富岡会

伊藤博文が明治憲法の構想をねったという富岡の野本邸をお借りして勉強会を開くことになった。

野本邸を使わせて頂く条件は、

@野本ご夫妻が富岡別荘の管理に来られる時に開催
A広 大な庭園の草刈り・樹木の手入れを無償で行うこと

である。@は概ね3連休の時になるが、今年は3連休が8回程度あり、約半分の4〜5回となる。Aは野本ご夫妻不在でも勝手に入ってやれるので、1年の計画を立てておこなう。

メンバー:野本、野本夫人、寺澤、白田、小粥、小笠原、西澤、土屋、青木



西沢氏撮影


第一回:2014年1月12日(日)

●自己紹介(所要時間:10分以内/人)高校卒業後〜現在に至るまでの人生の主要事項についてのプレゼンテーション。

●野本氏が伊藤博文と明治憲法について紹介。使った資料は下記の通り。

ウィキペディアの伊藤博文

伊藤博文 年表

NHK高校講座 日本史 第28回 大日本帝国憲法

ここで動機づけが行われて、書いた雑文は「日本の宿痾


第二回:2014年3月22日(日)

●青木が「原発敗戦」の話をした。要旨は福島事故までの累積のメルト ダウン確率は14,500炉年に10回から1450炉・年に1回となり、再稼働すればもう一回の事故もありうる。メルトダウン事故は地震・津波・雷・洪水 など自然災害だけで発生するものではない。運転員の誤操作、メンテナンス要員の手抜き、部品の故障でも発生する。事故はすべての化学工場、航空機、船舶と 同じ。事故を起こさないプラントや人間系は美しい言葉では作れない。自然災害ではなく、運転員の誤操作、メンテナンス要員の手抜き、部品の故障でメルトダ ウン事故発生したばあい、経営者の刑事責任が問われるだろう。といって直ちに全て廃炉にすれば償却残の投下資金は最終的には電気料金か税金で賄わなければならな い。原発を計画寿命の40年目いっぱい運転すれば、投下資金を無理なく回収でき、新設しなければ2050年までに原発はゼロになる。ただ建設費の10倍に達する事故補償のリスクは残る。再生可能エネルギーのコストダウンを織り込めば廃炉に関するど のシナリオをとっても電力料金の大きな上昇はない。ならば事故の損害のない早期廃炉が合理的ということになる。


第三回:2014年9月14日(日)

●野本氏が井上馨公の七言絶句の掛け軸を披露。

緑樹陰濃守四隣
孤村極處接江濱
帯来南海新鮮気
此地還無若蟄人

        世外
緑の樹々の陰が濃く 我が別荘の四方を守っている
静かな村にある我が家のはずれは浜辺に接している
このあたり一帯は南の海から来る新鮮な空気に満ちている
この地には暗い気持ちで家にただ閉じこもる人はいない

井上馨公号



井上馨公の七言絶句

●寺澤氏から高校卒業後の大学生活、NKK鶴見造船所鉄機業務部や子会社社長としての会社人生、引退後のOB会運営、引退後の地域活動、自宅屋根にPVを載せた話を聞いた。

1985-1995年までのイラク、サウジ、マレーシアでの海外プロジェクトの経験の話しは興味深かった。特にNKK、BR&R、丸紅の国際コンソーシアムで受注した受注額510億円のサバ・ガス・プロジェクトは類似の仕事をしていたこともあり興味深く聞いた。

鉄鋼会社や造船会社をみているとどの会社も海外に進出して大赤字になり、懲りて撤退をするのを、なぜそうなるのか不思議に思っていた。メーカー体質の会社 は一切の仕事を社内に抱え込んで何でもかんでも社内で行おうとするから海外に出てゆくと、大赤字になるのだろうと推察していたが、そのようだ。

エンジニアリング会社 は早い時期に機器の内作はやめ、国内メーカーに発注することすらやめて、国際調達に切り替えたため、為替リスクをさけて国際マーケットでしぶとく生き残った。

4.99kWのKyosera製のPVを設置し、 年間5,355kWh発電した。これからCapacity Factor=12.2%を達成したことになる。標準のパーフォーマンスだ。この数値から余剰電力はカットされず全量東電に売れたことがわかる。


第四回:2014年11月2日(日)

●小粥氏が簡易裁判制度について報告。小粥氏は十数年に渡り、簡易裁判所の調停員と訴訟の裁判長を補佐する司法委員を務めてきた。全国の簡易裁判所の通常訴訟数は2009年が最高で66万件あったが、サラ金問題がかたずいたことから減少傾向である。調停を成 功させる秘訣は両者の言い分を徹底的に聞くことにあり、そういう意味で天職と思えるほど職務に熱中できた。一日7時間、週3日連続勤務を長年継続できた。 調停は殆ど特定調停、所謂サラ金調停であった。

●野本氏が外遊したとき、博物館で江戸時代の「根付」などが明治期に海外に流出したのを残念に思って財力の限り、逆輸入して収集したコレクションの一部を 披露してくれた。病院医の収入のほとんどを投入したという。安倍内閣が失敗しても円を物に交換してあるので困らないだけの実物に投資したことになる。

「根付」はポケットの無い男性用の着物で袋や印籠等を持ち歩く場合に、袋や印籠などに付けられ た紐の他方の端に取付け、紐を帯の下に挟み、根付を帯の上方に出す事によって引っ掛って袋や印籠などが落ちないようにする目的で用いられた。



根付けと眼鏡入れ

「根付」がでてくる有名な小説に藤沢周平の短編小説「滴る汗」がある。祖父の代から東北の小藩に商人として出入りしている森田屋宇兵衛は、実は3代続く公儀隠密、森田屋宇兵衛はひょんなことから、その秘密を漏らしたと思い込んだ使用人を殺害し、自然死のように工作したが・・・。

●土屋氏が起承転結について頼山陽の作といわれる戯れ歌を紹介

起:大阪本町 糸屋の娘
承:姉は十六 妹が十四
転:諸国大名は 弓矢で殺す
結:糸屋の娘は 目で殺す

頼山陽といえば「壇ノ浦夜合戦記」の作者ともされているので真偽のほどは保証できない。

杜甫は七言絶句の詩を作っている。井上馨公の七言絶句も多分この起承転結ルールに従っているのでは?

●次回は2015/1/11。


第五回:2015年1月11日(日)

●土屋氏が「日本憲法を考えよう」という38pに渡る論文をまとめて説明。次回も継続することになった。

要旨

@    基本的事項として「憲法とは?」、「国家とは?」について一般的「定義」を紹介する。

A    「日本国憲法」について成立の経緯、構成、基本理念等について紹介する。各条文を全て解説する時間が無いので、今最も関心の深い「9条」(戦争放棄)について論点を整理し、現状の考えを紹介する。

B    物事はその成立について「経緯(背景)」を知ることが大切である。新憲法が「僅か48時間で作成された」ことを知る人は少ないと思う。「憲法制定史」として一項を設けた。

C    これらの更に前提になるのは「第2次世界大戦で日本が負けたこと」である。そこでポツダム宣言にも触れないわけにはいかなくなった。ポツダム宣言につい て、連合国側の状況(日本への原爆投下、ソ連の日本侵攻等)、日本国内の政府の対応等について紹介する。

D    最後に占領下で制定された現憲法の有効性・無効性の議論も紹介する。(占領下では国の主権が無い→国家でない→その時作った憲法は無効)


●野本氏のお宝拝見。



●次回は2015/3/22(日)。

●樋口陽一ら憲法学者は自民党改憲草案では現行憲法の「個人」が「人」に差し替えられている。これは些細な違いではなく、個人を基礎とする国家という近代の基本的枠組みの否定となりかねないとしている。


第六回:2015年3月22日(日)

●土屋氏が「日本憲法を考えよう」という前回の論文を整理して29pのサマリーにまとめた物をおさらいしたのち、メンバーが自由に意見を述 べた。大方は複雑な心境で、古くなったのでハイわかりました、改訂賛成します。とは言えないようだ。条件が付く。

第一、第二次大戦の開戦責任追及を米国任せにしておいて日本人による裁判もなしに米国の庇護から脱して勝手にさせてくれというのも虫が良すぎる。そこら辺から一つずつ積み上げないと。

そもそも憲法は国民主権の下で時の権力者が勝手しないように縛るのが目的だ。たまたま隣の国が経済的にも、軍事的にも我が国をしのぐ存在になったからと いって外交努力もせず、留め金を外させてほしいというのも姑息だ。そもそも権力者は主権者の権利を縛りたがるものだ。今回の自民党も九条改正を餌にして国 民の権利に制限を加えようとしていて、「敵は本能寺にあり」の気配だ。

憲法はあくまで国内法で、国際関係はグロチウスが整理したようにそれぞれの国には自衛権は自然に備わっていると理解されている。したがって憲法で国際紛争 を解決するために軍をもつことを禁じられていても自衛のために兵を養うことは、憲法に違反しないというのが今の日本の法的状態だろう。だがら5兆円に上る 防衛費が国会で承認されてきた。無論、憲法にしたがい時の政権が国際紛争を解決するためにこれを使うことは憲法に抵触することになる。万一、隣国が突然侵 略してきたらどう行動するかは国際関係なので国際法に従えばよいよいうことになる。この侵略に対し日本がなにもしないと、そこに真空状態が生じ、却って侵 略の誘惑を生じて危険だ。

北欧のデンマークは第二次大戦前は永世中立方針だったが、ドイツ軍に蹂躙されてからはNATOに加盟した。ベルギーは第一次大戦で国王は中立を保ち、ドイ ツ軍を進軍させるように訴えたが、ベルギー国民はフランスと心情的に一体化していたので勝手に応戦して多大な被害をこうむった。スイスだけは未だに永世中立を保っているがこの国は国民皆兵で全員が武装しているのだ。簡単には落ちない。日本も米国の安全保障の傘 にはいっているが、一方的なので双方向にしようとしている。そこで憲法の縛りとの抵触が出てくると言う構図だ。

米国憲法は国民が権力者の暴走を抑えるために武装の権利を認めている。権力者が国際紛争解決のために武力を行使しやすいようにしたいというなら、性悪説にしたがい、国民にも武装の権利を認めるのがバランスある仕組みではなかろうか?

●次回も継続することになった。次回は2015/7/19(日)

●野本氏のお宝拝見は今回はキセルであった。短刀を隠してるキセルなど珍しいものがざくざく。野本氏のコレクションは500点に上がるという。



お宝を拝観

第七回:2015年7月19日(日)

土屋氏のリードで以下を学ぶ。

●憲法を前文から読んだ。それから憲法9条と国連憲章51条の個別的または集団的自衛権の権利を読む。それから憲法9条と国連憲章51条の矛盾につき、かって日本政府が個別的自衛権は良し、集団的自衛権はダメと解釈した歴史を学ぶ。

●日米安全保障条約は集団的自衛権を前提としている。

●米国民の安保の目的の理解は「瓶のふた」という認識。すなわち「日本の軍事大国化防止」

●竹島や北方領土は日米安全保障条約の範囲外。(尖閣は安全保障条約の範囲内とクリントン国務長官言明)

●核抑止力を持たない日本は有事の際米軍と共に行動してもニュークリア・ブラックメイルをかけられた途端、降伏または停戦に応じなければならなくなる。

第八回:2015年9月22日(火)


安倍政権が集団的自衛権を認める安保法制を可決したタイミングで土屋氏から憲法違反をこのまま継続するより、いっそ9条を変えたほうが法順守という点からよいのではないかという問題提起があった。

そこで出た大方の意見は

そもそも国民の意識は理想的な現行憲法を守りたいという意識が強い。かって個別的自衛権も違憲の可能性は強いのを合憲としたわけで、そういう意味でも集 団的自衛権だけを違憲とするのもおかしい。これからも現行憲法を守って、時の政府の暴走を監視してゆくしかない。特に安倍政権のように人権を無視す るような政権の下で改憲するのは最悪の選択だと意見が一致した。

そもそも憲法は政治家の暴走を抑制するための仕掛けで、その解釈は法律家共同体のコンセンサスに従うから、過去70年間に積み上げた「個別的自衛権は合憲で集 団的自衛権は違憲」という法律家共同体のコンセンサスをベースに司法の場で揺り戻される可能性も秘めている。

今のところ日本国民は先の大戦で時の権力者のミスジャッジで迷惑を受けた経験が忘れられず、改憲も集団的自衛権にも反対だし、米国もベトナム、イラクへ の侵攻のようなミスジャッジをしているので集団的自衛権に関しては米国による「巻き込まれ」を心配している。集団的自衛権は仲間が増えるから安心というわ けでもない。不本意な争いに巻き込まれる恐れの方が大きいだろう。過去の大戦のきっかけはすべて集団的自衛権が引き金になっている。

中国の人工衛星技術をベースにして開発さ れたDF16やDF21という射程が2,000km前後の短・中距離中距離ミサイルの進化をみれば、心配すべきはむしろ米国による「見捨てられ」だろう。 日本の憲法解釈とは無関係に在日米軍の大半は中国との情勢が緊迫した際、一時的に日本を離れる構えだそうだ。そうした場合に日本は無防備な状態に置かれる 危険がある。このように中国 からのミ サイル攻撃について、脅威の大きさの割に日本では対策がほとんど議論されていない。集団的自衛権でもめている場合ではないの だ。集団的自衛権があるとして米国に協力しても結局見捨てられる運命が待っていると覚悟しなければならない。

ならば合憲の範囲内で個別的自衛権に徹するべきだろう。先制攻撃にはつかわないという制約下で抑止力を持ったほうが賢いということになる。抑止力として核 兵器は過剰だし、だいち憲法違反になる。具体的には個別的自衛権を理由に報復できる実力を涵養して抑止力としなければならない。

報復できる実力とは例えば潜水 艦搭載クルーズミサイルである。現在クルーズミサイルは攻撃兵器で憲法違反とされているが、兵器はどれも攻撃的なのだ。個別的自衛権は合憲は国民に受容さ れているし、法律家共同体のコンセンサスでもあるわけだから、先制攻撃に使わないという縛りを作れば、中国心臓部にとどくクルーズミサイル すべて合憲となる。防衛予算をほとんど増やさないでクルーズミサイルを日本の得意の潜水艦に配備するだけで済む安価な方策だ。

沖縄に無理に米軍基地を維持したところで、ミサイルが沖縄を飛び越えて東京を狙える以上、沖縄米軍は張子のトラ化するだろう。無意味だ。これからは技術の進歩で遠隔からの戦争が中心になるだろう。


第九回:2016年3月19日(土)

野本邸の改装のためしばらくお休みだった勉強会を再開した。

メンバー:野本、野本夫人、寺澤、白田、土屋、青木

●青木が「ジャック・アタリの21世紀の歴史」を説明

●土屋が「グローバリゼーション」という語についてwikiの定義を説明

●白田が豊下樽彦の2008年の著作「昭和天皇・マッカーサー会見」と新著「昭和天皇の戦後日本」にしたがい占領時の昭和天皇の言動と記録について説明。 残された記録を深読みすると巷に認識されているより天皇は踏み込んだ発言と行動をしている。誇張すれば時の吉田総理とは二重外交といわれかねない言動であ る。

天皇としては全ての戦争責任を東条に背負わせるところに自らの活路があり、マッカーサーとしては天皇がマッカーサーの占領政策に協力してくれるかが最大の 関心事だった。そしてこの取引はうまくいった。マッカーサーの権力と、天皇の権威の両輪で日本占領を円滑にしようとしたわけ。平和憲法・象徴天皇・安保体 制のいずれも実は国際社会を相手に命がけで構築した昭和天皇の遺産だった。だからこそA級戦犯の靖国合祀に昭和天皇は激怒して死ぬまで、靖国に足を運ぶこ とはなかった。戦後レジームからの脱却をさけぶなど昨今の政治家のうすっぺらさが目立つ。

●野本氏が厚生労働白書の人口統計と推計を駆使して人口問題を解説。つぎに野本家で発見された昭和6年発行の神栄館出版部発行の「大日本資本家一覧表」と「世界各国人民日収一覧表」の説明があった。

「大日本資本家一覧表」を見ると最大資産持ちは岩崎久弥と三井八郎右衛門の5億円である。これを住友吉左衛門と岩崎小弥太の3.5億円が追う。大倉喜七郎と安田善次郎は2億円、古河虎之助は1.5億円。

「世界各国人民日収一覧表」を見ると日本では三井家理事と三菱家理事は540円、満州鉄道総裁hが95円、郵船社長57円、東京市長54円、内閣総理大臣 32円である。列国をみれば、英蘭銀行総裁9,860円、太平洋鉄道会社社長8,500円、米国鉄鋼業トラスト理事長8,300円、米国大統領5,250 円、米国石油業トラスト理事長5,250円である。


第十回:2016年6月18日(土)

参加者:野本夫妻、青木、小粥、寺澤、西澤、土屋(7名)
   
<野本さん講話要旨>

(1)死亡率を見ると、1位;がん、2位;高血圧関連(心臓・脳)、3位;認知症である。
(2)生活習慣病の1〜2位とされ、140mmHg以上を高血圧とする。望ましい血圧は80〜120mmHgである。また60%が遺伝、40%が環境要因である。
(3)塩分を控える、ストレスをさける、肥満にならない、たっぷり野菜をとる、喫煙をしない、適度に運動すること、等が対策。
(4)薬物療法;コストが安い利尿薬やカルシウム拮抗薬がある。少し高価だが「アンジオテンシン阻害薬」等の新薬がある。[注::腎臓の輸入細動脈の壁に ある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIという物質をつくる。アンジオテンシンIはアンジオテンシ ン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIに変換される。アンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からのアルドステロンの合成・分泌が促進される。このアルドステロンの働きによって、腎臓の集合管でのナト リウムの再吸収を促進し、これによって体液量が増加する。こうして血圧上昇作用をもたらす。バイエルが開発した阻害薬はこのアンジオテンシン変換酵素 (ACE) の働きを止める。ちなみに1998年にネイチャーにACE遺伝子の多型が運動能力に関係するという論文がでている。ここから遺伝子ドーピングが考えられる。
(5)高血圧の合併症 [注: 以下(5)〜(9)まで、インターネット「高血圧」Wikipediaより転記]
高血圧が持続すると強い圧力の血流が動脈の内膜にずり応力を加え、同時に血管内皮から血管収縮物質が分泌され、血管内皮が障害される。この修復過程で粥腫(アテローム)が形成され、動脈硬化の原因となる。
高血圧による、慢性的疾患は大きく 「脳血管障害」、「心臓疾患」、「腎臓疾患」、「血管疾患」の4つに分類され、高血圧によって生じる動脈硬化の結果、以下のような合併症が発生する。
(6)脳血管障害脳卒中
脳卒中は、脳出血と脳梗塞およびクモ膜下出血に分類される。高血圧と関連が深いのは前2者である。脳梗塞の頻度は増加し、その発症年齢も高齢化している。脳卒中の結果として片麻痺、失語症、認知症など寝たきりの原因となりやすい後遺症を残す。
(7)心臓疾患
虚血性心疾患:心筋梗塞や狭心症などの冠動脈の硬化によって心筋への血流が阻害されることで、心筋障害をきたす疾患群をいう。高コレステロール血症:喫煙、糖尿病、肥満などの関与が大きい。
高血圧が持続すると心臓の仕事量が増えて、心筋が肥大してくる。肥大した心筋はさらに高血圧の負荷になり、血流も減少するために、虚血に陥りやすく、不整脈、虚血性心疾患の大きなリスクとなる。
(8)腎臓疾患腎障害
腎臓の糸球体は細動脈の束になったものであり、高血圧によって傷害される。糸球体は廃絶すると再生しないため、糸球体障害は残存糸球体への負荷をさらに強めることとなる。最終的には腎不全となり人工透析を受けなければならない。
(9)血管疾患動脈瘤
胸部や腹部の大動脈の壁の一部が動脈硬化性変化によって薄くなり、膨隆した状態を大動脈瘤という。内径が5cm以上になると破裂する可能性が高くなる。また血管壁の中膜が裂けて、裂け目に血流が入り込み、大血管が膨隆する状態を;解離性大動脈瘤 といい、生命を脅かす。
(10)閉塞性動脈硬化症
主に下肢の動脈が、動脈硬化によって著しく狭小化するか、あるいは完全に閉塞した状態をいう。数十メートル歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると回復する場合には、この疾患を疑うこと。
(11)眼障害
高血圧性網膜症や、網膜動脈・網膜静脈の閉塞症、視神経症など様々な眼障害を合併する。
  
<土屋さん講演要旨>
2016年5月、オバマ大統領が米国大統領として初めて広島を訪問した。その際、核爆弾使用に対する謝罪を求める声が一部に出た。日本は憲法9条で戦争放棄をうたい、如何なる事が有っても戦争をしない決意をした(自衛戦争さえしない決意)。
ところが、「個別自衛権(自衛戦争は良い)」から、最近は「集団的自衛権」にまで拡大している。即ち、憲法9条は「自衛戦争」は「認める」との解釈で全て が進んでいる。ここで「戦争とは何か?」、「その結果は何をもたらすのか?」をもう一度考えてみたいと思い、今回2つの資料を提案した。
 
資料1 「太平洋戦争(第2次世界大戦)」
(1) 太平洋戦争(第2次世界大戦)突入の経緯を振り返り、戦争の定義を考える。
(2) この戦争で日本は262〜312万人の国民が死亡した(全人口の3.67〜4.37%;表3)。
(3) 広島・長崎原爆投下では、合わせて約17万人が亡くなった。
(4) 戦争とはこれほどの国民の命を奪うものだ。また、戦争責任はだれにあるのか?

資料2「満蒙開拓団」と「シベリア抑留」の悲劇
[満蒙開拓団]
(1) 8月9日ソ連軍が満州に侵攻すると、日本軍は開拓民を置き去りにして逃げ出した。
(2) ソ連参戦時「満蒙開拓団」に約27万人いた。成人男子の働き手4.7万人は現地召集で兵に取られ、残り22.3万人の大半は「老人・女性・子供」であった。
(3) 男手を欠いた開拓民は逃避行に向かい、病死・戦闘・匪賊の襲撃・前途を悲観しての集団自決で約8万人が死亡した。
(4) 満州での民間人の犠牲者数は、東京大空襲・広島原爆投下・沖縄戦を凌ぐ。
(5) 孤児や若い女性は僅かな食糧と金で奴隷として、中国人に買われた(約1万人の残留孤児・残留婦人)。現在もその人達は生存し、その帰還は1972年(昭和47年)の日中国交正常化(田中角栄)から今日まで続く問題である。
(6) 長野県はこの中でも最大の3.7万人(約14%1)を送り出した。
(7)  阿智村には満蒙開拓平和記念館がある。

[シベリア抑留]
(1)65〜107万人が抑留され、過酷な強制労働(満足な食事・休養が与えられず)で5.3〜34万人が死亡した。
(2)1947〜1956年にかけて、抑留者47.3万人の帰国事業が行われた。最長11年抑留された人もいる。

太平洋戦争の総括
[1]天皇の戦争責任。
[2]憲法9条と改正問題(自衛権を認めるのか、認めないのか?)→戦争する限り犠牲者は出る。

以上 土屋記


第十一回:2016年9月24日(土)

参加者:小粥、青木、野本夫妻、白田、土屋、寺澤、小笠原、西澤、(9名)



西沢氏撮影

<野本「酒の強い弱いは遺伝子によって決まる」>

体内に摂取されたアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素でプロトンがとれてアセトアルデヒドになる。このアセトアルデヒドは更にアセトアルデヒド脱水素 酵素(acetaldehyde dehydrogenase:ALDH)により酢酸になる。日本人の半分はALDH2を作る遺伝子が変異しているため、対立遺伝子の組み合わせによって3 つの遺伝子型が存在し、これに応じて酒に対する強さがいろいろとなる。

<青木「腸内環境を整えて不調を解消する10の基本」>

<野本「腸内細菌と各種疾患」>

日本医事新報No.4807 2016.6.11特集「腸内細菌の臨床応用の可能性

<白田「米軍占領下の沖縄」>

豊下樽彦「集団的自衛権と安全保障」岩波2014の紹介。

なぜ日本だけが世界に前例のない戦争の放棄を明記した憲法をもっているのかというと、戦争責任のある天皇と天皇制を守るために必要だったということを理解している国民は少ない。

逆にいうと天皇制を残して9条を削除するのはバランスが悪い。

象徴天皇としてはその権限をこえてマッカーサーに意見を述べているのは外務省松井課長や寺崎英成御用係の小六で明らかになっている。いわく

天皇:日本の安全保障は4大国が拒否権を持っている国連の極東委員会のようなものは困る。アングロサクソンの代表の米国がイニシャチブをとらないと。

マッカーサー:日本はいかなる軍備を持ってもそれで安全保障を図ることは出来ない。日本を守る最も良い武器は心理的なもので、平和に対する世界の輿論である。

天皇は米国が沖縄および他の琉球諸島の軍事占領を継続することを希望している。

さて平成天皇はリベラル保守であり、宮中リベラル人脈によって担われている。「お気持ち」は象徴天皇制をどう考えるのかという政治への問いかけであ る。宮中リベラル人脈とは女性天皇容認に熱心に取り組み、反原発を主張した小泉純一郎・細川護熙、憲法学者の樋口陽一東大名誉教授、左派思想家柄谷行人らである。 そもそも象徴天皇制は平和憲法とセットであり、平和憲法やめるなら、象徴天皇制も不要なのではないかとの思いが「お気持ち」の表明となった。

トランプが大統領になれば日本は米国に捨てられるだろう。だれが大統領になってもこの流れは変わらない。結局、米国からセットでもらった天皇制と9条のう ち9条は風前の灯。ならばセットでリセットするのが道理のような気がする。というのも9条がなくなるとまた万世一系の天皇の権威を悪用する輩がでてくるか もしれない。日本会議がそのようにも見える。英国流の立憲君主国から逸脱する文化的な流れは無視してはいけない。


第十二回:2016年11月28日(月)〜29日

三島・大仁・修善寺・韮山周遊



第十三回:2017年3月18日(土)

参加者:小粥、青木、野本夫妻、白田、土屋、西澤(7名)



西沢氏撮影

<野本「日本人の寿命」>

2015年の日本人の平均寿命は男80.75歳、女80.99歳

死亡原因は悪性新生物(癌)374,000人、心疾患193,000人、
肺炎114,000人、脳血管疾患107,000人、で肺炎が増えている。

癌がなくなれば平均寿命は男3.78才、女2.92才伸びる。

癌、心疾患、脳卒中の三大死因がなくなれば平均寿命は男7.16才、女5.88才伸びる。


<野本「老化はなぜおこる」>

老化理論には「プログラム説」と「障害蓄積説」がある。

胸腺や卵巣はこの「プログラム説」で説明できる。テロメアが分裂回数を記録。生殖細胞や癌細胞は
テロメアを再生するテロメアーゼという酵素が活性化されている。Henrietta Lacksという女性の癌細胞Hella細胞が例。テロメア合成酵素阻害剤が抗がん 剤になるかも。

「障害蓄積説」はスーパーオキサイドが原因。白内障が例。


<野本「老化を防ぐ試み」>

人生における総摂取カロリーと寿命は逆比例するという荒っぽい話が科学的に証明された唯一のものだという。

私としてはカロリーといっても糖質を中心とするか、脂質を中心とするかに差異があると言う説に従い糖質制限、ケトン食を実践している。本当なのか知りたい。

「過度のストレスを避ける」が有効。これは黒沢明が親爺の郷里の秋田の山奥に遊びに行ったとき、ある百姓家の主人から聞いた言葉、「こんだあばら家さ住んで、こんだもの喰べて、なにが面白いと思えども、生きてるつうことは、なんとも、面白いもんだな」がヒントになるかも。

ビタミンA、C、E、βカロテンなどの抗酸化剤の服用はかえって老化を促進との知見あり。

抗酸化サプリメントは保険の対象にならず、コスト的に有効でないばかりか逆効果。抗酸化食物から直接取った方が有効。商業主義に踊らされる愚は避けたい。

人工透析の費用は1回50万円だが、患者負担は1万円と言う話が印象に残った。


<青木「人工知能について」>



<土屋「哲学者加藤尚武の『死を迎える心構え』」>

いきなり全生物界では寿命を持たない方が圧倒的に多い。原核生物は寿命を持たず、真核生物は寿命を持つものと持たないものに分かれた。人は進化の過程で寿命(死)を持つ方に進化した。ではじまる。

確かに微生物は原核生物であり、栄養素が無限にあり、排泄物が環境に蓄積しない限り、分裂し、個体数も増え続ける。だが栄養素が枯渇するか排泄物で生息環 境が阻害されれば増殖はとまって永遠にふえることはない。微生物個体に寿命はない。環境さえよければいつまでも生き続ける。しっさいには環境がよくなくなってほとんどが死ぬ。

多細胞生物は真核生物で構成されているため細胞が際限なく分裂して調和をバランスがとれなくなる のを防止するため、分裂回数をカウントしていて無制限に分裂することを防止してい る。人間の場合120才程度が限界。

<白田「皇室の風」>

現行皇室典範4条は「天皇が崩じたときは、皇後嗣が直ちに即位する」とあるだけで終身在位を明記した条文はない。なぜこうなったかは明治20年の高輪会議 の議事録を読めば分かる。この会議の出席者は伊藤博文首相、井上宮内省図書頭、柳原前光元老院議官、伊藤巳代治首相秘書官である。
井上と柳原の譲位の選択肢を伊藤がつぶそうとしたとき、柳原がならば終身在位もついでに削除したらと提案してきまった。これは柳原の深謀であったという解釈を弁護士の斎藤雅俊が書いている。


第十四回:2017年7月15日(土)

参加者:野本夫妻、白田、土屋、寺澤、小笠原、西澤、小粥、青木、加畑(10名)


<富岡会の主人の野本氏の遺伝子の話>

ゲノム= 遺伝子=染色体=DNA=RNA

歴史は1865年のメンデルのえんどう豆の研究にはじまり、1953年のワトソンとクリックのDNAの二重ラセン構造の提唱で完成。

染色体は光学顕微鏡でみれる。ウィルスはDNAそのものだが、人間の染色体より簡素で小さいため電子顕微鏡でもみえない。みえるのは細胞内小器官まで。DNAの二重らせん構造はX線回析初めて推察できる。ワトソンとクリックはロザリンド・フランクリンが撮影したX線回析像の十文字模様からDNAの二重ラセン構造を推定したということになっている。実はロザリンド・フランクリンが先にこの結論をだしていたのだが癌で早く亡くなったので、機会を失っただけ。ほんとの名誉は彼女にあるのだ。

DNAは2m位の鎖状の分子だが、ヒストンというタンパク質に巻きついてクロマチンという粒子になり、この粒子が互いに凝集して光学顕微鏡でみえる大きさになる。染料に染まるので染色体と呼ばれる。

DNAには遺伝情報を記録した部分と意味が分からない部分(イントロン)がある。

45億年前にDNAやRNAがどのように合成されたのかという謎にたいする最新の回答はTNAというものがある。

仲間の鳥博士の山岸氏が遺伝子解析で「オシドリは浮気する」ということを証明した。その手法は巣に落ちている雛の羽毛と両親の羽毛サンプル中のDNAを、PCR法で 増殖し、電気泳動のパターンから塩基配列を決め、コンピューターで比較して両親以外の遺伝子が混入しているのを発見したのだろう。この行動は人間 の夫婦にとっては裏切りで夫婦関係は解消に向かう。だが、進化論からいえば鳥という種の繁栄にとって遺伝子交換を広範囲におこなうことは悪くはないので 残った習性だろう。

遺伝子組み換え食物が 忌み嫌われるのはなぜかとの質問があった。遺伝子組み換え食物そのものに危険性があるわけではない。問題は特定の除草剤に耐性のある作物を遺伝子組み換え で造って除草剤まみれの作物を育てることによりその除草剤が我々の口に入るのがこわいのだ。除草剤はベトナムでも証明されたように催奇性がつよいのだ。米 国のモンサント社がグリフォセー ト除草剤に耐性のあるダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタの種子を販売して暴利をむさぼったとして非難されたが、グリフォセー ト耐性のスーパー雑草の出現でこの戦略は崩壊し、モンサント社は身売りしてしまった。

クリスパー・キャス法(CRISPR-Cas9)で ゲノム編集も可能になった。CRISPERとは原核生物における一種の獲得免疫系として働く座位である。Cas9はCas遺伝子群の一つ。ただ癌の治療のために使えるかと言えば、分化してしまった体細胞隣の細胞と協調して活動するようになっている。いわば隣の細胞を忖度していきているわけで、その遺伝子を 編集したところでその遺伝子を隣の細胞に受け渡す方法がないので役に立たない。どちらかというと生殖細胞のデザインということになるが、倫理的に問題だろう。クラウス・シュワブが「第4次産業革命」でクリスパー・キャス法のおかげでデザイナー・ベイビーも理論的には可能となったと書いているが倫理的な問題は未解決だ。

第四次産業革命で取り上げられた話題にIoTとクラウドがある。IoTはInternet of Thingsのことで、人と人を繋ぐインターネットを物にも拡張して、物と物の自律的通信を確立して、物と物が情報を共有しながら独自に動く世の中を 作ろうという革命のことだ。しかしこれが成功すると人が働く場が無くなり、第一次産業革命ではじめた社会保障制度は機能しなくなる。AIに人間全員が敗け る第四次産業革命時代には集団的で抜本的な政策、すなわちベーシックインカムに 切り替えるしかないと指摘している。クラウドとはインターネットにつながるノードのなかでデータを収納したり、検索サービス。演算サービスを提供するサー ビスのこと。GoogleスマホなどはGoogle Driveという無料サーバーを提供している。スケジュール表、メール、撮影した映像など自動的にクラウドに保存してくれるのでスマホを紛くしても、データはPC経由で利用可能となる。


<土屋氏が長野西高ディジーの会が国立がんセンターの医者であった宮沢直人を招いておこなった公演「癌とどうつき合うか」の紹介>

現在「癌=死」のイメージは去った。ただし国民皆保険がつぶれそう

抗がん剤は医者は消極的

特養は5-10年待ちでかつ高価

延命の中止など尊厳死の方向。外国ではPhysician Assisted Suisideも試みられている。


<白田氏の米国在住内科医の「不養生のすすめ」と「認知症患者の人生の終え方」の紹介>

「不養生のすすめ」では日本人の身長は1960年代初期生れをピークとして再び短くなっていると指摘。一般に身長の高いほど心臓病、脳卒中、認知症を患う可能性が低い。由々しき事態だ。これは食事に偏りがある証拠だ。

国立がんセンターのチームが「欧米型の食事パターンでは全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡が低下することを発表している。日本では「欧米型は不健康というあやまてる信仰」があるが、私はデイブ・アスプリーの「最強の食事」 や宗田哲男の「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」を読んで 国立がんセンターの見解が正しいと考える。というわけで、私は主菜をたらふくたべて主食すなわち(米などデンプン食)を制限する縄文食に切り替えて体調は好調。日本人は弥生時代以来、堕 落して米を至上の食べ物と刷り込まれ、短躯、短命になっているのだ。特に朝からロイシンという必須アミノ酸を摂取するために卵焼き、ミルク、ソーセージというイングリッシュブレッ クファストにしている。ただしパンは食べない。外出してもコンビニではおにぎりは買わず、カツ・サンドにしている。

「認知症患者の人生の終え方」は要するに尊厳死のこと。そうなっては遅すぎる。認知症にならない方法はないか。ある。アミロイドタンパクを体外に排せつするために、 レスベラトールというポリフェノールを摂取するようにする。赤ワインはアルコールを含むので、赤皮付きピーナツを食後必ずとる。


<青木の「エネルギー問題の現状」>

オックスフォード大のエネルギー経済の学者Dieter Helmは「バーンアウトで」化石燃料は充分あって、価格は今後も下がり気味だが、それでも技術革新で再生可能エネルギーが勝つという御宣託である。

われわれより前の世代は二次電池は電極と言う微細構造が目つまりするので物にならないというものだった。私も同じ意見であったが、最近、もしかしたらと期待するように なった。でないと電力の垂直統合が残ってしまうためと、化石燃料依存で、温暖化は兎も角、価格高騰ということになるからだ。

東北電力で風車担当だった土屋 氏はしかし技術革新の可能性にかなり疑問を呈した。これが大電力内部のメンタリティーなのだろう。挑戦者は皆敗退する。そして自分らは安泰というわけだ。

January 30, 2014

Rev. July 18, 2017


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