江戸料理百選タイトル   

江戸時代『甘藷百珍』 絶品(11点)

『甘藷百珍』挿絵
『甘藷百珍』2挿絵 『甘藷百珍』1挿絵 『甘藷百珍』3挿絵
『甘藷百珍』は尋常品、奇品、妙品、絶品の四等品に分類されており、料理品目は全部で123品にも及びます。
そのほとんどは、現代のレシピと違って極簡単な説明で書かれています。
ですから調理法は至って簡単、そこは料理のカンと腕という事かも知れません。
たとえば、「焼、切様好次第」「・・・するもよし」と、実におおらかでしょう。
下記の絶品を自分流に、自由にアレンジしてはいかがでしょう。

絶品・・・妙品の更に上をいく極上級の料理(11品)。
妙品・・・形が珍しく、味が奇品より優る料理(28品)。
奇品・・・形が珍しく、人の意表をつく料理(63品)。
尋常品・・どこの家庭にも日常みられる料理(21品)。

 江戸料理百選  お品書き・豆腐の部 も併せてご覧ください。

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■江戸時代『甘藷百珍』より 絶品(11点)

  1  でんがくいも
 生にて擦し[すりおろし]、薄板の筥(はこ)に入れ、筥倶(とも)[それごと]に蒸熟、[蒸し上がったら]切て串にさし、そのまゝ未會[味噌]をつけ、すこし火にかけ焼てよし。
 ○未會(みそ)は木の芽醤(みそ)・山椒醤・山葵未會なと、好みによるべし。

  2  ハンペンいも
  精[藷精]を水にてうすくとき、葛湯の如くたき冷し置、
  ○生の藷をおろし、豆腐と生麩を少しつゝ入、右の精の粉の烹きたる汁にて、糊のごとく溲合せ、蓋(ふた)茶はんにいれ、茶わん共に蒸、葛餡かけ、または山葵醤(わさひみそ)をかけたるもよし。
  △又は、薄板の筥にいれ、蒸あげて角に切、葛餡かけにするを、南禅寺仕立いもといふ。

  3  南禅寺いも
  右にいでたり。

  4  樺焼いも
  生にて擦し、三分ほどにのばし、蒸熟(むしあけ)て、直に紫(あさくさ)苔(のり)の上へならべ、しばらく置、よくひつつきたるとき、よきほどにきりて、麻油少引、泰椒豆油(さんせうじゃうゆ)付やきにする。

  5  ふはゝいも
  なまにておろし、雷盆(すりばち)にてよく擂、馬尾節(すいのふ)[裏ごしをして]にてこし、鶏卵(たまご)打わり、すりまぜ、豆油の達失汁に酒味(さかしほ)もたせ、よく烹沸(にへたゝ)し、その中えすくひ入、しばらく蓋をして、よくふき上たる時、もり出すべし。胡椒のこうへにおく。
  △喫素(しゃうじん)には鶏卵を、やまのいもにかへてよし。

  6  狸(たぬき)斟羹(じる)いも
  生にてをろし、つまみとり、油にてあげ、牛蒡(ごぼう)削(ささかき)入て醤(みそ)汁にする也。擂山椒おく。

  7  いもとじ
  豆腐・生麩・仏掌(つくね)蕷(いも)、三色すり盆(ばち)にてよく擂、
  ○藷、生にて擦し、汁を絞りとり、滓をもちひす、其汁にて右の三色を解、玉子の代(かはり)に用ひて茶瓶むしなべ焼を制(こしらへ)、加料(かやく)好次第。喫素の茶わんむし、是を方(ほう)とす。

  8  いも麻(ごま)豆腐
  白胡麻一合、白炒(いり)にして水に浸、雷盆(すりばち)に入、手にて撚(もめ)ば、皮とれる也。 是を水にて淘(ゆり)、麁皮(あらかは)を去、雷盆(すりばち)にて能(よく)擂、じん五勺・水二合入てとき、馬尾節[裏ごしをして]にてこし、糊のことく烹き、重箱に入、冷し、切て遣。生姜みそのしき末曾などよし。濃醤(こくしゃう)には、わんにもりて、あとより汁を盛入べし。
  △核桃(くるみ)を剥、熱ゆに浸、皮を取、よく擂りて右の白胡麻のかわりに入るを、藷仕立の核桃豆腐といふ。

  9  藷(いも)仕立核桃(くるみ)豆腐
  右に出たり。

 10  塩焼いも
  生にて皮を剥、寸斗の厚さに切、うら表共に塩をはらゝとふりかけ、遠火にかけ、焼、切様好次第。

 11  塩蒸やきいも
  藷を其のまゝちよと水に浸、塩をひったりと塗付、炭火ニうつみ、蒸やきにする也。
  ○塩寵よりかき出(いだし)たる熱き塩に、そのまゝうづみ灸(やき)たるは、風味至てよし。是、甘藷百余品の中、第一品たるべし。世に塩寵蒸とて棘髭抔(たいなと)蒸法也。

       (『料理百珍集』より転載)


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