更新が滞ったのは、巷で話題の三井アウトレットパーク入間へちょろっと行っていたからです。
もちろん物見遊山や買い物目的ではありません。
仕事なんだよ、仕事。クソッ!
おっと失礼。ついついお下品になってしまうのも以下を読めばわかるでしょう。
仕事開始は9時半ですが、5時に起きなければなりません。まるで大阪へ行くような感じですが、単純に遠いわけではありません。食べ物屋がないので(施設内にはお客様用があるはずですが)お弁当を作らなければなりません。ま、これは毎日やっていることですが……。
打ち合わせなどがあるので、上番(業界用語・いわゆる出社、現場到着のこと)は30分前の9時。部屋を出るのは6時過ぎ。中野坂上で丸ノ内線から大江戸線に、さらに練馬で西武池袋線に乗り換えます。入間市駅からは西武バスに乗って目的地へ。
それぞれの乗り換え時間が問題なのであります。
地底を走る大江戸線はエレベータ表示では地下5階。プロトレックの標高計測では……(かんじんなところを覚えていない)。要するに地図では目と鼻の先が、実際は数倍の時間を要するわけです。中野坂上はいいんです。地下から地下だから。練馬は地下から高架線への移動のうえ、バカ設計者がぐちゃぐちゃに階段を作ったために歩く距離が長く、方向感覚も失います。
乗り換えのために地図上では南から北へ移動したのに、西へ行く電車が左から来るというのは感覚的にも変だと思いませんか。
問題は入間市駅。駅名が問題です。
そもそも包装に高級品と印刷された品に高級品があったためしがありません。○○銀座と大書きするのは銀座じゃありません。で、わざわざ「入間市」駅って、名前に「市」を入れてるのね。(^^;)
入間市の皆さん、ごめんなさい。でも、駅前の感じはどう見ても市じゃないわな。
バスの運行も同じ。1時間に2、3本しか走ってないんです。いや、かつての入間村の頃ならいいんだけど、国内最大級のアウトレットモールの開店時間に合わせて従業員さんたちも乗るわけなんです。その1時間に2、3本しか走っていないバスに。遅刻は絶対できないから、1本早めただけでも20分ぐらい違っちゃうわけ。で、今の時代に国内最大級のアウトレットモールを作れる場所と言ったら、駅から4km以上離れているわけ。やっぱり座っていきたいと思ったら、前のバスが出た直後ぐらいに駅に着かないとダメなわけ。
というのが5時起きの理由。
ついでに仕事は6時半に終了するのですが、帰りの状況もほとんど変わりません。数少ないバスにドドドと労働者が殺到するわけ。で、地上と地下の往復運動を2回半やって、帰宅できるのは9時前。翌朝5時に起きようとしたら11時には床につきたいわけで……2時間で何ができるんじゃい!
[寄り道]
大規模商業施設のオープン時に警備員が動員されるのはよくあることです。錦糸町「オリナス」の時も周辺の全横断歩道に数名ずつ配置され、歩行者誘導をやりましたし。しかし、今回の遠隔地には理由がありまして……巷で話題のガソリンなんとか、道路財源なんとか……。内燃機関を使わない私には関係ないと思っていたら、東京都の道路予算(多分800億ぐらい)が一気にゼロに。そして、4月から一般現場(これも業界用語かも)が限りなくゼロに近いほど激減。今更ながら、道路予算って新規に道路を造るためだけじゃないと学習しました。(^^;)
遠隔地でも仕事があるだけマシでして、私も2度ほど「悪いけど、明日は仕事ないから」を食らっています。
さて、現場の悲惨な状況はすでに報道されています。むっちゃくちゃな渋滞で、当然ながら周辺住民から苦情が出ています。でも、そんなの関係なーい。あたしらの仕事は駐車場の整理です。外の様子なんて知りたくもありません。
常設6カ所+臨時2カ所の駐車場は3000台以上に対応していますが、すぐに満車。1日ののべ台数にすると数えきれません。それにはちょっとしたカラクリがありまして、駐車2時間までは無料なんですね。平日など特に「あのクルマ、さっき入っていったんじゃね?」状態になります。つまり、ビンボー人が2時間以内に出庫して、近所を一周して再び入庫。\(^o^)/
おかげでオレたち、働き詰めじゃねーかよー!
普段は「はたらくじどうしゃ」ばかり見ています。それがアウトレットパークに来るのは「遊んでいるクルマ」がほとんど。あらためて日本は自動車だらけと感じます。いかにも燃費の悪そうなデカイクルマに乗っているのは一人か二人。ガソリン代が2倍になってもかまわんと思いますですよ。ツーか、自家用車と商用車で値段を変えればいいんでねぇの。
少なくとも私は、ドンガラのでかいクルマに乗っている御仁に地球環境がどうのと言われたくはないですな。
ついでにもうひとつの関東の新名所、六本木の「東京ミッドタウン」についても書いておきましょう。こちらはタクシーの配車係さんや住民の方と顔見知りになるほど、年末から何回か通っています。なぜか、こちらも使用交通機関は地下鉄大江戸線ですね。
東京ミッドタウンを見た第一印象。
「これって1日あればCGで作れるじゃん!」\(^o^)/
私の技術を自慢しているわけではありません。たとえば立方体はボタンの一押しで作れます。それを長く伸ばせば角柱の出来上がり。さらにコピーして等間隔で並べれば、モダンな壁面が完成。
モデリングの技術なんぞいりません。誰でも作れる、と言うか、CG初心者の一作目みたいな……。いやいや、高価なMayaも3ds MaxもLightWaveもいらねぇぞ。Bryceで作れちゃうぞみたいな……。


自分で言うのも何ですが、この印象、けっこう的を射ていたようです。
ミッドタウンを観察するとCADで作られたことが見え見えなんです。ま、現代の建物では当たり前のことですが、施設全体がCMD(コンピュータもろ出しデザイン)という感じです。インテリアにしてもエクステリアにしても、配置が三面図的。勝手な印象ですが、最初にイメージがあってデザインした感じを受けません。斜め俯瞰のパースなどは、コンピュータにぶち込んだ三面図データから起こしたという感じです。
たとえば歩道と車道を色違いの敷石で区別した箇所がありますが、これが目線ではよくわかりません。重箱の隅を突くと、正に隅の方に「何で色を変えてんの?」という部分もあります。導線が破綻している箇所も見られます。(ま、おかげでそれを直す仕事が発生している訳ですが)

これらの「変」は真上から俯瞰したと想像すれば解消します。無意味な色違いも、その先の区別の延長線上にあったのかとか。図面上ではきれいな曲線を描いていたのかとか……。
図形的、バランス的な整合性は見つかるのですが、そこには人間的な要素は入っていないようです。少なくとも私には経験による修正、心理学に基づいた手加減といったものを見つけられません。
うろ覚えエピソードですが、自動車のシートサイズを決めるために多くの人間からデータを集めて平均値を求めたまではいいのですが、その平均値ぴったりの人間はとても少なかったという話を思い出します。
あたし的表現を使えば「カルカッタと正反対の世界」\(^o^)/
でも、嫌いなわけじゃないんです。六本木から赤坂にかけての裏通りはお気に入りの散歩コースになりましたから。住民も都内某所よりまともだし。
そんな東京ミッドタウンですから突っ込みどころはたくさんあります。
喫煙する方はミッドタウン・タワー地下の喫煙所をぜひ訪ねてみてください。どこぞの会社の小部屋とは大違いの豪華な雰囲気に、かえってみじめさ3倍増です。
同フロアには自販機コーナーもありますが、見つけるのは大変です。通路の裏側に隠れていて、表には英語でvending machineとだけ記されています。これでは通り過ぎちゃう人が多いのも当然。つーか、どこの国の施設なんだよ。国際化つーなら、ハングル、中国語、スペイン語、ついでに日本語も入れておけよ。


情けなかったのが、外の巨大公園施設です。正確にはミッドタウンの施設と合体した港区の檜町公園なんですが、いかにも都内にありがちな(大名屋敷の庭に手を入れたような)公園を模しています。緑は豊かだし、四季折々の花は咲いているし、小川は流れているし、ぱっと見は気持ちのいい見事な公園です。だけど「模しています」ってバレちゃうんだよね。どこか豪華な喫煙所と似ています。
私としては勝手に植えられた植物が枯れることなく育ってほしいと願うばかりです。
ただし、池はダメね。底のコンクリートまる見え。ただの水たまり。図々しくも英語でpondと書いてあったけれど、それは枯れ葉がたまってヘドロみたいになった後の話。生態系の池になるのは何年先のことやら。それにしては底が浅すぎ。多分、無理だね。
ビオトープとして作られたなら、私の評価も180度変わっていたと思います。

とにかく、最近の施設におけるデザインってダメですね。特にシンボルのデザインは凝りすぎてわかりにくいか、何も考えていなくてわかりにくいか。試しにミッドタウンでトイレを探してみると案内板などのデザイン、色彩がペケで、一見しただけではわかりません。
一方のアウトレットパークは緑豊かな埼玉で、案内板の基調となる色がグリーン。あちこちで保護色を見つけることができます。\(^o^)/
アウトレットパークで特筆するほど最悪なのはバイクの駐車場。ついで駐輪場。
何たって素人さんに「このデザインした人間は絶対にバイクに乗っていない」と指摘されちゃっています。そのぐらい駐車場の体をなしていないのであります。
まず保護色看板でわかりづらい進入路。ママチャリ基準の狭い入り口と内部のレイアウト。そのくせ入り口と出口が共通ですから、中で取り回すのが大変。要するに団地の駐輪場そのまんまを想像すれば間違いないわけで、おかげで駐車料金が発生しないというヨロクもあったりします。バイクの駐車場にしてこれですから、駐輪場は推して知るべし。雨の日は来ないだろうという割り切りで、屋根はありましぇーん。
おクルマ様優先で作られたためなんでしょうね。バイクの駐車場は位置も悪いし、これから夏にかけて間違いなく不足するでしょう。立体駐車場だけでも3つあるのですからバイクを区別する必要ないんです。フロアひとつか半分をバイク用にして、それっぽく白線を描くだけの方が楽だったはずなのに。そんなことも気づかないおバカ設計者は顔をさらしてもらいたいものです。
アウトレットパークの施設そのものについては……1回も入っていないのでわかりません。(^^;)
余談をひとつ入れれば、最初に混雑を取り上げたのは毎日新聞。それからテレビのニュースなどが扱うようになりました。なるほど「ニュースソースは他社ニュース」という公式が証明されました。
繰り返しになりますが、こういう有名所を含めてあちこちに行けるのが、今の仕事を辞められない理由です。個人的にミッドタウンは何かのついでに寄ることも考えられますが、入間市にあるアウトレットパークへわざわざ行く必然なんてありません。
で、感じるのは紋切り型ですが「日本はダメだなぁ」ということ。
と言っても、私にとってはバブル期を挟んで二つの日本がありまして、ワシントン条約で保護されている日本人とは別の日本人が闊歩している今の日本、私に「在日日本人・日系外国人」を意識させる今の日本がダメだなぁということなんですが。


たとえば東京の東のはずれ、葛西なんかは好きな町です。道がまっすぐじゃないし、各家の駐車場に軽自動車ばかり並んでいる一角があったり。(道が狭くて普通車では通れないってことです)
しかし、デベロッパーと言うんですかね、町を作っちゃおうという人たちが作った町、たとえば多摩丘陵のほうの新興住宅地なんぞは、おもしろさのかけらもありません。いや、ないのはおもしろさではなく、商店です。町の仕組みもわからずに町を作ろうというのですからアホですね。
単純なのよ。ある土地に人が集まって住むようになり、人が集まったから店ができて、工場ができて、公共施設なんかもできたりする。それらが有機的に絡みながら営まれるのが人間の生活ってもんでしょう。それを住宅だけ作って人を集めようというのだから……。ほとんどのデベロッパーの発想は人が集まれば、その地域は町として機能するようになるというものでしょう。最近あちこちにボコボコ建っている巨大マンションの募集広告からもそれっぽい発想を見て取れます。
しかし、初めから整然と区画された住宅地に商店が後から進出するのは不可能です。結果、人が増えても便利にならない、何も変わらない。住宅地は住宅地のまま。はっきり言えば、その地域で人間としての生活は始まらない。

先日、卒論で団地を扱っているという学生さんと散歩中に出会ったのですか、もっと話をしたかったですね。(もし見ていたらメールをください)
団地と言えばバブル期以前という印象があります。まぁ、この団地も仕事上あっちこっちを見てきたわけですが、やはり商店との関係が気になりました。古い住宅だけの団地は、それなりに周囲の商店群との生活関係が成立しています。しばらくすると1階部分に商店が入るようになり、これは本気度で成功と失敗が分かれているように感じました。とりあえず商店的な、電気屋さんあります、米屋さんあります的な所はたいがい閑古鳥が鳴いています。やっぱりある程度の数がなければ(選択肢とも言えます)活気が生まれて来ないようです。


団地も新興住宅地も巨大マンションも、マクロの視点で「町の成立過程」を意識してデザインしないとただの箱を作っているにすぎなくなります。特に大切なのはノイズ混入の余地を残すということです。その点が、正に(我が故郷)カルカッタと正反対なわけであります。
だいたい人間なんて、人の思惑通りに動いてくれない生き物なんだからさ。
シンガポールは好きな街です。
意外に思う人がいるでしょう。あんな規則尽くめの近代的な都市国家。私もそう思っていましたが、訪れて印象が変わりました。それは「規則でガチガチに縛らなければならない人間が暮らしているのがシンガポールなのだ」ということ。ツバを吐いたら罰金、タバコを捨てたら罰金。つまり規則で縛らないと、平気でツバを吐いてタバコを捨てちゃうのがシンガポール人。\(^o^)/
人目につきにくい物陰に入ってみるとわかります。うわっ、吸い殻がいっぱい落ちてる。
シンガポールですら人の本性はそう簡単に変わらないと示しています。ノイズ混入の余地がない空間で育った人間はどうなってしまうのでしょう。もともと日本人は従順な性格のうえ、それをさらに強いるように社会システムが変わってきました。ストレス、たまりますよね。その結果が世界に冠たるエロ国民。誰でも大好きパチンコ、ギャンブル。クルマをぶっ飛ばすぜ。お楽しみは買い物。異常犯罪の多発……等々。
これって、犯罪を除けば国家としては経済が動くから大歓迎なわけですね。
(だから、私は今の日本のほとんどの風潮についていけない……)
カルカッタに代表されるアジアの活力とはノイズの力でもあるのです。
ビルの階段の脇に露店を出して、通路で料理を作って、踊り場に小屋建てて、道ばたの井戸で体を洗って……これらはどれも建てた時には想定すらしなかった使われ方です。そして日本では見られない光景です。
衛生上、宜しくない?
そうかもしれません。しかし、免疫力を培うという意味では、無菌・抗菌の空間で育った人間よりも優れていると言えないでしょうか。少なくとも、昔の日本には今ほどアレルギー体質が多くなかったと思います。「衛生上」という観点からすると、本当に宜しくないのでしょうか。

東京ミッドタウンは都市の中の都市開発。野原に高層ビルを建てたのではなく、既にある六本木という繁華街に位置しているのが救いかもしれません。コンクリートの水たまりが池になる頃、建物の老朽化が進んだ頃に良い味が出るかもしれません。まあ、多摩ニュータウンの二の舞になるという未来図も描けないわけじゃないんですけど。
アウトレットパークはおもしろみ皆無の住宅地に住む人がクルマで出かけるには良い所なんでしょうね。その意味では(既に東京近郊に頻出していますが)日本的都市発展の正統な延長線上にあります。でも、飽きられたらおしまいよ。店は多くても繁盛しているのは100円ショップだけとか!
それよりも夏になったら横浜某所みたいな暴走族のたまり場にならないって保証あるの?
いずれにせよ、私の関心はノイズが混入するか否かにしかありません。
ミッドタウンはその隙だらけのデザインによって、アウトレットパークは地の利の悪さによって、多少は希望が持てそうな気がするのですが……。
[080505]