ダイちゃん事件資料集−編集後記
編 集 後 記

 みなさんのご支援のおかげで、ダイちゃん事件は昨年末、広島地方裁判所から和解勧告が出され、事実上の勝訴といううれしい終結をみました。今年の2月にはFさん待望の里帰り、ダイちゃんにとっては初めてのフィリピン訪問が実現。3年前に始まったダイちゃんを支える会もようやく解散しようとしています。

 それでは「どうやって終わろうか?」と、支える会では何度も議論しました。報告集会をしようか、発展的解消にして別の支援をはじめては、などなど。しかしひとつ、信念がありました。「きちんと終わりを報告したい」ということです。市民団体による支援活動にはそれぞれのスタイルがありますが、「中には、支援を呼びかける時は一生懸命呼びかけるけれど、終わる時にはなんとなく尻すぼみで終わってしまうのもあるよね」という話が事務局会議で出て、私たちは、なんとかけじめを報告して終わりたいと思うようになりました。

 そして、今回こうして資料集をお届けして解散にします。資料集発行という形にしたのはいくつか理由があります。まず、経済的な問題です。支える会にはあまりお金がありませんので、盛大に報告集会をしてちょっとビールとおつまみでも出そうものならばそれだけでお金がなくなってしまいます。それに、皆さんからのご寄付を飲食に消してしまうのもしのびないことです。もう一つの理由は、せっかく事実上の勝訴を勝ち取った裁判なのだから、裁判記録を含めて「価値ある資料」を残したいと思ったことです。外国人の関わる行政訴訟はいくつかありましたが、ダイちゃん事件のように勝訴を手にするのは珍しいほうだそうです。それならば、どのようにして勝訴が勝ち取ったのか、その経過をできるだけ詳しく資料に残すことも大切な仕事なのではないだろうかと思いました。こうして資料集としてまとめなければ、5年か10年先には資料は散逸してしまうでしょう。

 どうか私共の趣旨をご理解いただき、この資料集をお収めください。そして、皆さんの知的好奇心にふれることができたら、また書棚の片隅に置いて今後の外国人支援活動に生かしていただけたらと願ってやみません。

1997年9月12日

ダイちゃん事件資料集編集責任者 高畑 幸
ダイちゃんを支える会事務局長 崎阪 治



     
●ダイちゃんを支える会の紹介●

崎阪 治(さきさか・おさむ) 事務局長

ダイちゃん事件の第一発見者。外国人の人権問題に取り組む。

広瀬正明(ひろせ・まさあき) 渉外担当

在日外国人、外国人登録法の問題に関わる。

松村千賀子(まつむら・ちかこ) 会計担当

ダイちゃんを支える会発足当時は、里親運動に関わっていた。

高畑 幸(たかはた・さち) 広報担当

大阪市立大学大学院生。在日フィリピン人の問題に関心を寄せる。


●国際婚外子の国籍を考える会の紹介●

蔵本正俊(くらもと・まさとし) 世話人代表

女の再婚禁止期間違憲訴訟元原告、裁判遅延違憲訴訟原告、「差別と人権を考える会」代表、「竹原部落解放研究所」研究員、「民族差別と闘う広島連絡協議会」会員、「毒ガス島歴史研究所」幹事。



|目次|事件の流れ|発刊にあたって|広島での活動状況|日弁連の警告書|日本人の実子を養育する外国人親に定住者の在留資格|
|戸籍課への事務連絡|メッセージ|ある昼下がり|ライブラリー|訴状など|意見書|新聞記事|支援ニュース|また胎児認知届けの受付拒否