4.出会い

 …こんな事があるから、旅ってやめられないじゃない!


 川岸がすぐ温泉になっているので、川を眺めながらの入浴。
 源泉の温度が熱めなので、場所によってはあっちぃ。…するとどういうことが起きるかといえば、適温のところに人が群がるのだ。あちこちで団子が出来ているにも関わらず、場所によっては人が殆どいない。

 群がっていると、そこには自然発生的に(特に女性同士だとその傾向が強いようだ)おしゃべりが生まれる。私に話しかけてきたのは、初老の滋賀県からいらした品の良いおばさまだった。

 滋賀県!聞いた瞬間に地元話に花が咲いた。

 私は生まれも育ちも東京だけど、あちこちに旅に行く内に日本という国がみんな故郷みたいになってきている。滋賀県といえば、今年の夏休みに行ったばかりである。ナツカシィー!

 「今年の夏、琵琶湖内の島『沖島』にも行ったんです。鮒寿司も好き!」と、言ったところから、会話が弾んだ。「まぁ、若いのに、鮒寿司が好きなんて!」おばさまは何だか嬉しそうだ。

 鮒寿司といえば、クッサイし、食べ方を知らぬ私とノブはそれ単独で食べるしか脳がなかったのだが、今回色んなレシピを教えていただいた。
 一番美味しそうだったのは、少な目のごはんの上に鮒寿司の頭の部分を載せ、塩昆布を添えてお茶をかけ、お茶漬けとして食べるというもの。まそぉー!ごくん。

 目を細める私に、おばさまがぽそりと一言。「…でもね、クサイし独特な味だから、家族にはイヤな顔をされるのよ。家で食べるときは肩身が狭くてね…。」うーん。何となく、情景が目に浮かぶ。
 気持ちは分かるけど、特産物は大事にしなくちゃいかんと思うぜ。


 なんやかんやと話しつつ、茹でダコ一歩手前の私は後ろ髪を引かれる思いで宝川温泉を後にしたのだった。はぁぁ、いいお湯だった!

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