計画から実行まで
「個人旅行をどれだけ楽しめるか」は事前の準備でほとんどが決まってしまう。計画は遅くとも半年前に開始する。計画することも楽しむ。それには時間的な余裕が必要だ。学生の卒業旅行に重なる3月、夏休みに重なる7月後半と8月は避ける。どこに行っても混雑するし、航空運賃や宿代もこの期間は高くなる。
雨ほど旅行の楽しみを減ずるものはない。欧州なら日本の梅雨の時期、オーストラリアやニュージーランドなら12月から2月といったその地で雨が少なく気候が安定する時期を選ぶとよい。これはインターネットで簡単に調べられる。
情報を集める
情報入手はまず旅行案内書から始める。「一般的な情報を集めるための案内書(地球の歩き方シリーズがお勧めだが、やや若者向け)」、「世界的に知られた案内書(Lonely Planetシリーズがお勧め、一部は和訳されている)」、「目的に沿った案内書(例えばLonely PlanetのTramping in New Zealandなどその地のトレッキングを紹介する案内書)」の3種を手元に持つと良い。日本の案内書は、海外ツアー的な名所やショッピングにページを割きすぎているか、若者が若者向きに書くかに分化している。海外の案内書はそれを補うため。レストラン選びなどに重宝する。さらに、ヨーロッパで鉄道またはバスを移動手段に使うならトーマスクックのヨーロッパ鉄道時刻表は必携。レンタカーするなら道路地図が必要。現地のホテルの場所を確認するのにも便利だ。これらはすべてAMAZONで購入できる。
大まかに行きたい場所が決まったら、インターネットの出番。その地の国や市の信頼できる公の観光案内からスタートする。多くが日本語に翻訳されている。旅行案内書にもホームページアドレスが紹介されているので参考にする。ここを出発点に訪問地、宿、名所/旧跡、美術館などに進む。日本人は英語の会話は苦手も、読むことは問題がない特異な民族だ。それもだめなら個人旅行は断念したほうが良い。
旅程を決める
1週間以上/2週間以内の旅がお勧め。ゆっくり旅を楽しみながらも体調を保てる長さだ。一か所に最低でも到着日/滞在日/出発日の3日(2泊3日)以上が原則。パッキング/アンパッキングから解放される日を一か所に最低まる一日以上とるということだ。天候によって航空便やバス便は運休になる。荷物が到着地で出てこないこともある。こういった予期せぬ事故から回復するには日程的な余裕が必要だ。次から次へ移動するツアー方式では回復のしようがない。到着した翌日もその地に滞在という予定であれば、犠牲も少ない。最終便でなければ、キャンセルになっても次の便で行けることも多い。
欧州なら午後に到着、その日は軽食を取って休む。徹夜疲れのようでぐっすり休め、翌日は時差から解放されて早朝から動ける。米国なら昼前に到着、昼間は時差ボケ、夜は目が覚めて眠れない。こういう時は散策をするとか身体を動かしたほうが良い。時差解消のコツはできるだけ日光を浴びることだ。東南アジアやオセアニアは時差が少ないので予定は立てやすい。
移動は、米国内は航空便とレンタカーで決まり。ヨーロッパは鉄道とバス。フランスやイタリーではレンタカーはお勧めしない。ヨーロッパの鉄道とバスは時間も正確だし快適。補助的にタクシーを使えばどこへでも行けるし、現地の人もそうしている。
スケジュールは朝から晩までいっぱいに詰めても消化できるのは半分。午前に一つ、午後に一つ主たる予定を入れ、後は時間があればというオプションを一つか二つ決めておく。例えば、パリなら午前にルーブル、午後にオルセーとして、オプションでオランジェリーと「電気の精」を見にパリ市立美術館。多分オプションは一つも行けないが、それで良しとすべきだ。ツアーならこれら全部を半日でという感じだろうか。
予約する
航空便:行先が米国なら米国系、欧州なら欧州系の航空便を選択するのが原則。乗り換えがスムーズで、場合によっては次の便を待たせてくれる。違う会社を乗り継ぐなら、スターアライアンスなど提携しているグループ内の会社にするのが何かと便利だ。スターアライアンスの場合は提携会社の便をすべて含んだ時刻表もインターネットでダウンロードできる。マイレージを貯めるにも便利だ。
個人旅行は、数か月前に予約できる、往復便の日時変更の必要がない、など安いチケットを買える利点がある。ただし、いわゆるディスカウント・チケットにはいろいろな種類があるので注意しよう。団体旅行のばら売りということもある。少し高めだが、航空会社が販売し、航空会社でも旅行会社でも買える、PEX料金の割引チケットが安心できる。
ホテル:大きく分けると、ヒルトンやシェラトンなどビジネス用ホテル、モーテルとも呼ばれる中小形のファミリー用ホテル、日本でいうと夕飯なしのペンションに相当するB&Bがある。ビジネス用の大ホテルは空港ピックアップがあったり、町の中心部にあったりして便利だが、その分値段が張る。個人旅行で泊まるのは後2者だ。私たちはB&Bに泊まることが多いが、言葉に自信がなければ、大手チェーンのモーテルがお勧め。ホテル探しにはTripAdvisorのインターネットサイトが参考になる。日本語のページもある。多くの個人旅行用のモーテルやB&Bを紹介し、メンバーの評価でランク付している。私たちの経験では評価は非常に的確だ。
予約はすべてインターネットでできる。保障にクレジットカード番号を要求されることがあるが、心配なら、信頼できる国や市の観光案内サイトを経由することもできる。国内の旅行会社でも予約できるが、ビジネス用大ホテルか、旅行会社にとってうまみのある中小ホテルに偏っており個人旅行向けとしてはお勧めしない。モーテルやB&Bでは夕食は食べられないが、その地の評判のレストランでゆっくり美味しいものを食べたい個人旅行ではかえって好都合だ。これはお仕着せ食事のツアーと大きく違う点だ。
鉄道:欧州なら鉄道の旅がお勧め。いろいろな種類の鉄道(レール)パスがある。よく計算するとかえって高くつくことが多いが、いちいち切符を買わなくて済む利点がある。予約と切符の購入は日本で旅行会社やインターネットでやっておけば安心だが、スイスの氷河鉄道などの超有名列車でもない限りその場で購入できる。心配なら前日に駅に寄って予約・購入しておけば間違いない。トーマスクックのヨーロッパ鉄道時刻表は時刻表の見方から予約の仕方まで解説している。
レンタカー:国内で、早めに予約しておくのが原則。少し高めだが、HerzやAvisなど大手チェーンが店舗も多く借りるのも返すのも便利だ。メンバー登録しておけばインターネットで簡単に予約できる。日本の海外旅行保険はクレジットカード付帯も含めレンタカーの事故を免責しているものが多い。予約するときに自損も含めて十分にカバーするレンタカー保険に入っておくべきだ。
現地ガイドツアー:日本から予約しておくべきものと、現地の観光案内所で参加を決めるものがある。ニュージーランドのミルフォードトラック・ガイド付きトレッキングなどは、旅の目的でもあり、世界的に知られ参加できる人数も限られる。こういうものはできるだけ早く予約する。一方、市内探訪など、参加できなければそれで良いものは時間の余裕を見てその場で参加を決める。何でも予約してしまうと時間に追われて疲れる。これはその他の計画の遂行も同じ。予定が半分消化できたら上出来と思う。
観劇チケットの入手:ビジネス旅行ならホテルのコンシェルジュに頼めば済むが、個人旅行で泊まるホテルではそうはいかない。有名なミュージカルのチケットは現地で入手困難なことが多い。こういうものは日本からインターネットで予約して開場前にチケットをピックアップする。
準備
計画が立ち、予約も済んだら、まず、パスポートと国際運転免許証の期限のチェック。次は、ホテルや目的地の名前と住所、鉄道やバスの予定時間と行先などを英語とできれば現地語で書いた名刺大のフラッシュカード作成だ。旅先では意外と行先名などド忘れして出てこないことが多い。あらゆる局面を想像し、相手に訪ねたり告げたりしなければならないことをすべてフラッシュカードに書き出す。こうしておけば英語コンプレックスなど雨散霧消する。
荷物は少な目に。ツアーと違って自分で運ばねばならない。トランクには目立ちやすいよう蛍光テープを張る。アタックザックや腰巻ポーチは便利だがすりに狙われる。パスポートと持ち金は肌につける。腹巻か首かけ巾着がお勧め。海外で掏られたら立ち往生する。さあ、出発だ。