マリアンヌ・クローニン作品のページ


Marianne Cronin  1990年英国ウォリックシャー生、ランカスター大学で英語学と創作を学んだ後、バーミンガム大学で応用言語学の博士号を取得。2022年 1月現在はウェスト・ミッドランズに住み、殆どの時間を執筆に費やしながら、時折即興演劇に出演。デビュー作「レニーとマーゴで 100歳」は20ヶ国語以上に翻訳され、ハリウッドの大手スタジオで長編映画化される。

 


                

「レニーとマーゴで100歳 ★★☆
 原題:"The One Hundred Years of Lenni and Margot"    訳:村松潔


レニーとマーゴで100歳

2020年発表

2022年01月
新潮社

(2500円+税)



2022/02/27



amazon.co.jp

終末期病棟に入院する17歳の少女レニー
「何故わたしは死ぬことになっているの?」と礼拝堂で神父に訴えても、納得できる理由など返ってくる訳もない。
 
さぞ怖く、寂しい思いをしていたのだろうと思います。
両親は離婚し、母親は故国スウェーデンに帰国。父親は見舞いに来て泣くばかりなので、最期の時までもう見舞いに来ないよう約束させます。
そんなレニーが病院内で出会ったのは、
83歳の老女マーゴ
2人を合わせるとちょうど 100歳ということに興奮したレニー、2人の人生を 100枚の絵に描こうと約束し合います。

冒頭に登場するレニー、生き生きとして、物おじしない、茶目っ気もある少女。
それなのに終末期だなんて、理不尽に感じます。でも、誰よりもそう感じているのはレニー自身でしょう。
それなのに、彼女を支えてくれる身寄りもいない状況。
マーゴや
病院内礼拝堂のアーサー神父「新米看護師」らは、レニーにとってきっと家族同然の人たちだったのでしょう。

主人公はレニーですが、ストーリィの大半を占めるのは老女マーゴのこれまでの人生です。
たった17年、特筆すべき何もないような人生。だからこそレニーは、マーゴの人生を一緒に辿ることによって 100歳の人生を歩もうとしたのでしょう。

死を恐れることもあったレニーは、最期、満足して安らかに旅立ちをすることができたのでしょうか。
終盤、レニーを思って胸が熱くなります。しかしそれは、安らぎでもあります。

※作者のクローニン、自身が心臓発作による突然死の可能性を告げられ、死の恐怖を抱いたことが本作を執筆するきっかけだったそうです。書き上げるのに6年間を要したとのこと。

    



新潮クレスト・ブックス

  

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