メモ

シリアル番号 表題 日付

1527

新幹線のぞみ34号台車のワレ
2018/02/28

2017年の川ア重工製のN700系台車に亀裂が発見された。2018/2末数ヶ月かけた調査の結果が西日本JRから公表。

損傷状況

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/180228_00_nozomi.pdf

モーター継手は三菱電機、歯車箱は新日鉄住金だが問題なし。

詳細調査結果

き裂長さは側面外146mm、内141mm、内部補強外117mm、内108mm、底面160mm。

側バリ底面の板厚が設計上の寸法8mm(加工後7mm以上)よりも薄く、最も薄い箇所で4.7mm。川重は軸バネ座取付部のすりあわせのため、側バリ底面が研削された。(図面に厚さ記載なし)

き裂は側バリ底面の軸バネ座溶接部を起点とした疲労破壊と考えられる。

起点部分は破面同士の接触により表面がつぶれていたが、内部を詳細調査したところ、溶接施工により生じた割れと考えられる破面が認められた。破断面は腐食 が認められ、き裂発生初期段階から相当な時間が経過していると考えられる。側バリ底面が研削されて不足した寸法調節のため軸バネ座下面全面に肉盛溶接を 行った形跡が見られた。 鋼材はJFEスチール材質には問題はない。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/180228_02_nozomi.pdf

に見られる如く、軸バネ座には4つの楕円形の穴が開いており、この穴の縁を隅肉溶接で側バリ底面に溶接している。この隅肉の内部に製造時から亀裂が発生していたことになる。

川重が製造し、JR西が所有する303台の台車のうち、亀裂が生じた新幹線以外の100台でも側梁の下部が基準未満の厚さに削り込まれていたことも分かった。100台については安全性に問題はないとしているが、順次交換を進める方針。


2018/3/14

国土交通省の規定では、新幹線の台車の検査は、3年または走行距離120万キロに達するまでに1度、車体を分解して行う「全般検査」の際と、1年6カ月ま たは同60万キロごとに実施する「台車検査」の際に車軸の超音波検査と台車の「磁粉(じふん)探傷検査」するだけでよかったが台車にも超音波検査すること にした。この他に特殊な染色液で傷を染める「浸透」検査がある。

日本車両製造製の台車4台からも超音波検査で台車枠と「軸バネ座」の溶接部内部に傷が見つかった。日本車両製造の台車について「鋼材の厚さは基準を満たしている。日本車両製造が調べたところ、いずれも溶接部内部に数ミリの傷を確認した。残りの検査には1年かかるという。



今回の割れの遠因となった設計についての考察

現設計は側梁を2個のコの字型鋼を抱き合わせに溶接してロの字型にしている。2つのコの字型鋼の溶接前にまず補強部材をコの字型鋼の開口部に1枚ずつ入れて隅肉溶接しててから コの字型鋼を突き合 わせ溶接してロ字型の構造にしている。しかしこれでは突合せ溶接した部分が凸型になってしまい、これが邪魔して軸バネ座との間に隙間ができてしまう。密着 させないと軸バネ座の楕円形の穴の縁に沿った隅肉溶接ができないため、底板の溶接バリを削り取らねばならないことになる。ところが削り過ぎてしまった。公 式にはこの削り過ぎたのがいけないというロ ジックだが、微妙にごまかしがある。むしろ削り過ぎのため、依然隙間があるのに強引に隅肉溶接してしまったところに問題がありそう。その溶接線に初期割れ が生じているのに超音波検査しないので気も付かず、このワレがら疲労破壊により10年かけてワレがじわじわとすすみ、最後に脱兎のごとく進行したということの様だ。今、検討されている別の設計を採用すれば削る必要 はなくなるのだ。

その新設計とは2枚の補強部材を入れたロの字型フレームをやめて、補強部材なしの逆U字枠に下板を溶接しただけの構造にする。この改良設計の目的は別の所に在り補強 部材をやめて1台車あたり更に75kg軽くすることにあるようだが、軸バネ座の溶接も容易になるというメリットがある。無駄でリスクのある削り作業が無くなり、今回のような発見できない初期割れ発生のリスクは減る。

Rev. March 14, 2018

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