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イタリアの山岳都市を訪ねて

 イタリアの魅力は、何と言っても都市そのものの美しさにあります。完成された広場空間、求心力の象徴としての塔、カテドラル、そうした都市を代表する建築物の美しさもさることながら、都市を埋め尽くしている個々の建物・・それらは正に民家なのですが、それらの存在によるところが非常に大きいと言えるでしょう。それら民家は自らを際だって主張することはなく、しかし決して画一的ではない、だから町並みが総体として個性を持っている。土地の風土を見事に表現しているのがイタリアの都市と言えます。

 そんな中でもいわゆる山岳都市といわれる、山の上に築かれた都市がイタリアのあちこち、特に中央部のトスカーナ、ウンブリア地方とちょうど靴のかかとにあたるプーリア地方に素晴らしいものを見ることが出来ます。これは都市の形成期であった中世にその防衛上から、はてまたマラリアなどの疫病を避けるためなど、いろいろ言われてはいますが、山の上に凝縮して形成された都市というのは我々の風土の常識からはかけ離れているだけに、その都市空間に強く惹かれてきた私でした。

 ここではイタリア山岳都市に惹かれるきっかけとなった、今は亡き建築家で真のエッセイストであったバーナードルドフスキーの著作、「人間のための街路」、「建築家なしの建築」からの引用も併せ、いくつかの都市をご紹介します。(地図の地名をクリックしても大丈夫です)


シエナ(Siena)
サンジミニャーノ(San Ginignano)
ペルージャ(Perugia)
アッシジ(Assisi)
オルビエト(Orvieto)
トレヴィ(Trevi)
アンティコリコラード(Anticoli Corrado)
マテラ(Matera)
アルベルベッロ(Alberobello)
マルティーナフランカ(Martina Franca)
ロコロトンド(Locorotondo)


バーナード・ルドフスキーの著作について

 建築家であり、コラムニストであったルドフスキーですが、建築家(ベルギー万博のアメリカ館の設計だそうです)としてよりはその著作に惹かれるるものがあります。その中で、下の2冊が私を海外に駆り立てる大きな原動力となったのでした。

 1冊目は「人間のための街路」“Streets for people”です。そもそも街路は人間のためにあったのが、いつの間にかに一部の国では自動車のためになってしまっているか、街路自体の魅力を省みないでいる。
 しかし世界の中ではいまだにストリートが人間のために存在し、人を引きつけてやまないところがあちこちにある。その魅力を余すところなく紹介しているのがこの本なのです。
 取り上げられているのは、イタリアであり、モロッコであり、はてまた日本の仲見世などの下町です。そこまでこの本で触れているのならば、イタリアのあちこち、そしてモロッコの都市を実際に見てやろうじゃないのというのが、私の旅の原点になっているのです。イタリアではシエナ、ペルージャ、ルッカそしてプーリア地方の各都市が紹介されています。
 本自体は、鹿島出版会から1973年に出版されていますが、多分今は絶版でしょう。当時でも2600円という価格で、鹿島の本は皆高いのですが、その中でもかなりいい値段でした。

2冊目が「建築家なしの建築」“Architecuture without Architect”です。これはニューヨーク近代美術館で開催された同名の展覧会の内容を出版物としたもので、その名が示すとおり、世界中のいわゆる土着的建築を150点以上紹介しているものです。それらは単に建物ではなく造形として我々の常識を超えるものが数多く紹介されていました。日本からは京都伏見稲荷神社の鳥居の密植、出雲の屋敷林、そして東北の茅葺きと、何の脈略もないのですが、造形の力強さは共通です。アフリカではマリのドゴン族の集落、「スターウォーズ」にも出てくるチュニジアの要塞穀物倉庫、エチオピアの岩をくり抜いた十字架教会な暉ど、近年世界遺産に登録されたりして有名になってきたものが多く含まれています。
 そんな中イタリアからはボローニャの斜塔、アルベルベッロのトゥルリ等が登場しています。
 ここで紹介されている建築(造形)を求めてあちこち行こうと思ったものですが、行けたのは表紙にあるモロッコのワルツァザート近郊にあるアイトベンハッドゥー、トルコのカッパドキア、それにイタリアの町位なもので・・独身の頃は結構つぶせたのですが、やはり最近の子連れ旅行ではなかなか厳しいですね。

建築家なしの建築ついでにもう一つだけ
 今一番どこに行きたいかと問われるならば、ここを挙げます。西コーカサス高地の渓谷にあるスバネティアの要塞集落です。外敵から実を守るため、倉庫兼要塞を作るというのはよくありますが、その中でもここの美しさは群を抜いています。
 ただちょっとやそっとでは行けそうもない所ですね。ここも世界遺産登録がされています。
 そして98年には、私の大好きなECMレコードのジャケットにも登場してしまいました。

「建築家なしの建築」でのスバネティアの写真(3枚も載っています)

1998年にECMから発売されたCDジャケットカンチェリの"Trauerfarbenes Land"です。

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