宇宙のなかの太陽系の、生命の棲む奇蹟の青い星、地球。その地球が、地球温暖化やピーク・オイルで、さきゆき怪しいのだそうです。地球のうえのユーラシア大陸のはずれの、青い海に浮かぶ奇蹟の島、日本。そこで住んでいるぼくたちにも、無縁の問題ではなさそうです。この星のこの島に生きている毎日をいつくしみつつ感じたこと、思ったことを、あれこれと… |
1.文明の逆行(2010.1.20.)
友人から刺激をうけて、ピーク・オイルのことを考えはじめた。石油は2008年にすでに生産量のピークに達しており、あとは減少の一途をたどるのみだという。ピーク・オイルについても、地球温暖化についても、さまざまな異論がある。これを契機に、自分の都合のいいほうへ世論をみちびいて、儲けようというやからもいる。なにしろ、パンデミックを吹聴したのが、WHOと薬品会社だったというニュースまで流れる世の中だ。なにがあっても、おかしくはない。 ただぼくは、かねてから、文明の過剰を感じている。こんなに物質文明に、身をまかせっぱなしにしていて、いいんだろうかと思う。 宇宙のなかの太陽系の、生命の棲む奇蹟の青い星、地球。地球のうえのユーラシア大陸のはずれの、青い海に浮かぶ奇蹟の島、日本。その日本に、地球のどこにでもあるコピー都市が、うつくしい自然を壊しながら、ひろがっていく。ぼくには地球が、宇宙のどこにでもころがっている、生命のない星の1つになりたがっていると、疑われてしかたがない。 地球温暖化、ピーク・オイル。ぼくはむしろ、これを好機ととらえて、地球の奇蹟や日本の奇蹟を、もっとたっぷり味わう生活にもどるべきだと思っている。 人類が動力に化石燃料をつかうようになってから、まだ300年しか経っていない。日本にペリーの黒船がやってきたのが、1853年。鉄道がはじめて敷かれたのは、1872年。日本初の白熱電灯が東京銀行集会所開業式で点灯されたのが、1885年。その2年後の1887年、日本初の火力発電所が東京で誕生(出力25kW)。家庭配電(210V直流)を開始。このときの電灯数130余。これが1万灯を超えたのが、5年後の1892年だった。ガソリン自動車の発明は、1870年。フォードが大量生産方式を採用したのは、1907年のことだ。電気や自動車のある生活は、まだ100年の歴史しかない。 ぼく自身についていえば、手製の電気アンカをつかいはじめたのが高校1年、メーカー製の電気アンカを買ったのが大学1年。結婚して小さなモノクロ・テレビを買い、子どもができて家を新築したときカラー・テレビを買った。ワープロをつかいはじめたのが、40歳台。パソコンを使いはじめたのが50歳台。自動車とはついに縁がなく、いまだに冷房設備はない。 したがってぼくは、かなりな文明の逆行にも耐えられると思っている。若い人たちは、パソコンやケータイや地上デジタル・テレビのない生活なんて考えられないかもしれないが、こんふうにエレクトロニクスのアイテムがそろったのは、ごく最近のことなのだ。しかも、ほんとうに化石燃料なしでは生きていけないと思っているのは、文明国の都市人だけではないか。人類のほとんどは、化石燃料の害悪ならともかく、恩恵などは受けてはいない。 たとえば南の島へバカンスにいってみればいい。パソコンやケータイやテレビなしで、何日でもすごせる。そして、それがどれだけ人間を回復させる力をもっていることか。 たしかに、東京などの最先端都市で、どこまで文明の逆行ができるかは問題だ。東京はすでに、過剰な文明のシステムにからめとられている。これまで世界中から集められていた食品がはいってこなくなれば、都市は自活できない。高層マンションでエレベターが動かなくなったら、老人でなくても住むのはムリだ。動かなくなった水洗便所は、悲惨な光景となるだろう。 そんなことは、たとえば、ちょっと神戸の地震を考えてみればわかる。交通システムが破壊されて、救援部隊も救援物資もはいれなかった。火事を消そうにも、消防自動車が動けなかった。せっかく現場に達しても、ホースから水がでなかった。停電ですべての電気製品がつかえなかった。食材があっても煮炊きができなかった。病院にいっても、設備が稼動せず、医師や看護士も被害を受けていた。 これが石油がゼロになった状態と考えていいだろう。東京は、あきらかに適正規模を超えてしまっている。システムの完成度が高いぶんダメージも大きくなる。周辺の未発達の田園都市ならば、文明の逆行に耐えられても、東京はムリかもしれない。おそらくこれから、石油の節約・効率アップ・石油が割りあてられる優先順位・石油にかわる代替エネルギーなどが考えられるだろう。そして、文明国間の戦争さえ勃発するかもしれない。 そのとき生きのこるのは、だれか。友人にすすめられて読んだリポートが示唆に富んでいた。『ピーク・オイルへのコミュ二ティの解決策』(A Community Solution to Peak Oil: An interview with Megan Quinn)。アメリカ人のアリック・マックベイが尋ね、アメリカ人のメガン・クインが答える、Q&A式の記事だ。そのなかに、「エネルギー消費量を減らすため、暮らしやコミュニティをデザインしなおすこと」が大切とされ、それを実現している具体的な例としてキューバがとりあげられている。キューバ危機でソ連からの石油の供給が絶たれ、アメリカに経済封鎖されたキューバは、コミュニティ単位で欠乏生活に耐えた。そのチエこそが、ピーク・オイルに役立つというのだ。解決策は、アメリカの鼻先の敵キューバにあったとは、皮肉なことだ。 日ごろ、文明の過剰を感じている。その過剰が、自然を損ねていることを感じている。いまなら、この過剰による被害をどうにかくいとめられるのではないか。いまわれわれが最先端だと信じ、疑いももたずに享受している文明の、かなりの部分がムダであり有害でさえあるのではないか。こんなことは、わかっていたのではないか。これらの進歩だと思い発展だと信じているものを、ぼくらは放棄すべきなのではないか。いや、放棄したほうが幸せなのではないか。さらにいいつのれば、文明は前進しなければいけないのか。前進のさきに破滅があるのなら、撤退しなければいけないのではないか。 |
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