News >「仕事日記」2006年2月


2月1日(水) デュークエイセス 東京文化会館小ホール
随分曲数が多いと思っていたが、通してみるとすっきり気持ちよい。2時間丁度に収まりもよく、和田誠演出の妙に感じ入った。デュークもよく声が出てよかった。阿川さんかわいい!との声しきり。

二次会には和田さんと斉藤晴彦さん。珍しく政治向きの話題。
2月2日(木) ゼーガペイン録音(アニメ劇伴)
コンポーザー 大塚彩子

ストリングス 柳川寛子グループ(弦カル)
柳川さんはピットインでのポンタボックス+飛鳥ストリングス>佐山ボックスの時にセカンドで入っていたとの由。懐かしい話に花が咲く。

ギター 竹中俊二 オールラウンドに上手い。今時の売れ筋か。

ベース 菰渕??? 噂は聞いていたが実にうまい。5弦エレキベースのサウンドにしびれた。アコースティックも堅実なおかつイマジネイティブ。がっぷりセッションをしてみたいものである。

ドラム 藤井??? 久しぶりに会ったが着実に活躍しているようで嬉。着実でタイトなドラミング。

ドラム(後半)アーミン 主にロックっぽい曲に参加(その場合僕は休み)。実にヘビーなビートを厭味なく繰り出す。ミュージシャンの地力というものは上がっているのだな。相互のやり取りも和気藹々で、新しい世代が着実に世間を動かしている感有之。
2月3日(金) 伝兵衛DUO 浜松・伝兵衛堂
高橋エイスケ君が開いた薪ストーブ屋さんのオープン記念ライブ。ログハウスに巻きストーブがあかあかと燃えて雰囲気すこぶる好し。佐藤さんの手塩にかかったアップライトもウッディな空間と相俟って気持ちよく、何よりもお客様のリラックス具合がよい。ご近所さんばかりと見えて自転車が目立った。ここんちを手がけたという正人君が愉快だった。三沢のマサトとはちがってマサヒトと読む。読みは違えどキャラも似てるし、少しく聞いたご不幸も似ていることから、名前には何らかの呪縛力があるのかとも。

伝兵衛CDのジャケットその他デザインがあがってきた。素晴らしい出来。和田さんのイラストも感激モノ。
2月5日(土)
○ 猫や猫 かの人の墓 どこにある
○ 冬曇り 月と見まごう 真白き太陽
2月8日(水) 伊太山伝兵衛商会 東京倶楽部
伊太地山伝兵衛
浜中祐司
石井康司
村上PONTA秀一(!!)
種子田博邦(!!!!!)

横浜ホンキートンクブルース
ウエスが聞こえる
星の数ほど
雀荘のえっちゃん
嘘が八個
Travelin’
Gee Baby Ain’t I Good To You
嘘つきダイヤモンド
Soul Shadow
夢はいつも
天国行きのバス
あと一杯
いつものズブロッカ
メデューサ
またしてもハイウエイ
???
2月9日(木) M’s+TOKU・川嶋哲郎 座間
You And The Night And The Music
Yesterdays
The Girl From Ipanema
Ladies In Mercedez(+2)
Autumn Leaves(+2)
Falling In Love With Love
Extended Play(TOKU Vo)
Dead Zone(+2)
All Blues(+2)
How High The Moon~Ornithorogy~Chicka Dee
Spain(+2
2月10日(金) M’s ジャズ講座 千葉市民会館
 
2月13日(月) 瀬木レコーディング 銀座オンキョーハウス
ナスカ展のための音楽。科学博物館を皮切りに全国を回るそうだ。鬼怒無月の硬質なきらめきもよかったが久々のヤヒロトモヒロに感動した。アプローチ・テクニックも完璧だがなんといってもグルーブの持続具合がすごい。ダビングの様子を見ていたらコンガを叩いている両手の上がる位置が横隔膜辺りだったり首の付け根だったり、場面ごとに一定位置なのであるな。ふと気付いて何気なく見ていたのだがゾクゾクと震えが来てテイクを録り終わるまで目が離せなかった。坂本昌人も低く大きいうねりを出してよかった。まい泉のカツサンドの差し入れがありがたい。
2月14日(火) M’s+トリオリベルタ バレンタインコンサート ミューザ川崎
冒頭の石田氏とのデュオが良かった。その後、一部をリベルタが務めて休憩。二部のM’s はリチャード・ロジャースを集めてMy Funny Valentineに持っていったところで石田氏に参加してもらう。これはビルエバンストリビュートの演奏を採譜して再構築したもの。そのあとサックスとピアノにも入ってもらって(6人全員になる。ピアノ2台)My Favorite Things。これはM’s2ndのピアノパートを振り分けたりハモらせたりカノンにしたり。

いずれも自分のアドリブソロを既成の楽譜にしてクラッシックミュージシャンに弾いてもらうわけで、実に楽しい作業だったが、いつものM’sほど演奏は盛り上がらない。企画倒れか?

終演後、トクお勧めのライブを聴きに吉祥寺サムタイムへ。アトランティックから来ているピアニスト・タカナさんとボーカルのレナさん。米国在住日本人ミュージシャンは多いが、アフリカ系ボーカリストに米国内だけでなく欧州や日本にも連れられていく程の信頼を得ているというのは凄い。日本人として嬉しいことである。古びたナショナリズムかも知れぬが。

そしてそのバッキングぶりたるや実に見事なのである。歌詞の深い意味とその時の歌手の込めた意味合いや感情まで汲み取って、なおかつ当て振りに堕さぬコントロール具合がリズムセクションにも伝わって、リードするというよりはついて行くものがそうならざるを得ないほどにピアノからほとばしる。これは歌いやすいだろう。ドラムはセシル、そしてベースがなんと米木康志だった。別れを告げられた後も愛してやまぬこの男に本田さんの逝ってひと月の後に邂逅したことですでに感慨の起こっている上に、あれこれと話して変わらぬ純粋さに触れて涙ぐむ思いだった。塩谷哲もいてトクとともに、ミュージシャンの集まりというよりはファンの集いの様相。
2月16日(木) 矢野沙織クァルテット 銀座スィングシティ
矢野沙織(As)
安ヵ川大樹(B)
大坂昌彦(Dr)

ジャズは楽しいなぁ、と心から感じながらずっと演奏できた。色んなおかずに箸を出してどれもが美味しくていちいちムフムフと唸り笑いをしていまうようなことが稀にあるが、大坂の一拍一拍が、その全てのフレーズが、そのように耳に美味しく心地よいのである。安ヵ川の安定しつつも時に斬新なアイデアの飛び出す様子やそれ以上に基本的にウッディなコクのある音色が、埋め尽くされた丁度いい広さのライブ空間を支配する。沙織嬢もあくまでアグレッシブなプレイで好感が持てる。真剣に、そして謙虚に演奏に立ち向かえば、一拍ごと、一秒ごとに幸せがやってくる。

甲斐さんに去年都合していただいたケン・バーンズのジャズヒストリーシリーズの影響でここのところサッチモのウエストエンドブルースばかり聴いている。ピアノはアールハインズ。とてつもなく良い。Ebのブルースで、Dの音が実に効果的に使われているというほんの一例をとってみても “ブルーノートによる哀愁”などという軽い一言ではとても済ませることの出来ない深くて高度な出来事が20世紀初頭の時点で行われていたことに思いをはせるべきだと思う。

最近発掘されたという“Theronious Monk with John Coltrane at Carnegie Hall”も素晴らしい。この50年間ジャズはなにをしていたのか、という気持ちになる。勿論ビッチェズブルーに至ってそこからまた始まることどもは起こっているのだが、サッチモからコルトレーンに至る高貴で孤高な独特の属性というものが薄れてはいると感じる。
2月17日(金) マサコ(サーカスの叶正子)打ち合わせ
M’s のゲストに出てもらうマシャーンとレパートリィなどの打ち合わせと音合わせ。大坂昌彦のExtended Playと伝兵衛の“すれ違う時”のどちらか、と思って提示しておいたのだがどちらも歌ってくれると言ってくれて嬉。マネージャーの藤井氏とも長年の付き合いで気心の知れていることでもあり安心。

どうも僕は仕事の進み具合や現場の雰囲気のほうを優先するのが好きである。それは来るべきステージのクォリティを高めることにつながるし、今回の出し物にも勿論自信はあるのだが、音楽と事務作業の天秤が逆に振れる嫌いについては留意しなくてはナラヌだろう。
2月20日(月) 矢野沙織 インターFM収録 東京駅前 丸ビル1F カフェ“イーズ”
矢野沙織(As)
山下弘治(B)
高橋徹(Dr)

つい先日のスィングシティでのレパートリィが主だったのでまた冒険が出来て嬉しかった。

山下・高橋のリズムセクションもやりやすかったが、大坂・安ヵ川ラインとは違ってピアニストを通り越して場をつくって行くところが少なく、つい僕が引っ張ってしまう場面が多くなった。現在の課題である落ち着いたダークなスイングフィーリングとは対蹠的な(それでいて本来の姿なのだが)ピアニストだった。矢野沙織はバックのメンバーによっての変化はさほどない。
2月21日(火) ヤマハ千葉店先生
アドリブの到達点ということで試みてみたら案外に授業が進んだ。
2月22日(水)
司馬遼太郎“坂の上の雲”読了。3〜4回目の通し読みだが、そのたびに景色が違うしますます胸にしみる。

(以下あとがきより)
○フランス戦術(幕府が陸軍の指導を仰いだ)はナポレオンが創造したものだが、それを実施するについてはナポレオンという天才によってのみその玄妙さを出しうるものだといわれていた。ナポレオンが去ってその戦術が形骸としてフランスに残った。フランス陸軍はそれを継承したが、形骸の研究だけにひどく算術的で、ある面では学理的であり、凡庸なものがやればほぼ失敗するといわれていた。ドイツ戦術(明治政府が教えを請うた)を開発したのはメッケルの師匠である老モルトケであったが、この方式は実際的で観念性がほとんどなく、その原理ややり方を理解してしまえば凡庸な人間でも一定の効果を上げうるというものであった。

宮本武蔵と千葉周作の比較でも同じようなことを読んだおぼえがある。バークリー理論とその多くの卒業生に考えが及んで面白い。ヤマハの教育法についてもいろいろ考察は出来る。

凡庸なもの向きの教育の中からでも、資質の或るものはちゃんと頭角を現すことは大坂昌彦や上原ひろみなどをながめればすぐわかる。その逆はなさそうだが、ナポレオン向きの教育をナポレオンの資質を持った若者が受けてもナポレオンになるかどうか。考えて行くとどうも平たい教育のほうに軍配が上がりそうだ。

だがあえて僕は本文にあった秋山真之方式に組みしたい。
○ 戦略・戦術というものは人のものを習ったり借りたりしてもとても役に立つものではない。古今の資料を徹底的に研究し、独自の理論をおのおのが作り出して初めて実用に足るものになる。

以下佐山言う。
(1)和声法の習得と聴音能力の獲得。これを基礎能力として
(2)古今の名作を自分で(解説書ではなく)分析
(3)アンサンブルの経験値を限りなく上げる。
注:(1)の基礎の中にメトロノームの訓練も入るべきであったかどうか。少なくとも現在僕はとても苦労している。
(3)だけの積み重ねで相当なレベルには達するが後になるほど経験則のみに縛られるうらみがある。
2月23日(木) ヒダノ修一 横浜・ドルフィ
久しぶりに電車で行ったら東横線の桜木町駅がなくなっていて驚いた。横浜からタクシー。リハーサルが案外に早く終わり食事をしようと外へ出ると目の前に定食もあるコーヒー屋があって便利。いままで気付かなかったのは早仕舞いするのだろう。

確か3度目だと思うが音環境が今迄で一番良かった。音を出すほうも処理するほうも慣れてきたのだろう。
2月24日(金) スイングジャーナル取材
インタビュアーの桜井隆章さんとエレベーターホールでばったり。受付を素通りして喫煙室へいくと、駿河氏がいる。84年のビクターとの契約以来の中で、僕の若い頃の悪友高梨(B)の妹のご主人でもあるがジャズ研のベーシストからジャズレーベルの制作に入ったいわば正統派。こういう人がいることは僕にとってもビクターにとっても心強いのだが、今は宣伝部でクラッシックや演歌なども押しなべて理解しなければならず、お忙しい。昔話から今後の相談までじっくりと話して収穫大であった。

インタビューはスムーズだったが、若手に対する意見など聞かれてすらすらと答えるうちに、ほとんどが大坂昌彦からの受け売りであったことに気付いたが時すでに遅し。さすがに卓抜なご意見で、と誉められたことは大坂に報告しておいた。
2月25日(土) M’s 椎田町改め築上町文化会館コマーレ スペシャルゲスト 叶正子
Creopatra’s Dream〜Anthony’s Scream
MC
Peri’s Scope
The Girl From Ipanema
MC
Yesterdays
Falling In Love With Love
ミスター・サマータイム(M’s+正子)
MC
夜がくるまえに (M’s+正子)
ワルイクセ (M’s+正子)
MC 
すれ違う時(M’s+正子)
MC
Extended Play(M’s+正子)
Autumn Leaves
On A Clear Day
Spain
Antonio’s Song(M’s+正子)
出演者全員で St. Thomas

地元バンド、東京からの女性トリオ(鳥尾さん、というバンド名:なかなかイカすネーミングではある)に続いてのM’s。ジャズフェスティバル形式。こういうワンステージ勝負は好きなのだが、歌へのはいり口はスムースでも一通り歌伴がすんでインストに戻る時のモードチェンジがうまく行かない。

ゲスト嫌いのM’sではあるが正子様はキャラも実力も申し分ない上にお客様や主催者へのプレゼンテーションとして丁度イイ位置づけのアーティストというか芸能人、あるいはその中間なのでやりやすい。南佳孝さんをゲストにというコンサートもスイメンカで進んでい、バンド活動の幅を広げるにはワークショップを取り入れる案とともに探ってみてもいい方向かも知れぬ。くれぐれも旧PB(ポンタボックス)の轍だけは踏まぬよう銘記可有之。
2月26日(日) バーンスタインリハーサル(ピアノ二台による)松濤 高木クラビア
いいピアノで弾くと1〜2割は上手く弾けるものだが、伴奏の二人(二人がかりなのである)がよく練習を積んでくれていて、曲の全体が半分くらいは見えた、、、気がしたということは朧気ながら姿を表した程度なのであるからますます気を引き締めて可励。
2月27日(月) おかあさんといっしょ ジャコピ天女に恋をする CR506
堀井勝美・梶原順・平原???(Reeds)・鳴瀬喜博・石川雅春
ここのところ気にして訓練中のメトロノームとのやりとりという目と耳で石川を聞くとすさまじく正確でその針の穴を通すような点と点の間のスピードがすごい。こんなヤツと何年もやっていたのにオレは何をしていたのだという気持ち。これは大坂昌彦と演奏していても折に触れ、ポンタやジョニーのような日本一ばかりとの過ごし方への後悔というよりは申し訳なさに歯噛みをする思いに囚われることが多い。劣等意識でなく前向きの反省材料にするには少々力がいる。

ニュース音楽録音 仙台NHK
東北新幹線に飛び乗ってNHK仙台局へ。瀬木が担当するニュース音楽のレコーディング。高橋さんが待ち受けてくれていて嬉。ここでもメトロノームに合わせるだけの単純な8分音符アルペジオが嵌って行かず、一瞬落ち込むが、ひとテイク“アア、コレカ”というのがあったので1mm成長というところか。

TDを待つ間宿で寛ぐが3時間近くなっても連絡が来ず、諦めて一人で出かけたところへ終了のお報せ電話。Goccoで鳥鍋などいただく。ここん家はどんなものでも美味しい。やっこも出し巻き豆腐も。十四代を高橋さんと4合ほど飲む。間に飛露樹というのをはさみ、こちらも喉越しはよかったが、コクとまろみでこの夜は前者に傾く。
2月28日(火) 名音ジャズフェスティバル 中川文化小劇場
“佐山雅弘を迎えて”という大層なタイトルをつけていただいて恐縮しきり。

小浜さん(Ts)と初対面を果たし、黒田和良(Dr)とやぁやぁ、水野(Pf)と久闊を叙し、日景氏(B)とはどこかで会ってるはずだがまぁ改めて、とこれもよくあるパターンではあるが、学生バンドでドラムを叩いている青年が中学二年の時に一色町でのPB(ポンタボックス)を見て感激していたものだと言う話がなんといっても嬉しかった。

< Last Month▲page top Next Month >


2006年