江戸料理百選タイトル   

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江戸の食生活

第1回 お花見  
 落語『貧乏花見』 
 名物『玉子焼き』 
第2回 たけのこ
落語『たけのこ』
『竹の子料理 1 * 2 』
第3回 そば
落語『そば清』
『霙蕎麦(みぞれそば)』
第4回 豆腐
落語『酢豆腐』
『豆腐料理いろいろ』
第5回 うなぎ
落語『うなぎ屋』
真夏の風物詩
第6回 秋刀魚
落語『目黒の秋刀魚』
江戸の魚ごよみ
第7回 いわし
落語『猫久』
『 酢烹(すしに)』
第8回 大根
落語『たらちね』
『大根料理いろいろ』
第9回 さつま芋
落語『芋俵』
『甘藷百珍』

* 第8 回 * 大根
第8回 落語『たらちね』 へ飛びます。

 『江戸料理百選』 林巻大風呂吹大根(りんまき おおふろふき)のレシピをご紹介!
             ↑ クリック

  従来の風呂吹きのように、ゆでるのではなく蒸して、ねり味噌を敷きその上に盛る。
  筍羮(しゅんかん)物、せんば物(野菜と塩魚を薄味の汁で煮たもの)などのあしらいにも。

大根は日本野菜の代表でしょう!!
大根は、四季を通じて作られますが、旬は秋から冬にかけて
料理は非常に幅広く、脇役であっても主役を座を取ってしまうほど大根ってすごい!
副菜としてはもちろんのこと、和え物、汁物の具、刺身のつま、
蕎麦・うどん・天ぷらなどの薬味として大根は大活躍です。
そして日本人が大好きな漬物があげられます。「ご飯とおいしい漬物があれば他に何にもいらない!」
そういう人、周りに大勢いるでしょうねぇ。

大根の伝来!
古代エジプトで栽培されていた大根は、中近東から中国、朝鮮経由で渡ってきたといわれる。
春の七草「スズシロ」は大根のこと。『日本書紀』には「於朋泥(おほね)」の名で記されています。「オオネ」が音読みでダイコンとなりました。

室町中期から品種改良も進み、江戸時代には今の大根という名で完全に定着しました。

元禄の『農業全書』には、宮の前大根(今の守口大根)、餅大根、三月大根、ハダ菜、夏大根、津賀野大根(播州名産)、辛味大根(蕎麦切りに入れる)などがのっています。その後、宝暦の『日本山海名物図鑑』では、尾張大根、練馬大根、伊吹大根、倉橋大根などが挙げられ、種類も豊富です。

江戸の元禄、文化文政、天保の頃、『江戸煩い(わずらい)』と呼ばれた脚気が流行しました。
この背景には漬物や白米の普及とお茶漬けの流行があります。この頃は、新しい漬け方も次々と出てきて、漬物の種類も沢山増えています。

富田漬(摂津)、守口漬(河内)、浅漬(近江漬)、沢庵和尚が始めたという沢庵漬などがあげられます。

当時の大根は、冬の漬物にするために、晩秋から冬にかけて売られました。
「だいご、でえこ」の売り声で、大根を籠に入れて天秤棒で売り歩いたり、江戸近在(練馬あたり)の農夫が馬に積んで売り歩いたり、また八百屋(青菜屋)の店先に並べて売られました。

日本原産の野菜は?『江戸料理百選』より
八百屋の店先に並んでいる野菜の殆ど全ては外来のものである。あのいかにも日本を代表しているような大根までも、残念ながら元は外国産なのだ。
たとえば、大根は中近東から中国へ渡り、恐らく朝鮮経由で昔々日本に来たものだと言う。南瓜は中米メキシコか、南米北部の原産で、コロンブスのアメリカ発見後ヨーロッパに渡り、日本へは江戸時代の始め頃、九州へ上陸したものらしい。
茄子はインドかビルマ、あの辺の原産で日本へは奈良朝にはすでに来ていた。
牛蒡はヨーロッパからシベリアや中国の東北地方にかけて広く野生していたものだと言う。日本へはいつ来たか明確ではないが、平安朝前期にできた『和名類聚抄』には書いてある。という具合で、茄子、にんじん、ジャガイモ、里芋、南瓜.....ほとんどあちらモノだ。
日本原産としては、蕗、セリ、うど、わさび、じゅんさい、わらび、ぜんまいの七種のみになってしまう。(川)

絶賛された大根なのになぜ・・・。
『古事記』に“女性の白い腕”と大根を、きれいな白い女性の肌にたとえた歌があります。
また『本朝食鑑』(東洋文庫)には大根のことが詳しく書かれています。
「江都の近郊には、最も美なるものが多い。とりわけ根利間(練馬)・板橋・浦和の産が勝れている。」と江戸近郊の大根を推奨している。
「近時、世を挙げて蕎麦麺を嗜み、だいこん汁の極めて辣(から)いものが喜ばれている。それで各家では、争って甚だ辣いものを種(う)えている。」
当時蕎麦が流行し、その薬味として辛い大根おろしが好まれたことや、江戸市中で、信州景山大根や夏大根の種を販売しているが、いずれも大変辛いもので、もっぱら蕎麺に用いるということが書かれている。

「生食すれば、気を動かし噫(おくび)を発する。熱食すれば、気を下す。いずれの場合も、能く穀を消し、痰癖を除き、吐血・衄血(はなじ)を止め、麺毒(めんどく)を制し、魚肉の毒・酒毒・豆腐の毒を解する。あるいは、煙に咽(むせ)んで死ぬほどの苦しみにある者がこれを生食すると、津(つば)が出てきて難を免れる」と、大変絶賛されています。
こんなに絶賛された大根なのに悪いたとえに使われるのはなぜでしょうか。江戸時代には、下手な役者は「大根役者」といわれ馬鹿にされていました。大根は消化がいいので、めったにあたらないことから来ているそうで、なるほどと思いますが。現代では「大根足」とまでいわれ、女性から大変きらわれる言葉になってしまいました。

大根の栄養価!!
根の部分は、ビタミンCや、消化を助けるデンプン分解酵素のジアスターゼ脂肪を分解するエステラーゼなどの酵素が豊富に含まれています。繊維質も多いので、消化を促し、腸内の異常発酵を予防する殺菌効果があります。刺身のツマは単なる飾りではないんです。

大根独特の辛いのは根の先の部分。辛味の成分であるイソチオシアネートは胃液の分泌を促し、腸の働きを整えます。加熱すると甘みに変わるので、 辛い大根は煮物にするといいでしょう。
旬の時期は、大根おろしにしても甘味が加わり格別美味しくなります。
辛い大根おろしを食べたい時は、夏場だったらかなり辛く食べられます。皮のまま根に近い方を力強く直線的におろす(怒った感じでしょうか)といいようです。ただし、早く食べないと辛味はすぐに飛んでしまいます。
甘い大根おろしを食べたい時は、大根をやさしく円を描くように(笑って)おろしてください。

葉の部分は、根より沢山のビタミンCや、体内でカルシウムイオンを合成するのに必要なビタミンK、カロチンなどが沢山含まれています。
捨ててしまいがちな葉大変もったいないです。是非利用したいですね。

その他の働きとして、痰をきることや ウイルスの増殖を抑える効果があります。
これからの季節、風邪の予防に強い味方です。
「大根をさいの目に切ってハチミツに漬けておいて、その汁を飲むとノドが痛いのが治る」っておばあちゃんから聞いたことありませんか。そして嬉しいことに二日酔いにも効くそうですよ。

大根料理の旨味の秘密?
大根は他の材料と一緒に料理すると、大根自体が他の旨味も吸収して、より以上複雑な旨味を楽しませてくれます。
大根は他の野菜に比較して細胞が大きく、染みこみやすくする為です。ちょうどスポンジのように他の素材の旨みを吸収してしまいます。その為にいろいろな旨味が加わって更に美味しく食べられるという訳です。

大根の選び方
新鮮でみずみずしく、青々した葉がついているものを求 める。
肌が白く、きめ細かくつやのあるもの。
手に持って重量感があり、葉の茎が太いもの。
葉が切られて切り口の場合は、空洞(ス)のないもの。


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