ツアーと個人旅行
ずいぶん昔から、仕事で、また趣味で、一人で、または妻を伴って世界中を旅してきました。
最近では、名所・旧跡を次々と巡るスケジュールを消化するツアーを避けて、個人の趣向に合わせて時間を配分できる個人旅行に挑戦する方も多くなったようです。一方で、個人旅行には、予定外のでき事に遭遇した際に、個人で対処できる最低の能力が求められ、誰でも可能というわけではありません。旅行会社のツアーと個人旅行をいろいろな角度から比較してみます。
旅行会社のツアーと個人旅行の比較
項目 | 旅行会社のツアーに参加 | 個人旅行 |
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費用 | 定められたツアー料金とオプション代以外に、ツアー料金に含まれない食事代、お土産代、小遣いなどが必要。ツアー料金に含まれる航空運賃、宿泊費、食費は予め協定された特別割引のため個人で旅行する場合の半額程度。 | 航空運賃、宿泊費、食事代以外にも、鉄道、バス、現地ツアー、レンタカー、入場・入館料、など出費は多い。一般に同程度のスケジュールならその他の費用も含めてツアー料金の倍はかかるとみるのが妥当。安ホテルに泊まるなど切り詰めればツアーと同等ということも可能だろうが、お勧めしない。 |
日程 | 朝から夕方まで貸し切りバスで巡ることが多いため、名所旧跡を効率よく廻れる。個人旅行ではレンタカーを使用しても同一日程なら廻れる箇所は半分以下。ただし、一か所の滞在時間は限られるし、バスの窓から眺めるだけということもある。また、途中でお土産ショッピングにたっぷり時間を取られるが、これは好き好き。 | 好きな場所で好きなだけ時間をかけられる。ロンドンなら、最初の日は二階建てバスに乗ったりぶらぶら歩いて過ごし、二日目は大英博物館に一日まるまるかけたいし、夜は「オペラ座の怪人」も見たい。こういう旅行がしたければ個人旅行以外に選択肢はない。ツアーだとこれ全部を半日で消化することになる。ツアーと同じ個所の名所旧跡を廻りたければ2倍の期間が必要。 |
安心・安全 | 添乗員付きのツアーなら、パスポートまで預けるので特に盗難の多いヨーロッパでも安心。添乗員の後についていれば間違いがないし、何かあっても添乗員が対処してくれる。ツアーの最大の利点はこの安心感であろう。 | 欧米では日本ほど安全でない。個人の旅行でこの認識を誤ると大変なことになる。アムステル中央駅前やローマの名所など物騒で有名な場所だけでなく、どこでもすりや置き引きが狙っている。イタリアではホテルの部屋に鍵をかけただけでは安全ではない。パスポートや持ち金すべてを盗まれて途方に暮れている旅行者を見るのは珍しいことではない。 |
予定外の出来事 | ツアーでも、ツアー特有のものも含め予定外の出来事は発生するが、百戦錬磨の添乗員によってツアーは何事もなかったかのように進んでいく。 | 列車やバスの遅れ・キャンセル、ホテルに予約が入っていない、体調不良、パスポートや持ち金を盗まれる、予定していた美術館が休館、レンタカーで接触事故(加害・被害)、こういった予定外の出来事は個人旅行でなくても次々に起こるが、それも土地柄と、楽しむ心境になれる余裕がないと個人旅行はきつい。 |
言葉 | 添乗員付きのツアーでは現地の人と直接話をすることはメッタにないし、あっても、通じれば楽しいというだけ。一方、個人旅行では、タクシーの運転手に行先を告げるなど特定の局面では、言葉が通じなければ致命的なこともある。 | 現在では世界中どこでも英語さえできれば何とかなるし、それも流暢にという必要はない。日本人なら最低限の英語力はあるので、あとは度胸。問題は、相手の言ったことが聞き取れないこと。英和辞典を見せて、指差してもらうくらいの押しつけがましさが旅先では必要。また、行先やホテル名などを書いたカードを用意しておくなど最低限の準備で大幅に心配を緩和できる。 |
食事 | ツアーでは、朝食だけでなく夕食も、レストランの選択はもちろんメニューまで決まっている。多人数で一定の時間内に食べることもあって、幻滅することも多い。 | 個人旅行の楽しみの一つは、毎日、今晩はどこで何を食べようかと考え、食前酒から始まる一連の選択とその結果を突合せ、デザートを食べて、最後は料理を評価しチップの額を決める。もちろんお金はかかるが、それに見合う喜びも得られる。最近では、一流どころなら、英語、場合によっては日本語のメニューを用意しているところが多い。 |
行先の選択 | ツアーでは、当然、申し込みする前に旅程が決まっている。旅程に関する選択の自由度はせいぜいオプションツアーの選択位だ。訪問先は代表的な名所旧跡を網羅しているが、総花的で、どのツアーでも同じということが多い。 | あるドイツ人は「ノイシュバンシュタイン城など気がふれた王様が奥方の気を引くために建てた城で見たくもない」、「ローテンブルクとウルツブルグは必見」と言う。一方、日本のツアーでは前者は必ず入り、後者はせいぜい片方しか入らない。ツアーではこういう日本流の偏見が大手を振ってまかり通っている。 |
情報あつめ | 行先が決まっているので、集めるべき情報も限られる。現地のホームページでその名所旧跡の歴史などを予め勉強しておくと楽しみが倍加する。 | 個人旅行の最大のメリットは、好きなものを食べ、好きなところに好きなだけ居られること。そのためには事前の研究が死活的に大切。雑誌や旅行案内書以外に最近ではインターネットで交通手段の時刻表を含めほとんどの情報を集めることができる。できれば現地のホームページを見ることをお勧めする。事前の研究を楽しむことができれば、旅行の楽しみは何倍にもなる。 |
旅行会社のツアーの良いところは費用が安く、安心・安全であること。個人旅行の良いところは、行きたいところを自分のペースでまわれること。個人旅行で心配な安心・安全や言葉の問題も、別途説明する事前の準備と心掛けで十分に補うことができる。
本来、海外旅行に期待することと言えば、「パリで本物の印象画をたっぷり見たい」とか、「イギリスで英国式ガーデンを時間を忘れてゆっくり楽しみたい」とか、「スイスアルプスでトレッキングしたい」など、個人の趣向そのもののはずです。そういう趣向を捨てきれない方のために、個人旅行をお勧めし、その計画から実行までを「旅の達人」が指南します。また、私の多数の個人旅行の経験を、それぞれ計画から実行まで紹介し、共感される方が倣えるようにします。