「草野球の窓」

第92章
「にわか投手」

うちのチームには、試合で通用するピッチャーが一人しかいません。だから、そのピッチャーが崩れると、どうしようもありません。球の速い人はいて、ピッチャーをやりたがっているけど、試合には、まだまだ使えません。どうしたら、投手を育てられるでしょうか。

 二人の読者から似たようなご質問が来た。いずれも二人目の投手に関するものである。「二人目の投手」育成の必要性については第47章で述べた。ここでは、エースが投げられない場合、急遽マウンドに登らねばならない「にわか投手」を一人前にするためにどうすればよいかについて考えてみる。

 第47章で述べたように、投手育成に王道はない。地道に練習を積み重ねるしかない。ピッチング練習は勿論、足腰や上半身の筋肉トレーニング、第25章で述べたようにバッティング投手を勤め、さらには投手としての守備練習(一塁へのカバー、本塁や三塁のカバー、バント処理など)、そして第26章に述べたセットポジションと第83章で述べた牽制球などなど覚えることは多い。

 速球が投げられることは投手としての条件の一つではあるが絶対条件ではない。より重要なのは制球力である。制球力とは自分の思った通りのコースに投げられるということである。ストライクが取れないと野球にならないし、例え緩い球しか投げられなくてもストライクゾーンの一部をピンポイントで通過させるような制球力さえあれば、例え強打を誇るチームに対しても結構通用するものである。

 制球力、特に打者を置いての制球力をつけるには、まずはバッティング投手を勤めてはいかがであろうか。打者が立つとストライクが入らないというのは誰でも最初は経験することである。それを恐れてバッティング投手を勤めないと、いつまで経っても試合では投げられない。打者が立つとぶつけてはいけないという心配、ストライクを投げなければバッティング練習にならないという責任感から自分のフォームで投げれない、あるいは投げないのである。腕が縮こまっていたり、小手先で制球しようとしたり、球速を抑えて制球をつけようとする。だが、それでは制球はつかない。

 第47章の繰り返しになるが、最も大事なのはキャッチボールである。常に打者が立っていると想定し、相手の胸に自分の最高の球を投げることを練習する。相手の胸に正しく投げられない場合、どうすれば投げられるようになるか自分で創意工夫することが大切である。腕の振り方、腰の回転の状態、足の上げ方、球の握り方、手首の使い方などなど自分でチェックできる点は多い。次はバッティングで投げる。この時、単に投げるだけではなく投手としての守備練習も兼ねるとよい。例えば、投手ゴロはダッシュして捕り、一塁や二塁へ送球する。一塁方面へのゴロはすぐベースカバーに入る。足元を抜けるような打球はグラブではたき落とす。さらには、セットポジションから投げる練習もする。特に試合でリリーフする場合、いきなりセットポジションで投げなければならないことも多い。普段からセットポジションに慣れておく必要がある。

 このように一通りのことができるようになれば、試合で短いイニングを投げ、実戦経験を積む。このような経験を積み重ねるうちに、徐々に投手らしくなってくる。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成11年1月9日掲載)



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