ロートホルン山頂からブリエンツ湖方向を望む。登山鉄道が麓を縫って進む。

スイスでトレッキング

数年前にイタリア旅行中にマッターホルン山麓のツェルマートに寄り道したが、時間がなかったのでトレッキングできなかった。今回は、スイスを思う存分歩くことにした。

日本のツアーで有名なグリンデルバルトの喧噪を避け、メンリッヘン山の反対側にあるヴェンゲン(標高1274メートル)を基地にしてベルナーオーバーランド地方を歩くことにする。滞在は正味5日間。7つのトレッキングコースと2つの街歩きをオプションに、どれを選択するかは天気と自分たちの疲れ具合を見ながら決める。ハイライトはユングフラウヨッホとアイガートレイルだ。

旅行の計画

月/日 主な旅程(注:計画の取消線は取りやめを示す) 宿所
7月9日
(木)
スイス航空でチューリッヒ着8時40分/急行でチューリッヒ空港駅発12時47分→ルツェルン着13時49分/ゴールデンパス・パノラマ列車でルツェルン発14時55分→インターラーケン着16時55分/登山鉄道でインターラーケン発17時5分→ヴェンゲン着17時53分
オプション:ルツェルン市内観光/民族音楽祭(21時開会) 。
ホテル・シェーネッグ
Hotel Schoenegg
ベルナーオーバーランド地方の登山鉄道ヴェンゲン駅から徒歩5分
7月10日
(金)
晴のオプション:
1:メンリッヒェンからクライネシャイデックまで歩く
2:登山鉄道を乗り継いでユングフラウヨッホへ
3:アイガートレイルを歩く
4:フィルストからバッハアルプゼーを経てブスアルプまで歩く
5:シルトホルン山頂へ、帰りはグリュシャルプまで歩く
6:ブリエンツから登山鉄道でロートホルン山頂へ
7:フィンシュテックから氷河の足元のシュチーレッグまで歩く
曇または雨のオプション:
1:ベルン市内観光
2:ラウターブルンネンの滝観光
7月11日
(土)
7月12日
(日)
7月13日
(月)
7月14日
(火)
7月15日
(水)
ヴェンゲン発7時37分→インターラーケン着8時24分/特急でインターラーケン発8時31分→ベルンで乗り換え→チューリッヒ空港駅着10時50分
ルフトハンザ航空でチューリッヒ発13時25分→ミュンヘンで乗継、東京へ→
機中泊
7月16日
(木)
→東京着10時30分

旅のポイント

ヴェンゲンの民謡祭7月9日/ヴェンゲンのホテルへ:スイス航空でロンドンからチューリッヒに到着、ヴェンゲンに向かう。ルツェルンで乗り継ぎ時間を利用して、珍しい屋根付きのカペル橋を渡って、美しいルツェルン湖を愛でる。インターラーケンまでのゴールデンパス・パノラマ列車は東京で予約してきたが、中国人ツアー客が指定なしで乗り込んできて大騒ぎ。車掌が追い出して静かになった。その後も何回か中国人ツアーに遭遇したが、とにかくうるさい。周りの迷惑を顧みないさまは中国そのもの。

ヴェンゲンのホテルは、トレッキングの後でレストラン探しをしなくてすむ、朝夕2食付きのいわば割烹旅館。主人は元オリンピック選手。静かな宿。夫婦でスイス滞在を楽しんでいる風の客が多い。団体客はお断りとのこと。天気が良ければ庭先でユングフラウを眺めながら夕食を楽しめる。一服して民謡祭り(右上、クリックで拡大)を見に行く。ヨーデルの歌い手の娘さんは近くの肉屋の店員だった。

トレイルの両側に山野草の花畑が続く7月10日/メンリッヒェンからヴェンゲナルプまで歩く:近くの乗り場からケーブルカーでメンリヒェンへ上がる。ここからクライネシャイデックまでゆっくり歩く。天気は曇り。時々、霧が切れると、メンヒとアイガーが雄大な姿を見せる。トレイルの両側のそこここに高山植物の群落が見える。写真を撮っているとなかなか前に進まない。

クライネシャイデックはユングフラウヨッホへ向かう登山鉄道の乗換駅で、混雑している。右前方に冬季にはスキーのゲレンデになる丘陵が広がり、一面のお花畑だ。天気が良ければユングフラウヨッホに上がるつもりでいたが、お花畑に魅せられてここをヴェンゲナルプまで歩くことにする。大正解。世界一美しいトレイル(右上、クリックで拡大)だ。地形によって咲いている花が異なり、飽きることがない。ディジカメで写真の枚数制限がないのがありがたい。大回りしたので距離は長い。

ロートホルン鉄道7月11日/ロートホルン鉄道に乗る:天気は回復傾向もカラッとしない。ブリエンツまで鉄道で、そこからロートホルン登山鉄道(右、クリックで拡大)に乗って、ロートホルン山頂へ。麓はさほどでもないが、山頂は霧がかかり殆んど見通しがきかない。時々霧が晴れてブリエンツ湖とその先にベルナーオーバーランドの山々が覗く。山頂の展望台の下にマウンテンゴートがたむろしているのが霧の中にかすかに見える。スイスは自然が豊かだ。ロートホルン登山鉄道はおもちゃのような蒸気機関車が日本でいうトロッコを2両引いて急斜面を走る。おとぎ話の世界だ。

帰りにブリエンツの木工工房で娘たちにお土産のオルゴールを選ぶ。ロンドンで観たミュージカル「オペラ座の怪人」の主題歌のオルゴールを記念に購入する。高い買物なので喜んでくれればよいが。帰りはブリエンツ湖を船でと思ったが、遅くなったので鉄道で戻る。

ラウターブルンネルの谷7月12日/シルトホルン山頂へ:ヴェンゲン(右、クリックで拡大)の観光案内所で天気予想を確認して、ユングフラウヨッホは明日、アイガートレイルは明後日とし、今日はシルトホルン山に上ることにする。バスを途中下車して数段になって崖の中を流れ落ちるトリュンメルバッハの滝を見物する。恐ろしい滝だ←この感想は来た人でないと絶対にわからない。山頂に上るケーブルカーの支柱の間隔が気が遠くなるほどに離れている。高所恐怖症の私にとっては震えが来るほど恐ろしい。山頂の展望台からは360度のパノラマが楽しめ、マッターホルンが遠くに望める。

シルトホルン山頂または中腹からミューレンまでトレッキングするつもりだったが、険しそうなので、ミューレンからグリュシャルプまでラウターブルンネル谷の上のトレイルをその分ゆっくり歩くことにする。牧草地を過ぎたところのチーズ小屋で小学生くらいの子供が店番をしている。味見してチーズを買う。ホテルの部屋でスイスワインのお供で消えた。

ユングフラウヨッホ7月13日/ユングフラウヨッホへ:朝から快晴。昼食のサンドイッチを買っていよいよユングフラウヨッホだ。クライネシャイデックで乗り換えて、長いトンネルの行き詰まりが終点だ。途中に2か所見晴らし穴があり、律儀に停車して乗客に見せる。終点でトンネルを抜けて外に出ると、一面、白銀の世界(右、クリックで拡大)。目が痛くなりサングラスをつける。外へ出たところに犬橇の乗り場がある。小さなサークルを一周するだけ。せこいので取りやめ。

雪の中をどこまでもトレイルが続く。あっという間に日焼けするのがわかる。小一時間ほど歩いて妻が頭痛を訴える。高山病か。引き返して展望台へ。エレベータの中も展望台も人であふれる。世界中の人々のあこがれの場所だ。混雑するのも当たり前だ。ここから、下方に巨大なアレッチ氷河の流れが、近くにユングフラウとメンヒが見える。風が強く、スイスの旗がはためく。

アイガートレイル7月14日/アイガートレイルを歩く:クライネシャイデックからユングフラウヨッホへ向かう登山鉄道をアイガーグレッチャー駅で降りる。「アイガートレイル」の標識を確認して、瓦礫の急斜面に沿って進む。しばらく細かい瓦礫が続き、時々霧もかかって歩きずらい。30分ほど行くとなだらかな歩きやすい道になる。右はすぐアイガー北壁だ。まさしく絶壁。気を付けて探すと絶壁の中腹にユングフラウヨッホへ行く登山電車で途中下車した見晴らし穴が小さく見える。首が痛くなる。

ゆっくり2時間も歩いたところでアイガー北壁登山口に至る。看板に登頂ルートが説明されている。周辺は高山植物の大お花畑(右上、クリックで拡大)だ。ここからアルピグレンまではひたすら下り坂。時折 登ってくるパーティーに会うがみんな顎が上がっている。反対方向はずっと登りで大変だ。アルピグレン駅の隣のレストランで遅い昼食。食事は不味いが、ずっと下方にグリンデルヴァバルト、反対側にアイガー北壁と絶景のおかずが美味だ。

7月15日/東京へ:駅まで電動リヤカーで荷物を運んでくれる。ヴェンゲンは環境保護のため電動の車以外は乗り入れ禁止。バスが入れないのでツアー客が少ない。団体ツアーはグリンデルヴァルトへ、個人客はヴェンゲンかミューレンへという流れなのだそうな。帰りは道草なしでまっすぐ空港へ。

参考

トーマスクック/ヨーロッパ鉄道時刻表:ヨーロッパの鉄道に乗るなら必携。詳しい鉄道システムの解説が付属。日本語。
Swiss Bernese Oberland: A Travel Guide with Specific Trips to the Mountains, Lakes, Villages:ベルナーオーバーランド地方で、晴れならトレッキング、雨なら街歩きという方には絶好のガイドブック。