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2015.6.11mf更新

高額所得者の養育費、婚姻費用の計算式

弁護士河原崎弘
高収入(給与所得の場合、2000万円超、自営業の場合は、1409万円超)の方の養育費、婚姻費用は、算定表に書いてありません。 高額所得者の養育費、婚姻費用については、次の3つの考え方があります。
  1. 算定表の最高額2000万円の金額を上限とする考え
    所得が2000万円(自営業では1409万円)を超えても、養育費、婚姻費用は、2000万円(自営業では1409万円)の場合と同じとの考えです。ただし、学費など特別な経費がある場合は、基礎収入割合に応じて、按分負担させます。その場合は、算定表の額を超えます。通常、算定表の額以上の、生活費は必要がないとの理由からです。養育費について、裁判所は、この考えを持っています。
  2. 算定表の基礎収入の割合を、若干、減額する考え
    算定表の2000万円(自営業では1409万円)の基礎収入の割合が34%(自営業では47%)である。これを、若干、低くする考えです。
    当サイトの、高額所得者用の養育費自動計算機も同じ考えに基づき、収入に反比例して、基礎収入率を逓減しています。しかし、逓減率が急激過ぎましたので、これを改良しました。
  3. 公租公課(あるいは公租公課と特別経費)を具体的に計算する方法
    所得税確定申告書を根拠に、公租公課などを具体的に計算し、基礎収入を算出する方法です。場合によっては、さらに、貯蓄率による貯蓄を計算し、収入から控除し、基礎収入を算出します。高額所得者は、収入の全額を生活費に使うことはないとの考えです。

算定表の金額を上限とする考え(A)

2千万円(自営業では1409万円)以上の高額所得者(高収入者)の場合の養育費が最高額であり、収入が上がっても、この例を使うのです。採用する判例はあります。
しかし、 収入が多ければ、養育費の金額も多くなるのが、当たり前です。
算定表に2千万円(自営業では1409万円)以上の高額所得者(高収入者)が掲げてない理由は、単に、当時の家計調査年報に、高額所得者の職業費、住居関係費など特別経費の統計データがなかったからです(最高の収入階級として「1500万円〜」となっていた)。年収2千万円(自営業では1409万円)の人の例が、それ以上の収入のある方の養育費、婚姻費用ではないのです。
この考えは、採用し難いです。
高額所得者の場合、養育費が計算できないと考えて、計算を諦める裁判官もいます。そのような裁判官も、さすがに、1億円の高収入者の場合に、2000万円の例を採用することに気が引けるのでしょう。「2000万円の場合の2倍の養育費ではどうか」などの和解案を提示することがあります。下記 高額所得者についての実例 中の和解がそうでした。当事者は、弱い立場ですので、妥協してしまうのです。

基礎収入率を修正する考え(B)

この考えでは、基礎収入率の割合をいくらにするかが問題となります。およその基礎収入率を設定しても、その根拠が問題となります。
(例)
総収入3818万円の場合、基礎収入割合を32%とした(大阪高裁平成18年1月18日決定)

基礎収入率

算定表公表時に示された基礎収入(収入から税金、社会保険料などの公租公課、被服費、交際費などの職業費、住居費、医療費などの特別経費を控除した額)は、給与所得の場合、42%(25万円の場合と推定する)〜34%(2000万円の場合)です。所得が増加すると基礎収入率は、逓減します。

この場合、基礎収入率を算定する式は下記のとおりです。

給与所得の場合です

計算例


父親の給与1億2000万円、母親の給与1100万円、母親に引取られた子供(3歳)1人の場合
1 基礎収入率(割合)を計算
  収入1億2千万円の場合
  上記計算式で計算すると、マイナスになるので、基礎収入率を0.2とする。
     収入1100万円の場合
  上記計算で基礎収入率は0.35

2 養育費の計算
@ 基礎収入を計算   父親の基礎収入=1億2000万円 × 0.2                 =2400万円   母親の基礎収入=1100万円 × 0.35                ≒ 385万円 A 子の生活費を計算                  55   子の生活費=2400万円 × ----------- 100 + 55        ≒ 852万円 B 義務者が負担すべき養育費を計算               2400万円   養育費=852万円 × --------------------              2400万円 + 385万円      ≒734万円(年額)      ≒61万2000円(月額)

公租公課などについては、具体的に計算する考え(C)

基礎収入を計算する式は、次の通りです。
給与所得の場合
基礎収入(42〜34%)=給与収入−公租公課(12〜31%)+職業費(20〜19%)+特別経費(26〜16%)
自営業の場合
基礎収入(52〜47%)=所得−公租公課(15〜30%)+特別経費(33〜23%)

公租公課とは、所得税、住民税、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)です。
職業費とは、サラリーマンの被服費、交通費、通信費、書籍費、交際費等です。
特別経費とは、家賃など住居関係費、保険・医療費です。

基礎控除からマイナスされる公租公課(場合によっては特別経費も)は、調停、審判にお いて義務者から提出された所得税確定申告書に記載されています。
収入が2000万円を超える給与所得者は、申告義務(所得税法120条、121条)がありますので、確定申告をしているわけです。
確定申告書で、公租公課(場合によっては特別経費も)の個別的な計算が可能です。
職業費については、仕方がないので、19%(2000万円の場合の率)を使います。義務者にとって有利な割合ですから、義務者は不服を言えません。
登録 2012.9.23
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