03月は、

　永井紗耶子
　「木挽町のあだ討ち」


　連作形式のストーリィ。
　各篇主人公による来し方の語りが面白く、そして最終章では思いも寄らぬ逆転劇。
　これぞ傑作時代小説！、と言いたい逸品です。
　

　菰野江名
　「つぎはぐ、さんかく」


　お互いに寄り添って暮らしているかのような三兄姉弟の物語。
　末弟の言葉がその三人の間に波風を起こすのですが、謎の解明といった要素に加え、登場人物各人のキャラクターが魅力
　デビュー作とは思えない質の高さです。

　松浦寿輝
　　「香港陥落」


　香港を舞台、３つの時期を以て俯瞰的に先の日中戦争を、登場人物の語りによって描き出すところが魅力です。
　さらにＡ面、Ｂ面という二重構成が秀逸。
　会話の妙による歴史譚、これぞ上質の味わい。