江戸料理百選タイトル   

江戸時代・筍料理-2

【 素人包丁 】
享和三〜文政三年刊。
序「百姓家、町家の素人に通じ、日用手料理のたよりになる献立の品々を分かち、俄客の折りから台所のともなるべきと心を用いた」とある。家庭の日常の料理と来客時の献立のために書かれていて内容が大変豊富。
 (以下すべて『江戸時代料理本集成 第七巻』 吉井始子編 臨川書店)

四季混雑・精進酒菜拵様
いこみ筍(たけのこ)「素人包丁より」
「是は中なる笋子(たけのこ)の跡先(あとさき)を切とりて中をくりぬきさて生ゆばをすりばちにてよく摺り山のいもすこし しやうゆすこし かんざらしの粉すこし入いかのもよく摺り合して酒しほ水にて延(のば)し筍の中に込(こ)みて大根にて口(くち)を詰(つめ)あぶらにて揚(あげ)てみりんじゃうゆにて煮上(にあげ)小口より切て出すべし 台引(だいひき)に尤(もっとも)よし」

同 いこみ焼(やき)「素人包丁より」
「是も筍(たけのこ)の跡先(あとさき)を切去(きりと)り皮(かは)はそのまゝにして中(なか)をくりぬき其中へみそをみりんと醤油とにて延(のは)しよく詰(つめ)こみて口を大根にて留め薪(き)を引(ひき)たる跡(あと)の灰に埋(うづ)み置其後とり出し皮をとり水にてよく洗小口切にして小鉢蓋ものに入て出すべし是も又重引(ちうひき)なとに用ひてよし
みそはさんせうとうがらし せうが こせうなどのみそ いつれにても心まかせにすべし」

同 田楽(でんがく)「素人包丁より」
「是は大ぶりなる筍の中程より先の所を立に二つ切にして行ちがひ三切計ならべ細き竹の串をさし手の平にてじつと押てひらめになし烈火(よきひ)にて両方よりむらなきやう焼て扨さんせうみそか とうからし きのめ こせうみそなどを 付べし 切やうはいかやうとも好みにまかせ 蓋ものに入て出すべし重引にも尤よし 右のごとく立に二つ切にし串にさしやきてさんせうしやうゆ とうがらし きのめ こせうなどの醤油に酒しほを合して三べんも付やきにし狐色になるほどにして串をむきいかやうとも切て 取さかなの組合又はふたものなどにて出すべし」

同 黒酢味噌(くろすみそ)「素人包丁より」
「是は筍を生にて皮をとり小口より刻みなりとも又立になりともきざみて扨(さて)鍋に胡麻のあぶらを少はかりおとし其中にてかきまぜ直に水にて洗上あぶらをとり布巾にて水気をひたし去け扨黒ごまを沢山にすり鉢ニ而すり其所(そこ)へみそを入やき豆腐一つ入てすり合べし 尤黒ごま五分やきたうふ二分味そ三分の積りにて仕立べし 扨酢に酒しほ少し合堅めにすりのばし右のたけのこを和て出すべし 小鉢猪口のるい尤よし 又前のごとく皮をとり小口切にして湯煮し前のごとく拵(こしらへ)たるみそにて和て小鉢に入て出もよし」

同 筍(たけ)けんちん「素人包丁より」
「是はたけのこ太きものを皮とり根もとを切去り湯煮して立に二つ切にし節の所をすきとり平に押のばし又醤油にてさと味をつけ布きんにてひたしをき扨延(のへ)ゆはの生なるを一まいをきて右のたけのこのひらきたるをうどん粉のつなぎをぬりて行(ゆき)ちがひにして上に並べ其うえにもつなきをぬり みつはのちく きざみ椎茸などをきて端より巻 まきとめをよくとめて扨かやのあぶらか胡麻のあぶらにて揚小口切にして取さかな 重引 台引 又は一寸(ちよと)小鉢(こはち)にて出すべし」

同 末皮(すへかは)なます「素人包丁より」
「是は筍の末の白き皮ばかりをとりてさつと湯煮し揚たうふ一寸(ちよと)火にてこがし二枚にへぎ小くちよりきざみ 小しそ きくらけ みつばちくなどゝ一所に三ばい酢に味噌を実にすこしばかりを加へ和まぜ□小鉢に□出すべし」

同 雁先吸物(かんさきすいもの)「素人包丁より」
是もたけのこの雁(がん)さきを二寸ばかりよく揃(そろ)へ立(たて)に小口より薄ヽと切て昆布(たし)汁に酒しほしやうゆかげんして葛をすこし引きかくしせうかにて吸ものに仕立(したつ)あしらいは岩たけきくらげなとを用ふべし

同 刻(きさ)み寄(よせ)「素人包丁より」
是も筍の皮をとり根を去(と)り立横好みにまかせ薄くきざみて寒晒粉(かんさらしこ)に葛(くず)をまぜ水にてやはらげ其中へ青のりを粉にしてまじへ右の筍をよせてかやのあぶら歟(か)胡麻のあぶらにてあげて平皿 菓子(くわし)わんなどに用(つかふ) 長いも 椎茸 みつば くわゐ 岩たけ 牛房 是等(ら)のものを二品あしらいて仕立(したて)出すべし

同 いり出し「素人包丁より」
是もたけのこの中程より上の方をいかやうとも切て胡麻のあぶらにて揚て大平陶器(やきもの)の蓋物(ふたもの)に入おろし大根 葱(ねふか)小口輪とうからしなどにて出(いたす)へし 又根本の品入てもよし ねふかをきらふニはあさくさのりにてもよし

同 臭和(くさあへ)「素人包丁より」
是も筍を皮をとりいかやうとも心まかせに切 油にて揚 葱(ねぶか)をこまかにきざみすりばちにてよく摺(す)り 其所(そこ)へ味噌を加へすり合し酒にて延(のは)し其中にて和(あへ)て出すべし。又右のごとく仕立たるみそを鍋に入てよく煮て其所(そこ)へ揚たるたけのこを入て煮合(にあへ)にして出すもよし

同 しら和(あへ)「素人包丁より」
是もたけのこの皮をとり程よく切油にてあけ 扨(さて) 白豆腐(しらとうふ)七分味噌三分程のつもりにてよく摺(すり)合し 右のたけのこと岩たけと一所(いっしょ)にしやうゆにてさつと味をつけて布巾にてひたし其後こしらへをきたるみそにて和て出すべし 小鉢 猪口(ちょく)の類尤よし
  

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         出典:『江戸時代料理本集成 第七巻』 吉井始子編 臨川書店

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