江戸料理百選タイトル   

  

*** 第9回 ***

芋俵(別名:いもどろ)

お芋に絡んだ落語を探すと、どうしてもオナラの噺が出てきてしまう。
しかも『芋俵』は最後にオナラで幕を閉じる。
格好良く終わりたかったなぁ。しかも大きなオナラでトリを飾ってしまった。
でも面白かったなぁ、と私自身なごまされたのでとても満足しています。
(追伸・・・でも、やっぱり落語は生がいい)

                   * * * * *

年の瀬も押し迫る師走。三人の泥棒が何やらよからぬ相談をしております。
「三丁目に大きな木綿問屋があるだろう。あそこへ入ろうと前から目星を付けてたんだよ」
戸締まりの厳重な店へ、どうやって泥棒に入るかが問題だ。そこで泥棒が思いついた作戦とは・・・。

仲間の間でばか松と呼ばれている松公を芋俵に入れ、残りの二人が担いでいって、「すぐに取りに来ますから」といって芋俵を店の前へ置かせてもらう。
取りに行かなければ、「預かり物を外へ出しておいて、何かあってもめんどうだ。」と芋俵を店の中に運んでくれるだろう。
寝静まった真夜中に、松公が芋俵の中から出てきて外の二人を手引きし、盗みを働くということでございます。
案の定、事がうまくいき土間の隅の方へはこばれました。 ところが店の者が芋俵を上下逆さまに置いてしまった。さぁたいへんだ。出るに出れなくなってしまった。

そんなこととは知らず、店じまいをおえた店の女中おきよどんと、小僧の定吉が、 まだ起きておりました。 「なにか食べるものがあるといいんだけど、あいにく今夜は、おかずの残りも、なんにもありぁしないよ」
「こまったねぇ。・・・あっ、おきよどん。いいものがあらぁ」
「なんだい?  定どん」
「夕方、町内の者だといって、芋俵を預けてってまだ取りにこないんだよ・・・あれをそっと盗んできて食べようじゃないか」
「さつまいもかい? そりぁいいねぇ。そいつを薄く切って、焼いて食べるとうまいんだよ。のこったやつは、あしたの朝、ご飯炊くときに上へのっけて蒸すと、いい具合にうまいふかし芋ができるんだよ・・・」
「おきよどんは、いろんな事を知ってるねぇ」
早速、芋俵から芋を抜き取って食べようと、二人が、暗ら〜い土間へやって来た。
「縄をほどいちゃぁ、ばれちゃうよ。後でわかんないように芋俵の横っ腹から引きずりだしゃぁいいんだよ。」とおきよどん。そっと手を芋俵へ突っこんだ。
「あぁ、なるほど。うまいもんだねぇ、おきよどんは、泥棒に慣れているねぇ」
「やだねぇ。なんてぇこというんだろ。泥棒に慣れているわけじゃあないよ。知恵があるんだよ。」
「あれあれっ、なんだか変だぜ。この芋ぽかぽかあったかいよ。焼芋の俵かねぇ?」
「焼芋の俵なんぞあるもんかね。」
「おや?こっちはへこむ。この芋おかしいや。」
「そりゃぁ、腐ってんだよ。定どん」
逆さになっている泥棒の松公、苦しいうえにお尻のあたりをあちこちと、なでまわされたから、もうくすぐったくてたまりません。しかし笑うわけにもいきませんから
、うんとお腹へ力をいれてこらえたとたんに、大きなやつを、
「ブーッ」
「おや、なんと気の早いお芋だ。」

      ※『古典落語 続(々々)』(興津要編、講談社文庫)より要約

                               ♪♪♪♪♪

今から十八年前。ピアノのお稽古から帰ってくる子供を国立駅前の本屋で立ち読みしながら待っていた。
冬になると駅前には焼き芋屋の屋台が出ていた。
まだ子供が小さかったのと過保護のせいか、いつもどこかしらで待ち合わせ。
風が冷たく吹きまくって寒かったけど、焼き芋がホカホカ温かくって甘くって美味しかった。
私と子供にちょうどいい大きさを買って、夜のホームで子供とおいしいねって言いながら食べた。
そんな頃がとても懐かしい。大人になってしまった子供達は、あまり口にしたがらないが、今も私の焼き芋好きは変わらない。


* 第10回『本膳』へ♪ *

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