■休日の好天に恵まれた昼過ぎである。自宅を出て地図を片手に旧街道を訪ねた。有馬川沿いに山口町名来の西宮市の北の境界まで歩く。旧街道とおぼしきあぜ道を辿った。丘陵地に向かってあぜ道は徐々にか細くなる。耕されることのなくなった荒れはてたままの棚田が辛うじて昔の面影をとどめている。
■あぜ道の向こうから耕運機に乗った同年輩のお百姓らしき人がやってきた。目前に迫ったところで声を掛けた。「この辺りに山口と三田を結ぶ昔の街道が在った筈なんですがご存知ないですか」。くだんのお百姓さんは、耕運機から降りて煙草に火をつけながら「小学校の頃この道を通り鎌倉峡に遠足に行った」などと昔話を始めだした。思いがけず昔の思い出を久々に話せる格好の相手を見つけたという気分なのだろうか。街道を行き交う昔の旅人たちも挨拶を交し合い、ふとしたきっかけで話し合い、袖すり合ったのだろう。国道では決して味わえない「街道」の情緒を味わった。
■西宮市のHPに「