
【GWの読書】
最近、本のアタリが続いている。最長10連休のGWに合わせて10冊紹介するつもりだったが、1冊だけ市販されていないようなので半端な9冊を御紹介。(『鮮麗なるアフガン』は東京外語大でアンケートに答えて貰ったもの)
いずれも最近(私の場合2年間ぐらい)買った本だが、最近の出版ではないことをお断りしておく。
・子供の底力

『こどもの発想』アスペクト 1000円 ISBN978-4-7572-1848-2
『コロコロコミック』の投稿ページをまとめたもの。秀逸なのは「まちがえて答えなさい」という設問。正に子供の発想のオンパレードである。ただし、間違っても子供らしい純な回答を期待してはいけない。それは大人の勝手な期待・思い込み。遠慮ない本音の発想は真逆の世界なのだ。
お母さん。あなたのお子さんが「ウンコ、チンコ」を連呼しても気にすることはありませんよ。それが子供らしさなのですから。

『爆笑テストの珍解答500連発2011』 鉄人社 476円 ISBN978-4-904676-12-7
『こどもの発想』を買いに行ったら、隣りに平積みになっていた。書店よりもコンビニで売られていそうなパチモンである。しかし、こちらのほうが笑いのツボに入った感じ。畑正憲の名前を問うたら「陸奥五郎」とかネ。
問「最近(2008年6月頃)ガソリンが高騰していることについて、どう思いますか?」
答「子供が口出しすることじゃないと思う。」(千葉県中学校)
なるほど。

『川島小鳥写真集 未来ちゃん』 ナナロク社 2000円 ISBN978-4-904292-09-9
表紙写真の表情の素晴らしさ。1冊だけ選べと言われたら、絶対にこの写真集。3歳児(多分)は何をするにも全力であることがビシビシ伝わってくる。撮影地は佐渡島らしいが、ほとんどの写真から昭和の臭いが漂ってくる。家庭内もかなり散らかっているし、全然よそ行きじゃない。昨今は「元気」がキーワードになっているが、これこそ本物の元気。
(作者の師匠は沼田元気さん。盆栽パフォーマンスが懐かしい)
・わかる人だけ笑えます

『もえたん』 三才ブックス 1143円 ISBN978-4-915540-97-4
一時期話題になった大学受験用の参考書。アカタン、デルタン、そしてモエタンである。ただし……論より証拠で例文をいくつか紹介。
「科学戦隊と合体ロボットは、切り離せない関係にある」
「近年は「18才以上で身長140センチでランドセルを背負った女の子」などが登場し、ゲームキャラの設定がややこしくなりつつある」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
そう、もえたんとはオタクに特化した『萌え単』なのである。それぞれの英文を読むと再び爆笑。これは外国人に「日本の参考書だよ~ん」と紹介してみたい。目を白黒させることだろう。

『地球の歩き方 aruco インド』 ダイヤモンド社 1200円 ISBN978-4-478-05817-6
冗談で「こういう切り口もできるよな」と思っていたことが、それだけで1冊のガイドブックになってしまった。「旅好き女子のためのプチぼうけん応援ガイド」は前代未聞、オシャレで明るく楽しいインド案内である。ある意味では目から鱗なのだが、むりやり拡大した2%の外に広がる98%を知っている者には「これ信じてインドへ行って大丈夫?」と思ってしまう。だけど、こういうノリの旅行者がこれから増えていくのかなぁ……。
・意外でしょ

『隠し剣弧影抄』藤沢周平 文春文庫 629円 ISBN978-4-16-719238-9
小説はあまり読まないのに、よりによって初めての時代小説である。帰りの電車の暇つぶしに東村山の書店で買ったのだが、これがおもしろい。なるほど、ドラマや映画の作り手が喜ぶわけだ。話の展開、行間に働かせる想像力、読後の余韻……正に上手な小説って感じ。

『カンブリア紀の怪物たち』サイモン・コンウェイ・モリス 講談社現代新書 940円 ISBN4-06-149343-4
古本屋の100均ワゴンで購入。カンブリア紀については何も知らない。だから手に取ったのだが、すごい時代があったのねとビックリ仰天の連続。読み終えたら忘れてしまうのだろうが(実生活では何の役にも立ちそうもない知識だし)、ある意味では読書の楽しみを満喫できる。
・本音

『超難問ナンプレ130選』 永岡書店 400円 ISBN978-4-522-42617-3
しばらく前からナンプレにはまっている。最近の楽しみは鉛筆片手にぬるい湯に浸かりながら問題を解くこと。何冊もシリーズで出ている内容はどれも同じようなものだが、これは超難問集。きつい。1日で1頁(1問)進めばいい方だから、半年は楽しめる。時間に換算すると、こんなに安い本?はない。

『Photoshop CS5 マスターブック』毎日コミュニケーションズ 2380円 ISBN978-4-8399-3575-7
人にはおもしろ本を薦めておきながら、私が連休中に読むのはこれ。定番ソフトを数年ぶりにバージョンアップしたら、基本的なメニュー内容などが変わっていた。紙もPDFもマニュアルは付いてこないし、仕方がないから基本から復習。変更された基本部分を知るには「ファイルを開いてみましょう」から読まなくちゃならない。苦行に近い。
[110502]

【 2010のお気に入り 】
[リアリズム・Vue]
3D景観作成ソフト『Vue』を導入した。2回目の乗り換えである。
ソフトの栄枯盛衰もハードの進化並にめまぐるしく、嚆矢・Bryceは突出した個性で群を抜いていたが、開発元や販売元のたらい回しを喰らって失速。無料配布までされる凋落ぶりに呆れた頃、Terragenを知って移行する。
映画制作にも使われるほど勢いがあったTerragenは企業のプロダクトではなかった。元々はイギリス人学生の卒業制作で、WindowsからMacへの移植もニュージーランド人が行なっていた。ついでに言えば、Mac版の日本語化作業はβテスターグループに参加した私がやっていた。(笑)
日本語版は完成間近だったのに、最後は夥しい仕様変更に翻弄された。挙げ句にすべてを一新した新バージョンが登場。これがなじめなかった。さらにオリジナル開発者のマットが就職すると開発のスピードが落ち、いつの間にかサスペンド状態になり、気がついたら10年近くが経過。
そして、今回のVueである。乗り換えとは学習のやり直し・蓄積の放棄を意味するから本当はやりたくないのだが、この10年の間にVueは驚きの機能を次々に搭載し、いつの間にか定番の位置へ。(ついでに値段も高騰)高性能の誘惑に逆らえなかったと言うより、自分自身の停滞も払拭するにはこのぐらいの刺激が必要だったのである。
実際に手にした感想は……凄い。
Vueの特長はある機能が他よりも優れている点にあるのではない。他のソフトが苦手にしている、搭載していない、実現不可能な機能にVueならではのメリットがある。
たとえば作り手泣かせの対象に雑草がある。街路樹だったらモデリングした樹木ひとつをコピーして並べるだけで何とかなる。しかし、雑草となると見る側の感じる不自然さが簡単に許容を超えてしまう。縦横の比率を変えたり、回転させたりの小手先のバリエーションでは簡単にコピーであることがバレてしまうのだ。さりとて葉っぱの1枚1枚をきちんと作っていたのでは手間が大変だし、自然界のランダムな感じを出そうとしたら……。

まあ論より証拠で、Vueによる雑草である。基本はコピーなのだが、実に複雑な技術が投入されている。詳しいことはわからない。わからなくても、これが簡単にできてしまう。さらに作った樹木などを風にそよがせることもできてしまう。もちろん雑草を敷き詰められ小石に変えてもいい。あるいは無数の住宅、渋滞したクルマ、群衆なども表現できる。しかも、消費メモリは驚くほど少ない。ただし、仕組みはよくわからない。その技術にただ驚くしかない。

2作目でここまでできた。

こちらは特殊な照明効果。遥か昔にSTRATAで同じような作品を試行錯誤で作ったことがある。手順は割愛する。小難しい理屈とウンザリするほど長い説明が必要になるからだ。制作に要した時間も同様に長い。そしてVueでは、これまた簡単にやってしまうのである。
正直言って、今のところVueの機能は底なしの状態。あれもこれも調整できるから試すだけでも恐ろしく時間がかかる。
欠点もないわけではない。いちばんの問題は不安定で、よく落ちる。いくら動作が高速でも、あれもこれもと複雑な設定をしていけば遅くなる。
しかし、これらは通ってきた道。ある種の懐かしさすら感じているから「昔のグラフィックソフトはこんなもんだったのである」で済ませられる。済ませたくないけどね。
自分の思いどおりの(リアリズム)表現を獲得できたら、次が本当の問題だ。さて、何を表現するためにこれを使うのか?

植物がとにかくリアルで、しかも美しい。

空や雲の表現だけで複数のアプローチがある。結果はご覧のとおり。

[過剰なリアリズム]
『獣の奏者・エリン』総集編に始まった2010年のアニメライフ。お気に入りのひとつが「天体戦士・サンレッド」だ。再々放送ぐらいがBS8で始まるので、気になる方は要チェック。
ズバリ、設定の妙である。くだらないほどのリアリズムがとにかく笑える。ありがちなヒーロー物でありながら、舞台は川崎市溝口周辺にほぼ限定。主人公はマスクこそ被っているもののTシャツにサンダル。正義の味方ではあるが、実際はケンカが強いだけ。定職も持たず、恋人のマンションに居候で、昼間からパチンコをしているだけの……まあ、そんな存在。
悪の組織フロシャイムは賃貸の木造一軒家を拠点。きちんと近所付き合いもするし、怪人たちもスーパーなどでアルバイトしているから、むしろ世間的にはこちらのほうがまともである。
善と悪の壮絶な闘いと言いながら、実際は近所の公園や河原で……一方的に悪がボコボコにされるだけ。そのくせ異常なまでに如才ないバンプ将軍は他の支部から送られてきた地域の名産をレッドのマンションに届けるなど、互いの関係は「なれあい」的な。決闘以外では一緒に食事もしたりする。
その他サブキャラについてなど、細かく挙げていくとキリがないほど過剰なリアリズムが一貫している。
放送を待てない方はこちらのサイトへ。

[新しい楽器]

今年の夏からヴァイオリンの練習を始めています。
楽器に対する思いはかなり以前から深いものがありました。快感と深く関わる鋸歯状波の音色は音域的に女声に重なり、バッハの協奏曲(特に第2楽章)は聴いているだけで恍惚の状態に陥ります。まあ、下手な演奏で思いを汚したくないと申しますか、ひとつぐらいは弾くのではなく聴くための特別な楽器があってもいい、一生「高嶺の花」にしようと思っていたのですが……。
ご大層な思いを覆したのに、購入の理由は自分でも呆れるほど浅いです。早い話が、よくわかりません。ほとんど発作です。勢いです。
CDにするために生録したサーランギー(ヴァイオリン属の民俗楽器)の音を聴き続けたこともあるでしょう。あるいは横浜を散歩していた時に、なぜかホテルの正面階段の上で生演奏が始まったこともあるでしょう。
いやぁ、あれは素晴らしかった。凡百のコンサートも適わない。日常的な風景の中に実に力強い響きが渡っていくのです。生のオーケストラは何度も聴いたことがありますが、たった1本のほうがいい。初めてヴァイオリンの音色に触れたと言っても過言ではありません。そして、心から敬服しました。こんな思いをした楽器はかつてありません。
で、下世話で直接的な話に戻ります。実はセミアコースティックのエレキギターを購入するはずで、機種もほぼ決まっていました。が、あれやこれやがあって、いつの間にかサイレント・ヴァイオリンと呼ばれる(これはヤマハの製品名)エレキヴァイオリンを手にしていたというのが真相。あれやこれやは具体的に書くとだらだら長くなるので割愛。要するに、ダメな時はダメな流れが不思議と続いて、結局はダメってことでした。
まあ、サイレントなら周囲の迷惑にならないだろうと(むしろ恥ずかしくないだろうと)敷居がひとつ下がり、さらに高価と決めてかかっていたヴァイオリンもサイレントならギター並みの値段と判明。さらにひとつ敷居が下がり、これにて決定みたいな感じでしたね。
自分で勝手に高い壁を作っていたくせに、決めた瞬間は……初めて海外放浪を決めたのと同じ感覚でした。日常の風景が違って見えるような、パースペクティブが変化するような、何か根本的なものが劇的に変わったような。
エレキヴァイオリンならジャン・リュック=ポンティのアルバムがかなりあります。スブラマニアムはコンサート(実際は坂本龍一の客演でしたが)へ行っただけでなく、楽屋で話もしました。弟シャンカールのアルバムもあります。ステファン・グラッペリとかダロル・アンガーとか……オレもこっちの世界からあっちの世界へ踏み入れるのか。
嗚呼、万感の思い。
難しいよ。全然進歩しないよ。レパートリーは童謡しかないよ。
白状すると、なめていました。
ギターやシタールなどの楽器は独習でそれなりに演奏できるようになりました。同じ弦楽器ですから、右手の弓の動きさえマスターすればヴァイオリンなんか簡単に弾けるんじゃないか。とりあえず楽曲集を買って、片っ端から弾いていけば演奏法は自然に身に付くだろうと。
いざ始めてみると、ゼロどころかマイナスからのスタートになろうとは……。こんなに難しい楽器とは想像もしませんでした。
(ついでにサイレントは誇大広告で、それなりの音量が出ます。生で弾いたエレキギターの比ではありません。)
ギターに比べてネックの長さも違うしフレットもありませんから、最初はヴァイオリンならではの運指を覚えなければなりません。と、まあ、その程度は覚悟していました。が、チューニングが全然違います。ギターなら上からE,A,D,G,B,E。ベースだってD,G,B,E。ところが、ヴァイオリンはG,D,A,E。「そんなことも知らないで始めたの?」と笑われそうですな。トホホ。
たとえばFからGに移る時。ギターなら人差し指から薬指と身体が覚えています。自然に動くからこそアドリブもできます。が、ヴァイオリンでは人差し指から中指。これがダメ。弦を跨いだ運指になるともっとダメ。
ひとつひとつ頭で確認しながら指を動かすのがゼロからの出発なら、私の場合は「ここは薬指じゃなくて中指だぞ」と自然に動いてしまう指にダメ出しをしてから、正しい運指をしなければなりません。制動をきかせるためのアクションがひとつ増えてしまうんですね。ついでにネックが短い故のちまちまとした指の動きにストレスが溜まっていきます。
当初の計画というか夢は早々に諦め、今までの楽器での練習法を全部改めることにしました。自己流から離れた初めての正攻法での練習です。
私、お稽古事って嫌いなんです。だって、楽器でしょ。楽しむためのものでしょ。お手本どおりに弾いて優劣を競うなんて、試験のために英語を勉強するようなものじゃないですか。答えはいくつもあるのが表現です。
ピアノで言えばバイエルに相当する幼児用の教則本を手に入れ、ついでに譜面立てまで購入。練習曲は定番『キラキラ星』に『ちょうちょ』『こぎつね』。しかし、日々の練習の中心は曲を弾くことより単調な音階の繰り返し。バリエーションだけはサントゥールなどを参考にしていますが、今はヴァイオリン独自の運指を身につけること。自分が納得できるまでスポーツの前の柔軟体操的な音階のみ。それにしては秋になっちゃいましたが……。(そのまんま冬になっちゃいましたね)
童謡なんて最初の数日だけやれば十分と思っていたのですがね。
ついでに、最近は変な音まで出るようになって。最初の「オレでもこんだけの音が出せる」と感動したのは何だったのでしょう。無意識に演奏した方がいいのですかね。ホント、難しいあるよ。
目標・自分の曲ぐらい自分で弾けるようになりたい!

[マニアックですまん・真空管]
オーディオを趣味にしている人は原題の珍種である。真空管アンプを使っている人は希少種である。真空管の種類にこだわってる人はワシントン条約に登録されるかもしれない……と承知の上で、年末にお宝を発見して浮かれています。
TRONALはロシアで生産され、ベルギーで選別されたという(だから何なのという突っ込みを入れたくなる)真空管で、秋葉原ではラジオデパートのキョードーという店だけが扱っている(はずの)マイナーな存在です。しかも格安なので、手を出すには勇気がいるのですが……。「意外といいんじゃないの」が第一印象。
[ネットで調べると、通販している店がいくつか見つかりました。ただし、価格はキョードーのほぼ倍額。格安とは呼べず、価格なりの良い音と評価が変わってしまいます。やっぱり最後に笑うのは足と経験ですな]
ついでながら、TRONALはあまりにもマイナーな存在なので、ネット上にもまともな評価がありません。いわゆる人柱として自分で検証するしかないのです。
さて、最初に手に入れたEL-34が好印象で、他社製と比較して評価がより高まり、それではということで師走に入ってからまとめて3種類買ってみました。この中で本命の6L6GCが大当たり。即日、我が家のメインの座を獲得しました。さらに予想外だったのが、インテリアを変更したついでにSX-511をニアフィールドで聴いてみると……楽曲作成用のモニターとして最適。非力な卓上モニターの調子が悪くなって買い替えを検討していたのですが、それ以上の結果を得ました。
それにしても設計は同じなのに作る会社によって音が違ってくる真空管は本当に奥が深いなと痛感。

[2010年の小説とかDVDとかCDとか]
小説は読まなかったですね。読んだのかもしれないけど、印象に残っているのはジェイムズ・P・ホーガンのSFぐらい。もちろん新作ではなくて、既に評価の高い『星を継ぐ者』のシリーズです。
DVDは『薔薇の名前』が最も印象に残った作品でしょうか。ぼちぼちと揃えている『冒険野郎マクガイバー』のシリーズも終盤に差し掛かって勢いがなくなってきたのが残念。今思案中なのは『シベールの日曜日』。980円ぐらいで売っていそうですが、長らく幻の名作と言われていました。初のDVD化を待つまでもなく私はビデオ録画していたのですが……息をのむほど美しいモノクロームの映像を楽しむには画質が……冒頭の夜景のグラデーションで落胆してしまいます。ですから、速攻買いなんですけど……ヒロインのパトリシア・ゴッジは世界一の美少女と思うんですけど、やっぱり演技はダイコンなんじゃないかなと。DVDを買うと評価が確定すると思うので、我が幻の名作の位置から落ちちゃうような恐れが……とウジウジ悩んでます。(笑)
さすがにCDまで低調というわけではありません。ただ、アタリが少なかっただけ。
ジャズ関係は数だけ増えました。日本の流行歌は聞きません。岡崎律子さんはやっぱりいいです。そうだ、生誕何とか記念のショパンの2枚組は買いました。「猫に小判、オレにヴァイオリン、輪をかけてショパン」って感じでしょうか。良いのだけど、やっぱりピアノはドビュッシーだわ。
特筆するとしたら、どうしても国内で入手できないのでアメリカから取り寄せたオスカー・ロペスの『Seduction』です。数年前から欲しかったアルバムだから、当然ながら新作ではありません。
単純に、オレ好きです。しかも、アルバム全曲。
ニューフラメンコと笑われても、アルバムをあまり人に見せたくないルックスでも、曲が「いかにも」の感じでも、理屈抜きで好きです。前作(日本で入手)の中には昼のドロドロ愛憎ドラマの主題歌に使えそうな「いかにも」の曲がありましたが(しかも複数)、今回は80年代あたりの大手化粧品のCMに使えそうな曲(たとえばRosa Rose)が複数あります。もしかしたら使われていたかもしれません。そのぐらい「いかにも」で「はまっている」曲です。
生ギターでラテン。私のアレンジに影響を与えているのは言わずもがな。
[2010年のベストプレイス]
今年撮った写真をざっと眺めましたが、相変わらず仕事で遠隔地へ行かされています。埼玉県草加市、神奈川県の川崎と横浜、東京では立川や八王子等々。
地名から都市部へ行っていると誤解なきよう。横浜といっても戸塚周辺の丘の上だったり、立川からモノレールに乗った終点だったり、八王子からバスに乗った終点だったり。遠隔地というより僻地と呼んだほうが相応しい場所ばかりです。ま、それだけ意外な発見の連続が多かったわけですが……。
印象に残っているのは花小金井のカメ専門店。中目黒や桜ヶ丘の超高級住宅街。家がでかい程度では驚きませんが、窓ガラスが美術館みたいに巨大だったり家の外壁が石垣だったり(城か!?)、いやはや金持ちに対する概念が広がりましたわ。哀しいのは「山の中」という印象は強烈でも、それ以外が希薄な地域。そういう所に東京の大学の多くが移転しています。
多分、僻地へ行かされた反動でしょう。初めて歩いた天王洲アイル周辺がなかなかの好印象。運河周辺の景色はどこかの地方都市へ行ったみたいでした。ちゃらちゃらした人間だらけの数年前だったら、絶対に嫌っていたと思うのですが……。ブームが去ったおかげで、こういう形の都市計画もあるのか(地上に降りずに空中の通路だけで街が歩けるとか)と感心しました。
年の後半は落とした携帯の代わりに購入したiPhoneで撮影することが多くなりました。派手な発色はデジカメに遠く及ばないのですが、写真にGPSのデータを貼付けてくれるのは感激ものです。
[本場の味・ヴェトナムのフォー]
袋を開いた瞬間に感動できるなんてめったにありません。それもインスタント麺の話。
高円寺駅前の輸入食品店は正に宝の山。格安のレギュラー珈琲缶からタイのグリーンカレースープのインスタント麺、インドのレトルトカレー。行く度についつい余計なものを買ってしまい、そのまま我が家の常備品に格上げされます。
件のインスタント麺はヴェトナムのフォー。最近では珍しくもなく、日本の食品メーカーから何種類も出ています。だから、最初はお試しのつもりで鶏とビーフをひとつずつ買ってみたのですが……。
袋からたちのぼってきたのは、正に本場の香り。バンコクの中華街ヤワラーを歩いていると、大衆食堂から漂ってくる「あの臭い」そのもの。食堂に入れば、その臭い一色。異国情緒を誘い、皮肉なことに日本のエスニック料理店に欠けている臭いでもあります。
調理法は簡単。チキンラーメンと同じで、丼に入れたらお湯を注いで蓋をするだけ。待つこと3分。これぞ本物。意識は完全に東南アジアに飛んでしまいます。好みに応じて砂糖(笑)やナンプラーを入れれば、本格度も増します。
このインスタント麺の肝である臭いの正体はパクチー(=シャンツァイ・香草・コリアンダー)。
実は、この臭いがダメで本場でタイ料理が食べられないという日本人はけっこういるようです。だから日本の店でも控えめにしか使わないようです。確かにクセはありますが、これは言わば日本蕎麦におけるネギみたいなもの。長らく無意識に感じていた不満の正体を、インスタント麺が明かしてくれたとは。
[オマケ・お気に入りのおバカキャラ]
映画『マダガスカル』からのスピンオフ番組『ペンギンズ』の制作は『シュレック』と同じプロダクションです。これだけで、いかにアクの強いコメディであるか容易に想像できるでしょう。キャラクターはいずれもクセのある愛らしい造形と個性に満ち、主役の4匹のペンギンの中でもグエッという声とともに口からチェーンソーや爆弾などを吐き出すリコのグロ具合はたまりません。
とりわけお気に入りなのは大きな目をしたコビトキツネザルのモート。小さな脇役なので時に出番がないこともあり、その日はとても損をした気になります。モートの愛くるしさはピカイチですが、とにかく役に立たない、な~んも考えていない。頭が痛くなるほどのオバカキャラ全開。キツネザルのキング・ジュリアン(自意識過剰の暴君)にべったりで、隙があればいちばん好きなその「足」にしがみつこうとします。ウットリとした目とけいれんを起こしたような動きは愛くるしい……と言うよりやっぱりおバカそのもの。とにかく強烈です。
ついでに計算高いカワウソのマリーンもいい味を出しています。まあ、百聞は一見。(現在はBSで放映中)
[110101]

【 2009のお気に入り 】
中途のままの文章がたまってしまったので、今年の総括みたいな形で大放出してみようかと。10揃わないはずでも、最初はベスト10形式で。
●09年のザ・ベスト【 for RITZ 】
『獣の奏者』と迷いに迷った末の年間ベストです。岡崎さんのアルバムはこれが最期、次はありませんからね。それと半年経過しても色褪せない、むしろ音楽としての魅力がじわじわと染み出してくる本物の素晴らしさから。
(ふぇいばりっと2008〜参照)
●09年のベスト小説&アニメ【 獣の奏者 】


講談社文庫[う59-1/629円 う59-2/695円]
NHK教育で始まったアニメを何となく見始め、何となく良いなぁと思っているうちに、傑作の予感みたいなものを感じ始め、それは回を増す毎に加速度的に膨らみ、予感は確信へ。子供向けアニメでありながら、物語は実に骨太です。
そして、ただストーリーを展開する類いの小説だったらと危惧しながら手にした原作の予想を超えたおもしろさ。緻密な展開。複雑に張り巡らされた伏線。アニメの魅力が少しずつ伝わってきたのとは反対に、小説は冒頭から全開でした。簡潔な文体も塩梅が最適で、上下+続編を一気に読んでしまいました。最後の最後で一気に世界が全貌を現す展開と、後から気づかされる丹念な伏線には唸ってしまいます。
たまにこういった作品と出会うと、新鮮な驚きを少しでも奪ってしまうことに後ろめたさを感じ、説明は一切しないで人に勧めることにしています。信じる者だけが恵まれるということですね。『獣の奏者』に関しては、ラピュタよりもナウシカが好きな人には絶対にお勧めと言うに留めます。後は想像を絶するほどのストーリーテリングの妙にどっぷり浸っていただきましょう。
そうか、主人公エリンを「今年のベストキャラクター」に選んでも良かったですね。エリンには聡いという表現が適切かもしれません。特に少女時代はいい。あるがままの自然と動物を愛する心と、命の有り様を知りたいと思う心。そこに聡明さが加わることで、虫愛ずる姫君の系譜につながるナウシカの直系となります。
この作品に不満があるとしたら、主人公エリンに対する作者の扱いでしょう。ネタバレは避けますが「おいおい、そこまでいじめるなよ」と何度思ったことか。わずかな希望の光を与えた直後に奪い去って闇をより濃く描く。手法としては見事で、こちらの胸もズキズキと痛むのですが、残酷な作者が嫌いになりそうです。(笑)
年始にアニメの総集編が放送されましたが、年間ベストなら小説かな。
魅力がまったく褪せていない続編もあり、シリーズ4冊は絶対にお勧めです。


[講談社 探求編・完結編 各1600円]
[編集したアニメの総集編は1月9日からNHK教育で]
●09年のベストDVD【 該当なし 】
『STARGATE-SG1』『ブレインストーム』『インド夜想曲』『冒険野郎マクガイバー』『ブラザーグリム』『2001』『ブレードランナー』等とぽつぽつ買い続けました。しかし、図抜けた作品はなかったです。『マクガイバー』を除けば、いつも廉価版の棚からの選択なので偏ってしまうせいもあるでしょう。
そこで少し趣向を変えて
・今年の期待DVD【 ジェイコブズ・ラダー 】
録画したビデオテープの7割を廃棄しようと仕分けをしていたら、長いこと気になっていた『ジェイコブズ・ラダー』が出てきて驚きました。存在を忘れていたのは、前アパートで受信状態最悪の時期に録画したから。しかもCMの多い深夜放送枠だったので、保険をかけた3倍速録画。実際、画質は最悪。
監督は『危険な情事』のエイドリアン・ライン。主演はティム・ロビンス。売れる前のマコーレー・カルキンも登場しています。が、そういったデータは忘れる以前に頭に入っていません。記憶に残っているのは不気味な映像の断片と、それに矛盾する感動の印象……しかも感動した印象に具体性がないのも不可解で、だから気になっていました。
ストーリーは単純で、身も蓋もない言い方をするとヴェトナム戦争で負傷した兵士が死ぬまでに見る世界。
ところが、映画独自のカットバックやモンタージュなどの手法が重なるために観ている側は現実と幻覚の区別がつかず、サスペンス映画なのかオカルト映画なのか、さらに映画の中で主人公が生きている時代すらもわからなくなってきます。
期待のDVDに選んだのは、この作品にサブリミナル効果が用いられているという噂によります。何となく納得しちゃうところがあるんですよねぇ。そもそもこの作品がやたら印象に残っているということ。ラストシーンに涙が出そうなほど感動してしまうこと。名作なのか、仕掛けられた感動なのか。気になります。いちおう高値で市販されているので、廉価版になったら速攻ゲットです。
・悪のりしてもう1本【 バーバレラ 】
年末に100本ぐらいビデオテープを処分しました。ドキュメンタリーの紀行番組は「今後行きそうもない所」を、映画は「買えるもの」は捨てるが基本です。テレビの○○映画劇場なんて二重音声のおかげでステレオじゃないし、放送時間の都合で勝手に編集されています。本当に見たければ金を出せばいいだけのこと。
ところが、本の整理と同じで分別中に見たくなっちゃうんですな。
ついでに調べちゃったりすると、驚いたことに『カトマンズの男』や『シティ・オブ・ジョイ』(未録画)などまだDVDになっていない作品が意外に多いのですね。で、処分から保存へと格上げ。
というわけで高画質で録画した名作の多くがゴミ、低画質のB級が保存という本末転倒になってしまいました。
本題の『バーバレラ』は廉価版売ってました。(いきなり矛盾!)
SFでもなければ、ファンタジーでもなく、これは『お色気映画』です。ついでに言えばエロ映画でもなく、ポルノでもなく、お色気映画。冒頭からして(この映画の最高シーンとしてあまりにも有名な)無重力ストリップですから。
いや、映画でもないなぁ。だって、ストーリーはくっだらねぇし、セットはチープだし、主演のジェーン・フォンダ(この映画への出演は「騙された」と本人が言っているそうな)しか見るものないんだもん。
ただし、60年代のポップカルチャーの結晶として見ると、エド・ウッドの映画みたいなセットも意図的かもしれないし音楽や美術はスゴいとしか言えない。特に今見ても古びた感じのしない衣装は、それだけ後に与えた影響が大きいということ。同時代のパリコレの映像見たって古臭いだけだけど、こちらはジェーン・フォンダが実にかっこいい。やっぱ、DVD買ってみよう。
●09年のベストプレイス【 上中里から駒込へ 】
今年も一都三県東西南北あちこちへ行きました。最近では完成間近の羽田空港の新管制塔とか実寸ガンダムのあった台場潮風公園とか。小学生の社会科見学以来の日野自動車。夏場は主に埼玉県の特記事項ゼロの地域。これもかなり気に入ったのですが、いかんせん特に書くことがありません。(笑)
上中里は2年ぶりに訪れ、印象以上におもしろい「昭和の東京が残っているだけではない」地域と再認識しました。そのほとんどが個人的なツボにはまっているという理由なので一般性を持ち得るのか不安ですが、暗箱カメラ抱えて撮影しているオタッキーな外人さんもいたから「旅人の目で見るとおもしろい」のかもしれません。
無知故に驚いたのが、上中里からもうひとつのお気に入りである駒込へ続くルートがあったこと。都会の地理感覚は交通機関の駅単位になっているので盲点でした。
いずれカメラ片手に散歩しますが、普段着の姿を見るために平日に歩きたいんですよね。いつになることやら。

特にお気に入りではないけれど、台場地区は仕事で定期的に通っています。
●09年の期待はずれ【 横浜中華街 】

地下鉄副都心線ができて我が家から渋谷(大嫌いな若者の集まる街)へ出るのが楽になり、その渋谷から横浜……しかも中華街へ1時間で行けるようになりました。中華街へ行きたいと望みつつ、躊躇させていたのが何かはわかりません。ようやく重い腰を上げることができたのですが、駅の外に広がっていたのはチャイナタウンでした。
ハウステンボス、TDL、USJみたいな(どこも行ったことないけど)テーマパーク。日本人がイメージする中華街に巧妙にアレンジされたチャイナタウンという名のテーマパーク。
だって、そうじゃない。中華街って変な臭いがするからいいのに訳のわからない漢方の臭いがない。いたる所にメシ屋があるのに、料理の臭いすら漂ってこない。街全体に抗菌処理されているんですか。ミョーに変だなぁ、イヤだなぁ、怖いなぁ。と稲川淳二風に思いながら店を覗いても、私の欲しかった中国の日めくりカレンダーなんて売ってない。安っぽいブリキのおもちゃも目につかない。あるのはプラスチック製のかわいいストラップとか、いかにも日本人観光客が喜びそうなステーショナリーとかファンシーグッズみたいなカタカナ商品ばかり。
ああ、尊大なる中華思想も日本じゃ生き残れなかったのか……。地元の人のための食品店でお菓子を買ってきましたが、収穫はそのぐらいですね。平日に再訪するまで断言は避けますが、間違っても休日に行く所ではないようです。
●今年の期待音楽【 ショパン 】
好きなクラシックの音楽家はドビュッシー、チャイコフスキー、バッハ、ラフマニノフ。これは即答できます。後は現代音楽のスティーブ・ライヒやヴィラ・ロボスなどをぽつぽつと挙げられるぐらい。
自分でも意外に思うほど、気になっていたのがショパン。なぜと問われても理由を答えられないから意外なのです。CDは1枚も持っていません。まあ、機会があったら一度聴いてみようかなと思っていましたが……。
来年は生誕200年だそうで、格好の企画盤が出ました。それが『永遠のショパン』2000円也。しかも2枚組。まるでディアゴスティーニ価格ではありませんか。さらに驚いたのが、演奏者が超一流揃い。
さわりを聴いた限りは……いいですね。最近作っている曲はピアノを多用しているので、楽器の響きには特に注意がいき、そして魅了されます。
●09年のベスト食【 思いつかない 】
めったに外食しませんし、特に新しい料理に挑戦したわけでもありませんし、近所にオープンした韓流ショップで祝儀のつもりで買った韓国製インスタント麺もベストと呼べるほどのインパクトはありませんでした。(ハングルのみで作り方がわからなかったのは衝撃でしたが)
ネパール人のインド料理屋も粗製濫造と呼びたくなりますし……。サンガリアの『こどもののみもの』も期待はずれ。中華街に関しては語りたくもありませんし、低調な1年を最も象徴していたのが食かもしれませんね。
●09年の大きな買い物【 薄型テレビ 】
東芝のレグザZ8000を購入しました。新型が発表された直後に情報収集力全開で機能・性能を比較。大差ないと判断したら送料や代引き手数料まで含めた総合最安値を徹底的に調べ、引っ越し前の大画面生活が復活。
最初は他社製品のつもりで、レグザなんて候補にも入っていませんでした。決めては専門家による高評価とレゾリューションプラスという超解像度技術。平たく言えば「ハイビジョンがきれいなのは当然、ビデオやDVDも精彩に映し出す」というもの。こういう方向性に私は本当に弱い。
ビクターが倍速スキャン技術を発表した次シーズンには各社から同等製品が登場しました。しかし、1年経過しても他社から超解像度技術は出てきません。これが最後の一押しでしたね。一番人気を支えている技術が他社には簡単にマネできない独自のもの。しかも完成度が高いから新型でも大きな改良はされていない。
念のため下見に行った大手量販店で「これの前の型はもう在庫がないんですか」と新型を前に質問していた客がいました。私と同じ思考をする人間がやっぱりいたわ。柱のかげでくっくと笑っちゃいました。
ひとつだけ誤算だったのはAV機器とつなぐためのケーブル類……高い。
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