「レンジマッチング法」を紹介してきましたが、計算した結果とプリントした結果が合わないこともあると思います。ここでは、どこにどのように誤差が入り込む可能性があるかを考えてみます。
濃度測定による誤差
周囲が明るくて露光計に影響したり、キャリブレーション時に4秒という設定が必ずしも正確に設定できないことによる。またLEDが安定するまでにも少し時間がかかることがある。これらが複合して濃度測定誤差となる。
ISO Rangeの誤差
工業製品である印画紙には製品ロットごとに性能のばらつきが避けられません。ISO
Rangeにしても95から105までをRange
100として表示することが許されています。つまり±5の誤差がありうるということです。
露光時間をハイライト基準で計算することによる誤差
多諧調印画紙では「号数」を変化させてもハイライト部の露光時間は変化しない、ということを前提として露光時間を計算しています。しかし、多諧調印画紙の特性曲線を見てもわかるとおり、これは厳密には成立しません。ハイライトよりも少し濃度の高い部分でそれぞれの号数による曲線が交差していますが、ハイライト部では少しずつ曲線が離れています。
このことが露光時間計算の誤差となってきます。しかし、誤差の要因とその傾向がわかっていれば、“経験とカン”を育てることによって誤差を最小にすることが可能になります。こうしたことにこそ“経験とカン”を駆使するべきだといえるでしょう。
参考文献
田中 益男著「写真の科学」共立出版
「ファインプリントテクニック」写真工業出版社
Ansel Adams 「The
NEGATIVE」「The
PRINT」。邦訳版は岩崎美術社
Phil Davis 「Beyond
the Zone System」
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