ゾーンシステムは、印画紙の号数に合うような濃度域を持ったフィルムを作るという考えのシステムですが、ロールフィルムでは、コマごとに異なるフィルムの濃度域にあった印画紙のISO
Range(号数)を選択することで、被写体の輝度域の全体をカバーすることができます。
多諧調印画紙と、多諧調印画紙用フィルターの号数を無段階に変化させることができる「マルチ対応引伸ばし機」を使用すれば、フィルムの濃度域にぴったりとあった対数露光域を持った印画紙に露光することが可能になります。
フィルムのコントラストが硬い・柔らかいに対して、2号、3号と印画紙を経験的に選択してきた従来の方法を「グレードマッチング法」とするならば、この冊子で私が記す方法は、無段階にレンジを変更するという意味で「レンジマッチング法」といえるかもしれません。
ここで再度図−2を登場させて、図−5とあわせて検討してみましょう。(次ページ)
被写体輝度域が狭い場合には、フィルムの特性曲線の脚部からある狭い範囲に記録されます。いわゆる「硬い」ネガができるわけです。したがって多諧調印画紙でフィルターの号数を大きくして、3号とか4号のフィルターでネガの濃度範囲に合致するようにプリントすればよいことになります。
逆に「柔らかい・ねむい」ネガの場合には、ネガに記録された濃度範囲が広いのですから、それに合致するように広いレンジ幅を持ったフィルターを選択してプリントすればよいのです。
また、図−5を見て分かるとおり、このときフィルター(号数)を変えても印画紙のハイライト部の濃度はほとんど変化しません。したがって、露光時間はハイライト部を基準にして決定し、シャドー部をどの程度まで出すかは、フィルターを選択して決定すればよいことになります。
レンジマッチング法の要点をまとめると、
1.
ネガ上で、ゾーンスケール\としたい部分と、Tとしたい部分の濃度を測る
2.
両者の濃度差を100倍した値となるISO
Rangeから号数を換算し、使用するフィルターを決定する
3.
\となる部分が印画紙のベース濃度+0.04となる露光時間でプリントすると、ゾーンTのシャドー部は印画紙の最大濃度×0.9の濃度としてプリントされる
と非常に簡単な方法です。
図―2
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図―5 多諧調印画紙の特性曲線
(ILFORD MULTIGRADE WRC)
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ここで、光に関する単位をまとめてみました。直接必要になることはないでしょうが、一度整理しておくことも無駄ではないでしょう。
蛍光灯と白熱灯では、同じワット数でも人間の目に感じる明るさは異なる。蛍光灯のほうはより明るく感じるのは周知のことです。その原因は、蛍光灯のほうが目に対する光の有効成分がより多く含まれているからであるといわれています。照明という立場から光量を定義するには、放射エネルギー中の可視波長成分で評価する必要があり、このような観点で「光量」を評価するのが「測光量」です。
「測光量」は、目の分光感度と等価の分光感度を持つ受光素子(光電変換素子)で測光されます。
測光量には、光源のサイドから考えることのできる光束・光度と非照射面から見た照度・輝度があります。
1. 光束(Luminous
flux;単位:lm;ルーメン)
光の進行方向の「ある面」を単位時間内に通過する光量をいう。
2. 光度(Luminosity;単位:cd;カンデラ)
光源からある方向への単位立体角内に放射される光束をいう。
3. 照度(illumination
intensity;単位:lx;ルクス=lm/u)
光源によって照射される面上の明るさ(光束密度)をいい、単位面積あたりに入射する光束である。
被写体面照度:撮影における被写体面上の明るさのことで、入射光式露出計の測光対象である。
像面照度:撮影やプリントの際にフィルムや印画紙上にもたらされる明るさのことである。
4. 輝度(Luminance;brightness,単位:cd/u)
光の照射を受けた面は、その光を透過または反射して、それ自体が発光面となる。この発光面のある方向への光度を、その方向から見た見かけの面積で割った光量が輝度である。
Cd/uをニト(nt)、cd/平方センチメートルをスチルブ(sb)ともいう。
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