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Marianne Cronin 1990年英国ウォリックシャー生、ランカスター大学で英語学と創作を学んだ後、バーミンガム大学で応用言語学の博士号を取得。2022年 1月現在はウェスト・ミッドランズに住み、殆どの時間を執筆に費やしながら、時折即興演劇に出演。デビュー作「レニーとマーゴで 100歳」は20ヶ国語以上に翻訳され、ハリウッドの大手スタジオで長編映画化される。 |
「レニーとマーゴで100歳」 ★★☆ 原題:"The One Hundred Years of Lenni and Margot" 訳:村松潔 |
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2022年01月
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終末期病棟に入院する17歳の少女レニー。 「何故わたしは死ぬことになっているの?」と礼拝堂で神父に訴えても、納得できる理由など返ってくる訳もない。 さぞ怖く、寂しい思いをしていたのだろうと思います。 両親は離婚し、母親は故国スウェーデンに帰国。父親は見舞いに来て泣くばかりなので、最期の時までもう見舞いに来ないよう約束させます。 そんなレニーが病院内で出会ったのは、83歳の老女マーゴ。 2人を合わせるとちょうど 100歳ということに興奮したレニー、2人の人生を 100枚の絵に描こうと約束し合います。 冒頭に登場するレニー、生き生きとして、物おじしない、茶目っ気もある少女。 それなのに終末期だなんて、理不尽に感じます。でも、誰よりもそう感じているのはレニー自身でしょう。 それなのに、彼女を支えてくれる身寄りもいない状況。 マーゴや、病院内礼拝堂のアーサー神父、「新米看護師」らは、レニーにとってきっと家族同然の人たちだったのでしょう。 主人公はレニーですが、ストーリィの大半を占めるのは老女マーゴのこれまでの人生です。 たった17年、特筆すべき何もないような人生。だからこそレニーは、マーゴの人生を一緒に辿ることによって 100歳の人生を歩もうとしたのでしょう。 死を恐れることもあったレニーは、最期、満足して安らかに旅立ちをすることができたのでしょうか。 終盤、レニーを思って胸が熱くなります。しかしそれは、安らぎでもあります。 ※作者のクローニン、自身が心臓発作による突然死の可能性を告げられ、死の恐怖を抱いたことが本作を執筆するきっかけだったそうです。書き上げるのに6年間を要したとのこと。 |