秋尾敏の俳句


 2024年の作品  2023年の作品
 2022年の作品  2021年の作品 
 2020年の作品  2019年の作品
 2018年の作品  2017年の作品 
 2016年の作品  2015年の作品 
 2014年の作品  2013年の作品
 2012年の作品  2011年の作品
 2010年の作品  2009年の作品
 2008年の作品  2007年の作品
 2006年の作品  2005の作品
 2002~2004年の作品  2001年以前の作品
第5句集『ふりみだす』
第4句集『悪の種』 第3句集 「ア・ラ・カルト」
第2句集 「納まらぬ」  第1句集 「私の行方」

秋尾 敏の俳句 2025年


軸4月号 重機病む
而今の一投春光の遥かに煙
傾ぐ電柱遠く春雪の雲は満ちて
三月を三月として重機病む
朧の夜紙ストローの後味は
春眠はあぶくとなって海の底
     守谷吟行会 
春寒の仁王草鞋をかき抱く
     宮坂静生句集『鑑真』に
春陰の鑑真像が夢を告ぐ
     世田谷吟行二句
戸袋に捌(は)けてゆきたる春障子
選択になき大学や初桜

軸3月号 乱気流
海が泡立つ菜の花の乱気流
春北風夢が大人になっている
見守りぬ俳句は薄氷のようで
舟歌を半音下げて朧の夜
峡谷の蛙はじめて人に遇う
つみまし草出汁に沈めるふと無言
風向は自分で変える八重椿
ドローンは去り戦場の草青む
水底を歌う少女はつむじ風

軸2月号 針落とす
幸せの涙だろうか日向ぼこ
冬ぬくし雲は悟りの髭垂らす
冬の川無実の罪という翳り
冬ざれのものさし少し縮んだか
寒雷やベートーヴェンに針落とす
木枯に削りだされて妙義山
冬の月昔の鉄は音がよい
落葉みな黒ずんでおり総選挙
進路は消防音楽隊春を待つ

軸1月号 博多独楽
天保の長屋が見えて初明り
博多独楽思いの糸を昇りゆく
吉祥天か風花と名付けしは
肩書きのない空缶や木枯来
括られて古着は霜を吸い始む
冬の陽炎黒塗りのベンツから
複写機が喉を詰まらせ年の暮
縦横に揃うバンドの白い息
王国は崩れ民意の空っ風
聖人を待つ歳晩の譜面台

角川書店「俳句」1月号 切字論
元朝や四半世紀の薄埃
後期高齢初東雲に染まりゆく
嫁が君影の長きは遠目にて
読初に巻き付いてくる切字論
鶏日の占卦は混沌の微光
初富士や異国は何を見て畏る
初薺電子ドラムのパラディドル
初霞かなデイヴィッド・サンボーン
押込を封じていたり鳥総松
松過の一句が古び雨催