小倉百人一首 注釈


歌本文は、出典の勅撰集、百人一首の各種古写本・注釈書、定家撰の秀歌撰などから、原態を復元することをめざし、独自に作成したものです。一般に流布しているカルタとは、一部の語句に違いがあります。また、歌の解釈に関しても通説とは異なる場合がありますので、ご注意ください。
各頁に掲載した歌人の画像は、江戸時代の百人一首歌留多をスキャナで走査したものです。WEBサイトや印刷物にご自由に使って頂いてかまいません。
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【もくじ(10番ごと)】
◆01天智天皇 ◆11参議篁 ◆21素性法師 ◆31坂上是則
◆41壬生忠見 ◆51藤原実方 ◆61伊勢大輔 ◆71大納言経信
◆81後徳大寺左大臣 ◆91後京極摂政前太政大臣



001 天智天皇 秋の田のかりほの庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ
002 持統天皇 春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天のかぐ山
003 柿本人麿 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 改訂
004 山辺赤人 田子の浦にうち出てみれば白妙の富士の高嶺に雪はふりつつ 改訂
005 猿丸大夫 おく山に紅葉ふみわけなく鹿の声きく時ぞ秋はかなしき
006 中納言家持 かささぎのわたせる橋におく霜のしろきをみれば夜ぞふけにける 改訂
007 安倍仲麿 天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも
008 喜撰法師 わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 改訂
009 小野小町 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
010 蝉丸 これやこの行くも帰るも別れつつしるもしらぬもあふさかの関

011 参議篁 わたの原八十島かけてこぎいでぬと人にはつげよあまのつり舟
012 僧正遍昭 天つかぜ雲のかよひぢ吹きとぢよ乙女のすがたしばしとどめむ
013 陽成院 つくばねの峰よりおつるみなの川こひぞつもりて淵となりける
014 河原左大臣 みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 改訂
015 光孝天皇 君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ
016 中納言行平 立ちわかれいなばの山の峰におふるまつとしきかば今かへりこむ
017 在原業平朝臣 ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは
018 藤原敏行朝臣 住の江の岸による浪よるさへや夢のかよひぢ人めよくらむ
019 伊勢 難波潟みじかき葦のふしのまも逢はでこの世をすぐしてよとや
020 元良親王 わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしてもあはんとぞ思ふ

021 素性法師 今こむといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
022 文屋康秀 吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
023 大江千里 月みれば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど 改訂
024 菅家 このたびは幣もとりあへず手向山もみぢの錦神のまにまに
025 三条右大臣 名にしおはばあふさか山のさねかづら人にしられでくるよしもがな
026 貞信公 小倉山みねのもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆきまたなむ
027 中納言兼輔 みかの原わきてながるる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ
028 源宗于朝臣 山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば
029 凡河内躬恒 心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花
030 壬生忠岑 有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし

031 坂上是則 朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪
032 春道列樹 山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
033 紀友則 久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ
034 藤原興風 誰をかもしる人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
035 紀貫之 人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける
036 清原深養父 夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ
037 文屋朝康 白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 改訂
038 右近 わすらるる身をば思はずちかひてし人の命のをしくもあるかな
039 参議等 浅茅生の小野のしの原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき
040 平兼盛 しのぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで

041 壬生忠見 恋すてふわが名はまだきたちにけり人しれずこそ思ひそめしか
042 清原元輔 ちぎりきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは
043 権中納言敦忠 逢ひみてののちの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり
044 中納言朝忠 あふことのたえてしなくは中々に人をも身をもうらみざらまし
045 謙徳公 あはれともいふべき人はおもほえで身のいたづらに成りぬべきかな
046 曾禰好忠 由良のとをわたる舟人かぢをたえ行方もしらぬ恋の道かな
047 恵慶法師 やへむぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋はきにけり 改訂
048 源重之 風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな
049 大中臣能宣 みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼はきえつつ物をこそ思へ
050 藤原義孝 君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひぬるかな

051 藤原実方朝臣 かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひは
052 藤原道信朝臣 明けぬれば暮るるものとはしりながらなほ恨めしき朝ぼらけかな
053 右大将道綱母 嘆きつつ独りぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかはしる 改訂
054 儀同三司母 忘れじの行末まではかたければ今日をかぎりの命ともがな
055 大納言公任 滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
056 和泉式部 あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな
057 紫式部 めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな
058 大弐三位 有馬山いなの笹原風ふけばいでそよ人を忘れやはする
059 赤染衛門 やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
060 小式部内侍 大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立

061 伊勢大輔 いにしへの奈良の都の八重桜けふここのへににほひぬるかな
062 清少納言 夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
063 左京大夫道雅 今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな
064 権中納言定頼 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木
065 相模 恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
066 大僧正行尊 もろともにあはれと思へ山ざくら花よりほかに知る人もなし
067 周防内侍 春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ
068 三条院 心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
069 能因法師 嵐ふく三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり
070 良暹法師 さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮

071 大納言経信 夕されば門田の稲葉おとづれて葦のまろ屋に秋風ぞ吹く 改訂
072 祐子内親王家紀伊 音にきく高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ
073 権中納言匡房 高砂の尾上の桜さきにけり外山の霞たたずもあらなむ
074 源俊頼朝臣 うかりける人を初瀬の山おろしよ激しかれとは祈らぬものを
075 藤原基俊 契りおきしさせもが露を命にてあはれことしの秋も去ぬめり
076 法性寺入道前関白太政大臣 わたの原こぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波
077 崇徳院 瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
078 源兼昌 淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜ねざめぬ須磨の関守
079 左京大夫顕輔 秋風にたなびく雲の絶えまよりもれ出づる月の影のさやけさ
080 待賢門院堀河 長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ

081 後徳大寺左大臣 ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞのこれる 改訂
082 道因法師 思ひわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり
083 皇太后宮大夫俊成 世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奧にも鹿ぞ鳴くなる
084 藤原清輔朝臣 ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき
085 俊恵法師 夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり
086 西行法師 歎けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな
087 寂蓮法師 村雨の露もまだひぬ槙の葉に霧たちのぼる秋の夕暮
088 皇嘉門院別当 難波江の葦のかりねの一よゆゑ身をつくしてや恋ひわたるべき
089 式子内親王 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
090 殷富門院大輔 見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色はかはらず

091 後京極摂政前太政大臣 きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣片敷きひとりかも寝む
092 二条院讃岐 わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわくまもなし
093 鎌倉右大臣 世の中は常にもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも
094 参議雅経 みよし野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり
095 前大僧正慈円 おほけなくうき世の民におほふかな我が立つ杣に墨染の袖
096 入道前太政大臣 花さそふあらしの庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり
097 藤原定家 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
098 従二位家隆 風そよぐならの小川のゆふぐれはみそぎぞ夏のしるしなりける
099 後鳥羽院 人もをし人も恨めしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は
100 順徳院 ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり

百人一首目次千人万首目次


更新日:平成16年7月14日
最終更新日:平成19年7月20日