図―3 印画紙の特性曲線
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印画紙の「号数」として使われている数値は、客観的に規定されたものではなく、メーカによって異なっています。マルチグレード用のフィルターも「号」表示が多いですが、これでは「科学的システム」には使えません。
そのためISOでは「ISO
Range」を規定し、JISでもそれにならってJIS
K 7612-1986 「一般用連続諧調黒白印画紙のISOスピード及びISOレンジの求め方」を定めています。
「ISOレンジ」は、ISOの規定した方法で求めた印画紙レンジのことであり、印画紙レンジは対数露光域の100倍で表すと記されています。図-3ではLog
HS-Log HTとして記されています。
では、この対数露光域(LER)とは何でしょうか。実はこれはネガフィルムのある部分の濃度差に等しくなります。
<証明>
引き伸ばし機で、ネガフィルムに照射される光量をHoとする。またネガのシャドー部で、印画紙特性曲線のS点にHSの光量を与えることのできるネガの濃度をDS、同様にハイライト部T点にHTの光量を与えることのできるネガの濃度をDTとする。
さて、濃度DSを有するネガ上の点から印画紙に露光される光量がHSであるから、濃度はそれぞれ
であらわされる。
ネガフィルム上でのハイライトとシャドー部の濃度差DT−DSを考えてみると、
これは、まさに印画紙の対数露光域の定義になっています。
したがって、現像されたネガフィルム上で、ディテールを持って表現したい被写体のハイライト部と、ディテールを持って表現したい被写体のシャドー部のフィルム濃度差を100倍した値に近いISO
Rangeの印画紙を使い、ハイライト部が印画紙のベース濃度+0.04となる露光時間で露光すれば、シャドー部は最大濃度×0.9にプリントされることになります。こうして被写体の10段以上の光量差を印画紙の対数露光域にぴったりと収めることで、豊かなシャドー部と切れのよいハイライト部が再現できます。
ハイコントラストのネガでは、ゾーンシステムでいうところのゾーン\を印画紙のベース濃度+0.04となる露光時間で露光して、印画紙のグレードは、シャドー部であるゾーンTが最大濃度×0.9となるように選択することになります。つまり、(\のネガ濃度−Tのネガ濃度)×100のISO Rangeとなる印画紙(フィルター)を選べばよいことになります。
多諧調印画紙を積極的に使用することで、ロールフィルムへの適用が困難であるというゾーンシステムの弱点を克服して、35ミリフィルムを使用してアダムスの思想を応用できることになります。
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