「草野球の窓」

第91章
「投手の立ち上がり」

 私は長らく投手をさせていただいております。制球力、球速、キレ等投手に要求される力量を上げるべく、あらゆる数々の努力を積み重ねてきましたが、どうしても克服できないことがあるのです。
 立ち上がりが悪いのです。自分でもなぜ立ち上がりが悪いのか考えて、出た答えが次のようなものです。
 マウンドになじむまで自分の投球ができないことに気づきました。これに気づいたのが、ある日の整備状況の大変悪い球場での試合の時です。自分の投球ステップと違う窪みをならそうとしましたが、どうしても窪みが埋まりません。仕方なく、足場の悪いまま投球をすることになりましたが、最悪でした。投球フォームがいつもと違うため制球が悪く、ストライクが欲しいあまりに球を置きに行くと痛打される。
 この日からマウンドと自分の相性が気になって仕方ありません。土の硬さ・マウンドの傾斜・マウンドの高さ・窪みの状態・相手投手のマウンドでのならし具合等、とても気になります。とにかくそのマウンドで30球から40球をぐらい投げないと思い通りの投球ができないのです。マウンドを自分の投げやすい場に作り変える前に、自分がマウンドの癖にあわせて投げるという状況です。また、攻守交代時も相手投手が掘った穴が自分のステップと違うと気になります。毎回同じ球場で試合できるのであれば良いのですがそうゆう訳には行きません。どうすれば良いですか? アドバイスください。

 読者の方から難しいご質問をいただいた。マウンドの整備状態が気になって思いどおりに投球できない。これが立ち上がりの悪い原因である。どうすればよいかという内容である。

 確かにマウンドの状態は気になるものである。マウンドの高さや傾斜、プレート板の前縁のへこみ具合、踏み出した足が下りる場所の窪みなどなど気になる箇所は多々ある。基本的にはグランドを使用した後、きちんと整備しておくべき筋合いのものである。ところが整備がいい加減なまま雨、風に打たれマウンドは恒常的に悪い状態のまま保たれることになる。まして草野球のグランドである。川原の水はけの悪いグランド、赤土、石ころ、雑草などが剥き出しになったグランドなど手に負えないグランドを使用せざるをえない場合が多い。もし、許されるなら、試合前に若干の時間をもらって簡単に整備(トンボをかける;土や砂を盛るなど)をした方がよい。その方が怪我も少なくて済む。

 それでも気になるものは気になる。だが、足場が悪いのは自分だけではない。相手投手も同じ条件なのである。マウンドの悪さをより気にした方が負けである。相手投手が好投できるのなら、自分も投げられるはずである。立ち上がりの悪さをマウンドのせいにしていないだろうか。

 立ち上がりが不安定なのは投手に一般的な現象である。プロ野球の投手であっても、立ち上がりの不安定なうちに打ち込まれたり、四死球を連発し自滅する例は枚挙にいとまがない。まして草野球である。立ち上がりが悪いのはむしろ当然なのだ。何故立ち上がりが不安定かといえば、一つはウォーミングアップ不足。二つ目が自信のなさである。肩が軽すぎる;重い;身体のキレがないなど自分の投球に自信が持てない場合、小手先で投げようとするから制球が定まらない、球を置きにいくなどという結果につながる。その証拠に、序盤を乗り切り、身体が温まってきたり、投球のリズムを取り戻してくるといつもの投球ができるようになる。

 投球というものは非常にメンタルなものである。これまでも何回となく述べているように、少し強そうなチームと対戦する場合、必ず何らかの不安を持ってマウンドに登る。その不安を見透かしたように突いてくるのが強いチームであり、付け込めないのが弱いチームなのだ。不安を相手に見せないことだ。不安の原因をマウンドのせいにし、マウンドを気にしている素振りを見せると、強いチームはたちまちにしてそれを見抜き、悪球には手を出さず置きにきた棒球を引っぱたくということをしてくる。足場が悪くても、自分の投球を心掛けることだ。気迫のこもった投球することだ。捕手が出すサインを信頼し、制球と緩急に気を配り、野手を信頼して打たせて打ち取ることを考えればよい。どんなに強打を誇るチームでもそうそう何本も連打することはできない。あのメジャーリーグでさえ、日本選抜チームに完封されたではないか。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年12月28日掲載)



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