Sclerocactus parviflorus Clover&Jotter1941             

スクレロカクタス・パルビフロルス(彩虹山・虹映山)
                                         
 パルビフロラスはスクレロカクタスのなかでも最も広範囲に分布している植物です。自生範囲はアメリカ南西部の4州が一点で接することで有名なフォーコーナーを中心に、コロラド、ニューメキシコ、アリゾナ、ユタの広い範囲に及びます。このため形態変異の幅も大きくて分類もいまだ諸説入り乱れています。球体の径は5〜13センチ、高さは5センチ〜30センチくらいまで、大きく育つものや地面になかば埋まって暮らすものまで様々なタイプがあります。稜は比較的とおっており、10〜13稜程度。花は径、長さとも3〜6センチくらいで、学名の「小さな花」はあまりあてはまりません。花色は基本はピンク〜紫ですが、黄花や緑花、黄〜ピンク〜紫のグラデーションをもつ多色花まで様々です。刺もまたしかりで、黒刺、金刺、赤紫の刺、それらが入り混じるもの・・・バラエティに富んでいます。自生地はおおむね標高1000メートル以上の冬季の冷え込みが厳しい地域で、ほかにほとんど植物のない粘土質の平原から緑の美しい木立のなかまで、幅広い環境に適応しています。おおくは、河川とそれに付随する地下水脈に依存しているようで、分布域も川沿いに広がっています。

 このように、生育する環境も幅がひろく顔違いも多々あるこの植物には、これまで様々な変種、亜変種、また別種などが想定されてきました。自生地ではそうした顔違いのコロニーが連続的に広がっており、おそらく生殖的にも混交しています。まさに適応放散の過程にあるこのような植物に、定型を求めることはそもそも難しいと云えますが、自生地を経巡ってそれぞれの棲みかに適応をとげた「顔たち」に出会うことは何とも興味をそそられます。現在それら亜種群は統合される方向ですが、それぞれが遺伝的固有性を獲得しつつある以上、その個性が尊重されるかたちで、自生環境が保全され、また栽培維持されることが望ましいと思います。
 
 ここでは様々な自生地の植物たちを紹介し、その多様な表情の面白さをご覧きたいと思います。



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Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(Montrose Co. COLORADO) 彩虹山
コロラド高地の美しい渓谷沿いに見つけたコロニー。
英名「eagle claw (ワシの爪)」どおりの典型的な長いカギ刺が一本あるタイプ。.
Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(San juan Co. NEWMEXICO) 彩虹山
いわゆる「フォーコーナー」。サンジュアン川の近く。丸石がごろごろした場所の密度の高いコロニー。.
Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(Montezuma Co. COLORADO) 彩虹山
やや標高が高く、木々が茂った場所。木漏れ日を浴びながら、ここのパルビはみずみずしい個体ばかり。.
Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(Sandoval Co. NEWMEXICO) 彩虹山
グラマグラスと呼ばれる草に埋もれて生える。月の童子も同じ場所にある。.
Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(Coconino Co. ARIZONA) 彩虹山
グランドキャニオン北の果て。ここの崖上だけに見られるタイプは、紫刺が密生する極めて美しいもの。
Scl.parviflorus ssp.intermedius
(Mohave Co. ARIZONA) 虹映山
いわゆる「虹映山」タイプの基準産地のコロニー。より強い金刺で武装するパルビだが、変種とするべきかどうかは??。花盛りだった。.
Scl.parviflorus ssp.terrae-canyonae
(San juan Co. UTAH) テラエ・キャニオナエ
「テラエ・キャニョナエ」はユタ高地の疎林地帯を中心に分布する黄花タイプのパルビ。長くからみあう飴色の輝く刺が、赤砂の大地に映えて美しい。
Scl.parviflorus ssp.terrae-canyonae
(Wayne Co. UTAH) テラエ・キャニオナエ
こちらも「テラエキャニョナエ」だが、より荒々しい刺を持つタイプ。しかしこのコロニーは市街開発で風前の灯火となっている。.

Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(San Juan Co. UTAH) 彩虹山
ユタの雄大なキャニオン。岩山に点々と生えている。刺色も花も、黄〜赤と同じコロニーなのに変化がある。.

Scl.parviflorus ssp.parviflorus

(Duchesne Co. UTAH) 彩虹山(最北型)
彩虹山の最北型。緯度はあの冬季五輪のソルトレイクとほぼ同じ場所で、全スクレロのなかでもかなり北に分布する部類だ。黒刺が密生する猛々しい姿のパルビ。

Scl.parviflorus ssp.parviflorus
(San Juan Co NM) 彩虹山
このコロニーのタイプは、大型で、大群生になるものが多い。花数も特に多く、時にはごらんのように"garland(花輪)"と呼べる豪華な姿になる。P.Mafhamの写真集も飾っている。

Scl.parviflorus ssp.cloveriae "brackii"
(San Juan Co. NM) クロベリアエ・ブラッキィ
"クロベリアエ"は、彩虹山と白虹(whipplei)の中間的な植物とされる。なかでこのブラッキィは小型で幼苗で開花。自生地は月想曲の産地と似た粘土質の荒涼たる荒れ地。

Scl.parviflorus ssp.cloveriae "heilii "

(Rio Arriba Co. NM) クロベリアエ・ヘイリィ
同じくクロベリアエの1タイプ。上向きにはねた中刺が白虹を思わせるが、花は濃紫色で、こちらも小寸から開花をはじめる。この場所は道路拡幅で消滅した。.

Scl.parviflorus ssp.cloveriae "reevesii "

(San Juan Co. NM) クロベリアエ・リーベシィ
これもクロベリアエの1タイプ。高さ20センチ以上の大型に育つタイプで、刺も長くて美しい。虫による食害で個体数は減少している。






                               
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