルギーを使った分だけ既設火力の燃料費が節約さ れるだけのことだ。

●送配電線を自由化せず、地域独占のまま放置したので全国規模で電力を融通する送電網がなく、メガソーラーなど接続できないというのもウソ。原子力専用送電線は使われておらず、電力会社間の連携線能力も十分ある。無いのは連携制御システムと相互取引の取り決めだけ。

●電力会社は「ドイツは再生可能エネルギー導入で電力コストがあがって産業は隣国のチェコに逃げている。日本はドイツの失敗に学ぶべきである」と連 呼す る。しかし、これはウソである。大量の電力を消費する事業所で,国が定める要件に該当する場合は,再生可能エネルギー発電促進賦課金は減免されているのだ。

●ドイツは生産性の低い産業を退場させ、再生可能エネルギー産業で国興しをしている。日本の製造業の空洞化は原発事故前に完了していたのであって電力料金 が原因ではない。企業マネジメントが自分の任期中だけよければ良しと して苦労して新しいビジネスの創業を怠り、生産性の低い既存産業を退出させ、あるいは労働生産性を向上させる技術開発と選択と投資を怠っ ためだ。日本は既存産業の無駄な抵抗で新産業を興せず このまま沈没するのか?



36.再生可能エネルギーは原発の発電コストより高価は大ウソ

●これは10年前は正しかったが今となっては真っ赤なウソ。

●電力中央研究所報告書「米国の電力市場と原子力発電の収益性」を整理すると米国の発電単価は

既設原発  3. 7 yen/kWh
新設原発  12 - 20 yen/kWh
ガスコンバインドサイクル  4.6-8.6 yen/kWh
陸上風力  3.3-6.6 yen/kWh 
石炭火力  6.6-15.6 yen/kWh

このように米国の強みは低廉な電力コストだ。にも拘わらず新設原発は高価。これで米国ですら原発建設はありえないことがわかる。

●かって日本の原発の発電コストは6.2yen/kWhとされた。しかし福島事故後の追加安全設備への追い銭投資に加え、事故確率から事故補償費 のための実質保険料7.5yen/kWh(そのような保険会社は存在しないから、理論計算)使用済み燃料の処分費、廃炉費、専用送電線、揚水発電など全て を含めれば再稼働した原発の発電原価は19yen/kWhとなる。

●太陽光発電パネ ル価格が劇的に下がったのは中国政府が2013年ごろから本格導入した固定価格で買い取る制度(FIT)のお蔭だった。相次ぐ増産で太陽光パネルの価格は 2012年から約6割も下落した。中国政府は自国のFITの行き過ぎを是正するため2018年、FIT価格を約1割引き下げたほか、新規のメガソー ラーを買い取りの対象外にした。この中国の政策転換のあおりで、行き場を失ったパネルが大量に日本に流れ込んでパネルの価格を押し下げている。

●しかし中国から輸入される安価なシリコン系のソーラーセルを使わずとも、日本製の非シリコン系太陽電池メーカーSolar Frontier社のCISモジュール+システム費+標準工事+8%消費税の合計価格は200yen/W程度であるから発電単価は20yen/kWhとな り。原発と同じレベルになる。電力会社はFIT制度完了後は化石燃料の卸電力市場の価格より安くないと買わないだろうから、ソーラーパネルを設置した需要 家は バッテリーを購入して余剰電力を自家消費しても、電力価格以下で自家消費できる計算になり、オフグリッド化するだろう。これはエジソンが発明した集中発電 と配電というビジネスモデルの終焉を意味する。電力網はソーラーパネルを持たない需要家向けにだけに存在することになる。

●現在の日本の電力料金が高いのは再エネの買い取りにかかわる再エネ賦課金によるというのもウソ。再エネ賦課金に上昇額は2.5yen/kWh程度である。そしてこれは2029年にはゼロになる。




37.日本の省エネ技術は世界一というのはウソ

●ばかげた規格と規制のために省エネ技術が世界一はウソ

●LEDの開発、ヒートポンプの普及では世界一かもしれないが、住宅の断熱は先進国中最低。壁の断熱材の薄さもさっることながら、ガラス窓からの放熱は 60-70%に達する。窓からの放熱量が多い理由は1枚ガラスとアルミサッシュの多用である。省エネより防火が優先されて木製窓枠は使われなくなった。そ れに木製サッシにすれば高温多湿の日本ではペンキがはがれ10年でだめになると嫌われる。米国産窓枠は塩ビで木製枠を化粧するため、非常にエレガントなもの に進化しているが日本メーカーは皆無。

●断熱材は欧米のように外側に施工すれば建物躯体を蓄熱材につかえて快適な住環境が得られるが建築基準法はこれを許さない。先ず役所から規制緩和してもら わないと。

●高層アパートでベランダと本体の間にヒートブリッジをいれて外断熱しようとするとベランダは本体から片持ち構造にできない。下からら基礎の上に柱をたて て支えなければらない。下から柱を建てるとベランダの面積は建坪に算入されて固定資産税が増える。公的融資を利用しようとすれば建坪の制限に引っ掛かるな ど金持ちしか採用できない。



38.海外のインフラストラクチャーへの投資のウソ

●安倍政権は日本のインフラストラクチャーに関する技術を輸出すると喧伝しているが。これはケインズ理論に洗脳された官僚達がGDP成長のためと して始めた土建国家の利権を海外に展開せんとする。まったく泥棒に等しい行為だ。くわえて「海外社会資本事業参入促進法案」なるものを制定し、国交省の関連 機関である独立行政法人が調査・設計等のコンサルティング業務ができるようにしようとしている。2年毎にポジションを渡り歩く、能力も経験もない役人が出来るはずもなく、税金の無駄使いに 終わるおそれがある。

●日本が外国に売れるものは政府系金融を使うインフラストラクチャは確かに原発、新幹線、地下鉄位しかない。上下水道、港湾、道路、治水工事などは殆ど、砂利砂、セ メントと鉄筋位だ。これにより国家に入る収入は金利くらい。土建部分の比率が大きいため、それぞれの国の労働者動員型産業となり、国内に還流する部分はす少ない。

●2018年の関西の水害は80年に1回の異常降雨によって生じた。日本全土同じような災害がありうるということが証明されたわけである。今回の 関西の洪 水や山崩れ被害をみて、国際政治が掲げているいわゆる人為的温暖化防止策などという思い上がって原発を再稼働するなどという天に唾する政策ではなく、温暖 化は大気中の二酸化炭素濃度とは関係ない自然現象と割り切って洪水対策や土砂崩れ対策など適応策に傾注すべきである。覚悟し、自覚すれば人間の適応能力は 高い。この大地は我が母なのだ。

●その新幹線ですら50年間無事故と喧伝するが、専用線路を走るがちがちの専用信号系統に依存するもので適用するローカルコンディションを織り込んでも安くな らない硬直的で高コストなもの。

●2017年にいたりN700系台車に破断寸前の亀裂がみつかり設計・製造過程の基本的な疑問をつきつけた。

●日立はロンドンのピカデリーラインの車両製造をドイツのジーメンスに負けた。

●日本では鉄道網、高速道路網、上下水道網などは比較的整備されている。しかし電力網は地域独占に安 住して、全国規模の送電網の整備ができていない。だから折角の国産エネルギーのメガソーラーを地方独占電力網は最少需要を超えるとして接続を拒否している。パイプライン網も未整備だ。日本では官僚機構が規制をか けて民間がパイプラインを建設することを妨げてきた。ガス会社も地域に封じ込められ全国規模のパイプライン整備には乗り出さなかった。



39.日本の電力のクオリティーは高いはウソ

●福島事故は「今までのような中央統制型」の脆弱性が露呈したことにある。これからは「自律分散型」によるロバスト・システムの構築が急がれる。

●現在のように発電と消費が電線でつながるシステムは積雪の断線で停電になれば死者が出る。再生可能エネルギーをつかった分散自律分散が優れている。

●製造業などエネルギー多消費型産業は自家発電を併用して、電力会社への依存度を下げて長期間生産が停止しないようにしている。

●日本では電力網はそれぞれの電力会社の圏内は整備されているが、それぞれの独立地区を結ぶ連携線は不備で、風や雲の揺らぎを全国規模の広域連携で平滑させることができない。

●2018年1月下旬、大雪や厳しい寒さにより暖房の使用が増えたために、東京電力管内では多くの電力が必要となった。ところが、雪が降った翌日、天候は 晴れているにもかかわらず、太陽光発電のパネル上に積もった雪が溶けずに発電できない状況や、火力発電所でトラブルが発生し発電できない状況などが生じ た。東北電力からの送電や、契約に基づいて工場などの需要を抑える「ディマンドレスポンス」の発動など、辛うじて大規模停電を回避できたという話は、電力 管区間の電力融通システムが必用だと分かっていたのに手当していなかった電力とエネ庁の怠慢だといことにすぎない。運用システムは決してクオリティーは高くないので ウソである。

●エネルギーで重要となる「安全性(Safety)」を大前提に、「エネルギーの安全保障(Energy security)・経済効率性の向上(Efficiency)・環境への適合(Environment)」を考えると、原発をまったくのゼロにするのは どうしても難しいという資源エネルギー庁の言い訳は全くのお門違い。巨大原発が増えると大停電が生じるという事実を学ぶ力がないことを証明しているではな いか。



40.バイオマスエネルギーに関するウソ

バイオマスエネルギーが地球環境 を救うなどは幻想。 生物が基本的には変わらない以上、光合成能力はエネルギー転換率1%程度なのに。半導体を使えば10-20%になる。農耕地を増やせば自然が破壊される。日 本を見れば農耕地は開拓されつくし、残りは急峻な山地のみだ。ということは地上のバイオマス のエネルギー利用はすでに飽和しているのだ。

●現在の日本の法体系ではバイオマス利用なんて絵に描いたウソで不可能。なぜなら山林の所有権保持者が代を重ねるにしたがい、どこに住むかも不明となり、 境界標識もなくなり、林道の採算性は失われ、放置山林のバイオマスの合法的利用すら不可能となっている。



41.水素エネルギーに関するウソ

●2014年のエネルギー基本計画で水素エネルギーを電力・熱と並ぶ二次エネルギーとして位置付けたのはウソである。ボンベ詰めの水素なぞ、ボン ベ詰めのLPG、CNGと同じくサービスステーションが普及せず、ボンベ運搬も人海でおこなうことになり、補助金なしで普及するはずがない。

●そもそも水素はエネルギー資源ではない。だから「水素エネルギー」という言葉が資源と混同される期待がビルトインされている。電気エネルギーと同じ二次エネルギーにすぎない。

●水素を再生可能エネルギーから製造せず、化石燃料から水素を製造すると二酸化炭素回収・隔離しないかぎり、生産地で多量の二酸化炭素を発生させ る。これを燃料とする燃料電池車(FCV)を水しか出さないゼロエミッション・カーというのはウソである。この行動はちょうど砂に頭を突っこんで現実逃避 しようとするダチョウの習性とそっくりだ。世界は日本の水素エネルギー推進政策はan ostrich policyだと思うだろう。

●FCVは燃料電池をつかう。EV車は二次電池を使う。両者とも電極という繊細な部品を持ち、コバルトとかの高価な金属を必要とするため、電池のコストダ ウンが困難で、かつ 寿命も二次電池は6,000サイクル、燃料電池は5,000時間と短く、更新コストがかかる。特に燃料電池は白金触媒が必用で、資源的に厳しい。FCVは さらに水素ボンベが必用である。ボンベをつかうものにCNG自動車がある。これは天然ガスをLNGとして輸入し、CNGとして車の燃料にするものだ。この 使用圧力圧力容器は200気圧に制限して普及を阻害した。水素圧力容器のみ700気圧を許可するのは都合主義で恣意的行政となり公平ではないし、水素を石 油から製造するかぎり、人為的温暖化防止という国際政治的理念に反する。圧力容器700気圧のCNGディーゼル自動車のほうが、well to wheel efficiencyが高く、FCVに比べ地球にやさしい。

●燃料電池は発電効率が高いとされて多大な資源がその開発に投入されたが、発電効率はPEFCは36%、SOFCで45%で程度でコモンレール・インジェ クション・エンジン効率の50%に及ばないので燃料電池が高効率というのはそもそもウソ。

●EV車はゼロエミッションというのは電力が再生可能エネルギーで生み出されない限り、ウソである。なぜなら火力発電は炭酸ガスを多量に放出する。そして 化石燃料の資源はまだまだあるのだ。



42.リニア新幹線のウソ

リニア新幹線は空気抵抗が大きく新幹線の3倍の電力を消費してサステナブルではない。何事も過ぎたるはおよばざるがごとし。ハイパーループという減圧下でチューブ内を小型のポッドを動かす構想が競争相手として浮上しつつある。

●リニア新幹線は時間節約が売りだが、列車本数 が少ないと待ち時間がながくなり本末転倒。減って行くパイを東海道新幹線と食い合う関係である。既存路 線とのネットワークもなく、故障時の生還に時間がかかり、殆どトンネルのなかで閉鎖空間を過ごすことになり苦痛のため、利用者は少なく、不採算事業となろう。

●リニア新幹線の推進力は車輪が回転して出すのではなく、リニアモーターの推進力で前進し、停止はおなじくリニアモーターを使って回生制動している。外部 電力を制御して推進力、制動力を発生させるため列車の運転はすべて地上から行われる。この外部電力が途絶えれば制動力も失われる。車体は超伝導電磁石で浮 上したままだから空気抵抗以外の制動力はないためどこまでも突っ走る。

●回生制動システムが故障した場合に備え、地上コイルを短絡させて制動力を得る発電ブレーキも用意されている。500km/hからの緊急停止や回生ブレーキや 発電ブレーキが不能となった場合でも制動力を確保するために以下の3系統のブレーキ装置が車両側に用意されている。@空力ブレーキ:空気断面を大きくする ことで空気抵抗を増して停止させるブレーキ。Aディスクブレーキ:補助支持車輪に取り付けられたディスクをパッドで挟んで停止させるブレーキ。 500km/hからの停止にも耐えられるようにディスクには炭素複合材を使用。B接地ブレーキ:走行時に補助支持車輪が故障したり、急激に超電導電磁石の 磁界が失われたなどの緊急事態の発生を想定し、車体に取り付けたブレーキシューを軌道の走行面に押し付けて停止させる。これだけ多重化しても事故発生確率 にはロングテールがあり大事故は避けられない。

●衝突防止は電力変換装置(変電所)ごとに閉塞区間を設定し、1変電所1閉塞1列車による運転を行うが停電すればこの原則も崩れる

●経営母体のJR東海のマネジメントはリニア新幹線の本質的危険性を理解できていない。推進している技術者はだれもそのような危険性をあえてトップマネジ メントに進言しない。賢明な人々は自らがミンチになるようなリスクを冒してまで利用するだろうか。

●リニア建設に伴うトンネル工事から排出される残土が「東京ドーム50杯分」にものぼり、いまだにその処分地も決まっていない。

●このような問題だらけのリニア新幹線の建設は民間企業であるJR東海という建前だが、法律上は不可能だったリニア計画を推進するJR東海への「財政投融 資」を実現するために安倍政権が3兆円もの融資を「無担保」で行われている。過去に、「太平洋戦争」、「長良川河口堰」、「もんじゅ」、「東京湾横断道 路」、「原発」、「(日本学生支援機構の)有利子奨学金」、「ODA(政府開発援助)」、「スーパー林道」、「高速道路」、「成田空港」、「(住宅金融公 庫の)住宅ローン」など、悪名高き事業に採用された手だ。




43.治水に関するウソ

家康の治水は利根川の水を江戸川から渡良瀬川につなぎ、次いで猿島台地を開削して鬼怒川の支流の常陸川に付け替えて、利根川と渡良瀬川の水を江戸湾ではなく、太平洋に直接そそぐようにしたものだ。

●しかるに戦後の日本の治水はウソで塗り固めたものだ。日本の河川のほとんどは土砂が河底に溜まった天井川である。スーパー堤防などもあり、治水はかなり行き届いているような錯覚があるが、実は堤防は計画高水流量というラインの 流量を超えると簡単に破堤するように造られている。ダムは耐越水堤防より少ない費用で洪水防止に役立つとウソを言って 山の中に大規模なダムを作り続けた。ダム管理者はダムが干上がる恐怖を持つから、天気予報に従い、事前放流してダム貯水量を 減らしておくということしたがらない。満水近くなってからダム放流の決断をしがちであり、降雨に加えて溜まった水の放流となり、わざわざ洪水を人為的に つくるのと同じ。ダムがあることがかえって洪水を生じさせていることが疑われる。遅すぎる放流で甚大な被害を住民に与えたとしても100年に1度の自然現象 だから損害はそこに住んでいた住民の自己責任だと突き放す。そしてダム運営は適切に行われたという声明を一方的にだす。住民側はこの行政側の放流管理が適 切でなかったということを証明できないから敗訴する。第三者の監査を義務付けなければ。住民ができることはそこから立ち去ることしかない。すなわちその地 の価値は下がるということだ。

●ダムの上流に溜まる土砂は除去して初めて洪水防止に役立つ。しかし財政圧迫でそれも出来ず、単なる人工滝に成り果て ている。そして気候変動で100年に1度というような豪雨がくると、ダムや江戸時代からある農業用ため池は単なる水たまりと滝となりおおせ、構造的にも脆弱でしばしば決壊するためかえって水害を発生させる。

●またダムの上流に溜まる土砂を除去しないため、砂はダムに溜まり続け、海岸では砂の供給が細って、海岸のエロ―ジョン防止に醜悪なテトラポットを投入せざるをえなくなる。

●古い鉄橋が架けられている河川の土手は高さ不足で大洪水時に溢流があり得る箇所が江戸川、荒川、隅田川に多い。一旦溢流があれば、ほとんどの堤防は耐溢流性はないので必ず決壊する。

●1級河川の土手はかさ上げされているが、これに流れ込む支流の土手は低いままである。たとえば多摩川とその支流の野川。

●河川にかかる橋げたの下面は土手と同じ高さか、低いため、上流から流木が流れ下ると橋桁に引っ掛かって川を閉鎖し上流側で溢流し、洪水が発生する。

●洪水になれば、地下鉄は水没し、電気施設は地下室にある古いビル街は市の街と化す。

●東京のゼロメートル地帯のハザードマップは作製されているが、住人の数が多く、緊急時の水平避難のための公共交通機関と避難先は確保不能 である。縦方向避難しか方法はないのに、そのような施設への投資は殆ど行われていない。ようするに治水はしていないに等しい。大体、命を長らえたところで自宅の損失は個人責任である。個人とし てできることは引っ越ししかない。



44.地震・噴火予知・豪雨・洪水予報が可能はウソ


●政府はかって地震予知をするとしていたが、守銭奴でない地震学者が確率では示せても、何時発生するかの予知は前兆現象がいまだ未解明で不可能としたのであきらめた。仮に前兆現象をとらえることができたとしても観測結果の解釈時に政治的配慮が為され て適切な予報はできない。 政治的配慮を排除するために自動警報としても、当たらない自動警報はやめてくれと苦情がでてスイッチは切られる運命にある。

●噴火予知も同じカテゴリーにはいり、予知は不可能。2018年の草津白根の噴火は前兆現象皆無であった。

●80年に1回の豪雨予想は天気予報の精度があがり可能となったのだから、洪水予報は可能というのはウソである。なぜなら治水のためとしてダムという一種 の時限爆弾を山の中に造り、土手を越流しても簡単には破堤しない越流可能堤防をつくらなかった人災である。放流管理は人間がおこなうため、豪雨予測による 事前放流より貯水優先になる。こうして放流時期の判断をあやまり、かえって鉄砲水を作っている。一応ダム放流を住民に知らせるシステムはあるが、仮にうま く避難できたとしても、住民が田、畑、家財産を全て失うのは同じ。それで天災だから自己責任とは政府はいえない。これは軍が国民の生命を守らないのと同じ 構図。

●原子力規制委員会の田中委員長は火山学会の原子力問題対応委員会が規制委員会の審査基準を見直すべきとしたことに関し「とんでもないことが起こると平気 で言わず、必死になって夜も寝ないで観測してがんばってもらわないと困る」と発言。これは第二大戦前の軍部のようなとんでもない精神主義だ。




45.捕鯨に関するウソ

●科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音であることは国際司法裁判所のペーテル・トムカ所長が判決文のなかで2012年10月の衆議院での小委員会の 議事録に書かれている本川一善水産庁長官の言葉「ミンククジラというのは、お刺し身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されてい る。ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった」という言葉を引用して科学的調査という理由はウソであると した。

●本川一善水産庁長官の言葉をつかったのは実は年率10-15%で増加するザトウクジラとナガスクジラには興味を示さず、売れるミンククジラのみを科学調 査の対称とした上に、ミンククジラの値段が高くて売れず、販売努力もせず、単に捕獲数を減らしたことにある。供給を削減したため、サンプル数が減り、科学 調査という名目が意味をなさなくなり、商業捕鯨と認定された。すなわち誠実に科学調査をしていなかったご水産庁の都合主義が国際的に日本の評価を下げた。

●日本政府がなぜ捕鯨を守ることは国家の利益といいつのるかというと、調査捕鯨に係わる職員の雇用を守るのが第一の理由。すなわち公益というより私益のためだ。

●マスコミは日本の食文化を無視した欧米の横暴との論調だが、全くのピントハズレの井の中の蛙論法だ。



46.漁業に関するウソ

●漁業資源は乱獲で減ったといわれているが、減ったのは寒流のニシンなどの魚で暖流のサンマ(資源800万トン)、ハダカイワシ(資源 1,000万トン)、アカイカなどの資源量は増えている。しかし食習慣上需要が小さく、漁業者は鮮度が高いものを売れるだけしか漁獲しなかった。水産庁もサン マの資源量は多いにもかかわらず、値崩れを心配する漁業者には配慮して上限を30万トンとおさえていた。こ多変量解析の資源に気が付いた台湾や中国が1,000トン クラスの大型漁船をつかって日本の排他的経済水域(EEZ)の外の公海でのサンマ漁を始めた。1980年代に韓国と台湾、沖縄県西方の東シナ海で 20,000隻近い漁船が操業を続けていたが、乱獲で沿岸の漁業資源が減り、台湾に追随する格好で2012年には中国の漁船が日本のEEZに近い北部太平 洋の公海でサンマやサバを大量に漁獲しはじめた。こうして公海域でのサンマ漁獲量は昨年、63,000トンと12年の31倍に急増した。サバの漁獲量も 14万3千143,000トンと14年の6倍近くに拡大した。

●一方、回遊マグロ漁業は産卵期に集まる全てのマグロを巻き網漁で一網打尽にするから、資源量が急激に減っている。巻き網漁の問題は水揚げ時に電気ショッ クで安楽死させることができないため、血液を抜くことができず、品質が低下することで、養殖マグロより安値になり、回転スシ専用となる。

●日本では新規漁業者の参入を法律で禁じているため、日本の漁業者の平均年齢は60才以上で平均船齢も25年で老朽化している。法律の改正が必要だが既得権に守られて動きは鈍い。

●行政が縦割りのため、防波堤に引っ掛かって港に溜まる河砂を浚渫しても捨て場がなく、港の中に積み上げてある。一方浜はやせ細っている。

●1994年に国連海洋条約が発効し、各国は調査をもとに魚種ごとに漁獲の上限(TAC)を設けることが義務つけられている。しかし水産庁はマイワシ、サ ンマなど7種類の魚の漁獲高の上限を定めるだけで、人気のある魚種には上限を設けず、先を争ってとるオリンピック方式を採用している。このため、たとえば キンキの漁獲量は乱獲のため1/10となってしまった。



47.畜産に関するウソ

●穀物を輸入して国産肉を生産するスキームは老廃物が日本の国土にとどまり、環境汚染を引き起こす。逆説的だが、肉は肉として輸入するか、国産牛は国産の草と国産穀物で育てなければいけないということになる。

●また穀物などの食料の輸入も窒素循環の観点から日本に窒素が蓄積され続けて世界的な物質循環のバランスが大きく崩れる。すなわち生産国は地味の枯渇、日本は過剰窒素による生産性の減少が発生する。

●食料の地場生産、地場消費が重要だという認識を国民が知るのは義務となる。




48.PTTは畜産製品の価格を下げるという宣伝はウソである

●国内の畜産家はPTTにより米国産の畜産製品が安く入るとおそれて生産量を縮小したり廃業しているため、バターなどが店頭から消えた。



49.食品安全に関するウソ

●「健康によいマーガリン」は公的ウソである。冷えても固まらない植物油にニッケル触媒をつかって高圧下で水素を反応させてバターのように固まるようにし たものがマーガリンやショートニングである。酪農なしで植物油から安価にバターの代用品を作れるので日本で特に発達した。しかしこれは欧米では、動脈硬化 症、冠状動脈疾患などの循環器系の病気になったりボケたりすることがわかってきて禁止品になった。自然に存在する不飽和脂 肪酸は、シス二重結合を含んでいる。このシス型脂肪酸を部分的に水素添加するとシス結合のおよそ約14%がトランス形状に変換され、融点が上がったのが マーガリンやショートニングだ。このトランス型がわるさをする。飽和脂肪酸を含むバターは実は悪さをしない。アメリカ市民はこの問題に敏感で不買運動が怖くて マックドナルドはマーガリンは使っていないと公式に表明した。性ホルモンは脂肪酸を原料にして体内で合成される。学校給食のパンはショートニングをつかっているから、男の子の草食化とか最近の若者のセック ス・レスにも影響しているのかもしれない。厚生省はマスコミが騒がないことをいいことにして、また食品業界に遠慮していまだになにも手を打っていない。農 水省はトランス型脂肪は反芻胃の微生物により合成され吸収され、反芻動物の肉や乳脂肪中にも存在するとことさら強調して安全といっている。自衛策は売っているパン、ケーキ、クッキー類は全て口に入れないこと。学校 給食は拒否すること。パンはバターを使って自分で焼くこと。

●クジラ・イルカ・マグロは食物連鎖のトップに君臨しているためPCB・水銀が蓄積している。調査捕鯨で捕ったミンククジラの脂皮を市販して いる財団法人日本鯨類研究所が脂皮には厚生省の暫定基準値0.5ppmを上回る0.75ppmのポリ塩化ビフェニール(PCB)が検出されていたにもかか わらず、これを公表せず、脂皮を薄切りにしてゆでる「さらし加工」を加工業者に指導するだけに止めていた。秘匿もウソの一種とすればこれも公的ウソとな る。日本鯨類研究所は捕鯨業を保護育成しようとする農水省系の研究機関だ。農水省の捕鯨業保護育成政策を阻害する情報を秘匿する動機は大いにある。

●外国の漁船が最新の装備でメバチマグロ、キハダマグロ、サケ、マスなどを日本市場向けに”まき網漁法”で乱獲して日本に輸出するため、資源の枯渇が生 じ、国際的な漁獲規制が必要と認識されるようになった。これら外国の漁業者は日本への輸出前に小魚を与えて太らせるためダイオキシン類が蓄積し、近海物の60倍になっている。

●大量流通をあつかうスーパーなどがコストに見合わないと少量捕獲されるうまくて種類の多い地場魚は流通経路がないため、漁業者により直接海にすててい る。イタリアでは様様な魚を混ぜてフライにして売っているが日本のスーパーには輸入品のマグロ、エビ、サケの3点セットしかない。

●健康補助食品として食品中の有効成分を精製分離して取り出したものを錠剤に封入して健康補助食品として公的に承認されて販売されているが人間の栄養摂取は複雑系のために必ずしも効果はない。あくまで食材から直接摂取すべきである。



50.コメに関するウソ

●農水省のHPに米作保護のためか「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖、朝はしっかりご飯を食べましょう」と宣伝しているが、これはウソである。たしかに糖は脳関門を容易にとおりぬけて脳にネルギーお届ける。しかし脂肪だって肝臓でケトン体になって脳関門を通過 できるのだ。

●農水省こそ糖尿病を国民に強いているようなもの。そもそも農水省がエネルギーベースで40%を自給できる体制を維持するためには糖という麻薬を押し付けなければ不可能なのだ。医療費増は農水省の管轄ではないから遣やりたい放題。

●農家がネオニコ系農薬を使いたくなくても使わざるを得ないのは、カメムシに吸われた黒い点のある米粒が、1,000粒にたった2粒混ざっただけで米の等 級が落ちるという、農水省の古くからある厳しい基準のためという。現代の技術では、精米のときに黒い点のある米粒を簡単に取り除けるので、農薬を使う必要 はない。時代遅れの基準が見直されずにそのままになっているために、危険な農薬がムダに使われ続けている。しかも、1,000粒に2粒という基準には、特 に根拠がない。



51.医療制度のウソ

●大部分の病院は開業医の個人経営である。ただ開業医が病院の建物に投資すると一代では償却できない。出来の悪いドラ息子に病院を継承させるため に私大医学部に巨額の裏金をつかうことになる。一方、勤務医は病院から査定された給料をもらうだけだから、過酷な労働を強いられる。なんとか独立して開業 医になり、借金して病院を建て、うまくやれば、別の医者を雇って大きな病院に育てることがかっては可能だった。しかし、いまや人口は減少に向かい、成功の チャンスは少ない。それでも普通のサラリーマンよりは実入りがいいから息子の成績が良ければ医学部を狙わせることはできる。このような二代目病院長が采配 する病院に自分の命を預けるのは、まさに命がけとなる。

●日本の医療制度はこのように特異な発展の仕方をしていて崩壊の瀬戸際である。ところが文部省の局長はこの制度を悪用して息子の裏口入学のために自腹を切っての裏金代わりに国民の税金を流用した。お縄頂戴は当然。

●米国の医療制度はすべての医者は診療報酬を自分の報酬と取引関係のある病院サービスプロバイダーへの支払に分配する裁量権を持っている。




52.観光業振興のウソ

●日本は長期間のデフレの結果、世界でもまれにみる生活費の低い国になった。そして安価な航空サービスもある。これに目をつけた外国人旅行者が激増している。しかしこの安い費用の観光レベ ルを維持するために大部分の日本人は低賃金・長期間労働という奴隷状態に耐え忍ばねばならない。更にその下の層を安価な外国人労働者が支える構造になっている。このような搾取型観 光産業は必ず破綻する。

●日本が観光業で食ってゆくためにはまず二食付、雑魚寝型旅館業という日本文化を部屋貸型
ホテル業という国際水準に脱皮させないと採算がとれなくなる。日本の役所の時代遅れの規制がこの変革の足を引っ張っている。

●観光業のためにカジノを解禁するというのも、観光の本流でないところでの利権追及の匂いがする。多分観光振興には何の貢献もしないだろう。パチンコ、競 馬、競輪、競艇という総額50兆円のギャンブル大国はすでに国民の3.5%がギャンブル依存症という病気に感染していて世界一の罹患率だ。国家運営者はす でに原発依存症という病にもかかっていて治癒する希望もない。



53.大相撲の土俵は女人禁制は神代からの伝統は大ウソ

●大相撲でも土俵は「神聖」なものとされ、「女人禁制」とされてきたが、日本史上初めて文献に「相撲」が登場したのは『日本書紀』の雄略天皇期に 天皇は采女(うねめ。宮中の女官)を集め、着物を脱がせ、褌を締めさせ、みんなの前で相撲をとらせたとある従って神代からの伝統は大ウソである。このよう な男女差別を宣伝するいかがわしいことを喧伝する組織を公益法人にしているのは法に反する。

●室町時代にも勧進相撲(営利目的の興行相撲。大相撲の源流とされる)に「比丘尼(びくに。尼僧)」が出場していたことが記されている。

●江戸中期以降、女相撲興業があったし、日本各地に神事としての女相撲があった。

●明治の文明開化で西洋キリスト教文明の影響で女相撲がすたれただけである。


54.世界におけるウソ

●米国のトランプ大統領は典型的なポピュリスト(大衆迎合者)である。アメリカの選挙民が貧しいのは資本家が製造工場を海外に移転させて、投下資本の上が りを懐にいれているからでその工場を取り戻すために関税をあげ、移民を制限する。そして膨大な防衛費を節約するためにロシア敵視をやめるとした。

●ところがこの1兆ドルという防衛費を節約するというトランプの政策は1991年にユダヤ系のペンタゴン幹部のウォルフォウィッツが作成したEU、英国、 日本、カナダ、オーストラリアを米国の属国とし、ロシア、中国、北朝鮮、イランを敵対国とするという“ウォルフォウィッツ・ドクトリン”をかかげる軍安保 複合体とネオコンの政策に反するため、トランプを失脚させるようと、スキャンダルを躍起になって仕立て上げようとしている。困ったことに世界中の何十億人 もの人々の頭脳を支配してきた欧米のCNN、ロイター、AP、AFP、ワシント ン・ポスト、ニューヨークタイムズ、タ イムズや他のいくつかの欧米報道機関などアメリカ・マスコミは完全にネオコンを信じているため、核戦争のリスクが高まっている。

●核戦争をさけることのできる唯一の期待はロシア、中国、北朝鮮、イランが一致してアメリカ覇権を無視することしかない。



その後の追補

●2019/2/4 ダレル・ハフ著「統計でウソつく法」によれば「多くの統計は、額面通り受け取るとウソばかりである。統計は、数字という魔術によって、人々の常識を麻痺さ せる」と書いている。実例をあげると厚生労働省の「毎月勤労統計」で無作為抽出でない不正な抽出が行われていた。また「労働時間調査」でも、裁量労働制働 く人には「単なる労働 時間」を、一般労働者には「最長の残業時間」を尋ねた。質問が異なる調査を単純比較して、一般労働者の労働時間が長くなるとのあやまてる結果を出し、安倍 首相の国会で裁量労働制の意義を強調し裁量労働制の法案を強行可決させた。その他、実例は多数。

Rev. February 4, 2019


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