何回か断片的に書いてきましたが、会場では名札が非常に大きな役割を果たしてます。いろいろ聞いてみると、原因や医学的な分類がかなり違っていても、ここに集まっている疾患を抱えた患者や家族の悩みはかなり似てます。むしろ日常的に直面する問題という意味では、発症年齢による差の方が大きいかもしれません。考えてみると、医学書なんかは、「どこが特徴か」といったところを中心に書かれているわけですから、実状以上に相違点が強調されるのかもしれません。MLDの場合には、白質ジストロフィーに共通する脳神経障害だけで、それ以外の全身症状がない、というのも、そう感じさせる理由かもしれません。ともかく、いまのところ、いちばんのポイントである治療法について「現時点ではお手上げ」という点で横並びですから。将来、いずれかの疾患の治療法が確立されたら、ULFの方向性も大きく変わらざるをえないでしょうね。
ちょっと脱線しましたが、そうは言ってもやはり同病の人の様子が気になるのが人情というものであり、また、違う病気については知識不足からうっかり相手を傷つけるような質問をしてしまうのではないかという潜在的な不安があるので、やっぱり同じ病気の人に話しかけたいわけです。このときに名札の色分けが絶大な威力を発揮します。色分けはこうなってます。
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桃:
ALD/AMNで、最大派閥です。それぞれ全体の20%以上を占める感じです。AMN(AdenoMyeloNeuropathy)は一応、成人型ALDと考えていいと思います。他の疾患の場合は、ほぼ確実に患者の親、ないし祖父母なのですが、ALDの場合は成人型の患者自身がかなり参加しているわけです。話す相手が患者か、患者の親なのかじゃやはりだいぶ内容が変わってきますから、区別がつかないと具合が悪いです。見たところAMNの患者は下肢の運動障害をかかえている人が多いようで、車椅子や杖を使っている人が多いです。
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橙:
MLDです。全体の2割以上いる感じです。ほとんどが若年型で、幼児型が数家族、成人型が1家族だけ参加しています。数的に、ちょうど同じ病気の家族全員と話ができるくらいであることもあって、わりと固まってます。診断されて以来、自分たちは「100万分の1の偶然に遭遇した珍しいケース」というような考え方が頭に染みついているわけですが、会場では右を向いても左を向いても、その「希な例」がいるだけでなく、さらに1ケタあるいは2ケタ出現率の低い疾患の患者もゴロゴロしているので、なんか急に「ふーたん」が、「フツーの病人」になったような変な気分です。
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赤:
Krabbe病。MLDよりは遙かに少ないですが、それでも第3グループです。孫のためにKrabbe病研究の基金を立ち上げたというニューヨークから来た夫婦と少し話をしました。おそらくその話はインターネットで読んだことがあると思います。Krabbe病の患者自体は多いはずなのに参加者が少ないのは発症年齢との関係だと思います。いろいろ聞いてみても、乳児の患者のいる家族で参加している人はほとんどいません。
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緑:
ペルオキシソーム病のグループで、NALD、Zellweger病、Refsum病、CTX、PMDなどの患者がいます。患者の数が少ないので同じ病気の家族をみつけるのは難しくなります。
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黄:
Canavan病、Alexander病、Tay-Sach病のグループです。それぞれ1、2家族しか参加していないと思います。こういったグループ分けされている疾患では、どの病気かもちゃんと名札に書かれていますが、字が小さいから、結局自己紹介をするような距離まで近づかないと読めません。それほど稀少ではないはずのTay-Sach病の患者の家族が少ないのは、独立した患者団体があるからだと想像します。
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金:
その他の疾患、つまりCADASIL、CACH、Ovario Leukodystrophy、Aicardi-Goutiere病などです。このあたりの病気は、病名が決まったのも最近で、病気自体の仕組みや原因もよくわかっていないものが多くなり、世界で数例、数十例といった感じになります。
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青:
病名の確定していない白質ジストロフィー患者で参加者全体の1割以上がそうです。成人型の人がかなりいます。空港からホテルまで同乗したカナダのエドモントンから来たカップルも奥さんの方がそうでした。彼らはこの大会のセカンド・オピニオンで世界最先端の専門医に診断してもらうことに期待をかけて参加しているわけですが、なかなか難しいようです。カナダ人夫婦も翌日会うと「また来年も青い名札で参加しなくちゃならないよ」と、しょげていました。未分類ということは、予後、つまり将来の見通しがたたないわけですから、特に成人型の場合、非常に辛いものがあるだろうと想像でき、なかなか声をかけにくいものがあります。MLDなんかだと、まず最悪の状況と直面して、それからできることをやっていこうと前向きに立ち上がる、という感じなのですが。
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いろいろな人と情報交換をする、というのが多くの参加者の目的ですから、夫婦だけで、あるいは仲の良いグループだけでいつもかたまって行動するということはあまりありません。セッションの休憩時間や食事などはだいたい4人から6人の小グループに自然に分かれ、しかもその組み合わせは毎回変わるという感じです。おかげで、私のような毛色の変わった、しかも単独参加(これはけっこうハンディ、特に男性の場合)の人間もそれなりに声をかけやすいわけですが、それでもなんとなく一緒にいることが多い人たちというのは出てきます。同じ病気だと、複数のセッションが同時に別室で開かれている場合に、同じセッションを選択する可能性が高く、また、その中でディスカッションを通じて互いについて理解しやすいので、やはりしだい関係が深くなってきます。同じ年齢層だと話も合いやすいし、子供の年齢層も近くなります。ただ、実際には、米国の場合、親の年齢で子供の年齢を想像するのはかなり困難です。インテリな人たちと、庶民的な人たちもなんとなくわかれるのですが、子供の話題、とくにお母さん同士の介護の話題とかになるとあまり関係なくなるので、これはそれほど重要じゃないみたいです。出身地についてもあまり関係なく、海外からの参加者も英語がネイティブな国ばかりですから、「外人グループ」というのもないです。
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変わった人たち |
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