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弁護士河原崎弘

離婚などの場合の養育費の計算式(計算方法)

1.養育費の計算式:2019年12月以降(養育費算定表の計算式)

養育費算定表は、各当事者の個別事情を考慮せず、義務者と権利者の収入および子供の年齢だけを考慮します。        
  1. まず、基礎収入を計算します。
    基礎収入=税込み給与× 基礎収入率

    給与所得者の場合、0.54〜0.38をかけます
    自営業の場合は、0.61〜0.48をかけます   
  2. 子の生活費を計算します。
    子の生活費=義務者の基礎収入× 62 又は 85 100 + 62 又は 85

  3. 義務者が負担すべき養育費を計算します。
    養育費=子の生活費× 義務者の基礎収入 義務者の基礎収入+ 権利者の基礎収入

計算例:【父親の年収700万円】、【母親の年収200万円、子供2歳】のケース:給与所得の場合
  1. 基礎収入を計算
    義務者(父親)の基礎収入=700万円×0.41  
    =287万円
    権利者(母親)の基礎収入=200万円×0.43   
    =86万円
  2. 子の生活費を計算
    子の生活費
    =287万円× 62 100 + 62        
    = 109.8万円
  3. 義務者が負担すべき養育費を計算
    養育費
    =109.8万円× 287万円 287万円 + 82万円
    =85.4万円(年額)
    ≒ 7万1000円(約:月額)
当サイトには、次の6つの計算式例が載せてあります。
基礎収入割合
  • 事業所得の場合の所得
  • 実際の計算は下記計算機でできます(養育費の相場、平均を知ることができます)
    平成15年4月以降:
    裁判所の算定表による
    養育費算定表の一部 幅がある
    養育費算定表に基づいた計算機/弁護士実務 幅がある
    高額所得者用養育費自動計算機 中心値 高額所得者用計算機
    子供が4人以上でも、義務者が再婚して、
    扶養家族が増えても、計算可能

    2.養育費請求の手続き

    養育費を請求する場合は、子供の住所地の家庭裁判所に審判申立、あるいは、相手方の住所地にある家庭裁判所に調停申立をします(家事事件手続法の施行で、初めから審判申立ができるようになりました)。
    調停は話し合いです。調停が成立しなければ、自動的に審判に移行し、裁判所が決めてくれます。

    調停前置ではない 調停、または、審判 調停(家事事件手続法244条)、審判(150条4号)
    管轄家庭裁判所 調停:相手方の住所地 244条
    審判: 子の住所地 150条1項
    調停不成立 審判に移行 272条4項
    高裁へ不服申立 即時抗告85条、2週間(家事審判手続法86条)
    最高裁へ不服申立 特別抗告94条1項、102条、288条、5日間(家事審判手続法96条2項、民訴法336条2項)
    許可抗告 97条1項、2項、102条、288条、5日間(家事審判手続法98条2項、民訴法336条2項)

    3.養育費の説明

    養育費の趣旨

    婚姻外で子が生まれた場合、未成熟の子どもの監護者は、他方の親に対し、扶養料(養育費)を請求できます。離婚に際し、未成熟の子どもの衣食住の費用(養育費)の分担を、一方の当事者(通常、母親。父親が子供を養育し、母親の収入が多い場合は父親)は他方の当事者に請求できます。
    養育費の金額は 親の生活程度によって異なります。子どもは、(生活レベルが高い方の)親と同水準の生活を求めることができます(生活保持義務 民法752条)ので、親の学歴、生活レベルが高ければ、養育費の額もそれと同じ水準を前提とした金額になります。

    養育費は子供が成人するまで
    養育費は、通常、子どもが成人(20歳。アメリカでは州によって違いますが、18歳とする例が多い)に達するまで支払う例が多いです。最近は、当事者の約束で、子どもが22歳に達するまでとする例が増えてきました。

    過去分の養育費
    調停、審判では、原則として、調停申立した後の養育費を取扱います。 そこで、できるだけ早く調停申立をしましょう。
    法律上は、過去分の養育費は、請求の意思表示をした以後の分のみを請求できます。そこで、裁判所に申立するのは後にしても、まず、内容証明郵便などで請求の意思表示だけはしておきましょう。

    生活保護基準方式から養育費算定表へ
    従来(2003年3月まで)東京家庭裁判所など多くの裁判所は生活保護基準方式により子どもの生活費を計算し、負担能力(扶養余力)比率に応じて父の分担額(養育費)を算定していました(生活保護基準方式に基づく養育費計算機)。生活保護基準は、ほぼ、毎年変わります。
    現在(2003年4月以降)は、養育費算定表を使います(2019年12月改訂)。

    養育費の金額

    養育費の受給状況については、現在も受給している者が19.0%、受けたことがある者 が16.0%、受けたことがない者が59.1%となっています。
    養育費を現在も受けている、または一度で も受けたことがある者の養育費の1世帯当たりの平均額は、月額42,008円となっています(厚生 労働省雇用均等・児童家庭局「全国母子世帯等調査」(平成18年))。

    当事者は、正確な養育費の金額が予め計算できないから安易に妥協してしまう例も多いです。当事者は、他方の当事者に対してではなく、公的保護に頼る傾向があります。
    アメリカ、カナダでは、養育費ガイドライン(Guidelines of Child Support) として、あるいは Childsupport Calculators for all states などで、ドイツでさえ、 Dusseldorfer Tabelle (Stand: 1.1.1996)、などで、具体的な金額が発表されています。
    日本では、情報公開が遅れていましたが、平成15年4月に養育費算定表が公開されました。しかし、基礎収入率、低額所得者の養育費の計算根拠などが明らかにされず、算定方法の正確な再現は困難です。

    養育費支払いの約束、差押え
    養育費は約束しても途中で支払われなくなることが多いです。特に相手が再婚した場合は、不払いになります。そのため養育費の約束は文書にすること、できたら家庭裁判所での調停、あるいは、審判、あるいは、公証役場公正証書にしてもよいです。不払いの場合、調停調書、審判書、公正証書があると、給料差押え(差押申立書)などの強制執行ができます。
    アメリカでは、1975年、連邦政府がChild Support Enforcementプログラムを作り、各州が養育費の履行確保制度を持っています。1984年以降は、養育費の給料天引制度などが導入されています。オーストラリアも同じ。

    2004年4月1施行された新しい改正法律によると、(期限がまだ来ていない)将来分の養育費を請求して、相手が将来受取る給与等を差押できます。これを利用すれば、毎月、養育費を給料から天引きしてもらえます。
    この将来分の養育費を請求債権として、将来の給料をなどを差押える方法は、保証金なくして仮差押をしたと同じで、強力です。
    反面、債務者(差押をされた当事者)は、差押の取消しの申立(民事執行法153条)をすることになりますが、期限が到来した養育費を支払っても、差押の取消しをしてもらえず、請求異議の訴えも無理で、極めて不利な立場に追い込まれます。養育費を遅滞することは避けなければなりません。
    差押えの対象は、給料等の債権(継続的給付にかかる債権)などです。限度は、通常は、給与(通勤手当を除く)の手取り額(社会保険料および税金を差引いた額)の1/2(通常は、1/4まで)まで差押さえできます(民事執行法152条3項)。
    給料(手取り額)が高額(月額66万円超)の場合は、月額33万円を越える部分は差押えできます(民事執行法施行令2条1項1号)。
    登録 Oct. 31, 1998 弁護士宛メール
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