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air_mail.gif (2009 バイト) 第17回ULF大会レポート

bt_cube.gif (262 バイト) はじめに

 「ともかくMLDのことを知りたかったらULFに連絡を」ということは、インターネットでMLDの情報を探し始めてすぐに気がつきました。米国の関連サイトにも必ずといっていいほどそう書かれているし、「家族がMLDと診断されたがどうしていいかわからない」といったインターネット上の会議室(newsgroup)への投稿にも、患者の家族や医者から「まずULFに連絡しなさい」というアドバイスが返ってくるわけです。ULFのホームページ自体にはそれほど情報量はなく、それは患者の家族のネットワークへの窓口に過ぎません。「まず電話を」というのは、米国人であればいちばん話が早いのはよくわかるのですが、こっちはULFがどんな団体かよくわからないし、そもそもMLDという病気のこともよくわからないという状況ではなかなかそうはいきません。手紙も何度も書こうと思ったけど、日常や、MLD HomePageの制作にまぎれて、とうとう一年近く経ってしまいました。しかし、鴨下先生、衛藤先生に相次いでお会いして、お二人ともULFと昔からつながりがあるといった話を聞くにつれ、「これはともかく一度実際に行って会ってみないとしょうがない。会合に一度参加すれば、英語が不自由でもなんとなく感じもわかるし、その後はメールのやりとりでもコミュニケーションがとれるだろう」と、大会参加の気持ちが高まってきたわけです。

 今回の大会はULFの本拠地であるイリノイ州のSycamoreという町で開かれます。シカゴから西に150kmほどの大平原の中の小さな町のようです。23日から25日までの3日間が会期で、参加者は市内のホテルに分宿し、会場への送迎はシャトルバスで行う、という話なので、けっこう大きなカンファレンスなのでしょう。ちなみに参加費は宿泊費を含めて$220〜450。私のようにシングルルームを必要とする参加者は$600です。宿泊施設を自分で手配できる人は$75ですから、ほとんど宿泊費ですね。これくらいならまぁなんとかなるのですが、日本からの交通費なんかも入れると結構な金額になってしまうので、今回無理矢理カナダでの取材の仕事を作り、航空券はその取引先に都合してもらえるように計らいましただから、ULFの大会のあとはすぐにバンクーバーに飛んで1週間ほど仕事をして帰ることになります。あんまり長期間家を空けるのはいろいろまずいのですが、しかたがありません。この仕事のやりくりがうまくいくかもぎりぎりまでわからなかったので、結局航空券の手配が確認できたのはリピドーシス学会の終わった後。ULFとは電子メールとFAXで参加申し込みの手続きを行いましたが、まだ、カナダでの宿泊先や仕事のスケジュールは決まっていないといういいかげんさです。もっとも、私は仕事がらこういうのには慣れているので、現場でなんとかなると楽観的に考えています。

 大会は正式には“ULF 17th Annual National Conference”といい、“Love and Science '98”というキャッチフレーズがついてます。いかにもアメリカ的ですね。「愛と科学」ですか。負けそう。プログラムは(送られてきてもいいんはずなんだけど)ないので、細かい内容は実はよくわかっていないのですが、手元の資料によると「最新情報」「他の家族とのネットワーキング」「専門家による個人懇談」「勉強兼一休み」だそうです。最新の研究についてはリピドーシス研究会でだいたい理解できたこともあり、個人的には米国の家族が介護にどんな工夫をしているかに興味をもっています。おそらく日本ではあまり知られていない便利な介護用品なんかがあるのではないかな。

 ちなみに、日本からは慈恵会医科大の衛藤先生が招待されているということは知っているのですが、たぶん他には日本人はいないのではないかな。私もけっして英語は堪能というわけではなく、人と会うのも苦手なのですが、いざとなったら衛藤先生に泣きつくことができるというのが、参加決断の最後の一押しになりました。(※しかし実際には衛藤先生は研究者の会合だけで帰国されたので現地ではお会いできなかった)


bt_cube.gif (262 バイト) セッションの演目

 セッションのトピックとしては、次のようなものがあります。なお、日本語訳は筆者によるものです。また、実際には演題が変更されたものもあります。

  • 自己紹介(Making Connections on the Resource Road)
  • 介護者自身への気配り(Caring for the Caregiver)
  • 診断テストの意味(Understanding Diagnostic Tests)
  • 危機的局面において信仰と向かい合う(Looking to Faith in a Crisis)
  • ALDの生化学:素人向け学習プラン(Biochemistry for ALD: A Lesson Plan for the Lay Person)
  • いろいろな療法の評価:テストは何を意味するか(Evaluation of Therapies:What do the Tests Mean?)
  • いろいろな白質ジストロフィー:類似点と相違点(The Leukodystrophies: Similarities & Differences)
  • 家庭内の療育に関するアドバイス(Cornucopia of Concerns in Home Care)
  • 喪失から立ち直る(Suviving a Loss)
  • 物理療法(PT)って何?(What About Physical Therapy?)
  • 介護管理における初期の介助(Early Interventions in Care Management)
  • 薬物管理のパートナー(Partners in Drug Mnagement)
  • 障碍と思春期(Dealing with Disabilities and the Teen Years)
  • 献体のための計画(Planning for an Autopsy)
  • 臓器移植療法(Transplant Therapy)
  • 倫理に関する発表〜詳細後日(Ethics presentation - TAB)
  • AMN の最新情報と円卓会議(AMN Up date and Round Table)
  • ALDの保因者の抱える問題(Issues of the ALD Carrier)
  • 科学的最新情報(Scientific Updates)
  • アイカルディ-ゴーシェ症候群(Aicardi-Goutieres)
  • アレクサンダー病(Alexanders)
  • 副腎白質ジストロフィー(ALD)
  • CADASIL
  • カナバン病(Canavans)
  • CTX
  • クラッベ病(Krabbes)
  • 異染性白質ジストロフィー(MLD)
  • オバリオ白質ジストロフィー(Ovarioleukodystrophy)
  • 新生児ALD(Neonatal ALD)
  • ペリツェウス・メルツバッヘル病(Pelizaeus-Merzbacher)
  • レフサム症候群(Refsums)
  • 脳白質の喪失(Vanishing White Matter)
  • ツェルウェガー症候群(Zellweger)
  • 未分類の白質ジストロフィー(Undiagnosed leukodystrophies)
  • セカンド・オピニオン・レビュー(Second Opinion Review)
  • 支援団体の会合(Support Group Meetings)
  • 研究者をパネリストとしたQ&Aセッション(Closing Question/Answer Session with panel of scientists

 


bt_cube.gif (262 バイト) 前夜

 Sycamoreは大平原の中の街で、まわりは見渡す限りコーン畑です。空港からピックアップ・サービスがあって、MLDの孫がいるというおばあちゃんと、ALDらしい子供がいる若い夫婦と同乗しましたが、車中で寝てたこともあって、あまり話はしませんでした。
 7時からラウンジでウェルカム・パーティのようなものがあり、まずそれに参加しました。パーティーといっても別に式次第があったりするわけではなく、参加者がビールやオードブルをつまみながら雑談するだけです。今回の大会は参加者がおそらく200名を越しているだろうということですが、このパーティーの参加者は50人弱というところでしょうか。ほとんどが患者の家族で、わずかにボランティアや介護スタッフが参加しているようです。チェックインと同時に明日からのプログラムと名札をもらうのですが、この名札が病気別の色分けになっているので、関係者はすぐわかります。ちなみに、MLDはオレンジ色で、参加者の2〜3割というところでしょうか。ALDが全体の4割くらいいて、その次にメジャーなグループという感じです。参加者の年齢層はかなり高く、40〜50代が中心のようです。MLD関係の人と話をした感じでは、乳幼児型の家族はほとんどいなくて、若年型が中心で、既に子供を亡くした家族なんかも多いので、年齢層が高くなっているのだと思います。夫婦で参加している人もいますが、どちらかが参加して、もう一人が患者と留守番というパターンが多いみたいです。海外からの参加者は(カナダは別として)あまりいないみたいで、私の他に、ブラジルで白質ジストロフィーのネットワークをやっているという男性にあっただけです。ちなみにブラジルでは10例くらい白質ジストロフィーの患者が見つかっていて、そのうち3例がMLDだということです。

 ニューメキシコから来たウィンスロップ・キグレイ氏の息子さんも若年型で、数ヶ月前にBMTを行い、経過良好ということです。やっぱり、最初は学校での異常行動が最初だったといいます。上に兄弟がいて、その子は正常でHLA型も完全に一致したそうです。小児型の場合は、運動障害より精神障害が先行する場合もあるので、診断されるまでの間はやはりいろいろあるみたいです。他の人もだいたい診断に半年から1年くらいかかったと言ってます。医者がよくわかってないし、情報を出してくれないという不満は全般に多いですね。
 名前を失念しましたが、旦那が成年型で発症したというご婦人(50代?)もいました。いい医者についてウィンスロップと相談してました。米国でもMLDの専門知識のある医者を近くで捜すのはけっこう大変なようで、このあたりの情報を交換するのも大会参加の動機になっているようです。私も聞かれましたが、MLDという疾患については知識があっても、患者をどのように取り扱っていけばいいのかがわかる医者は少ないということのようです。専門医一人とコンタクトをとりつつ、近所に日常的な相談のできる医者を用意するというのが基本のようです。
 ニューヨークから来たジュディさんは、息子を13年前に亡くしたということで、今回は大会運営スタッフとして参加してます。彼女の話ではMLD患者の家族の悩みはだいたい「嚥下」「睡眠」「痛み」あたりに集中するということでした。うちの場合はいまのところ睡眠が大きな問題だ、というと睡眠剤の使用をすすめられました。これは他の家族もいってました。BaclofenSomaValium、Tlexerilなどの筋弛緩剤と、Ativan、Xanaxなどの抗不安剤の併用をすすめられました。彼女の息子の場合も、これで随分楽になったということでした。ただ緊張が解けると言うだけでなく、機嫌が良くなったり、精神活動が活発になるといってました。うちがダイアップと共に時々使っているセニランは抗不安剤だと思いますが、たしかにこれを使ったときは話しかけるとよく反応するし、笑います。
 コロラドのモーレーンさんの場合、現在7歳の息子のマイケル君が昨年5月に発症しました。かなり進行が早く、先月あたりからしゃべれなくなりました。それまでは2語だけはなせたということです。去年の夏の写真を見せてもらいましたが、座位保持でようやく座っているという感じでした。食事について聞いてみたら、嚥下はできるので、冷凍食品の無農薬野菜を電子レンジで暖め、フードプロセッサにかけているようです。このあたりは日本の家庭とずいぶん違いそうですから、別の人にも聞いてみようと思います。マイケル君は鍼をやっていて、効果があるそうです。なによりも本人が気持ちよさそうだし、嚥下がよくなったりするということです。彼女は病歴も浅いし、若いのでかなり動揺しているのを感じます。

 他にも、健康な兄弟との関係はどうすればいいかとかも聞いてみました。米国の患者の場合は、実際に聞いてみても必ずといっていいほど兄弟が何人もいます。だいたい、「どうしても病気の子供にかかりきりになってしまうが、大きくなるにつれてわかってくれるものだ」というような話でした。「最初は私は病気の子、夫は元気な子というように分担してみたりしたが、逆に家庭が2つに分かれるようになってうまくいかなかった」「こういう子がいると、家族はますます結びつきが強くなって協力し合うか、まったくバラバラになってしまうか両極端」なんていう話もありました。

 全般に明るい雰囲気ですが、内容的には愚痴なんかも多いようです。こっちは言葉の壁があるので、つい質問なんかが直接的になってしまい、なんか話が暗い方向へいきがちなのが困ったものです。

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01/10/14


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