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シエナ(Siena)

43 19 06.24N,11 19 53.96E

 今回ご紹介する山岳都市の中で、シエナはちょっと別格でしょう。人口も5.6万人と、今回ご紹介する都市の中では規模の大きな町ですし、フィレンツェからの日帰り観光地として有名になってきました。でもそこにあるものはフィレンツェの滞在時間を割いても余りあるものばかりです。

 フィレンツェから行くには電車(ディーゼルでした)かバスで約1時間、特に電車で行くとそのロケーションがよく分かります。駅は町はずれの山の下ですから、そこから市内へはだらだら坂をずーっと上って行かなくてはいけません。当然丘の上に町があるのですからこの坂こそが山岳都市の証なのです。坂を上りきったと思わせる所に城門(サンロレンツォ門)が現れここから市内(チッタ)に入っていきます。でもまだ上り道が続き、やがて尾根道に出るとそこからの道は歩行者専用道路になっており、車に煩わされることなくゆったりと進むと、やがて左側に有名なカンポ広場が建物のピロティ越しに見えてきます。その見え方は何とも突然で、心の準備ができないままに華麗なマンジャ塔とご対面してしまいました。

 カンポ広場の美しさはあちこちに紹介されていますが、地形を最大限に生かしたその形状に尽きるでしょう。市庁舎に向かってなだらかに傾いている斜面が、否応なしにプブリコ宮に中心性を与え、扇の中心からちょっとずらした所にマンジャの塔を建てるという心憎さ、また広場に面する建物はすべて広場の形に合わせファザードを曲面仕上げとする一方、デザインをプブリコ宮に準拠させ、空間の一体感を高める・・ これは正にプブリコ宮を舞台に、広場を観客席に見立てるという演出の結果に他なりません。元円形劇場があった場所を広場にしてしまうというその発想が、700年の年を越え我々に感動を与え続けています。

 シエナ自体はかつてフィレンツェと覇権を争った位の力をかつて持ち、トスカーナを代表する都市だったのですが、覇権争いに負けてしまった結果、時間がルネサンス以前で停止してしまったかのようなところがあります。だかこの町ではルネサンスのものは殆どないのですが、それ以前の、シモーレマルティーニやロレンツェッティの名作をプブリコ宮やドウオモ美術館で目にすることができます。

市内に入った尾根道モンタニーニ通り。
ご覧のように常時歩行者専用道路になっています

市庁舎のプブリコ宮とマンジャ塔。フィレンツェのベッキオ宮と比べるとプロポーションの差は歴然としており、こちらの圧倒的な美しさを再認識させられます。窓の尖塔ゴシックと3分割に注目

カンポ広場をマンジャ塔上から。
下界を撮るには狭間から乗り出さなくてはいけないのですが、なかなか1箇所からは撮れないため、パノラマにはなりにくい写真になってしまいました。

カンポ広場のカフェから。ちょっと見にくいのですが、広場に沿って湾曲した建物の窓は、尖塔ゴシックと3分割と、プブリコ宮のデザインを踏襲したものにになっています。