ドヴォルザークの深謀遠慮

交響曲第6番をめぐって

 
                       Dvorak

 ドヴォルザークの交響曲といえば9番目の作品である『新世界交響曲』を真っ先に思い浮かべ、次いで第8番、そして第7番・・・うーん、後は聴いたことあったかなぁ、といった感じではないでしょうか。発売されているCDもこの3曲が大半を占めていて、第6番のCDを求めようとしても店の棚に置いてないことが多く、9曲全部入った全集を買うはめになったりします。YouTubeなどで音楽を聴くことが多くなっている昨今、検索すればこの6番でも見つけることはたやすくなっています。しかし、アップされている演奏の数は7〜9番に比べるとかなり少ないことがわかります。聴き手には今ひとつ魅力のない曲なのか、演奏する側にとって興味がわかない曲なのか、レコード会社が食指を動かそうとしない、録音しても売れそうにない曲なのでしょうか。しかも、この曲の解説文には「この曲は当初は第1番でした。」という説明がもれなく書かれているのですが、曲そのものについてや、曲の魅力についてはそっちのけで、鑑賞には何の役にも立たないこの番号の話しに終始しているものもあります。
 
 音楽の好みを押し付けることは意味がないので、ここではこの交響曲第6番の成立について調べていた時に気付いたことを中心にまとめてみようと思います。

 Dvořák の発音は「ドヴォルジャーク」が実際に近いとされていますが、出版物の題名や引用文に「ドヴォルジャーク」と書かれている場合はそのまま使う一方、ここでは使い慣れた「ドヴォルザーク」とさせていただきます。なお、レコード会社の多くは「ドヴォルザーク」と表記していますが、出版界では著者や訳者の意向によって「ドヴォルジャーク」としているように見受けられます。

               目 次
  No. タイトル 作成日
第1章 交響曲第6番の成立前 2025.1.18
第2章 交響曲第6番の初演とチェコ民族運動 2025.1.25
第3章 交響曲第6番とチェコの民謡 2025.1.5
第4章 交響曲第6番とブラームス 2025.2.2
第5章 ドヴォルザークとドイツ語、そして言語統制 2025.2.12
第6章 ドヴォルザークの交響曲、番号の謎 2024.12.7
第7章 ドヴォルザークと指揮者マーラー 2024.12.14
第8章 ドヴォルザークとエルガー 2024.12.1
付録 チェコの作曲家たち 2025.2.28

参考文献
“Representations of Antonín Dvořák: A Study of his Music through the Lens of Late Nineteenth-Century Czech Criticism” by Eva Branda, Graduate Department of the Faculty of Music in the University of Toronto 2014(エヴァ・ブランダ著 『アントニン・ドヴォルザークの作品: 19 世紀後半のチェコ批評家のレンズを通したドヴォルザーク音楽の研究』)
“Antonín Dvořák and the Concept of Czechness” by David R. Beveridge, Association for Central European Cultural Studies 2018, Praha(デイヴィッド・R・ベヴァリッジ著『アントニン・ドヴォルザークとチェコらしさの概念』)
“Antonín Dvořák – operní skladatel” by Milan Pospíš 2014
“ANTONÍN DVOŘÁK Musician and Craftsman” by John Clapham Faber & Faber , 1966
“Dvořák's Reception in Liberal Vienna: Language Ordinances, National Property, and the Rhetoric of Deutschtum” by David Brodbeck University of California Press 2007

Webサイト:
ANTONIN-DVORAK.CZ、クラシック音楽アカデミー(https://www.antonin-dvorak.cz/en/)
ANTONÍN DVOŘÁK: HIS LIFE, HIS MUSIC, HIS LEGACY by David R. Beveridge(Dvorak American Heritage Association https://www.dvoraknyc.org/ )
The Telegraph “Is Dvorák's day dawning?” 19 June 2004
( https://www.telegraph.co.uk/culture/3619183/Is-Dvoraks-day-dawning.html )
Interlude “Dvořák: Symphony No. 6 Premiered Today in 1881” by Georg Predota 2019
( https://interlude.hk/dvorak-symphony-6-premiered-today-1881/ )
Mahler Foundation ( https://mahlerfoundation.org/ )
METOPERA BATABASE, The Metropolitan Opera Archives
( https://archives.metopera.org/MetOperaSearch/ )
PROGRAM NOTES of The Clevland Orchestra by Peter Laki
(https://programs.clevelandorchestra.com/2024-blossom-summers-at-severance/dvoraks-sixth-symphony#entry-3 )

『作曲家◎人と作品 ドヴォルジャーク』 内藤久子著 音楽之友社 2004年
『チェコ音楽とナショナリズム−民族的闘争の時代−』 内藤久子著 鳥取大学地域学部紀要地域学論集第10巻第3号 2014年
『オタカル・ホスティンスキーの美学思想−「美」と「民族性」の論理−』 内藤久子著 鳥取大学地域学部紀要地域学論集第13巻第3号 2017年
『チェコ音楽の歴史 - 民族の音の表徴』 内藤久子著 音楽の友社 2001年

『ドヴォルジャーク』 ギー・エリスマン著 福元啓二郎訳 音楽之友社 1969年
『大作曲家 ドヴォルザーク』 クルト・ホノルカ著 岡本和子訳 音楽之友社 1974年
『ドヴォルジャークの生涯』 カレル・V・ブリアン著 関根日出男訳 新時代社 1983年
ゲルト・アルブレヒト指揮ドヴォルザーク作曲歌劇『ディミトリー』のCDのブックレット 関根日出男著
『スメタナ/ドヴォルジャーク』 渡鏡子著 音楽の友社 1966年
『1897年のバデニー言語令事件:オーストリア社会民主党およびキリスト教社会党の指導層の動静を中心に』 江口布由子著 比較社会文化研究、九州大学大学院 1998年
『指揮者マーラー』 中川右介著 河出書房社 2012年



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