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air_mail.gif (2009 バイト) 第17回ULF大会レポート3日目(その他の話題)
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Transpant Therapy for the Leukodystrophies
〜白質ジストロフィーに対する臓器移植療法〜
Charles Peters M.D.

 白質ジストロフィーの治療法としてのHSCT(臓器移植)は、COCALD(幼児型?ALD)、Krabbe病、MLDなどに対して行われている。

註:今までMLD Homepageでは、臓器移植と骨髄移植を概念として区別して来た。骨髄移植も概念的には臓器移植に含まれるのだが、内容的には「輸血」に近いもので、たとえば腎臓移植や肝移植とはずいぶん感覚が違う。また、先天性代謝異常の治療法として肝移植などを行うこともあるので、それと区別するためにも骨髄移植に対して臓器移植という言葉を使ってこなかった。しかし、先端医療の動向としては、骨髄移植だけでなく、臍帯血移植、幹細胞移植といった、さまざまな体液を使った臓器移植が実用化される方向にあり、それらを包括的に表現しようとすると、この発表のタイトルのように、「臓器移植」という表現を使うのが妥当かもしれない。

 代謝異常症の治療法としての臓器移植の実施に当たっては、実施前の患者の状態と実施のタイミングが非常に重要になる。考慮すべき大きなリスクとしてはGVHDがある。長期にわたって、さまざまな分野の専門家がフォローアップする必要のある治療法だ。

◆COCALDに対する臓器移植

ALDには以下の5種類の臨床型がある。

  • COCALD
  • 小児型
  • 成人型
  • AMN
  • MN+cerebral ALD
  • Aderenal Insufficiency alon(単独の副腎機能障害?)

 このうち、COCALDは脱髄の進行が早く、予後が悪い。そのため、リスクを承知した上で臓器移植をする必然性が高いといえる。特に知能指数が80未満のグループは、進行が早い可能性が高いハイリスクグループだ。今回、同胞、非同胞のドナーからの臓器移植を行った94人の少年の症例を分析した。その結果、85〜90例(90%)でドナーの細胞の定着(engraftment)が報告されていることがわかった。5年後の追跡調査の結果、46人(55%)の患者が生存しており、46人中34人が、施行前の状況を維持しているか、進歩を示した。
 さらに12例については5年以上の追跡調査を行った。その結果次のことがわかった。長鎖脂肪酸(VLCFA)は1人の例外を除いて正常値か、それよりやや上の範囲におさまっていた。問題のある1人は正常者ではなく保因者のドナーを使った例で、施行後一時期は病状を維持したが、その後悪化した。2人は慢性てんかん発作(chronic seizures)が進み、2人はSSERとMCVにおける若干の変化を認めたが、AMNの兆候は16歳を過ぎても見られなかった。MRIによるALDの診断を行うときの指針として「Loze基準」というのがあるが、これを当てはめても改善が認められた。12人全ての少年が言語活動を維持していた。一部の患者では視力に改善が見られた。全般に言って、言語能力、視力の保持に効果があり、QOLの面からも効果が認められる。

 ハイリスクグループのために、ダメージの少ない?改良型HSCTも試みられている。シクロフォスファミン120mg/kg、全身放射線照射、ATGの投与などを行う方法で、これを実施した9例の場合、7人が成功した。亡くなった2人はALDの進行や急性肺炎によるものである。

◆Krabbe病に関するHSCT

 世界的に乳幼児型5例、後期型7例にHSCTが実施されている。このうち10人にドナーの細胞が定着し、生存は7人。5人の死亡例のうち2例はGVHDによるものであり、3例がGLDの進行によるものと考えられる。乳幼児型Krabbe病は進行が非常に早い。HSCTの効果は高く、理由などは不明だが、神経伝達速度の向上など、通常改善が期待できないとされている神経症状の改善が報告されている。

◆冷凍臍帯血によるHSCT

 冷凍臍帯血は長期保存が利くため、ドナーの状況ではなく、患者の状況に合わせて実施計画が立てられること、GVHDのリスクが骨髄より小さいことなどのメリットがある。
 冷凍臍帯血によるHSCTはミネソタ大学で5例が実施されている。ハーラー症候群が2例、ALDが2例、Krabbe病が1例である。全員でドナーの細胞の定着が確認されており、ALDの1人だけが死亡している。

◆MLDに対するHSCT

 MLDには乳幼児型、小児型、成人型の3つの臨床型がある。また、酵素活性が見られないが、症状のない偽欠損症(psuedo-deficiency)と呼ばれるものがあり、これは全人口10〜15%を占め、患者の家族に限って言えば30%に及ぶ。
 MLDに対するHSCTは全世界で70例が実施されており、そのうち25%がミネソタ大学のクリビット先生のグループによるものである。これらのHSCTの効果の総合的な分析は現在進行中であるが、よい結果が見られたのは酵素欠損などで神経症状が出る前に診断された患者に対するものであった。従って、神経症状が出る前の診断方法の確率は非常に重要だ。現在、David Ulmann、Ed Kaye、William Krivitoなどが生後6ヶ月の幼児に対する試験的なスクリーニングの実施を計画している。

◆幹細胞などの移植

 造血幹細胞、間葉幹細胞などの移植も検討されている。脳や神経への定着による神経症状の改善が、骨髄移植以上に期待できる。ただ、実現に際しては解決すべき問題がまだまだ存在し、その解決の糸口が見えてきたという段階に過ぎない。

◆まとめ

 HSCTは白質ジストロフィーの患者に対して、生存期間を延ばし、神経症状を安定させる効果が確かにある。現在、世界的な蓄積症に関する共同研究が行われている。

質問>幹細胞移植の現時点での実用性は
回答>まだやるべきことが多い
質問>骨髄移植のあと、患者の中で新しく骨髄はできるのか
回答>定着すればできる
質問>CADASILへの骨髄移植は
回答>まだ世界でも例がないはず
質問>MLDの骨髄移植後の神経症状の改善は
回答>あまりないのではないか。Krabbe病では改善が報告されているので「ない」とはいいきれないが、あれは特殊な例かもしれない
質問>なにを根拠に定着成功というのか
回答>6〜7ヶ月追跡調査して、患者の血液中の細胞の患者に由来するもの、ドナーに由来するものの比率を調べる。これは難しくない。
質問>骨髄移植をするにはどれくらいの期間がかかるのか
回答>前処置、実施後の無菌室などを含めて、非常に長い時間がかかる。しかし、現実にはドナー探しに時間がかかることが多いので、なんともいえない。
質問>MSDに対する骨髄移植の記録は?
回答>フロリダで一件あったと聞いているが、情報が非常に少ない。日本で行われたという話は始めて聞いた。

 


bt_cube.gif (262 バイト) Partner In Drug Management
薬とどのように付き合うか〜 
Gerald Raymond M.D. 

註:このセッションは要するに白質ジストロフィー(の症状)に効く薬と使用上の注意です。今回の大会を通じて印象的だったのは、米国の患者の家族は、服用している薬について非常に意識が高く、医者任せにしていないということでした。お互い情報も交換しているし、選択もしているようです。これは一つには米国では医薬分業が進んでいて、診察(患者と医者の関係)、投薬(患者と薬局の関係)が分かれているせいではないかと思います。なお、このセッションは白質ジストロフィー患者全般に対するものであるため、成人型の患者や、若年型の初期症状にしか意味のない薬も含まれていると思われます。

◆緊張(原語ではspasticity=痙縮と表現)に効く薬

  1. Baclofen
  2. diazepam
  3. dantrolene
  4. clonidine
  5. tizanidine

 白質ジストロフィー患者の症状でもっとも問題になるのは緊張である。緊張は患者にとって辛いだけでなく、それを続けることは実際には運動しているのと同じことなので非常に疲れる。(それほど症状の進んでいない若年型の患者や、成人型の患者の?)症状の一つとして疲れやすさがある理由の一つもこれだと思われる。緊張した筋肉は延ばす必要がある。また、非常に強い緊張は間接などにも負担をかける。
 Baclofenは代表的な緊張緩和の薬で広く使われている。diazepamも似たような効果と副作用がある。clonidineは低血圧の副作用があるが、パッチによる経皮投与が可能という特徴があり、場合によっては便利かもしれない。また、米国ではまだ認可されていないが、他の国では既に使われているBotulinum toxinに個人的に注目している。この薬の特徴は症状に直接効くことで、筋肉注射を行う。chemical denervation(筋肉的神経遮断?)の効果がある。また、これらの薬の経験から言えることとして、もともとMLDのための薬として開発された薬はない(市場性がないから)が、パーキンソン病の薬がけっこう使えるということだ。

◆behavior(刺激への反応?)に効く薬

  1. Dexidrine
  2. Ritalin
  3. Cyler
  4. Tricyclic antidepressants

これは成人型患者の話のようなのでよくわかりません

◆depression(抑鬱症状)に効く薬

  1. Selective serotonin *Prozac
  2. Tricyclic antidepressants
  3. Lithi

これもおそらくALDの成人型患者などの話だと思うのでよくわかりません。

◆agitation(動揺?)、aggression(攻撃性)、thought disorders(思考の混乱?)に効く薬

  1. Mellaril

これも成人型の話でしょう

◆苦痛を緩和する薬

  1. Anti-inflammatory agents
  2. Carbamazepine =>tegretal
  3. Opiates

カルバマゼピン(商品名テグレトール)は抗痙攣(てんかん)剤として使われていると思っていましたが、それだけではないようです。これは知りませんでした。以前クリビット先生と面談したときは、米国の患者もテグレトールはよく使うと言ってましたが、私の聞いた範囲ではテグレトールを使っているという患者の家族はいませんでした。ただ、このあたりは違う商品名だったりするのかもしれないので、なんとも言えません。全般に米国の患者は苦痛除去に積極的、というか、それとバーターのものがあっても苦痛緩和の方を選びがちという印象を受けました。

◆seizures(発作)に効く薬

  1. Dilantin
  2. Phenobarbital
  3. Tegretol(No erythromycin)
  4. Depakote

このあたりは日本の患者の家族もお馴染みだと思います。

◆便秘に効く薬

省略

いろいろわからないこともあったのですが、日米の医療事情の違いもあるだろうし、薬や効果については専門用語も多く、ちょっと私の英語力では質問のしようがないので、内容に怪しい部分もあります。

 


bt_cube.gif (262 バイト) Planning for an Autopsy
〜献体の計画〜 
Ann Moser, B.A. 

註:このセッションは10人ぐらいのごく少ない参加者で行われました。最初に白質ジストロフィーの研究にとって、脳細胞の献体がどうして必要か、という話がありましたが、そもそもこのセッションに参加したメンバーは、必要性を十分理解した上で具体的な手続きなどを確認するのが目的であるというこで、ごく簡単なものでした。内容的にはMLDの最新情報のセッションでの説明の繰り返しなので省略します。内容が内容ですから、他のセッション以上に緊張した雰囲気があったのですが、Ann Moserさんが、それを和らげるような、淡々とした、しかし事務的ではない不思議な話し方で説明を進めていきました。年輩の女性でしたが、B.A.ということはおそらく医療関係者というよりも、献体を支援する団体のメンバーだと思います。この他に、家庭内の介護のセッションを担当したPolly Greenさん、MLDの最新情報を担当したArvan Fluharty博士がフォローする形で話題に加わりました。なんかもうArvan Fluharty博士は、白質ジストロフィー患者や保因者の脳が欲しくてしょうがないという感じです。説明のあとすぐ質疑に移りましたが、患者サイドの方も具体的なことを前提とした話ではなく、気分的に漠然と気になるっているところを確かめるために質問する、という雰囲気だったこともあり、30分くらいで終了しました。

質問>実際の手続きとしてはどうすればいいのか。まず主治医と相談するべきなのか。
回答>(Moser)脳組織を最適な状態で保存するためには、8時間以内に処理を完了する必要がある。そのためにはできるだけ早く、米国脳組織バンクのフリーダイヤルに直接連絡を入れて欲しい。どのような方法で処理するかということの手配はこちらでする。電話一本入れてもらえば、全米どこにいても、その地域の医療ネットワークと協力して、もっとも早く脳組織の保存を行うことができるようなシステムになっている。
質問>実際に採取するのは脳細胞だけなのか。
回答>(Fluharty)そうはならない。白質ジストロフィーの場合、中枢神経だけでなく、脊髄や末梢神経についてもできれば比較したい。たとえばMLDであれば、視神経などの病変があるので眼も欲しい。しかし、実際にどの部分を採取してよいかは家族が事前に承諾書を交わすときに選択することができる。(Moser)こういったタイプの献体の場合、非常に長く詳細な内容の承諾書を交わすことになる。もちろん、遺体の扱いについては、遺族を傷つけないように最大限の努力がされている。遺体を家族に返すときにはきれいな状態にして返す。
質問>保因者の脳組織の献体も欲しいという話だが、具体的にはどうしたらよいのか。
回答>(Moser)患者の場合と同じでよい。しかし、献体するのが健康な人の場合、そのときになって献体を家族が申し出るという形よりも、事前に本人が遺言という形でそれを用意しておくのが望ましいだろう。
質問>保因者の脳組織が欲しいといっても、事前に親戚全員の酵素活性を調べているとは限らないだろう。亡くなった人が正常か保因者かわからないような状態でも、やはり献体が求められているのか。
回答>(Fluharty)そのとおりだ。実は、健康な脳組織も欲しいくらいなのだ。脳組織の資料が決定的に不足しているということをわかって欲しい。たとえば、クリビット先生と協力して進めている骨髄移植の脳神経への効果の研究にしても、正常な細胞と比較することができたのは、やっと昨年になってから、というのが現状だ。特に食餌療法を行っている患者の組織は非常に重要だ。
質問>資料が少ないということだが、実際、現段階でたとえばMLDの患者の脳組織の資料はどれくらいあるのか。
回答>2つしかない。いままでのかなりの研究は25年前に採取されたものをベースに進められたというのが実状だ。最初に、8時間以内に採取を行わなければならないといったが、それは8時間以内に採取できないなら意味がないということではない。25年前の組織でさえつかっているのだ。8時間以内に採取するのが望ましいが、遅れても、ともかく手に入りさえすれば研究に役立てることができる。

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01/10/14


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