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air_mail.gif (2009 バイト) 第17回ULF大会レポート第1日
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bt_cube.gif (262 バイト) 参加者の雰囲気

 宿舎のホリデー・インは貸し切り状態で、ロビーと奥のダイニングルームが雑談用に解放されています。ここでクッキーやジュースなどの軽食やビール、簡単なつまみのサービスが行われています。中には部屋にこもっている人もいるかもしれませんが、ともかくここで夜遅くまで歓談が続いています。何の話をしているのか、けっこう盛り上がって明るい雰囲気です。知らない人が偶然足を踏み入れたとしても、どこかの会社の社員旅行(というものが、アメリカにあればの話ですが)と思うかもしれません。不治の病に冒されていようが、難病の子供を抱えていようが、こんなところは長年の習性が出てしまうのかもしれません。特に飛ばしていたのが英国から来たALD(AMN)の初老の男性で、ホテルから会場へ向かうバスの中でもきわどいジョークの連発で車中は爆笑に次ぐ爆笑でした。ホテルから会場まではバスで15分くらいです。昨日、「一面のトウモロコシ畑に…」と書きましたが、ダイズ畑もけっこうあります。会場のサウスポイント・センターというのはちょっと説明しがたい建物で、街の集会場という感じです。基本的にここの大ホールに机と椅子を並べて講演を行います。食事は別室でビュッフェ・スタイルです。ホールの入り口に机を出して、介護関係の製品のパンフレットや、ULFが発行しているブローシャー、Tシャツなどが展示されています。場所からしてそうなのですが、全般に田舎っぽいというか、手作りの感じがただよっています。そもそも、参加者はある意味で全国民の中から無作為に選ばれたも同然の人たちなので、教養がありそうな人も、なさそうな人も、金持ちそうな人も、そうでなさそうな人もいるわけです。平均的なアメリカの田舎町で開かれる平均的な人たちの会合、それがULFの大会というわけです。 

 


bt_cube.gif (262 バイト) Making Connections   〜自己紹介〜

  参加者80人程度でしょうか。1/3が男性で、カップル参加が多いようです。ブラジール夫人の司会で、最初に初参加の人とそうでない人を大きく二つのグループに分け、その中で小グループを作って自己紹介します。父と兄弟がALDで亡くなったという(たぶんキャリアの)姉妹がいました。それほど数は多くないですが、家族を既に亡くした人も参加しています。次にミシシッピー川を堺に東西のグループにわけました。やはり白質にダメージを受けるという聞いたことのない病気の子供をもった夫婦の話。いままで全世界で30例くらいしかみつかっておらず、米国内でも同じ疾患の家族を見つけることができないそうです。2人の子供が乳児のころから寝たきりで発達しないといっていました。
 次がいよいよ病気ごとの集合。「このグループが本当の友達を見つけることができるでしょう」といわれました。確かに、同じ病気の方が話が合う部分が多いから固まりがちな傾向はありますが、いろいろ話した感じでは、むしろ同じ年齢で発症したということが悩みを共有するという意味で重要で、白質ジストロフィーのそれぞれの疾患で、状況や病状はそれほど変わらないという印象を受けました。

 このときMLDは10家族が参加しました。2家族が既に子供を亡くしている家族で、小児型5家族、成人型1家族、乳幼児型2家族でした。成人型は旦那の方が発病。旦那も参加しているが、病状の説明は奥さんがしてました。言語障害などがあるのかもしれませんが、見たところ異常には見えません。ALDは成人型がAMNとして別に分類されているのですが、大人の患者の参加者がかなりいますが、MLDの成人型はこの人だけでした。まず、自己紹介ですが、」子供の初期症状の話などをするとやはり若い(最近診断された)お母さんは泣いてしまいます。それまでホテルやバスの中で簡単に子供の具合なんかを話したときは快活だった人たちなのですが、やはり心の傷は深いですね。話す相手も同じ経験があることがわかっているから、かなり具体的なことを話さなくてはならないし、自分が話す前に他の人の話を聞いている間に思い当たることがいろいろあって、だんだんこみ上げてくる物があるのだろう。ちょっとしたディスカッション。お母さんはいつも正しいというアドバイスがありました。医者は専門家ではあるが、本当に子供のことをなんでも知っているのは親なので、親が「おかしい」と思うこと、「これは子供のためにならない」と感じることは、医者と争ってでもするべきではないという意見です。もちろんその分責任もあるわけですが。ミシガンから来た夫妻の子供は精神障害はほとんどなく、唯一決断力(デシジョン・メイキング)が難しいそうです。学校でもうまくやっていて、就職もしたが続かなかった。ということです。この息子さんが骨髄移植を最近受けた人です。カリフォルニアから来たお母さんの娘は8歳で、この1月に診断されたばかり。学校に行っているし、見た目はわりと普通なのですが、それだけに残りの子供達にどのように説明すればいいのかわからないといってました。やはりこのあたりが共通の悩みの種なのでしょうか。次が好きな飲み物でグループ分け。最後に海外からの参加者の紹介。カナダ(夫婦)、英国2家族、オーストラリア、日本(私)、ブラジル(白質ジストロフィーの患者会が派遣した代表)でした。

 


bt_cube.gif (262 バイト) The Caregiver's Dual Role
〜介護者の2つの役割〜 

 基本的に、ソーシャルワーカーによるポジティブシンキングの話ですね。まず、「どうあるべきか(I have to)」「どうありがたい(I can't)」のリストを作らされます。そのギャップをどう埋めるか。できないことは数多いが、するべきことと、できないことの間にはまだたくさんの選択肢が残されているはず。それを選び取っていくという姿勢自体が救いになるということを強調します。子供は親に依存しており、親が自分の面倒を見ることが非常に大切。そのためには我慢して頑張るだけじゃなくて、むしろもっと親は自分が楽に、幸せになるように努力しなくてはならないということです。
 そのためにどんな手段があるか。それを見つけるための視点として次のようなものを、自分になにがあてはまるか、そして自分の周りの人間からなにが期待できるか考えてみます。このあたりは、配ったシートにいったん記入させて置いて、講師が項目ごとに質問し、誰かが答えるとそれにたいしてコメントしていく、という形で進みます。

  • 専門技術(教師、薬剤師)
  • 社会との関わり(ショッピング)
  • 感情的なもの(泣く、ジョークを言う)
  • 肉体的なもの(歩く、ガーデニングをする)
  • 精神的なもの(教会に行く)
  • 知的なもの
  • 性的なもの

 自分を元気づけること。ほんとうに悩んでいる人を慰める命のホットラインのようなシステムもあるが、自分自身を元気づけることは非常に重要です。たとえば、次のようなことを想像してみようというよびかけです。

  • 元気づけてくれる人たち
  • 元気になる場所
  • 元気になる物
  • 元気になる気晴らし
  • 元気になる考え
  • 元気になる食べ物

 


bt_cube.gif (262 バイト) FDA(Food and Drug Administration)

〜米国の薬品行政〜 


 FDAは米国の保険教育福祉省の一部門で、食品医薬品局。レーガン時代に、市場性がない稀少難病の薬を製薬会社が開発することを促進する部署が作られて、それなりに成果を上げてきた。その代表、Marlene Haffner博士による発表。この手の薬の難しさは、対象が少ないため、治験や効果測定自体が難しいということ。また、これらの難病の治療薬は定期的に、死ぬまで飲み続けなければならない場合が多いから、副作用に慎重にならざるをえない。など、そのあとの質問も含めてどうして新薬がなかなかできないかという説明に終始した。

質問>新薬が認可されるまでにどれくらいの時間がかかるのか。
回答>政府サイドは通常1年。しかし、その前に製薬会社がどれだけの期間を開発にかけるかはケースバイケースで、3年か10年。
質問>米国の認可はヨーロッパより遅いのではないか
回答>過去には確かにそういう状態もあった。現在は体制を見直すと同時に、欧州の諸機関と共同で認可をすすめるといった動きになっている。
質問>そもそも、認可の基準としているシステムが古いのではないか。コンピュータによるシミュレーションなどで迅速化が図れないものか
回答>シミュレーションでわかるのは「標準的な患者」に対する効果であり、実際にはそんな患者はいない。先天性代謝異常症の場合、たとえば6歳で死んでしまうような疾患の患者を数多く集めるのは難しいだろう。
質問>今、認可待ちの薬はあるのか?
回答>白質ジストロフィーに関して、今後6ヶ月以内に認可が下りるような薬はない

 全般に、もっと早く薬を実用化できるような体制にしてくれ、という質問が相次ぎましたが、あまり具体的な内容のものはありませんでした。オドーン氏のような人はやはり少数派らしいです。日本から見ていると、米国の医療はそれなりに対応が迅速であるように思えますが、けっこう患者は(他国と比較して)不満をもっていることがわかってちょっと驚きました。

 


bt_cube.gif (262 バイト)
 
Ethical Considerations and Quality of Life
〜異常行動とQOL〜 

 白質ジストロフィーの症状として、それまでの人格とは全く違った問題行動などを起こすことがあり、家族は動揺する。そんな場合にどんな風に対処するべきかに関する、基本的な倫理の理論からのアドバイス。スピーカーは大学の心理学の先生ですが、いまいちぴんときませんでした。

 


bt_cube.gif (262 バイト) Understanding Diagnostic Tests
〜検査について理解する〜 

 白質ジストロフィーの診断法についての基本的な解説です。「診察→臨床検査→専門機関による検査」と進む中で、どのような検査がどんな方法論に基づいて行われるかを丁寧に解説してくれます。MRIや筋伝達速度検査から酵素活性検査まで一通り説明があります。DNA診断については非常に簡単に触れるだけです。検査結果の見方についても一通り説明がありました。よく整理された内容で、診断直後にこういう説明を受けられたら非常によかったと感じたでしょうが、いまはだいたい理解してしまっているのでちょっと「知ってる話ばかり」と感じてしまいました。

・顕微鏡による組織検査
 →侵襲性の
 →体組織
 →組織
・生化学的検査
 →組織か体液
 →生化学的にノーマルかアブノーマルか
 →生化学的異常蓄積/欠損をチェック
 →異常の程度
・酵素検査
 →特定の病気
 →組織か幹細胞、血球、(新鮮な物)
・DNA検査
 →ほんの少しの組織しか必要としない
 →非常に細かくその疾患の同定できる。
 →高価で時間がかかる
 →古い組織でもOK
 →家族全体のチェックにぴったり

 


bt_cube.gif (262 バイト) Brainstorming Circle
〜ブレーンストーミング〜 

 「患者の子供のいる家族」「発症した成人の家族」「子供を亡くした家族」の3つのグループに分かれてのブレストです。「患者の子供のいる家族」は最大グループだったこともあり、自己紹介だけで1時間以上かかりました。病気そのものや家庭での介護についてはそれほど話題に上らず、やはり医者、学校、隣人といった社会でのつながりの中の悩みが中心でした。そういう意味では、乳幼児型の患者の家族はあまり話すことがありません。外から見ていると、米国はコミュニティが発達しているし、市民のボランティア精神も旺盛だし、草の根ネットワークみたいなものも盛んだから日本よりずいぶん恵まれているようですが、やはりいろいろ苦労しているようです。


bt_cube.gif (262 バイト)
 
Idea Sharing on the Use of Alternative Medicine
〜民間療法についての情報交換〜 

 BMT(骨髄移植)や遺伝子療法の他に薬があるのではないか、という話です。健康食品のセールスマンと思われる男が、患者の親を推薦者として登場。いろいろしゃべるが、抽象的なこともあってよく理解できません(能弁だと逆に私の英語力では最終的に何をいいたいのかつかめない)。要するに、その会社の健康食品を服用すると、ダイオキシンなどの有害物質の体外排出を助けることができる。これが、白質ジストロフィーの患者にもよい、ということです。単に怪しげな健康食品のセールスとしか思えませんでした。
 実はこのセッションと並行してSecond Opinionというのが行われていて、そちらへ参加した人の方が多かったようです。これは要するに自宅近くの主治医ではなく、今回の大会に集まった専門医の診断を「別の意見」として聞く、という試みです。親としてはやはりいろいろな意見を聞きたいわけですが、実際にはなかなか難しい事情もあるので、こういう機会にやってもらえるというのはいいアイディアですね。

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01/10/07


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